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錬金堂繁盛記  作者: 三津屋ケン
101/651

101 初戦と事情聴取

9/23更新4つめです。

「よーし、さっそく行こうか」


 挨拶を済ませた俺たちは連れだって町を出た。

 向かうは予定通り『叫びの森』だ。


 お二人さんにはハードだろうが、ケアはキチンとするつもりだ。

 到着までにLVアップもさせてやろう。

 ミライナ先生じゃないが促成栽培だ。

 大したもんじゃないけどね。


挿絵(By みてみん)


「きゃーッなんか出たッ!? 花みたいなの出た!?」

「うわッ!? こっちもキノコッ、キノコきたッ!?」


 街道を行くなり出現した植物コンビ。

 体験版カップルは大騒ぎだ。

 うーん、初々しいね。

 そうだよな、最初はビックリだよなぁ。


「シロ、『雄叫び』だ。

 イズミは、にし…、いやサッチーのフォロー頼む」


 イズミがうなずく。

 久しぶりのバトルだ。魔法はナマってないか?


「『ワオーンッ!!』」


 返事代わりに雄叫び発動のシロ。さすが素早いね。

 よし、植物コンビの足が止まった。


「『ロック・ウォール』

 サッチーさん、距離取って!」

「『影縛り』

 トージョ、今のうち攻撃だ!」


 土の壁がガジガジ草を遮り、影乙女の柔腕が紫キノコを拘束する。よし、封じた。


「落ち着いて攻撃だ。大丈夫、いちばん弱い敵だから」

「サッチーさん。呪文唱えて、ロックオンしたら発動です!」


 これ以上は手出し無用だな。

 頑張れ、お嬢と執事。


「こ、この、くらえ!!」

「う、『ウインド・カッター』!?」


 トージョの鉄剣がキノコを吹っ飛ばし、サッチーの魔法がガジガジ草を切断した。おお、攻撃魔法強いな。


「トージョ追撃! それで倒せる!」

「おおお!!」


 大きく振りかぶりつつ疾走。

 ズバッ。鋭い斬撃がキノコを仕留めた。


「や、やったか!?」

「ふー、こわかったぁー」


 二人して一息ついている。

 ご苦労さん。なかなかやるじゃないか。

 よしよし。初戦は快勝だな。

 お、向こうから次の敵がくるな。いいぞ。練習だ。


「ありがとうイズミちゃん! フォローすっごい助かったわ!」

「いえいえ。助け合うのは当然です」


 サッチーがイズミに懐いている。

 指示が的確で具体的だからな。

 初心者にも安心のフォローだった。いい仕事だ。


「それに比べてヒジカタは適当だよな。イケとかビビルナとか」

「失敬な。前衛はそんなもんだよ。お前、ダメージ恐れすぎ」


 敵を引きつけるのも前衛の重要なお仕事だ。

 ダメージ覚悟でまずは突っ込む。

 無謀も戦術のうちなのだ。

 臆せずガンガン行けばイイ。

 傷薬もたんとあるしな。作り損ねた☆1だけど。


「お前自身はどうなんだよ。補助魔法ばかり使ってたけど」

「こう見えて俺は投げキャラなのだよ。もちろん前衛だな」

「その格好で? 生産職かと思ってたぞ」


 まぁ、実際半分くらいそうだけどな。


「お店を構えているので生産職といえばそうですね。

 職業もわたしが商人。マスターが調合師ですから」


 ? そう考えると半分どころじゃ無いな。完全に生産職か。


「土方くん、あなた……」

「土方、お前……」


 二人そろって妙な目つきで俺を見ている。ナンだよ?


「お前、イズミちゃんに『マスター』とか呼ばせてんのか!?」

「ご主人様って意味でしょ!? ヤダッ!? ヘンタイッ!!」


 そこかよ!?

 いや、それはだな。

 ちょ、ヤメテッ、汚物を見る目は!?


挿絵(By みてみん)


「ホント? ホントに土方くんに変なプレイ、強要されてるワケじゃないの?」

「はい。それどころか、マスターは『ご主人様』の呼称を拒否しました」


 容疑者である俺の弁解はすべて却下された。

 いま被害者イズミさんの状況説明が進められている。

 頼むぞイズミさん。俺の潔白を証明してくれ。


挿絵(By みてみん)


「なるほど。ヘンタイ紳士なら絶対食いつくエサなのに」

「ただ、このメイド服をわたしに与えたのはマスターです」

「土方くん?」


 イズミさん!? なぜそれをココで出す?

 容疑が増えちゃう!?


「ハダカ同然で転生したわたしに着せるため、なけなしの所持金をはたいて購入してくれたのです。大事な宝物です」

「ハダカって……。いったいどういう状況で仲間になったの?」

「それは秘密です。ですがわたしは感謝してますよ?」


 そうそう、その通り。

 エネミーだったイズミを、追いかけ回して吸血しまくった挙げ句にムリヤリ眷族にした。とかは絶対に秘密です。

 容疑が増える、というか罪状がグレードアップされてしまいそうだ。


「そもそもマスターはヘタレです。強要などあり得ません」

「たしかに……」

「それもそうねぇ……」


 イズミの供述によって、俺は不起訴を勝ち取った。

 が、なんだろう。この敗北感は。

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