145 シエスタ検証
目覚まし時計は30分後、きちんと仕事を果たした。
ご苦労さん。
「あー、よく寝たな」
「気持ち良かった……」
「あっふぁぁ、シロぉ、もうちょっとぉ」
「わう?」
ひとり、まだシエスタモードがいるな。メガネのヒト。
短い時間だが熟睡できた。アタマもスッキリだ。
「MPも全回復してますよ?
作業の合間に『鑑定』してたんでけっこう減ってたんですけど」
そんなコトしてたのか。ゼンゼン気付かなかったぞ。
俺も午後の『調合』作業で消耗した分が全回復している。
かなりの回復効率だな。多少の休憩じゃこうはいかないぞ?
「短時間でも熟睡できたのが大きいのか?」
「おやつタイムの相乗効果もあるかもしれませんよ?
随分とリラックスしてましたし」
なるほど、あり得る。睡眠の質だな。
「オヤツとシエスタは習慣化しよう。
回復効率を考えると十二分に効果がある。むしろしなきゃ損だ」
「優にマナポーション1本分は回復してますからねぇ」
お得な上に気分爽快なんて最高だろう。
シエスタは日課で。
さて、シエスタでリフレッシュしたことだし、もうひと頑張り。
と気合いを入れたトコロだったんだが。
ピンポーン。
玄関の来客ベルが鳴った。
「誰か来ましたね。見てきます」
イズミがうーん、と背筋をひと伸びさせた。
パタパタと玄関に向かう。
このゲームでは、基本ホームには関係者と登録したアバター以外は入室できない。
プライベートルームだからね。
外から屋内を覗くこともできない。
ガラス窓があっても絶妙の反射効果で見通せないのだ。
芸が細かい。
お店の場合は営業中のみ制限が解放される。
店舗部分にだけ入室がフリーになる仕様だ。
現在、我らが錬金堂は営業外なので制限が適用されている。
今の来客ベルは非関係者の訪問を告げるモノだ。
イズミがすぐに戻ってきた。
「『マナポーション』購入のプレイヤーの方です。
受注生産の依頼について責任者と話がしたいそうです」
「ああ、俺が出るよ。表だな?」
ここで責任者と言えば俺しかいない。
現実はイズミに任せきりだけどね。
ハンコを押すのは俺なのだ。ハンコ無いけど。
しかし『マナポーション』大人気だな。
ゼンブ朝イチで売り切れたそうだけど。
人気ありすぎるのも善し悪しだ。転売屋氏とか。




