174 さあ、合宿だ
「おはようございます。マスター」
「わうッ」
「おう、おはよう。イズミ、シロ。今日から合宿だ。頼むぞ?」
セーラー服への敗北感はさておき、俺は再びログインした。
さっきログアウトの間に夕食と片付け、洗濯を超特急でこなしてきた。
すでに、一日21時間ログイン大作戦は始まっているのだ。
「先にログイン、ログアウトの予定を説明しとくぞ?」
イズミにメモ用紙をもらって、円型の相対時刻表を書き込む。
かなり練り込んだからな。もうソラでもサラサラ書けるのだ。
「こっちの時間で言うと、2日ごとに深夜0時~朝6時までログアウトする。
予定通り進めば今日含めて15日間ログインできるはずだ」
「なるほど」「わうッ」
リアル側で説明すると、7時間ログインして1時間ログアウトするスケジュールになる。
これを月曜の朝までひたすら繰り返すのだ。
「今は途中のココ。リアルだと17時だ。
だから今日は次のリアル20時にログアウトして、21時に再ログイン。
そこから、この時刻表通りに回していく」
「むしろリアルが大忙しですね。
たった1時間で大丈夫ですか?」
「まあな。任せとけ」
ゲーム内はもちろんだが、ログアウト中の1時間X3こそ真剣勝負だ。
この短時間で1日分の食事と運動、そして家事を消化せねばならない。
もちろん俺一人でだ。ゲームもリアルも大忙しだぜ。
ああッ、充実してるな俺ッ!
端から見れば完全に非リア充なんだけどね。
楽しいからいいのだ。
さて、戦闘強化合宿とお題は決めていたが、内容はまだ白紙。
今日、初日はその準備と情報収集に費やそうと考えていたのだが。
「目的地は『黒土山』。
ターゲットは『ゴーレム』が良いとのお話です」
イズミさんがキッチリ情報収集済だった。シッカリしてますな。
「『早朝組』の皆さん推奨ですよ?
ドロップ品はあんまりだそうですけど」
現役攻略組のあの人達の情報なら確実だろう。お礼せねば。
「『オムライス』を振る舞っておきました。好評でしたよ?」
なんと攻略組餌付けされてました。うちの眷族ちゃん凄い。
『黒土山』は、始まりの町から徒歩で半日ほどの山岳ダンジョンだそうな。
冒険者ギルドに行けば関連クエストがあるらしい。受けとくべきだな。
「食料や野外用の料理セットも準備済です。
『傷薬』『解毒薬』もストックがあります。
いつでも出発できますよ?」
「イズミ、優秀だな……」
昨夜、セーラー服着て『ヘタレ先輩と後輩ちゃん』ゴッコしてたオンナだとはとても思えん。
いや、ドキドキはしましたけども。
「眷族なら当然ですよ?」
ジト目でドヤ顔だ。
こんにゃろ、うざ可愛いじゃないか。ありがとな。
「じゃあ、冒険者ギルドと『魔界飯』よって出発だな」
何日か空けることになりそうだしな。
挨拶はしとかないと。




