182 ステ1でできるコト
「こ、コレは!?」
見事はぐれニワトリ戦に勝利した直後、イズミが叫んだ。
「☆2ですよ!? ☆2! ☆2の卵です⁉」
ドロップ品に狂喜しているのだ。
『丸ごとチキン☆1』2つに『天然鶏卵☆2』が1つだ。
パッと見は、丸ごとのナマ鶏肉の方がインパクトある。
卵はかなり大振りだがタダの丸い卵だし。
ただ、品質が違う。
「コレで『オムライス☆3』がグッと近づきましたよ!!
狩りましょう、マスター! ニワトリ狩りですよ⁉」
大興奮だ。ちょっとコワイ。
☆3のアイテムを作るには☆2の素材を揃える必要がある。
それは『調合』も『料理』も同じだ。
イズミは大事そうに卵を捧げ持ってポーチに収納した。
大袈裟に見えるがイズミの料理に関する情熱は本物だ。
美味しい料理はゲームの楽しさに直結する。
俺も優先したいけどさ。
「まぁ、落ち着けって。今は山頂目指さないと」
「うぅぅー、タマゴぉ」
唸っている。シロより犬っぽいぞ。
それにタマゴだけじゃ、オムライスはできないだろ?
農場にもイイ野菜を売ってもらわないと。
「登ってる途中でもきっと出てくるから。
今日はそいつらで我慢してくれよ?」
「……わかりました。
でも、後で絶対タマゴ狩りですよ?
美味しいタマゴはいくらあってもいいんですから」
わかってるって。
俺もイロイロ楽しみなのだ。
いい卵ならTKGとか是非いただきたい。
しかし、エネミー2体でドロップ品3つか。
通常、ドロップ品は敵1体に1つずつだ。
このタマゴ☆2は部位破壊ボーナスか?
そんなのあったんだな。初めて知ったぞ?
とりあえずニワトリに関しては、確実に部位破壊してから仕留めていく方針で。
「俺が投げ倒したらイズミが『ロックシュート』でトサカを狙ってくれ。
ダウン状態なら狙いやすいだろう?」
「お任せあれ。ガンガン、卵ゲットしますよ?」
「シロ。さっきの連携はイイ感じだった。
これからも、ああいう呼吸で頼む。
一発のダメージより、相手の行動キャンセル優先で」
「わうッ」
シロの体当たりから始まって、ロックシュート、怪力投げ、噛みつき押さえ込みと繋がった。
シロは素早いから複数回絡める。頼りになるワンコだ。
逆に俺の方がダメダメだったな。
『空気投げ』の後、短時間だが手持ち無沙汰になってしまった。
状況にもよるが、連携順では『怪力』は温存しておきたいトコロだ。
カウンター系の『空気投げ』は倒れた相手には手が出せないのだ。
立ち上がりかけ、とかなら攻められるんだけど。
ステ1でも可能な追撃を用意しとかないとなぁ。
『影縛り』は詠唱が必要だからとっさの攻撃には向かない。
『吸血』はむしろ回復技だし。
うーむ。
「さっきの感じじゃダメなんですか?
素手で殴ってましたけど」
いや、ほとんどダメージ無いだろ。
あんなポコポコパンチじゃ。
「だって、トサカが弱点だって突き止めたじゃないですか」
うむむ?
そうか、そういう効果もありか?
ダメージこそ皆無だったが、結果として無駄でもなかったか?
夜ならいいんだ。
高いステ値頼りで、普通に殴るだけでダメージを稼げるし足止めもできる。
しかし昼はステ1だしなぁ……。
……いや。『格闘』でスキルLVが30近くあるんだ。
ステ1であっても完全に無駄じゃない。
そりゃ大ダメージ与えたり部位破壊とかはできないだろう。
だけど、さっき相手の弱点を探ることはできた。
あと、相手の行動を邪魔するだけならどうだ?
例えば膝カックンとか。あれ、力ぜんぜん要らないぞ?
まぁ、すんなりカックンされてくれるエネミーとか想像つかんが。
ふむ。倒れてる相手が立ち上がるのを邪魔したりはできそうだ。
それに密着してる状態なら案外イロイロできるか?
ゼロ距離ならAGI差は無いようなものだからな。
『空気投げ』の発動状態、あの青い光ナビが見えてる状態なら相手の裏を取ったりできるかもしれない。
……あれ? いけるか?
なんかいけそうな気がしてきたぞ?




