再会
今日は同窓会の日だ。
「行ってくるよ。」
床に伏せってる嫁に声をかけた、珍しく体調が悪いと言って布団の中に居る。
「ちょっと待って、起きるから。」
嫁はのっそりと体を起こすと玄関まで付いてきた。
「スーツで行くの?」
「ああ、そんなに服も持ってないからな。年下の元後輩達にも舐められなくないし。」
そんなことを笑いながら言ったが嫁の顔は真顔だった。
「じゃあ、行ってくるわ。」
「あなた」
「ん?」
「ちゃんと帰って来てね。」
一瞬言葉が出てこなかった、まるで今生の別れのような言い方をする。
「何言ってるんだ、酒飲むから1泊して帰ってくるって言ったろ。」
「分かったわ、行ってらっしゃい。」
そう言うと、俺が玄関を出る前に身を翻して布団に戻って行った。
なんだかイライラする、女の事がバレた訳でもなかろう。用心はしすぎるほどしてきた。
何が不満なのか、俺には分からなかったが、まぁいい、家を出てしまえば先輩や後輩達の居る騒がしい飲み会が待っている。気を引き締めなくてはならない、なんせ女とも会わなければならないのだから。
会場は幅広い年代の人達で溢れかえっていた。俺はこれからの挨拶回りを考えると少しうんざりしてタバコを吸いに行った。
「久しぶり!」
声がした、あの電話越しのいつもの声だ。
電話とは違いくぐもりがない為、昔の声の記憶がはっきりと蘇った。
「よう、元気そうじゃん。」
弾けるような笑顔で女は寄ってきた、黒のトップスに黒の膝丈スカート、全身黒で決めていたが、明るい性格の女には少しだけその黒い憂いがマッチしていなかった。
「スーツだぁ〜、相変わらず似合うねぇ、ちょホストみたい。」
遠慮ない口を聞く、普段は遠慮しまくってる癖に会話ではざっくり物を言う、そういう所も変わっていなかった。
ニコニコしながら女もタバコを取り出す、1mgのタバコだった、12mgにした時は相当無理をしてたんだろう。またタバコの記憶が蘇る。
顔を合わせると相変わらず俺たちは話をしなかった、どう話していいのか途端に分からなくなる、俺にはそういう不器用な所があった。
それでも女はニコニコしたままタバコを吸い、通りすがる懐かしい顔ぶれに少し高い声を上げて喜んでいた。
しばらくすると着席の知らせがあった。
女は挨拶もしないまま自然と俺から離れていく、俺も自分の席に付いた。
「ねぇ。」
声をかけてきたのは同級の女友達だった。
男勝りで有名で口も悪い女だったが信用は出来た。
「おう、久しぶりだな。」
「あの子、当たり前みたいにアンタの横に居たわね。」
「ああ、そうか?元々付き合ってたからそういうもんじゃないか?」
電話で話を良くしてる事は言わなかった、それは俺の秘事だからだ。
「気を付けなさいよ、アンタもう結婚してるんだからね。」
「分かってるよ、ご忠告どうも。」
会食は滞りなく進んだが、俺の耳には女の声が時々嫌に耳に着いた。




