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レグルスと黒の帝国  作者: 木南 硯
3/6

少年、森へ飛び込む

 レグルスは絵を描くことが趣味であったが、魔法を覚えることも忘れてはいない。レグルスの魔法の習得の速さは、バルタザールの親ばかを抜きにしても彼を大変驚かせた。もちろん、先日教わった描いた絵を動かしてしまう魔法も一日で習得済みだ。それどころか、レグルスはスケッチブックから絵を飛び出させてしまった。魔法によって命を吹き込んでしまったも同然なので、これには流石のバルタザールも手を叩いて喜ぶわけにはいかなかったが。

 この魔法の安易な使用は禁止されてしまったが、実はこっそり練習を重ねているのはバルタザールには内緒である。

 そして今日もレグルスは筆を手にしていた。


「今日はどうしようかな。そうだ、ルータを描いてみよう!」


 ルータは艶やかな白銀の毛皮を持つイタチのような小動物だ。

 この白銀の毛皮とスケッチブックの白を描き分けるのはなかなか難しいように思う。しかし、それはレグルスの腕の見せ所でもあった。

 ルータは嬉しそうに「キィキィ」と鳴くと、レグルスの周りをぐるぐると走り回る。


「そんなに走り回っていたら描けないよ、ルータ」


 マレーのように大人しく止まっていてくれない分、好奇心旺盛なルータを描くのはさらに難しい。後回しにしていたのはそのせいもあった。

 どうやってルータを大人しくさせようか考えあぐねていると、僅かに空いていた扉の隙間から昆虫型の生き物、ヴィズが飛び出してきた。

 ヴィズは昆虫には珍しい細長い口ばしのようなものを持っていて、レグルスの肩を突いては隠れ、突いては隠れを繰り返す。


「どうしたんだい、ヴィズ。そんなに興奮して」


 すると後からゴラノラまで入り込んできた。二匹は追いかけっこをしていたのか、ゴラノラはヴィズの姿を見つけるとすぐさま駆け寄って来る。

 ヴィズもゴラノラに気がついたのか、標的を代え、ゴラノラを突き始めた。ゴラノラも負けじと自らの種子を取り出し投げつける。

 しまいにはルータも参戦してしまい、部屋はてんやわんやで絵を描くどころではなくなってしまった。レグルスもバルタザールから教わった泡の魔法で応戦するが、三匹が素早過ぎてなかなか当たらない。

 ヴィズが窓の近くまで行ったところで気がついたが、部屋の窓が開けっぱなしだ!

 三匹が逃げ出してはいけない、と慌てて閉めようとしたが手遅れだった。


「三匹とも待って!」


 ヴィズが窓から外へ出て行ったのを皮切りに、他の二匹も飛び出して行ってしまった。

 あの調子だと、気付かぬうちにどこか遠くまで行ってしまって三匹とも帰って来られないかもしれない。

 それはいけない、と身支度もそこそこにレグルスも窓から飛び出して行った。




「ヴィズ、ゴラノラ、ルータ! 一体どこまで行ったんだ……」


 家の周りをぐるりと一周して探したが、三匹は見当たらなかった。

 一回家に戻ってバルタザールの力を借りるべきか。そう考えて、玄関に向かおうとしたときだった。

 

「グォォォォォォォォォォォォ!!」


 辺りに地を震わせるような咆哮が響いた。鳥が一斉に羽ばたいていく。森の方だ。もしかしたらあの三匹が絡んでいるのかもしれない。

 レグルスはいてもたってもいられなかった。レグルスは周辺を見渡し、木の枝を見つけた。ないよりはあった方がましだ、と木の枝を拾い上げる。


「僕には魔法だってあるんだ」


 きっと大丈夫だと自分に言い聞かせると、レグルスは咆哮の聞こえた森へ飛び込んで行った。

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