119 お買い物
自業自得自爆の転売屋氏はとりあえず放置で。
俺たちは連れだって町中に向かった。
来たのは商店街。
まずオーブントースターを見に金物屋?だ。
品揃えは完全に家電量販店なんだよな。
金物の守備範囲広すぎだろ。
「ムムムムム。悩みますねぇ」
「わうううう」
陳列棚の前でイズミとシロが唸っている。シロは乗っかってるだけだが。
シンプルなトースターから最新オーブンレンジまで価格も性能も多種多彩だ。
「コレが欲しいんだろ?」
イズミが値札を見ては眉を寄せる商品がある。
石窯スチームオーブン最新型。
「それ……、いいんですけど。お高いんですよ?」
「わうん?」
「ご褒美なんだから豪華な方がいいだろう?
すいませーん。コレください」
「えッ、ちょッ、銀貨200枚ですよ!?」
ノープロブレム。こういうのは勢いが大事なのだ。
「お前がそれ以上に美味いモノを作れば解決だ。頼むぞ?」
「ううう。まぁ、セイゼイ頑張らせてもらいますよ?」
セリフは不満げだが口元が緩んでいる。
かなり喜んでるな。ツンデレめ。
イイ道具はそれだけでテンションを上げてくれるのだ。
安い安い。
配達はまた黒猫獣人宅配便にお任せした。
タイアップご苦労様です!
「次はシロの番だな。とびきりの骨ガムとかどうだ?」
「わうッ!!」
いいお返事です。
よしよし、今日はガンガン行くぞ!
さて、次はペットショップ。
商店街のハズレにあるのを見つけた。
可愛いペット用品、と見せかけて従魔用の武器防具なんかも並んでいる。
実は従魔を使役するサモナーやテイマー向けのお店なのだ。
知らなかったぜ。
「イロイロあるんだが装備は間に合ってるんだよなぁ」
「巨狼シリーズで揃える予定ですしね」
「わんッ」
『巨狼の牙』装備でシロの攻撃力は大きく向上した。
ここで売ってる最高級品にも引けは取るまい。
シリーズフルコンプでボーナスも期待できるしな。
「やっぱり骨ガムかな。けっこう種類があるな」
「シロ。どれがいいですか?」
「わう?」
イズミがシロを抱きかかえた。
商品の並んだワゴンに寄ってシロ自ら選ばせてみる。
「ウゥゥゥ……。ワウッ!」
身を乗り出したシロがとある包みを咥え上げた。
それがいいのか?
『ドラゴン骨ガム☆1』
強そう。
前に雑貨屋で買ったのはオモチャ以上の効果はなかったが。
「『ドラゴンの骨と皮を配合した究極の骨ガム。
極めて美味。噛み続けるコトでSTR向上の可能性あり。
従魔専用』と書いてますね。
『鑑定』しても同じです」
ホントにドラゴン入りだった。
こりゃとびきりだ。
アゴを鍛える効果まであるらしい。
出来れば俺も噛みたいぞ。
「シロ、ナイスチョイスだ。
大いに噛みまくるがいい!」
「わうッ!!」
ここは防具屋。
ファンタジーの定番必須のお店。
なんと俺たち、入るの初めてである。
装備買ったこと無いのだ。
「食材屋さんは常連なんですけどねぇ」
RPGプレイヤーとしてはイロイロ間違ってる気もするな。
しかし仕方ないのだ。豊かな食生活が優先であるからして。
うむ。サッチーのことは笑えんな。スマン。
して、なんでまたその縁遠い防具屋さんに来てるのか。
昨日の餓狼ボス戦で、防御力不足を指摘する声が上がったのだ。
「中ボスとはいえ、一撃死しかねないのは問題です」
特にイズミ。
シロは『巨狼の毛皮』ゲットしたから保留で。
「だけどメイド装備は外したくないのです」
というメイド愛を尊重しつつ防御力アップを図る。
最初の装備に愛着を感じるその心意気や良し。やってみるか。
メイン装備を替えずに、となるとアクセサリーの追加だな。
店員さんに商品を見せて貰いながら、アレコレ検討する。
…………今できるのはココまでか。あんまり選択肢が無い。
『護りの帽子☆1』と『護りのネックレス☆1』。
それぞれ物理防御を増す魔法が掛かっている。バリアー系だな。
冒険初期の装備だけあって、そう強力なアイテムではないが。
「相乗効果には期待できます。
マスター、ありがとうございます」
気に入って頂けたようだ。
うむ。よく似合ってるぞ?




