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錬金堂繁盛記  作者: 三津屋ケン
149/652

149 ロマン武器

挿絵(By みてみん)


 皆さん、なかなか引き下がってくれないので困った。


「競争になってるんですねぇ。攻略組さん達って」


 まぁ、ネトゲの醍醐味の部分だしな。

 燃え上がるのは分かる。


 結局『依怙贔屓はしない』の部分で納得して貰えたようだ。

 MPの残量が探索の継続時間そのものみたいなトコがあるからな。

『マナポーション☆2』の存在は彼らの競争に影響ありすぎるのだろう。


「『マナポーション』が普通に流通しだせば騒ぎも収まるさ。

 それまでは今の調子で販売だ。朝早いが頼むよ」


 イズミがうなずく。面倒かけちゃうな。


「それより転売屋さんのパーティが有力な攻略組の一つ、というのが驚きでした。

 転売専業だと思ってましたよ」

「ホントにな」


 それだけ装備の質が冒険を左右するというコトなんだろう。

 イイ装備を序盤で手に入れる、てのも妙な優越感があるし。


「スキルが成長しなくても『転売』をやめられない理由もそれかな」


 最初からそういうゲームだと思えば割り切れる。

 俺はゴメンだが。


「わたしなら悪夢ですね。

『料理』スキルが成長しないとか」


 そこは優先順位の違いだよな。

 あと基準の置き場かな。内か外か。

 競走ってのは、どうしても自分より他人に目がいっちゃうモンだし。

 群れで生きる動物の本能みたいなものだ。

 仕方ないよ。


 さて、攻略組ならぬノンビリ生産職『錬金堂』としては。

 シエスタ後は商品作成は一旦ストップ。

 試作、検証作業に移った。


 ミライナ先生は夜には帰宅しないといけないからね。

 ややこしいコトは先にやっとかないと。


 俺とイズミは『傷薬☆3』にチャレンジ。

 ミライナ先生はそれを指導しながら『魔女の大釜』の試運転だ。


 いよいよ☆3作成だ。緊張するぜ。


「今のお二人なら、特に問題は無いと思います。

 ☆2の素材と薬研があれば大丈夫ですよ」


 先生の太鼓判入りました。心強いですな。


「こちらは『魔女の大釜』で『付与薬[毒]』を試してみます。まず☆1の素材で」


 俺のログアウト中に増やした商品だな。

 毒属性のエンチャント系アイテムか。

 カッコイイな。俺も覚えたいぜ。


挿絵(By みてみん)


「あ、そうそう。

 これ、武器に塗布するらしいんですけど。

 マスターは使えますかね?」


 イズミが完成品を取り出した。

 『付与薬[毒]☆2』だ。

 む。ステゴロに塗布使用のアイテムか。どうだろ? 


「解毒薬ってある?」

「あります」

「ならやってみるか」

「え? ちょっとッ、危ないですよ⁉」


 ご心配無用。レアスキル持ちですから。

 なんでもチャレンジだ。


「腕をまくって、塗り込んで、と?

 ちょっとピリピリするな」


 床を汚さないよう新聞紙を引いて実験。

 新聞は『運営ニュース』だ。イズミが溜め込んでた。


「うわぁ……」


 ミライナ先生が引いている。

 イズミと距離を取って観察してもらう。

 かかると危ないからね。


挿絵(By みてみん)


「これでよし、かな? イズミ、どう見える?」

「アタマの上に2つアイコンがともりました。

『ステ異常[毒]』と『属性付与[毒]』ですね。

 感じはどうですか?」


 ふむ。塗った腕がピリピリしてる以外は……。

 まずHPバーが小刻みに増減してるな。

『ステ異常[毒]』の効果と『再生』が拮抗してるようだ。

『再生』の方が強力だからか、満タンと99%の間を往復している。

『ステ異常[毒]』にはかかってるが、数値的には支障ないってとこか。

 体調的にも異常は感じない。さすが吸血鬼。


「じゃあ、この状態で『解毒薬』を使ってみると?」


 ミライナ先生作の『解毒薬☆2』は『傷薬』と同じ紙で包んであるが。


「これは飲み薬です。水飴みたいな触感なので、口に含んで溶かして少しずつ飲み込んでください」


 ぱっと見、黒っぽくて怪しいが味はそう酷くは無い。少し苦いか。


「『ステ異常[毒]』のアイコンが消えました。

 『属性付与[毒] 』は継続中です。成功ですね」

 

 うむ。とりあえず成功だな。

 この手で相手を何発か殴れば、『ステ異常[毒]』を与えられるというワケか。

 そこまでは今テストできんが。


 ステ1状態のペチペチパンチでも有効なのかね。

 うーむ。塗っただけで『ステ異常[毒]』になったコトを考えると有効かも。

 昼間使える攻撃手段が増えた、ということかな。

 試した甲斐があった。


「一般のお客さんだとどうだろ。

 解毒薬とセットで売る必要があるか?」

「ですけど、完全にステゴロのお客さんとか見たこと無いですね。

 格闘系の人でも手甲やグローブみたいなのハメてましたよ?」


 なるほど。格闘系だからといって素手とは限らんよな。

 装備があればそれに塗ればいいのか。

 メリケンサックとか。


 しかしナンだな。

 この素手に毒属性付与の状態って。


「コレってアレだよな。『毒手』。

 俺、いま『毒手』の使い手だよ? ふひひ」


「どくしゅ? なんですか、それ」

「聞いたコトないですね」


 フフフ、説明して進ぜよう。


「少年格闘漫画伝説の武器、というか技だ。

 凄い修行で手刀に猛毒染みこませて必殺の武器にするんだ。

 使用者の命をも縮める諸刃の剣なのだよ」


 おおお。正にロマン武器。

 擦っただけで相手は死ぬ。カッコイイ。


挿絵(By みてみん)


「いえ、そんな即効性の猛毒じゃありませんから」

「しかも致死毒なんて……。

 そんな危険なモノ、私、作り方知りませんよ」


 そうだった。

 効果は『再生』にも負ける程度の弱毒だ。

 あくまで長期戦前提の搦め手だよな。


 しかし『毒手』には違いない。

 ランクアップしたら即死もありじゃないか?


「危ないからサッサと洗っちゃいましょう?」

「消毒液用意しますね」


『毒手』のロマンは女子には理解しづらいようだ。

 覚えとこう。

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