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錬金堂繁盛記  作者: 三津屋ケン
132/652

132 元気だしなさい

10/7更新2つめです。

挿絵(By みてみん)

 

『巨狼変化』には度肝を抜かれたな。

 陰鬱だった空気がだいぶ薄らいだ。シロには感謝だ。


 薬研(やげん)の方の試運転は諦め、ひとっ風呂あびてカンオケ部屋に戻ってきたのだが。


「遅いですよ?」


 なんで当然のようにココで寝てるんだ? イズミさんや。


「もう、このベッドでしか寝られないカラダにされてしまったのです。仕方ないのです」


 さも俺がしちゃったかのように言ってるんじゃありません。


 ステータス低下中だから『義務』は自粛、と決めただろ?

 風邪引いたときはおとなしくするものだ。デスペナもそんな感じだろうと思ったのだが。


「して貰わないと目がさえて眠れないのです。逆効果ですよ?」


 イズミも引かない。

 デスペナルティ中だとは思えない元気振りだ。俺が気にしすぎてるのか?


「じゃ、軽くだけな」


 イズミはうなずいたが起き上がろうとはしない。

 悪戯っぽい笑みで俺を見上げている。


 仕方ないので覆いかぶさる形で首筋に顔を寄せた。


「思い切り吸ってください。

 ペナルティごと吸い取っちゃう感じで」


 下から腕を回してくる。

 コロンでも振ってるのだろうか、柑橘系の香りが包み込んでくる。


 う、積極的じゃないか。


 最初は嫌がってたはずなんだが。

 だんだん慣れてきた、というか楽しくなってきたようだな。


 まぁ、俺だって吸いたくないワケじゃないんだ。

 イズミは可愛いし血は天上の甘露だ。だからこそだ。


 一度、前のめりになってしまえば止まらない自覚がある。

 そしてこの行為はギリギリのライン上だ。

 顔を寄せる場所を少しずらすだけで、俺は永久追放、アカBANなのだ。


 だから隠しなさい。その無防備で甘そうな唇とか。

 とんでもない危険物だよ。

 



 うふふ、わたしの勝利です。


『義務』はなによりも優先するのです。

 デスペナルティ? そんなのポイで。


 今夜のマスターは優しかったです。優し過ぎるほどです。


 気にしてますね? わたしの死に戻りを。お見通しですよ?

 意外とね、抱え込んじゃうタイプなんですよね。マスター。

 きっと『俺が弱いせいだー』とか悩んでたに違いないのです。

 まったく世話が焼けますねぇ。


「もっとね、一緒にやりましょうよ」


『義務』を終えて起き上がろうとするマスター。

 その腕を引っ張って寝かせます。ええい、乗っかっちゃえ!


挿絵(By みてみん)


「イズミ?」


 怪訝な顔のマスターをグッと覗き込みます。うふ。近いですね。

「調合も戦闘も、もっと一緒にできると思うんです。

 薬草とキノコ、みじん切りなら自信ありますよ?」


 ズルいですよ? ミライナさんとばかり。

 わたしも混ぜなさい。


「中ボス戦だって、もっとわたし達をアテにしてくださいな。

守ってくれるのは嬉しいですけど、やっぱり一緒に戦いたいです」

「だけどダメージがな……」

「反撃できないくらいボコボコにしちゃえばいいんですよ。皆で」


 反撃できないくらいボコボコに、か。

 簡単に言ってくれるな、ウチの眷族ちゃんは。


「お強いマスターならこれくらい楽勝ですよ?」


 信頼が重いね。

 ……やれやれ。前向きに考えてみるか。

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