初めての戦い
もはやギャグ要素が少なくなりすぎてすみません。
なびく髪、はためくスカート。
そして、下半身のスースーとした感覚。
それが僕の羞恥心を煽る。
「もう一度聞くけど、女の子になった気分はどうだい?」
「最悪」
顔を赤くしながら僕は答える。
ツーサイドアップに結ばれた髪、フリフリが満載の、白を基調としたミニドレス。それを、男である――いや、今は女になってる――僕が着ている。想像してみるだけで軽い吐き気を催す。
「やっぱり想像した通り可愛いよ」
「ど、どこがだ!」
「いやいや、当たり前でしょ」
笑いながら話すそこの淫獣を今すぐ射殺してやりたい。そう思いながら口を開こうとしたそのとき。
「ワスレンナショタァァァァァ!」
……それ、語尾だったのか。
「とにかく、あいつを倒さなきゃ!」
すっかり忘れていた。
「ショタァァァァァァァァァァ!!」
怪物は叫び声を上げ、僕のほうに突進してきた。
僕に何が出来るのだろうか。
何が……。考えろ。
僕は目をつぶった。
考えろ。
考えろ!
考えろっ!!
そのとき、手に重量感。
何かを目の前に差し出して――瞬間、衝撃が襲う。
それをどうにか踏ん張って耐えて……。
目をゆっくりと開けると、そこには白い半透明な板のような物が浮かんでいて、怪物がそれに殴りかかっていた。
(バリア? 誰が……)
淫獣のほうを向いてみると、そこには何もいない。そして、右手には短いステッキ、その先の宝石のような物は白く光っていた。
(まさか、これが僕の魔法、なのか?)
にわかには信じがたい。けれども……。
(もしそうなら……押し返すことは、できないのか?)
いまは、疑うよりも倒すことだ。
右腕に――右手に持ったステッキに力を込める。
すると、光が強くなっていき――バリアは怪物を弾き飛ばした。
僕は微笑み、目の前にいる怪物のほうに走り、跳ぶ。
普通の人間の限界を遥かに超越した跳躍から、怪物の真上に落下。
真下にバリアを張り、その上に降り立った瞬間、怪物を弾く。
銃声のような音、衝撃。
「どうだ!」
怪物に向かって叫びながら、後ろに飛び、地面に降りる。
しかし。
「ソンナンデヤラレルヨウナアタイジャネェンダショタァァァァァァァァ!!」
反応が遅れる。
怪物が腕を横に振り――虚をついたその攻撃に、僕は簡単に弾き飛ばされる。
近くの瓦礫にぶつかった。衝撃が僕を襲う。
「いっっ……」
とっさのバリアも間に合わなかった。
体全体が痛む。どこか折れているのではないか、というくらい、痛い。
死んでないだけいいのかもしれないが、それでも動ける気がしない。
「フフフフ……コレデタオセルショタ……」
怪物は僕に鋭い眼光を向ける。攻撃しようとしているらしい。
避けようにも、これじゃあ身体が動かない……。
そのとき、脳内に浮かぶイメージ。
ステッキを握り、全身に力をめぐらせる。
そうすると、身体が軽くなったような気がした。気がついたら怪我も治っている。
もしかして、治癒魔法だろうか。とにかく、これで動ける!
怪物が僕に殴りかかり――「バリア!」
僕はバリアを出す。
そのまま、一進一退の攻防。押し負けそうになるが、何とか持ちこたえ……少しだけ右にずれ、バリアを解除した。
急に支えを失ったその巨大な拳は、僕のさっきまでいた場所に突き刺さり、埋まる。
「ヌ、ヌケナイ……ショタ……ッ!」
これで、化け物は動けない。
脳内にまたイメージが浮かぶ。
ああ、わかってるさ!
空中に跳び、そのままステッキを前に構える。
光がステッキの先に集中し――――。
「クリスタル・ホワイト・フラ――ッシュ!!」
いかにもな必殺技名を口走りながら、光線を放った。
「ショ、ショタッ子ヲ――――! ペロペロシタカッタ――――! ショタァァァァァァ!」
そんな(気持ち悪い)遺言を残して、怪物は爆発した。
お、終わったの?
僕は深呼吸して、その焼け跡を見つめる。
そして……。
「ユキくん……いや、魔法少女ユキちゃん! 初陣初勝利おめでとう!」
淫獣が喋った。
そうだ、僕がやったんだ!
喜び、はにかむ。その瞬間、世界が変貌、もとい元に戻った。
体内を微弱な電流が走り抜け、僕は元の制服姿の男子高校生に戻った。唯一つ、ネックレスをつけていたこと以外、変身前と何も変わっていなかった。
ちゃんと男の象徴も元通り。大きくも小さくもなっていない。
よかった……。女子高生になってない……。
僕は安堵した。
バスがエンジンの唸りをとどろかせ、通り過ぎていった。
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「……やられたのか」
その少年は水晶玉を見ていた。
水晶玉には先ほどの戦いの映像が映し出されている。
「忌み子君、覚醒しちゃった。どうしよ」
冗談めかして言う彼の目は、暗く、濁っていた。
「ちっとも、思い出せていないみたいだし」
少年は溜息をつき、笑った。
「ははははは。まあ、しばらくは楽しませてもらおう」
そうして、そのまま彼は意味深な笑みを浮かべながら言った。
「せいぜい楽しませてよね? お兄ちゃん」




