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錬金堂繁盛記  作者: 三津屋ケン
108/652

108 焼肉パーティ

9/29更新2つめです。

挿絵(By みてみん)


 夕暮れの帰り道はなんだかフワフワしてますね。

 夢の中みたいです。夢なんですけど。


「さっきの交渉みてて思ったんだけど、このゲームって案外ややこしいんだな。

 単純にYESかNOの選択肢だけでOKだと思ってたよ」


 トージョさんが首をかしげてます。 


「基本それでOKですよ?

 マスターは自分でややこしくしてますので」

「えッ? 俺のせい?」


 いきなり呼ばれてマスターが驚いてます。

 なにを今更。


「勝手に気を回してヘンな条件付けするからイベントNPCが困っているのですよ。

 デフォルトの対応が使えませんから。

 そのつど個別のAIが独自に判断して対応してくれてます」

「えーと。つまり台本通りじゃなく、アドリブで話をしてくれてる。ってことか? みんな」

「よく言えばそうです」

「それでいいじゃないか。人間同士ってそんなもんだろ」

「そうかもしれませんが。

 きっとサーバーでは負担が増してますよ?」


 まぁAIは経験積めてるので損ではないですけど。


「そうなるとイズミちゃんのAIは相当優秀なのねぇ。

 全部アドリブ」

「マスターがやらかしてくれるので。

 ツッコミが追いつきません」

「無理してツッコまなくていいぞ?」


 ナニを言いますか。主人にツッコむのは眷族の義務ですよ?


「例えばミライナさんをからかうと、真っ赤になってワタワタするじゃないですか」

「ああ。アレ、凄いカワイイな」


 はい。とても可愛いです。ゾクゾクします。


「あの状態もAIの活性化です。

 デフォルトの反応ではなく、思考して独自の選択肢を探っている状態です。

 その繰り返しでAIは成長します」

「なるほど。つまり、これからもガンガンからかうべきだと」


 本人が聞いてたら怒られそうですね。可愛いですけど。


「誰だよミライナさんて」

「NPCのヒト?」

「俺の錬金術の先生。そんでうちの店の生産主任だ」

「わたしより小さな女の子ですけどね。

 マスターに先生と呼ばれていつもワタワタしてます。

 可愛いメガネっ娘ですよ?」


「また女の子?」

「しかも小さい子をからかうってお前……」


 お二人のマスターを見る目が冷たいです。


「いや、からかうっつってもそんなヘンなコトは」

「そういやお前メガネ萌えだったよな」

「メガネロリ萌え?」

「ナント、マスターにそんな性癖が。危うしミライナさん?」

「無いからッ、そんな性癖!? イズミも乗っかってんじゃない!」


 そういえば、ミライナさん、職員さん、パルミットさん。

 懇意にしてる女性NPCのメガネ率が高いですね。

 これは問題ですよ?


挿絵(By みてみん)


「太らないって!? いくら食べても!?」


 西崎、いやサッチーが荒ぶっている。

 店に戻るなり、イズミがテキパキと用意した焼肉セットにだ。

 2台の七輪に炭を入れ、魔法で着火。網の上で焼ける肉。


 たまらん。


挿絵(By みてみん)


「はい。そういう仕様ですので。味はリアルですよ?」

「そんなの、そんなの最高じゃん!?」


 見ての通り、サッチーはいささか太めである。

 しかし、以前に比べればずいぶんスリムになったのだ。中学時代は凄かった。

 それをココまで持ってきたのは、ひとえに彼女の努力の賜物なのだ。


「リアルで我慢して、こっちでガッツリ食べる。

 ダイエット楽勝だな」

「わたしコッチに永住するわ!?」

「落ち着いてサッチャン!? 俺たち体験版だからッ」

「ユーザー登録だけして、ログインはたまにレンタルのゲームルームからなら安くあがるんじゃね?」


 軽い冒険と美食を楽しむだけのエンジョイプレイなら、時間も短く済むだろうしな。


「する! 登録する! そして食べる!! 焼肉食べ放題よ!!」


 かなり節制してたみたいだからなぁ。

 コッチじゃ遠慮は無用だ。存分に発散するがいい。


挿絵(By みてみん)


「脂の焦げる匂い……。

 美味しいモノは、糖とアブラでできているのよ……」


 焼けたカルビを至福の表情で味わっている。そんなサッチーがしみじみ語っていた。

 お気に召したようで何よりだ。


「糖と言えば白ご飯はいかがですか?」

「最高よイズミちゃん!! 大盛りでお願いします!!」


 彼氏が引き気味だがガン無視だ。

 久しぶりの暴食の前に忘却の彼方である。

 おっと、うかうかしてたらゼンブ持ってかれてしまう。

 俺も食うぞ。


「しかしイズミ、いつの間にレパートリーを増やしたんだ?」

「ミライナさんの孤児院でお呼ばれしまして。

レシピもすぐに出ましたよ」


 なるほど。簡単な料理のレシピなら食べるだけで出るのか。

 焼肉ならタレつけて焼くだけだしな。

 それにしても炭と七輪はいいチョイスだ。


「オムライスといい焼肉といい、イズミは頑張り屋さんだな。偉いぞ」

「なんですか? その子供みたいなホメ方」


 ハハハ、怒るなって。むくれた顔もカワイイぞ?

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