194 おつかれさま
さて、みんなのお楽しみドロップ品なのだが。
倒れたゴーレムがサラサラ崩れだした。
見る間に土の山になる。
そしてピカッと光って麻袋に化けた。
……元のゴーレムと同じサイズの。
『腐葉土☆2』
「腐葉土でかっ!?」
「ヒトが10人くらい入れそうですねぇ」
「わう……」
ドロップ品『腐葉土☆2』はシャレにならんデカさだった。
見上げるような麻袋だ。
いくらゲームだからといってもやりすぎだろう。
中に相撲取りでも入ってそうなサイズだ。
「大農場の土壌改良に使うそうですし。
これでも足りないぐらい?」
そういや大量に欲しいって言ってたっけ。
完全に土木工事だよ。
ポーチが無限収納でよかった。
現実ならひとつ運ぶのに軽トラが必要なところだ。
ドロップ品の演出から見るに、ゴーレム自体が腐葉土の化身なんだろう。
あの攻撃力がまるまる栄養になるのだ。
さぞかし、いい肥料になるに違いない。
これを大農場に届ければとりあえずクエストは達成なのだが。
「50個ぐらい持ってけば農場さんも喜んでくれますかね?」
「まぁ、ゴーレム相手に特訓してれば勝手に溜まるだろうさ」
このゲームのクエストは達成度合いでボーナスが加算される。
50と言わず、1000トンくらい渡してビックリさせてやろうぜ?
ボス戦を勝利した俺たちは元の祠前にたたずんでいる。
この祠に祈りを捧げれば、何度でもボスはポップするらしい。
連戦したいトコ、だが……。
今、午後の4時過ぎだ。
暗くなる前に、さっきの安全地帯に戻っときたいのだ。
キャンプの設営とか晩飯の準備とかしないとな。先は長いので。
「じゃあ、今日はここまでにしとくか。続きは明日だ」
「そうですね。MPも心許ないですし」
「わう」
ふぅ、とイズミが息を吐く。お疲れだったようだ。
このあたりは安全地帯でこそないが、エンカウントも無い。
緊張を解いても大丈夫だろう。
そういえば、今日は特に戦闘面でイズミの負担が大きかった。
部位破壊に弱点狙撃にと大忙しだ。
そりゃくたびれる。
「今日は大活躍だったな。おつかれさん」
「あら、珍しい。眷族おだててもナニも出ませんよ?」
「美味しいご飯が出るだろ?」
「そりゃ、モチロンですけど」
肩をもんでやると嬉しそうだ。
ふふふ。褒め甲斐があるヤツだ。
「わうッ」
ああ、スマンスマン。シロも大活躍だったな。
特に朝から『巨狼変化』で駆け通しだった。凄い時短になった。
「二人とも、今日はよく頑張ってくれた。ゆっくり休んでくれ」
初日としては大成功だ。おつかれさん。




