男達
二次会でも女は男達に囲まれていた。
と言うより俺達のグループは男だらけで女は俺の元カノ1人だった。
熱心に話しかけてるのはさっき俺が注意した先輩だった。
サークルでも幅を効かせていた為に他の男達が話せないでいるようだった。俺もその1人だ。
「へーヴォーカルしてたんだ、俺もそうだったよ。」
「どんなジャンルに興味ありましたか?」
女は楽しいようで酒も進んでいた。そして先輩との会話も弾んでいた。
俺はだんだんイライラしてきたしヒヤヒヤもした。この女、先輩としけこむ気じゃないだろうな。
女は斜め隣に座っている。俺はちょっかいをかける感じで女のふくらはぎに俺のふくらはぎを合わせた。
「いい加減落ち着けよ」という意味も込めた。どうにも飲みすぎている様子だったからだ。
俺は女が昔のように動揺するのを待った、俺の知ってるあの恥ずかしいともなんとも言えない表情で下を向くのだとばかり思っていたが、女は表情も変えずに先輩と話している。
少し驚いたが、俺はふくらはぎをそのままにしておいた。お前は俺の元カノなんだよ。
「あーそろそろ終わりだなぁ、オーダーストップ入るし。」
「早いですね。」
「そうだ、これあげるよ。」
先輩は自分の中指に付けていたリングを外すと女の指にはめた。
あれは結構高い奴だ、俺もよく先輩が大事そうにしてるのを見てきた。
おいおい、いいのかよ先輩…。
「いや、これ高そうだし、貰えませんよ。」
女はぶかぶかのリングを外して先輩の指に返そうとした。
「いいんだよ、今日楽しかったし、お礼みたいなもん。」
何度かそう言う会話を繰り返すと、女は諦めたように「じゃあ、頂きます…」と遠慮深そうに自分の親指にそのリングを付けた。
先輩の名残惜しさがそのリングに現れているようだった。
俺はホテルに向かった、女も当たり前のように着いてきたのは言うまでもない。