142 俺たちの義務
さて、ひとまず一戦終えた『巨狼変化』なのだが。
強いな。かなり。
小さいシロでも植物コンビなら一撃で沈めていた。
今回は変化したコトで体格、体重が激増。
一撃に重さが加わった結果、破壊力とノックバック効果が追加された。
これは攻撃を加えると同時に足止めが期待できるということだ。
かねて懸案の『連携コンボ』の一角として大きく期待できる。
クーリングタイムが長いのが惜しいな。1時間ある。
ただ継続時間も1時間あるので長距離移動も大丈夫だ。鞍が欲しいとこだが。
AGI減少の影響はあまり感じないな。
一歩が大きいから距離を詰めるのも速い。
回避行動には影響があるかもしれない。
これだけ大きいと躱すより受け止める前提でいたほうがいいな。
VIT値も増えてるし『巨狼の毛皮☆3』も装備している。
ひょっとすると夜の俺より堅いかも?
壁的な働きも出来そうだ。
総合的に見て、かなり頼もしさが増した。強い。
俺が敵中に突っ込んでる間、イズミを守りつつ戦う役目もバッチリだろう。いっそ騎乗しててもいいしな。
期待してるぞ?
そしてこの暴れっぷりを見ていて、確信したコトがあるのだ。
戦えるぞ? 『アイツ』みたいに。
「シロ、覚えてるか? 昨夜、俺をボコボコにしてくれた、あの『餓狼のボスLV15』」
「わうん?」
覚えてはいるようだな。
俺が話振った意味はわかってないが。
イズミほどじゃないが俺も意思疎通はできるのだ。練習したし。
「アイツ、凄く強かっただろ?
特に俺をぶっ飛ばした『技』な」
「わう」
『防御姿勢』ぶち抜いて俺のHPバー粉砕したあの『技』。
その前日、LV5のときも使ってた、あのフェイント溜め引っ掻き。そのLVアップ版だ。
逃げる、と思ったらズバッと来たアレ。
引っ掻き、なんてカワイイもんじゃないけどね。完全に斬撃だった。
「あの『技』、覚えようぜ」
「わうッ⁉」
驚いてるな。
「わうッ。わうわうん?」
うんうん。
その通り、アイツは俺だけじゃなくイズミまで死に戻らせた悪い奴だ。
だからこそだよ。
アイツにリベンジするために、俺たちはもっと強くならなきゃイカンのだ。
お前もオオカミだ。あの『技』、使えると思うんだ。
それに、アイツの『技』でアイツを倒すとか、カッコイイぞ?
「わんッ」
そうそう、かなり燃える展開だ。
お前も男の子だ。わかるだろ?
オトシマエを着けなきゃイカンのだ。
やられっぱなしで置いといてはいけない。
俺たちのイズミを死に戻らせといて、そのままで済ましていいハズも無いのだ。
正直ね。当の本人はサバサバしてるよ?
『死に戻り? そんなのありましたっけ?』てな感じだ。
しかし俺としては、俺たちとしては気が済まん。
済ませちゃイカンのだ。
「アイツをぶっ飛ばすことが戦闘部門の第一目標だ。
そのために連携コンボと『必殺技』を編み出す。
そのつもりで俺は頑張る。シロも頑張ってほしい」
「わうッ!!」
いいお返事です。やる気になってくれて嬉しい。
あの事態を引き起こした第一戦犯は俺だ。俺が一番悪い。
しかし、負けっぱなしはもっとイカン。イイ悪いでは無い。
勝ってこそ、水に流せるのだ。
『悪鬼羅刹』がアイツを退けたらしいが、そんなの俺たちには関係ないのだ。
俺は負けた。それが全てだ。
次に会うとき、アイツはもっと強くなってるハズだ。
それをねじ伏せる。それが俺たちの『義務』だ。




