187 山登り再開
まったくイズミは油断も隙も無いな。
おかげで妙な夢みたぞ。
「セクシーな女王サマ姿見れたんですから得したのでは?」
いや、夢だし。あらかた忘れちゃったよ。
「それは『次の義務はあのカッコウで』というメッセージ?」
違うよ!
お前、前向きに受け止めすぎだ。
「出先なのであんまり衣装は用意してないんですよねぇ」
少しはあるのかよ!
いい加減にしなさい。
気を取り直して冒険の続きだ。カムバック緊張感!
『巨狼変化』の効果が残ってるシロは、とりあえずこのままで山登り継続な。
「わうッ」
頼もしいね。引き続き警戒頼むぞ。
「ちょっとお待ちを。
あんなトコロに『元気キノコ』が生えてますね」
「おッ。俺が採取しとくよ」
ガサガサと木の根元をあさる。
けっこう大振りな『元気キノコ』だ。ふふふ。
丁寧にもいで採取物袋に入れておく。
『叫びの森』で森番のオヤジに教わったノウハウが生きてるな。感謝だ。
『黒土山』にもイロイロな山菜が生えている。
ここまで、山道を歩きながらチョコチョコ採取もしてきた。
成果は『毒キノコ』『元気キノコ』『薬草』『毒消し草』等。
レア度は低いもののいずれも錬金堂にとって重要な素材だ。
特にキノコ系が多く拾えている。キノコの山だな。
まぁ、俺はどちらかと言えばタケノコ派なのだが……。
「わたし、まだ食べたことないんですよね。両方とも」
商店街で見かけたぞ?
高いものでもないし一度食べとくがいいよ。
そして己の派閥を決めるのだ。
まぁ、世界一平和な派閥争いだよ。
誰もがノーダメージだ。
あ、シロはダメだぞ?
チョコは犬には毒だからな。たしか。
「ガウッ」
先行してたシロが鋭く吠えた。警戒の声だ。
キノコの話をしていたらキノコが出た。さすがキノコの山。
「歩きシメジが現れた!」
かなり大型のキノコが3体。
身長?は人間大。頭も胴もデカくて太い。重そうだ。
まだ距離がある。
紫キノコのように突撃してくるワケでは無いようだが。
こっちに気付いているのかノッシノッシと迫ってくる。
「ワオーン!!」
巨狼シロの雄叫び一喝。
周囲の空気がビリビリ震えた。
キノコ3体の足が止まる。
効くんだな。キノコに雄叫び。
『影縛り』!
先頭のキノコに影の繊手が纏わりつく。
イズミは杖を構えて呪文の詠唱を続けている。
「いくぞッ」
「わううッ」
俺とシロは駆けだした。
あの重そうな巨体がイズミと接触するのはマズイ。足止めだ。
スタートが同時でも、ステ1の俺とシロじゃAGIが段違いだ。
正面から突撃したシロが右翼のキノコに体当たりをかます。
ドンっと重い衝突音。
巨狼に弾かれた右翼キノコはぶっ飛んで影拘束中の中央キノコに衝突した。
『空気投げ』
俺はアーツ発動させる。
左翼のキノコと接敵した。
どんな敵だ? 勝負だ。




