102 森番と奥さん
9/23更新5つめです。
「着いたぞ。ここが目的地だ」
道中エンカウント戦を重ねつつ、俺たちは『叫びの森』の拠点、森番小屋までたどり着いた。4日振りだな。
「へー、ここで採取とかするのか?」
そうだ。モンスターも結構手強いからな。
なかなか楽しいトコロだぞ。
「ふふふ、腕がなるわよー。
唸れッ、私のウインド・カッター!」
「俺も『スラッシュ』覚えたからね。
ガンガン斬りまくるぜッ」
トージョ&サッチ-も戦闘に慣れて楽しくなってきたようだ。
LVアップもしてるしな。
ちなみにトージョが『剣士』で、サッチーは『魔術師』だ。
両方とも純戦闘職だからコツさえ掴めば最初からそこそこ戦えるのだ。
そんなワケで、俺みたく植物コンビにボコボコにされたりしなかった。
ちょっと期待してたんだが。チッ。
「ご夫妻にあいさつしたいですね。マスターはどうです?」
実は俺も相談しておきたいコトがあるのだ。
特に森番さんに。
「じゃあ、お前らはシロと遊んでてくれ。
ブラッシングとかしてるとMPとか回復するから。
はい、ブラシ」
「わうッ!」
『モフモフ』スキルの出番だな。
じっくりモフモフしていたまえ。
「マジか。シロちゃんスゲー便利だな」
「強くて可愛くて便利って最強なんですけど。
持って帰りたい!」
やらんぞ。
我らが錬金堂の大事なマスコット犬であるからして。
「おう、また来たか」
「いらっしゃい」
ノックして入るとお二人が迎えてくれた。
「どうも、また来ました」
「お世話になります」
森番夫妻に挨拶する。
ゆっくりお茶を飲んでたらしい。仲いいな。
オヤジ、相変わらずのマッシブボディ。
STRメチャクチャ高そうだな。斧スキルとか似合いそう。
今日は奥さんがフードを下ろしている。
完全に少女なんですけど。
しかしオヤジより年上だというワケがわかった。
耳がとがっている。なんとエルフだったのだ。
「お前さんがココへ来た、ということはマンドラゴラか」
「はい。それで森の利用料を納めたいと思いまして」
前回、森を歩き回っていて気付いたコトだ。
ここは森と言っても不踏の密林ではない。
細いながらも小道が通っていて、要所の大木には簡単な目印も彫ってある。
マンドラゴラの群生地には刈り込みの跡さえあった。陽当たりを良くするタメだな。
マメに人の手が入っているのだ。
やっているのはオヤジだろう。
「必要ないぞ。世話はしてるが別に私有地でもない」
当のオヤジはあっさり断った。
が、でかい口がニンマリ歪む。
「だが冒険者ギルドと錬金術組合に善意の寄付は大歓迎だ。
オレは頼まれてやってるだけだからな」
ぶっとい腕を組んだままガハハと笑う。話が早いな。
寄付の金額は自由。
物納でもイイというのでマンドラゴラで納めることにした。
まだ品不足らしいから銀貨より貴重だろう。
「来れば前みたいに10個は掘りたいと思ってるんですけど、構いませんか?」
「それぐらいなら構わんさ。
ちゃんと植え直してくれてるならまた増える」
聞くと群生地は他にもいくつかあるらしい。
さすが『叫びの森』。
御神木はさすがにアレだけだそうだが。
10個掘れるとして、そこからギルドと組合に1つずつ。
あと奥さんにも1つ渡すか。不老薬とか面白そうだし。
拠点と森資源の利用料としては適当じゃないかな。
オヤジに渡そうとしても、どうせ受け取ってくれないだろうし。
「助かる。マンドラゴラ採取は危険。
でも耐性スキルを持っているなら安心」
奥さんは嬉しそうだ。
教えてくれたのだが不老薬の研究はオヤジに飲ませるタメらしい。
危険な採取をその当人に頼むしか無いことに葛藤があったそうな。愛だ。
奥さんがエルフだということでイロイロ合点がいったな。
オヤジは逆に筋力極振り系の肉弾派だ。
耳長華奢な奥さんと並ぶと違和感が凄い。
「そこがイイ」
オヤジの寿命をムリヤリ延ばして添い遂げる気マンマンらしい。
是非とも頑張ってください。オヤジ本人は仏頂面だが。
小屋を出る際にイズミが脇をつついてきた。
「愛ですね」
「愛だな」
それ以上はナニも言えない。経験が少ないので。
「応援してあげたいですねッ」
イズミの方は感じ入るモノがあったらしい。えらく鼻息が荒い。
「そうだな。☆の多い奴を回すことにしよう」
「はい。オヤジさんを立派なエルフにしてしまいましょう!!」
そういう話か?
筋肉エルフとか見たくないような……。




