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錬金堂繁盛記  作者: 三津屋ケン
154/652

154 商品試作

 夕刻近くなってきたのでイズミが抜けて台所に上がった。


 今日の夕飯は鍋らしい。

 期待だ。俺も好きなのだ。


「では『解毒薬』と『付与薬[毒]』を試作してみましょうか」

「よろしくお願いします」


 それまで俺たちは新レシピのレッスンだ。

 店に置いてある商品はなるべく自分で作れるようにしておきたいので。

 さすがに『マナポーション☆2』は無理だけど。まだ。


「『解毒薬』のレシピは『傷薬』とよく似ています。

 材料は『毒消し草』5に対して『元気キノコ』1。

 この2つを『乳鉢』もしくは『薬研』ですり潰します」


 指導を受けつつ試作してみる。

 包丁でザクザク、薬研でゴリゴリだ。


挿絵(By みてみん)


『解毒薬☆2』カケル5包。


 難なく完成した。ホントに『傷薬』とほぼ同じだ。

 ただ触感は違う。『毒消し草』は多肉質のアロエみたいな感じだ。

『元気キノコ』も『毒キノコ』より身が厚く、みっちりしている。


「状態異常回復薬の作成で『元気キノコ』は軸になる重要な素材です。

 同じように『マヒ消し草』との調合で『解マヒ薬』が、

『遠見草』との調合で『回盲薬』が作成可能です」


「『毒消し草』と『解毒薬』の効果はどう違うんです?」

「即効性ですね。『毒消し草』単体だとひと晩かかります。

 そして、品質の高い『解毒薬』はより強い毒を解毒可能になります」


 なるほど。☆1じゃ効かない毒もあるというコトか。要注意だな。


 次は『付与薬[毒]』の試作だ。

 今度は潰すのではなく煮る作業だ。

『傷薬』とは工程が違う。緊張するぜ。


「細かく切った『毒キノコ』5本分を『調合油』ひと瓶分と混ぜて煮詰めます。

 魔力を注ぎながらかき混ぜ、油全体の色が濃い紫に染まったらキノコを取り除いてください。

 瓶に詰め戻して完成です」


 ミライナ先生の説明は逐一ノートにメモる。

 作成関係はこれまでみんな書き残してある。

 こういう蓄積って凄い財産なんだよな。


 毒キノコを油で煮て、毒を抽出、濃縮するワケか。

 つまりダシを取るようなものだな。やってみよう。


「今回は『毒キノコ』の軸も一緒に刻んでください」


 ザクザクザクザク。

 グツグツグツ。


挿絵(By みてみん)


 もともとの調合油はトロミのある薄緑色だ。

 それが紫の毒キノコ色にジワジワ染まっていく。

 魔力を注ぎながらかき混ぜ続ける。

 より濃縮された深紫になった。

 ミライナ先生を見やると「はい」、と頷く。

 頃合いだな。

 火を止め、キノコの破片をすくってから放置、熱を冷ます。

 冷めたら粗布を通して軽く濾過する。

 瓶に詰め戻して完成だ。


『付与薬[毒]☆2』


 おおッ、いきなり☆2だ。幸先いいぞ。


「調合鍋のサイズで大量生産も可能です。

 試してみてください」


 なるほど。

 次は『毒キノコ』10本、『調合油』2瓶でいってみよう。

 

 増量作成で『付与薬[毒]☆2』が2つ完成した。

 よーしッ。

 明らかに調子がいい。いや、これまでの積み重ねか。


 最初に素材を細かく刻むのはこれまでの作成でも共通している。

 その部分についてはかなり自信もついた。任せとけ。


 特に違いを感じるのは『魔力を注ぐ』部分だな。

 リアルに無い感覚だから最初は戸惑ったが、少し分かってきた気がする。


 意識すると、体内に温かい血流のような感覚が生じるのだ。

 それを上手に『循環』させる。それが『魔力を注ぐ』というコトなんだろう。


 油をかき混ぜながら魔力を注ぐ。

 注ぐと同時に還ってくる魔力もある。それもまた手から全身に巡らせる。

 心臓を経由して再び注ぐ。


 そんな感じに意識してると上手くいくような気がする。たぶん。

『調合』スキルのLVアップもキッチリ反映しているようだ。助かる。


 ふふふ。俺もいっぱしの『調合師』だな。

 生産面白いぞ。


「『魔女の大釜』は『調合手鍋』の上位版として使えそうです。

『付与薬[毒]☆3』に挑んでみるのもいいでしょうね。

『調合油☆2』も、割高ですが組合で扱っていますので」


 使い切ったのは『薬草☆2』で、『毒キノコ☆2』は残っている。

 いいな『付与薬[毒]☆3』。

 俺の毒手習得の夢が一歩近づくぜ。


「あの……。擦るだけで死んじゃう毒とか、ホントに知りませんよ?」


挿絵(By みてみん)

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