127 血の味
10/6更新3つめです。
126・127・128話 同時更新します。
3話同時更新その2です。
順番ご注意ください。
俺は馬鹿だ。
なんとかなるとタカをくくっていた。
オオカミとの連戦の末、現れた餓狼のボスはLV15だった。
そこで逃げるべきだった。
愚かにも俺は戦闘にふみきり、あっという間に追い込まれた。
さらに愚かだったのはイズミ達がこれで逃げると思っていたコトだ。
あいつが、瀕死の仲間をおいて背中を見せるワケがないのに。
「『ロック・ウォール』!」
迫る餓狼ボスと地に伏せる俺。俺は瀕死だった。
その間を魔法の防護壁が遮る。
しかしボスの体当たりはそれを一発で粉々にした。
次の防護壁は、イズミの背中だった。
「はやく『再生』を」
俺を庇うイズミ。
その小さな背中に、巨大な爪が振り下ろされた。
視界が紅く染まった。
あいつの、血の味がした。
「……隠しスキル『悪鬼羅刹』の発動条件達成を確認しました。
発動します」
戦闘勝利のインフォが聞こえる。
LVアップした。ドロップ品も得た。
うるさい。うるさい。黙れ。
イズミが死んだんだぞ。
ファンファーレなんか鳴らすな。黙れ。
「わう……」
違う、お前に言ったんじゃ無いんだ。
すまなそうな顔をしないでくれ。
大丈夫だ。ちょっと死に戻っただけだ。迎えに行けばいい。
戦闘で倒れたプレイヤーは最後のログアウト地点で復帰する。
それだけだ。そう、それだけなんだ。
身体が重い。
だけど早く行かないと。あいつが待ってる場所に……。
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どこだ?
イズミはNPCだ。NPCが死んだらどうなる。
あいつはログアウトなんてしたことがない。
ずっとココにいる。
あいつはD&C世界の住人なんだ。
ココがあいつのリアルだ。
リアルで死んだらどうなる?
ヤメロ。考えるな。
リアルで死んだらそれっきりとか。
考えるな。足を動かせ。町へ、店に帰ろう。
きっと店に居るはずだ。
居ないはずがない。あそこがあいつの家だ。
いつも通りのジト目で、俺たちの帰りを待ってるはずなんだ。




