191 土神の祠
俺たちはそのまま橋を渡った。
安全地帯は素通りだ。
キャンプ設営はまた後で。
まずゴーレムさんに挨拶しないと。
橋からしばらく山道を登る。再び鬱蒼とした木々の中だ。
そして山道は行き止まった。到着だ。
ひときわ高い巨木が2本、そびえている。
その巨木を背景に、古びた石の祠がポツンと置かれていた。
「これか? 土の神様の祠って」
「思ってたより素朴ですね?」
「わう」
うむ。やけに小さいぞ?
ゴーレムとか暴れたら壊れちゃうんじゃじゃないの?
なんか心配になってきた。祠の中を覗き込む。
『参拝者よ。土神の恵みを望むか?』
不意に声が呼びかけてきた。低い、落ち着いた声だ。
『はい / いいえ』
目の前に選択肢が浮かび上がる。
これに返事すれば戦闘開始か。神サマも気が早いな。
「だ、そうだ。イズミ、シロ。用意はいいか?」
「いつでもどうぞ?」
「わうッ」
うむ。頼もしいな。さっそくやろうか。
はい、よろしくお願いします。
俺は両手を合わせ、アタマを下げた。
ふぉん。
視界が切り替わった。
さっきまでいたのは鬱蒼とした山林の古びた祠の前。
それが広々とした平原に変わっている。
「魔力に似たものを感知しました。転移したようですよ?」
イズミが説明してくれた。さすが魔女。
バトルフィールドに移動か。キチンとしてるね。
「土神の使い アースゴーレムが現れた!」
うわッ。デカいな。
ブロックを積み上げたような巨体が仁王立ちしている。
マンドラゴラ・ガーディアンよりデカいぞ。
かなり重そうだ。
投げられるのかね、こんな重量級。
「為せば成る、ですよ? マスター」
「わうッ」
お、叱られてしまった。
その通りだ。やる前から負けるコト考えちゃいかんな。
「壁は俺に任せとけ。
シロは死角から、イズミは遠距離から攻撃だ。
それからイズミ、飛び出すなよ?」
「それはマスターしだいですかねぇ?」
こいつめ。無理するなってコトだな?
「心配するな。今日は俺に守らせてくれよ? 行くぞ!」




