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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

闇夜と少女は茜色の歌と眠る

作者: 酒月沢 杏
掲載日:2017/11/15

少年兵と蒼空《蒼い剣と茜色の歌》につながる響目線の番外編です。出来れば蒼剣を先に読んでいただけるとより、物語を楽しめるかと思います。

 鳴り止まない、目覚まし時計の音に目が覚める。

 重い体を起こして時計を見る。

 6:30、いつもどうりだ。

 早い訳でもなく、寝坊でもない、丁度いい時間だった。

 私は朝食を食べながら、ニュースを見ていた。

 そこに流れるのは若者の自殺関係の話ばかりである。

 それすらもBGMにして朝食を口へ運んでいく。

 こんなニュースを見ていると自分の方が絶対強い、などと思ってしまう。

 どれだけ辛くたって逃げれない人だっているのに。

 朝食を食べ終わると、すぐに準備をして家を出る。

 「いってきます。」

 そんな言葉が誰もいない部屋に無機質に響いた。

 

 

 学校に着く、いつも憂鬱な窓側の席、ここは私の特等席だった。

 一年生の頃から何故かこの席によく当たった。これは運命なのかと自惚れた妄想を頭の片隅に浮かべる。

 「おはよう、響さん。」

 ふと窓の外から視線を外し声の主を探す。彼女は前田優子、このクラスで、いや、この学年の中でトップカーストに君臨するお嬢様だ。

 そんなお嬢様がカースト外の私に話しかけてくるのは決まって危害をくわえてくるのだ。

 「ねぇ、私、今日は彼氏とデートの約束があるのよ。今日の掃除当番、変わってくれないかしら?」

 私の机に手を置き顔を近づけてくる。私に何か要求するときの前田さんの癖だ。

 「だってぇ、響さん、地味だからどうせ遊ぶ予定もましてや付き合ってる人もいないんでしょ?、それに比べて私は友達も多いし彼氏ともラブラブだからさぁ。」

 あぁ、また始まったと心の中でため息をつく。それでも

 「うん、変わる・・・」

 本当は嫌だった。それでも前田さんには逆らえない、机の下で拳を強く握る、この痛みはもはや快感ですらあるかのように私の屈辱と怒りを書き消してくれる。

 「あっ、じゃあ私も変わってもらおっかなー。」

 「私もぉ、お願い響さん」

 前田さんの後ろから次々と配下たちが掃除を押し付けてくる。きっと私が変わるのを狙っていたのだろう。

 私は無言で頷いた。結局私は今日の掃除を一人ですることになった。

 

 放課後私はただ黙々と教室の掃除をしていた。

 こんなことは初めてではない。もう何回もやらされている。これは《いじめ》、そう呼んで然るべきものだろう。少なくても私はそう思っていた。

 掃除を終えて掃除道具をしまって時間を見る。

 今は午後6時半で秋の終わりごろなのもあり外は真っ暗だった。

 「帰るか・・・」

 荷物を持って教室を出る。

 鍵を閉めて歩き出すと廊下に小さな人影が見えた。

 おかしい、こんな時間に子供が学校にいるなんて。その人影は小柄で小学生ぐらいだ。

 なんだか怖くなり私は逃げ出してしまった。

 それからその人影は見えなくなっていた。

 

 

 最近家にいると視線を感じるようになった。

 私はイヤホンを耳に付けて自分だけの世界に飛び込む。

 歌や音楽は好きだった。もともと好きだったけど、いじめられるようになってからは音楽だけが自分を慰めてくれるような気がした。

 いじめられるきっかけは私の夢だった。私は歌を色々な人に聞いてもらって自分の歌で誰かを助けたい、そんな夢を持っていた。

 私には中学生の頃、親友がいた。

 彼女も音楽が好きで仲も結構よかった。

 ある日、親友が合唱コンクールのソロに私を推薦した。

 その時から私は地味であまり目立ってはいなかった。だからこそ、だったのかもしれない。

 皆から見て私の歌や歌声はとても美しかったらしい。そこで先生や他の子からも誉められるようになった。

 問題はそこからだ。他の子というのの中には男子が多く、もちろんとても女子から人気がある人なども友達と一緒に来るわけで、

 「なぁ、お前すごい歌うまいんだよな?、今度俺にも聞かせろよ。」

 などと言ってきた。

 私はあまり男子とか興味なかったからあまり気にしずに「気が向いたらね」と軽く合図をうったりしていた。

 それが周りの女子たちには目に余ったらしい。

 気がつけば学校中に私の悪い噂が広がり、嫌がらせも段々とエスカレートしていった。その時からのリーダーが元私の親友、前田優子だった。

 自分で言うのもなんだが女とは恐ろしい生き物だ。嫉妬は人を変えてしまう。

 この前は私の水筒のお茶が熱湯に刷り変わっていた。あの時は本気で死を覚悟したほどだった。

 私の恨みは消えない。でも、飛ばすことはできた。

 歌に乗せる。私の思いをのせた歌。

 そんな歌は窓の外の虚無へと消えていく。

 こうやって歌っているととても心が楽になるのだ。なんだか歌と一緒にこの思いまでもが形となって出ていっているような感覚になる。

 いつも私が歌うのは、私が小さい頃、今は亡き母がよく私を寝かせるときやあやすときに歌ってくれていた歌だった。

 でも、最後の歌詞だけがいまだに思い出せなかった。

 「寝るか。」

 なんとなく、眠くなったのでベッドに横になる。

 最近独り言が多くなったような気がする。まともな会話をしてないからだろうか。

 そんなことを考えていると少しづつ瞼が重くなっていく。

 そして私の意識は暗闇に消えた。

 

 

 夢を見た。小さい頃の夢だった。

 私は母に抱かれながら歌を聞いていた。

 いつものあの歌、私を元気付けてくれる。でもやっぱり最後の歌詞は聞こえない。

 いつもはここで目が覚める。

 でも今日は違った。ふと意識は今の私の姿に戻り辺りは暗闇に落ちる。

 目の前に誰かがいるのに気づく。

 しかし姿は見えなかった。

 「君にとって。歌とはなんだ?」

 いきなりの質問に少し戸惑った。それでもこの質問には答えなきゃいけない気がした。

 「私の心を形にしたもの。」

 影は続ける。

 「君はどうしたい?、これからのこと。」

 質問の意味が少しわからないがそれでも自然と答えが出てくる。まるで自問自答のようだった。

 「もし、この歌で自分が楽になれるのなら。ずっと歌っていたい。」

 それでも影は「じゃあ」と続ける。

 「もし、君の歌に特別な力があるのだとしたら。信じる?」

 「その特別な力って?」

 「簡単さ、どうして君は歌を歌うと気持ちが楽になってたと思う?」

 自分の疑問が少しずつ確信に近づいているのがわかる。

 「私の、心が具現化しているから?」

 「そのとうり、それが君の力。その歌は君が何を思い、誰に届けるかによって君の思いをその対象に具現化することができる。これでもう、僕の言いたいことわかるよね?」

 まるで自分自身と話しているようにその先がわかる。思い出すように、答え合わせのように口で言葉を紡ぐ。

 「奴等に、私をいじめてきた奴等に復讐をする?」

 「正解、パーフェクトだ赤城響。君のその思いを憎しみの歌にのせて奴等にぶつけてやるんだ。そうすれば奴等には不幸という不幸が訪れて死よりも恐ろしい地獄を見るだろう。」

 何故か知っていたような気がする。

 この力のことも、そこで何かが消えかかる。

 「おっと、もう時間のようだ。目が覚めてしまえばまた僕は眠ってしまう。」

 「最後に一つ聞かせて、貴方は誰なの?」

 世界が白んでいく。

 「そうだね、闇夜とでも呼んでくれるかな?。最後に決めるのは君だ。この力のことを知って君がどんな選択をするのか、楽しみにしてるよ。」

 最後に彼は笑っていたような気がした。

 

 

 目が覚めるといつもの天井だった。

 そしてそれがさっきのが夢だということを何よりも証明していた。

 でも、夢の内容をはっきりと覚えているのはなんだか不思議だった。

 いつもは曖昧で簡単に忘れてしまうのに、今日の夢ははっきりと私の脳裏に焼き付いていた。

 「闇夜・・・、か。」

 彼の言っていることが本当ならば、もしかしたら今の状態を変えられるかもしれない。

 でも、それをしたところで何になるのか。

 所詮は私の醜い復讐だ。

 それが良いことか悪いことかなんて誰が見ても一目瞭然だろう。

 だけど・・・

 「もし、本当に楽になれるのなら。」

 今日は休日、私は耳にイヤホンをさして目をつむった。

 これは大きな問題だ。

 今はあまり考える気分には慣れなかった。

 自分には大きすぎる力とそれにともなう責任が私を押し潰す。

 「わからない。」

 この一言に尽きる。

 だから私はとりあえず自分の世界に逃げる。

 これが良くないことなのはわかっている。結局は現実逃避なのだ。

 それでも、そうしなければ私一人では潰れてしまう。

 だからいつも避けて、ながしてしまう。私はそんな自分が嫌いだった。

 とりあえず力に関しては保留にしておこう。いつか絶対に考えなきゃいけないときが来るだろうから。

 

 

 目が覚めるとそこはずっと続く空の中だった。星一つない夜空はまさに《闇夜》そのものだった。

 「やあ、またあったね。」

 ふと、陽気な声がする。

 振り返るとそこには黒い、深淵のような黒い人影が立っていた。その時何故か私はそれが闇夜と言うのがわかった。

 「まだ、迷ってるんだね。君は何が怖いの?」

 私はうつむくことしか出来なかった。怖い、確かに怖いのだ。

 「人を傷つけてしまうのが。」

 「どうして?、奴等は君のことをたくさん傷つけた、苦しめた。そうだろ?、僕たちがそのお返しをして何が悪いんだい?」

 そのとうりだった。当然の報いだと思う。けど、それを自分でやるとなるとまた別の話だった。

 自分にもその罪が帰ってくるんじゃないかと、それが怖かった。

 「まあ、いいさ。僕には決定権がないんだ。僕には君を真実と未来へ導くことしか出来ない。」

 そこから闇夜は思い出したかのように私にとう。

 「君が歌っている母親の歌の名前、知りたくない?」

 「!!」

 私の頭の中に電撃のような衝撃が走る。そういえば知らなかった。母からは「私の大好きな歌」としか聞いた覚えがなかったから。

 私はその問いにそっと頷く。

 それを知ることで母とのつながりを感じたかったのかもしれない。

 「《茜色の歌》だよ。あの人の夫、君の父親があの人のために作った歌なんだ。」

 父についてはあまり聞いたことがなかった。私が生まれる前に交通事故で死んでしまったらしい。本当にそれだけしか知らなかった。

 でもまさかこんなところで父が出てくるなんて思ってもいなかった。

 「学生時代に送った歌なんだ。ラブレターの代わりなんだ。」

 そこで私は違和感を覚える。おかしい、彼の言葉一つ一つに何か引っ掛かるような気がする。

 「どうして、そんなに家のことについて詳しいの?。貴方は、いったい誰なの?」

 そして闇夜はニヤリと笑う。

 「さぁ、誰だろう。きっといつか知ることができるよ。君が真実に無事たどり着けることを願ってるよ。」

 「まっ、待って・・・!!」

 私は確かに闇夜を知っている。

 しかしそんなこともつかの間世界は光に覆われてしまった。

 

 

 学校に着く。

 目の前にはいつもの前田さん率いるいじめグループだ。なんかしたっけ?と自分の記憶をまさぐる。

 それでも思い当たる節がなかった。

 まったく、月曜日からついてないな。

 「この前は掃除変わってくれてありがと、お陰で助かっちゃった。」

 前田さんは笑顔でそんなことを言う。なんだか嫌な予感がした。

 「でもさー、ゴミ。まだ沢山残ってたんだよねー。」

 後ろの取り巻きがクスクスと嗤っている。おかしい、私は確かに教室はゴミも全部はいて水拭きまでしたはずだ。

 そして周りの女子たちは後ろにあったものをいっきにかけてくる。

 その瞬間私はホコリと紙くずを被った。

 「ほら、いっぱいあるよ?」

 あるものは私を指差して笑い、あるものは軽蔑するような目で私を見る。

 「ちゃんと、片づけてね。ひ・び・き・さん。」

 周りの人々は私を蔑むように笑う。

 ゴミにまみれた私はそっと闇夜に問いかける。

 「本当に、大丈夫?」

 すると闇夜は囁くように答える。

 「君の望むままに、奴等に不幸の歌を。」

 ふと、私は最後の歌詞を思い出す。

 

 『染まる紅は茜色 世界は藍色に広がり 僕らは闇夜に眠る』

 

 私はただ呪いを込めて奴等に歌を紡ぐ。

 急に歌い出した私を気味悪がる奴等の声が聞こえる。

 それでも私は歌うのを止めない。

 次々と血を吐き、倒れていくのが見える。でもそれはまるで映像を見ているかのように私にはとても無機質に見えた。

 自然と笑いがこみ上げてくる。

 しかし、どこかで私が問いかけてくる。

 『これでよかったの?』

 良いわけがない。下手すればこの人たちは死んでしまうのだ。

 じゃあ、そうなれば私はどうなるのか。

 あぁ、簡単なことだ。私が殺したのだから私は人殺しになる。ただそれだけだ。

 醜い、ヒトゴロシ

 『お前はヒトゴロシ、人を殺した犯罪者。』

 吐き気がする。血生臭い匂いが鼻を貫く。

 私はその場から逃げようとする。

 周りからは悲鳴や怒号が聞こえる。

 先生が私の肩を持ち何かを叫んでいる。

 あぁ、もう何も聞こえない。

 

 

 目覚めると真っ赤に染まった空の中にいた。

 「おめでとう。これで君の復讐も、僕の目的も果たされた。」

 そこには20代ぐらいの若い男がこちらを見ながら立っていた。

 「目的?、どう言うこと?」

 「僕が実体化するための条件さ。君の復讐心と力を使って《サラルの目》を開く、それが僕の目的さ。この世界のサラルの目は不安定だからね。こうやって強い力を加えないと開いてくれないんだ。」

 サラルの目?、実体化?、なんのことかさっぱりわからない。

 「僕が誰なのか、まだ思い出せない?。じゃあ思い出させてあげるよ。響はさ、母が、何で死んだか知っている?」

 「確か病気だって・・・」

 「違う、殺されたのさ。僕の友人であり、君の母に恋をしていた。前田誠二にね。」

 前田誠二、私はこの名前を知っている。そう、紛れもなく。私をいじめていたいじめグループのリーダー前田優子の実の父親だ。

 「奴はとんでもない人間だった。僕が死んだとわかると君の母、赤城春野に婚約を申し込んだ。しかも響が生まれて、春野が退院してすぐにだ。その時奴はこう言ったんだ。『前の妻とは別れる、だから俺と結婚してくれ』ってな。」

 少年は顔を歪ませ、続ける。

 「春野は断った。僕と、響がいるから、貴方にはついていけないと。僕のは嬉しかった。でもな、あいつは春野が自分のものにならないとわかると今度は春野に嫌がらせを始めた。奴は自分の親の権力を利用して春野を職場から退職に追い込み。近所に悪い噂を流して引っ越させた。」

 少年は目に涙を浮かべ拳を強く握った。

 「春野は逃げるようにこの街に引っ越した。そこでお前を育てたんだ。けどお前が3歳になるとき、奴に見つかってしまった。」

 彼は苦しそうに語る。

 「春野を見つけた誠二は春野の家に押し入って春野を襲った。その時保育園にいたお前は無事だったが、春野は包丁で腹部を刺されて・・・死んだ。

 そのあと、春野の遺書からお前は親戚の家にかくまってもらった。春野はわかっていたんだ。いつか自分が誠二に見つかり、殺されることをな。」

 どんどん自分の中で崩れていたピースが組合わさっていくのを感じる。

 そうだ、この人は

 「貴方は、赤城雄策。私のお父さんだよね。」

 その言葉に雄策は悲しそうに笑う。

 「あぁ、17年前に死んだ、お前の、赤城響の父親だ。」

 会ったことないはずなのに。何故かこの人のことは、父のことはよく知っている。まるで前世の記憶のように。

 「僕は、春野が殺されてからずっと春野を生き返らせる方法を探してた。そしたらある黒い影、シャドウから聞いたんだ。『サラルの目を開けばそこは死の世界に繋がっていてお前の妻も呼び戻せる』と。だからサラルの目を開くために春野と同じ力を持ってるお前が力を完成させる必要があった。それが不幸の歌なんだ。」

 そんな異次元みたいな話を信じれるはずがない、でもこんな状態では信じるしかなかった。

 「春野が生き返ったら三人で暮らそう、響。僕たちの奪われた時間を取り戻そう。」

 これで本当にいいのか、私にはわからなかった。確かにこれから家族三人で暮らせるなら、それはきっと幸せだろう。

 でも、本当に幸せに暮らせるのか。そもそも母が本当に生き返るのかすらわからない。

 「お父さん、死んだ人は生き返らないんだよ。もしかしたらそのシャドウって人に騙されているのかもしれないんだよ?」

 「もう、これしかないんだよ!!、僕はもう一度春野に会いたい、そのためなら何だってする。たとえこの世界すら犠牲にするとしても。」

 狂ってる。私だって母には会いたい、でもこの世界を犠牲にしてまで会いたいとは思わない。もしそれで会えたとしても母が喜ぶはずもないのだから。

 「ふふふ・・・、ふはははは!。まったく、こいつは傑作だなぁ!!」

 突然の声に耳を向けるとそこには《影》があった。

 「シャ、シャドウ。どういつことだ?サラルの目を開けたら春野が生き返るんだろう?」

 シャドウ、と呼ばれた影はただ嘲笑うように答える。

 「馬鹿かお前、死んだ人間が生き返るわけねぇだろ。お前は利用されてたんだよ、俺たちシャドウのためになぁ!」

 「そ、そんな・・・。じゃあ僕のやって来たことは。」

 雄策はその場に膝をつく。そこにシャドウはまるでとどめをさすようにつげる。

 「実の娘に殺しをさせて苦しめたあげく、世界を混沌におとしめただけだなぁ、本当に、可哀想だねぇ。」

 「あ、あぁ、そんな・・・すまない、すまなかった響・・・。僕は、僕はただ春野に会いたい一心で・・・」

 雄策はその場に崩れる。

 「まあ、これで俺の仲間がこの世界に生まれることが出来るわけだ。」

 気がつくとそこにはまるで開いた目のような形の空間があった。

 その目の前に立っていた影はみるみる形を作っていき、まるで恐怖を駆り立てるような化け物の姿に変わった。

 「俺は《フィア》、恐怖のシャドウ。まずはお前を媒介に町中に俺の恐怖を振り撒いてやる。」

 私は逃げようとするが何故か足が動かない。まるで金縛りにでもあったかのようだ。

 「恐怖の歌でも、歌えばきっとこの街ぐらいはすぐに落ちるだろうな。」

 フィアはジリジリと近づいてくる。

 しかし、私にはどうすることも出来なかった。

 「さぁ、恐怖に落ちろ!!」

 巨大な白い手を私に向かって振り下ろす。

 死を覚悟した。しかし、それはかなわなかった。

 「はぁぁぁ!!」

 私の目の前に白い腕が落ちる。

 「がぁぁぁぁ?!、糞がぁ、お前ぇ!!」

 私はそっと目を開ける。そこには黒い剣を持った同い年ぐらいの少年がいた。

 「あんたが赤城響か?、まあ話はあとだ。とりあえずはこいつを片付ける。」

 彼はスッと剣を構えるとフィアに向かってとんだ。

 「舐めやがってぇ、恐怖のドン底に叩き落としてやる!!」

 フィアが殴る体制に入ったときにはもう本体すら真っ二つに切られ彼は背後に立っていた。

 「地獄で詫びろ、フィア・シャドウ。」

 「んぁ?!」

 するとフィアは力尽きるように光の粒子になって消えた。

 「ふぅ、なんとかなるもんだな。」

 少年は剣を鞘に納め腕で汗をぬぐう。

 「えっと・・・、貴方は?」

 今度は本当に知らない人だった、多分知り合いではないだろうし身内でもないだろう。

 「あぁ、俺はカズハ・ブルーローズ、カズハって呼んでくれ。」

 見た目は日本人だけど名字的に海外の人なのかな?

 「俺は一応君のお母さん、赤城春野さんに君を助けるように頼まれたんだ。」

 「お母さんが?、でもお母さんは死んでいるはずだよ。」

 「あぁ、君のお母さんは時空の狭間に取り残されて意識だけがある状態だったんだ。話がややこしくなるから細かい説明は省くけど、俺は異世界から来てサラルの目を探してたんだけどたまたま迷い混んだ時空の狭間で春野さんにあってそこですべての事情を聞いて君を助けて欲しいと言われてここに来たんだ。」

 「サラルの目を?、というよりサラルの目ってなんなの?」

 「んー、あんまり説明してる時間ないんだ。ここから出るのが先だが、君に選択肢がある。」

 「選択肢?、どういつこと?」

 「この世界は時空の狭間と君の夢が混ざりあって出来ている。だからすぐにこの世界は崩壊して君の目が覚めるだろう。そうすれば君は現実世界でいくつか面倒事に巻き込まれる。確か前田誠二とか言う男に命を狙われることになるだろう。」

 「それって、私が前田優子を殺したから?」

 私が怒りに任せて不幸の歌を彼女たちに歌ったせいで血をはいて倒れるのを見た。多分、あれは死んだのだろうと思う。

 「あぁ、正確にはお前が殺したわけではないからなんとも言えないが、少なくとも前田とか言う男はお前が殺したと思っている。だから俺から二つ選択肢がある。一つはここに残って現実世界で生きて行くか。もう一つは俺と一緒に来て次の世界とかで居場所を探すか。今は細かい疑問や理屈抜きでどうしたいか選んでくれ。」

 私はどうすればいいのだろう多分、ここに残ってもそれこそ不幸しかない。でも、異世界なんて不安しかない。行っても本当に大丈夫なのか、でも

 「ここに残って殺されるくらいなら異世界に逃げる。」

 これでいいんだ。そう思った。

 「わかった。二度と戻れないけど未練は無いな。」

 「ええ、大丈夫。」

 「よし、お前のことは俺が守る。責任持ってな。」

 私はさっきまでお父さんがいた方向に視線を移す。

 「お父さん、お母さん、さよなら。二人とも私のことずっと見ててくれてありがとうね。」

 最後の感謝と別れの言葉、ずっと私の中にいたお父さんとずっと時空の狭間で私を見守ってくれていたお母さんへの出来なかった弔い。

 「さあ、この中に飛び込むぞ。」

 カズハは私の手を引いてサラルの目に向かって走り出す。

 私もそれに続いて走り出す。

 心の中であの歌を歌ってみる。これは二人に向けた眠りの歌。

 ずっと響くその茜色の歌は、本当に届けたい人に届けるための歌だから。

 サラルの目に飛び込むと私の視界は眩い光に包まれた。

どうも、神刃千里です。

さてさて、色々言わなければならないのですがまず、応募作品を書いてる途中でこんなの出してすいません。出したかったんです。て言うか忘れてたんです。

実は本編より先に書いた作品になります。

データファイルの中に眠っててそれをたまたま見つけてしまい、「あ、時間稼ぎにこれだそう」

とか思ったりしましたごめんなさい。

あ、ついさっきも言いましたが僕は今、第六回ネット小説大賞に応募するための作品を書いています。間に合うかどうかは今のところ不明です。

正直かなりヤバイです助けてください。

ところで前言った宣伝についてですが、ツイッターを始めてみました。そちらにも進捗情報などを記載しますのでぜひフォローしてくださいお願いします。リンクも貼れたら貼ります。成功したら下に貼られてるはずです。

では今作について、今回は短編として出してますが前書きでも言ったとおり蒼剣の番外編となっています。出来れば本編も読んでくださいお願いします。(二度目)

今回は時間がなくて誤字脱字チェックが全然出来てないのでかなり見苦しいかと思いますが生暖かい目で見てください。

という訳で今作を読んでくださった皆様、ありがとうございました。これからも頑張りますので見ていただけると嬉しいです。(レビューや感想も・・・)

それでは無事、原稿が書き終わることを祈りつつ・・・

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