188 VS歩きシメジ
『空気投げ』発動した視界は青く煙っている。
目の前に迫るキノコの全身に青い導線が光る。
頭部の重そうなカサに特に光が収束している。狙いは頭突きか。
キノコがカサを振りかぶったのと同時に、俺は踏み込んだ片足を軸に半身を切る。
側面に回り込んでカサの後頭部に指を引っかけた。
勢いのままカサを振り下ろすキノコ。
その流れに接触し、同調し、加速させ、同時に身体を捌いて転倒させる。
ビシッ!?
ドオンッ!
迫る勢いそのままに歩きシメジは転倒した。
かなりの体重があった。それがそのまま投げの破壊力になったはずだ。
「いたたた」
俺のHPが3割ほど削られていた。『急速再生』を起動する。
投げの瞬間、両脇にくっついていた子キノコが顔面に跳ね飛んできたのだ。
飾りじゃなかったのかよ!?
親キノコが転んだら一緒にひっくり返ったのだから付属品ではあるのだろう。
オプション武器みたいなものか?
「二人とも下がって!
『ファイア・ボール』!」
イズミの指示に俺とシロは飛びずさった。
『影縛り』『巨狼体当たり』『空気投げ』で、ひとまとめに団子になったキノコトリオに魔法の火球が飛翔する。
ドオォォン!!
オレンジの炎が爆発した。
充分に溜め、MP追加した『ファイア・ボール』[タメ強]だ。
キノコトリオが派手な爆炎に包まれる。やったか?
爆炎の中、もがいていたキノコ達が立ち上がろうとしている。
まだ元気なようだ。HP高いな。
「かなり気合い入れた『ファイア・ボール』だったんですけど」
イズミが口を尖らせている。
まぁ、紫キノコとは違うよな。
「あの小っこいキノコが厄介だな」
「わう」
頷いたシロのHPバーが若干減っている。
お前も食らったのか。
親キノコに接近戦挑むと、死角から子キノコが不意を突いてくるのだ。
攻撃力はそこまではない。
VIT(生命力)強化状態の巨狼シロは若干のダメージで済んでいる。
が、ステ1の俺には結構な大ダメージになっている。悩みドコロだな。
パチンッ!
炎の中でナニカが弾けた。
立ち上がったキノコ達に変わりは無い、ように見えた。
パチンッ!
「マスター。子キノコが破裂しましたよ?」
パチンッ! パチンッ! パチンッ! パチンッ!
炎の中、親キノコの巨体の足下で子キノコ達が弾けている。
「まるでポップコーンだな。イズミ、でかしたぞ」
子キノコは『ファイア・ボール』の炎に炙られて全滅したようだ。後は話が早い。
親キノコ本体もダメージは溜まっているはずだ。もう一押しだ。
「イズミは距離とって警戒。シロ、突っ込んで仕留めるぞ!」
「わう!」
俺たちは消えかかった炎の中、キノコ達に襲いかかった。
子キノコ一掃後の親キノコはあっさりしたものだった。
ズンズン迫って体当たりしかけてくるのだが、スピードが紫キノコさんより遅い。
のろくてモーションが単純、投げ放題なのだ。
俺が『空気投げ』で待ち構えてポイポイ投げる。
巨狼シロがそれをドコドコ体当たりで跳ね飛ばす。
その流れで戦闘勝利できた。紫キノコさんありがとう。
「ニワトリもそうでしたけど、HPがかなり高いですね」
「ああ。タフだな」
「わう」
子キノコを排除しないままで『空気投げ』とか続けてたら思わぬ不覚を取ってたかもしれない。
危ない危ない。
「次からも今の手順でいこう。子キノコ一掃優先で」
「了解です」
「わうッ」
シロの方のダメージは軽い。歩いてるうちに回復する範囲だ。
で、ドロップ品は、と。
『ホンシメジ☆1』X3
『天然松茸☆2』X3
「おおッ!? コリャ凄いッ」
香りマツタケ、味シメジだ。
日本キノコ界のツートップ。
「高級食材なんですか? レシピがないんですけど」
「素焼きとお吸い物でイイよ。白ダシはあるだろ?」
こりゃ贅沢だ。晩飯が楽しみだぞ。




