113 決着
10/2更新2つめです。
「グルアアアッ!」
「おっと、危ない」
よしよし、だんだん分かってきたぞ。
コイツのリズムというか優先順位というか。
前の時はアッサリ舌を掴んでしまったから観察する時間がなかった。やっと掴めてきた。
あの鋭い前爪による必殺技も前振りがある。ほれきた。
ススッ。ピンッ。
接近戦から身を捻る一瞬引くような挙動。
アレは回避にあらず、実はタメ動作なのだ。
逃げると見せかけた前脚の爪には全身のバネから恐るべきパワーが注がれ溜められてる。
しょっぱな、それを知らずに追った俺は一撃で瀕死まで追い込まれたのだが。
直撃だけ避けながら何度も観察した。
タイミングも爪撃の角度も覚えた。
『見切り』スキル舐めるなよ。
俺は間合いに踏み込んだ。
ボス狼は逃げるような仕草で身を捻った。アレが来る!
その初動、前脚の内側に俺は身を滑り込ませた。
加速する寸前の爪を左手で押さえる。
右手は前脚付け根の裏。破壊力と同調、すり足で踏み込む。
『空気投げ』!
ふわッ!
「! ぎゃうんッ!?」
支点の移動した爪撃の威力は、そのままボス狼の巨体を宙に舞わせた。
『空気投げ』は相手の勢いとタイミングにダメージを依存する。
ズズンッ。
タイミングを見切った力業は格好のカモだ。
「ハハハ‼ まだまだぁッ!! 何度でも投げるぞッ。
『怪力』!!」
乗用車ほどもある巨体がブンッと宙に舞いドオンッと落下する。
何度も、何度も。
なんか手品でも見てるみたいだ。RPGなんだけど。
ダウン状態なのかボス狼はヘロヘロだ。
そしてヒジカタはなんと、その巨大なアゴに右腕を突っ込んだ。
うわッ、大丈夫か?
「よしッ、掴んだ。イズミ!!」
ヒジカタの叫びにイズミちゃんが呼応する。
「無力化しました!
魔法は腹部を、物理は背中側から首筋を狙ってください!
起き上がろうとしたらすぐ退避を!」
魔法防壁を解除して詠唱を始める。
サッチーもそれに続く。
「ワウッ」
「お、おうッ」
シロが牙を剥いて駆けだした。
慌てて俺も追いかける。は、速い!?
「ゴ、ゴアッ!?」
「おとなしくしろってッ」
舌を掴まれてボス狼がジタバタ暴れている。
空いた片手でヒジカタが鼻面を殴りまくっていた。
えーと、動物虐待?
「ガワウッ!!」
「『ロック・シュート』!」
「く、くらえッ! 『スラッシュ』!!」
「う、『ウィンド・カッター』!」
横倒しの巨体に、牙が剣が魔法が襲いかかる。
総掛かりの全力攻撃だ。
アーツの乗った剣を思い切り振りおろす。
「ゴアアアアアッ!?」
暴れるボス狼の巨体、牙、爪、怖すぎる。
はやく、早く沈んでくれーッ!?
「終わったーッ」
「はぁーッ。緊張したわー」
戦闘勝利のインフォと同時に体験版カップルがへたり込んでいる。
お疲れさん。楽しかったろ?
そしてドロップしたのは?
『巨狼の毛皮☆3』
よーしッ狙い通り!
見事巨狼シリーズ第2弾をゲットした。
「わわうッ」
シロも大興奮だ。シッポを振りまくってるな。
さっそく装備だ。
『巨狼の毛皮☆3』は赤みを帯びたモフモフファーだ。
シロの背中に置くと光って一瞬で消えた。
牙の時と同じだな。
シロの見た目に変化は無いが。
ステータスで確認すると装備欄にちゃんと追加されている。
撫でてみると……。
おおッ、フワッフワッ!
それに毛並みが深くなったような気がするな。
手触りはさらに柔らかく、より手が沈み込む感じがする。
モフモフ感がアップしたようだ。
「ますますフワフワなモフモフに。
これはミライナさん大歓喜?」
「きゃーッ♡ シロちゃんフワッフワッ!」
「柔軟剤のCMみたいだな」
防御力アップはモチロンだが『モフモフ』スキルにプラス修正もありそうだ。
触っただけでかなり気持ちイイぞ。
これは第3弾も検証せざるを得まい。
牙、毛皮の次はなんだ?




