141 『巨狼変化』戦闘編
10/13更新2つめです。
ミライナ先生が加わって、商品作成はさらに加速した。いいぞ。
「薬研はもっと優しく、重さよりも回数で」
「毒キノコの軸は、もう少し深めに外してください」
俺とイズミにビシバシ指示が飛ぶ。さすが先生だ。
自分も『マナポーション☆2』の素材を下処理しながらだからね。
指示の出し方も前回より的確になってるな。
俺たちの人となりも掴んで貰えたようだ。
過度な遠慮や敬語は事実を曇らせるのだ。
2時間ほど続けたトコで俺のMPが切れた。
補給しないと。
「ちょっくら外で魔力補充してくる。
ミライナ先生もイズミも適当に休憩で」
「じゃあ、わたしはお買い物に出てきましょうかね。
帰ったら昼食にしますよ?」
「もう少しでキリがいいので、そこまで終わらせときますね」
イズミは外出、先生は続けるようだ。働き者だね。
連れだって階段を昇って、俺はイズミに耳打ちした。
「ついでに目覚まし時計と、なんか甘いモノ買ってきてくれ」
「了解です。ミライナさんはケーキが大好物なんですよ?」
キチンと俺の意を汲んでくれたようだ。頼りになるぜ。
寝過ごしたのを妙に気にしてたみたいだからな。いいのに。
「よーし、シロ。外で遊ぼうぜ?
また『巨狼変化』の練習だ」
『巨狼変化』使ったシロの背中に乗って、フィールドに飛び出してきたんだが。
シロ、張り切りすぎだ。
けっこう、いや、かなり荒い。ミライナ先生が叫んでたのもわかる。
足をかけるトコが無いから下半身が暴れるのだ。
長距離移動するなら鞍が必須だな。
サイズ合うのが売ってればいいんだが。
さて、あっという間に町の外、『始まりの平原』なのだが。
恒例のMP補給戦だ。
ああ、向こうにカルテットがいるな。植物4人組だ。
「俺は前と同じで『影縛り』『吸血』だ。
シロは『巨狼変化』でどう戦えるかテストな。わかるか?」
「わうッ」
賢いワンコで助かる。さぁ、始めようか。
「ワオーンッ!!!」
初っぱなは『雄叫び』。
しかし音量がケタ違いだ。
割と距離があるのに向こうの足がキッチリ停まってる。
距離が伸びてる?
『影縛り』
ガジガジ草1体をさらに拘束だ。青汁味だが仕方ない。
キノコはやたら走り回るから『吸血』を繰り返しにくいのだ。
「ワウンッ!」
ドォーンッ!!
巨狼シロの豪快な体当たりでキノコが1体吹っ飛んだ。ド迫力。
残ったキノコに、シロがそのまま襲いかかる。
次は大きく振り上げた右前脚。その先端に輝く巨大な爪だ。
「ワウッ!」
ザンッ!!
気合一閃、振り下ろされた爪撃はキノコを深く切り裂いた。
突撃の機会も与えられず、2体の紫キノコは沈んだ。凄いな。
『巨狼変化』は巨大化と同時にVIT増加AGI減少の効果がある。
STRは変化無しだから攻撃力は変わらない、と考えていたのだが。
明らかに威力が上がってるな。
特に重さ、破壊力の部分でだ。
仮に与えているダメージが同じでも、その後の吹っ飛び、つまりノックバック効果が段違いだ。
通常シロでも体当たりは使ってたのだが、吹っ飛ばすまでの威力はなかった。
急所に当ててクリティカル的な大ダメージは希にあったけど。
どうもノックバックに関わる破壊力の計算には、体格やVIT値が関係しているような気がする。
通常シロが鋭いナイフなら、巨狼シロは金属バットだ。
手数の多さや急所狙いは望めないが、重い一撃で相手を破壊しぶっ飛ばしたりできる。
どっちが強い、とは言えないな。
ケースバイケースだろう。
『怪力』
ググッ。
拘束の解けたガジガジ草1体を『怪力』固めで締め上げる。
あんまり力込めると俺の腕がヤバイからね。ホドホドに。
その間もずっと『吸血』でチューチューしっぱなしだ。
ビシッ!
あうッ。痛い。
残った方のガジガジ草が俺の背中をムチ打った。
HPバーが3分の1くらい削られたが『吸血』はやめない。根性だ。
LVが上がったのでHPバーも伸びた。
相手がガジガジ草なら3撃くらいまで耐えられるのだ。
ふふふ、俺も強くなってるのだぜ? ステ1だけど。
しかし痛いモノは痛いな。
シロ、早くやっちゃってくれ。
「ガウッ!」
ガブリッ!!
最後の攻撃は噛みつきでした。
でっかい顎がガジガジ草の頭部?を噛み砕いた。コワイ。
砕かれたアタマを見るとリンゴみたくシャリシャリしている。
実だったのね。なんか美味そうだな。
『巨狼の牙☆3』健在だ。かなりの攻撃力。
装備は牙だが爪の方もちゃんと強化されてるようだ。
ダメージは同じくらいか?
だけど砕きたいなら噛みつき攻撃の方が有利だろう。
切断なら逆に爪で引っ掻きかな?
残ってるのは俺が『吸血』中のガジガジ草1体。
さっさと投げで仕留めて次に行くか。




