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錬金堂繁盛記  作者: 三津屋ケン
185/653

185 穏やかな世界

 引き続き俺たちは山頂を目指し山道を進む。


 ちょくちょくニワトリコンビと遭遇する。

 が、すべて危なげなく撃退した。

 もちろんオール部位破壊済だ。

『ロック・シュート』無双。


「タマゴも鶏肉も大漁ですよ?」

「わうッ」


 イズミがホクホク顔だ。

 シロも肉だらけでテンション高い。


「すっかりニワトリハンターだな。

 コイツラしかいないのかね」

「望むトコロですよ?

 余った鶏肉は孤児院に寄付してもいいですし。

 きっと喜んでくれますよ?」


 いいな。

 それは良いアイデアだ。子供は肉好きだし。


 イズミが『鑑定』『査定』スキルを使ってみたところ、鶏肉の販売価格はレア度の割にとても安いらしい。

 美味そうなのに。

 売っても安いのなら、食べ盛りの子供達に直接食べてもらった方が有意義だ。

 ニワトリ1羽丸焼きとかテンション上がるだろう。


 値段が安いのは食材系全般に言えることだ。


 ダンジョンなのに他のプレイヤーがいないのも納得だな。

 依頼報酬は低く、ドロップ品は価格の低い食材。

 ここは単純に儲からないのだ。町からも遠いし。

 そりゃ敬遠されるよな。


 イズミみたく『料理』スキル持ちなら別だろうけど。


「いいトコなんですけどねぇ。

 鶏肉も☆2が混じってましたし」


 そんな風に話しながら登っていると渓流に出た。


挿絵(By みてみん)


 流れる水は清く澄んでいる。

 河原に足を踏み入れると視界の端に表示が出た。


『Safety Area』


 安全地帯だ。一息つけるな。


「ようやく中間地点かな」

「ちょうどお昼ですね。ここでお弁当にしましょうよ」

「わうッ」



 渓流沿いは木も少なく、明るく開けていた。


「空が広いな。ずっと木ばかりだったから気持ちいい」

「ええ。木漏れ日もいいものですけど、ずっとはちょっと」

「わう」


 ゴザを敷いて弁当を広げる。イズミのお手製だ。


「今日は『おにぎらず弁当』。

 シロは約束の『骨つき肉』ですよ?」

「おおーッ」

「わうッ!」


挿絵(By みてみん)


 イズミが朝早くから用意してくれてたモノだ。美味そうだ。

 よくできた眷族ちゃんだよ。


「いただきまーす」

「がわうッ♪」

「はい、どうぞ」


 シロがガブリと骨つき肉に食いついている。至福の顔だ。

 ペットショップで売ってる最高級品なのだ。

 『黒土山』まで『巨狼変化』で走り通しだったからな。ご褒美だ。


 弁当もうまいな。

 おにぎらずの具がバラエティに富んでいる。


「イロイロあって美味いな、コレ」

「お握り作ってたらレシピがヒラメキまして。ピコーンって」


 レシピはピコーンで増えるのか。まちがいなく電球のエフェクト付きだろ。


「だけど結構時間がかかってるんだろ。ちゃんと寝てるか?」

「具は晩ご飯の余り物とか使ってますから手間はないんですよ?」


 イズミが得意げに微笑む。


「それに最近はシエスタとってますので。自然と早起きなんです。

 心配ご無用ですよ?」


 寝不足の心配はないようだ。

 ふむ。ちゃんと健康的に回してるんだな。賢い。

 


 腹一杯になった後はごろ寝タイム、シエスタだ。


 ボワンッとシロが『巨狼変化』して横たわる。

 俺とイズミはその巨体にもたれかかった。うーん、モフモフ。


 人目も無い。思う存分ゴロゴロしよう。


「MPも減ってたとこですし、ゆっくりさせて貰いますよ?」

「『ロック・シュート』連発してたものな。存分に休んでくれ」


 攻撃手段が呪文オンリーのイズミはどうしてもMPの減りが早い。

『吸血』で補給できる俺のMPを回せればいいんだが。


 まぁ、そう都合良くもいかんか。

 そういう制約こそゲームのスパイスだしな。工夫が楽しいのだ。


 横になった巨狼シロはまさに極上のお布団。

 山の風は涼しく陽は温い。


 俺とイズミは並んで寝転がり、目を閉じた。



挿絵(By みてみん)


 サラサラサラサラ………。


 渓流の水音が絶えず流れている。


 ザワザワザワザワ………。


 風が吹くたび、葉がこすれて木々がざわめいている。


 ホロホロホロホロ………。


 ジージージージー………。


 山林の遠くで鳥や虫が歌っている。


 山の渓流は、静かなようで自然の音に満たされていた。


 ああ、いいな。

 とても優しい、穏やかな世界だ。


「すぅすぅ」

「くかぁー」


 イズミとシロの穏やかな寝息が聞こえてきた。


 ああ、俺も眠くなってきた……。

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