第96話敵対と拒絶
「ぅっぐ.....いつつ....まだあったよな」
肩にかけているアイテムポーチに手を突っ込むと翡翠の液体が入った小瓶を取り出す。
口にくわえ器用に蓋を取ると痛みを抑えながら両腕に残る痛々しい痣にかけていった。
痣に染み渡る、すると激しく発光、痣が見る見るうちに消えていった。
「マジで、勘弁してくれ.....ってあれここ」
痛そうに腕を抑えながら、ムー邸に帰ろうと路地裏を出ると......そこはグリモア城の跳ね橋の目の前だった。
しかもタイミング悪く、跳ね橋が降りて、出てきたのは.....
「あれ?.....キリアじゃん、どうしてこの国に?」
先程一方的な戦いを演じたキミヲにレイだった。
(なんで....このタイミングで....)
俺はどうやら、完全に運に見放されているらしい。
自嘲気味にため息を吐くと、天を見上げた。
ニス=グリモア南東3番区画、最高級レストラン『スカイロバ』
その最上階の席につき、注文をし終えたところだった。
「俺達の奢りだ、好きに食べてくれていいからな」
「え、いや私はお金持ってますし.....」
「いいのいいの、友達のご厚意は素直に受け取っとくもんだよ」
「は、はぁ、それではお言葉に甘えて」
いつも元気でうるさいくらいのレイの顔は何故か妙に沈んでいる。
いや、何故かじゃないか.....俺のせいだよな。
「少し俺トイレ行ってくる....」
暗い声音のまま、席を立つレイを見送ると、キミヲが口を開けた。
「すまない、あいつは今、少しショックを受けていてな」
「何かあったんですか?」
知ってるけどな。
「恥ずかしい話、今度隣国と戦争があるんだが、その国の王がこの国に来ててな.......奇襲をかけたら返り討ちにあった」
キミヲも暗い、いつも暗いのだが、それにも増して暗い
あ〜、やりすぎたのかな。
俺も不安げに顔を歪めると、ちょうどレイが戻ってきた。
キリア達の雰囲気が暗い事を察したレイは、キミヲに声をかけていた。
「話したのか?」
「ああ」
二つ返事の即答、その答えに落胆するでもなく黙って頷くと席に腰を下ろした。
「そうか.......なあ、キリア」
「なんでしょうか?」
「人を殺す覚悟、ってなんだと思う?」
殺す覚悟、それは俺がレイに叩きつけた厳しい言葉。
お人好しには特に苦しい答えだ。
だが、それを俺に聞いていいのだろうか?
「人を殺す覚悟.....いきなりなんでそんな事を?」
「俺達をボコボコにして行った奴が最後に俺に言ったんだ、殺す覚悟もない奴が剣なんか振り回すな、ってな」
うーん、人を殺す覚悟なんて言ってないんだけどな、教えてやるか。
「......それは少し勘違いしていますよレイさん」
「?」
「殺す覚悟はとっくにレイさんは持っているんですよ?」
「な、なんでそんな事が」
「レイさんは冒険者じゃないですか、日夜命を奪ってるでしょう?」
「それは、魔物だから.....」
「同じ命な事に変わりはありません、それなのに人は殺せないんですか?」
「い、いやそれは」
「エゴですよ?エゴ、同じ生物は助け、他の生物は殺す」
「いや、俺が聞きたいのは人を殺す覚悟.....」
都合が悪くなったのか聞きたくない真実から目を離したいのか、慌てたように話題をそらそうとする。
けど、逃がすわけない。
「それは貴方が都合よく書き換えてるんじゃないですか?だってその人は言ったんでしょう?殺す覚悟って、多分その人が求めてるのは人を殺す覚悟じゃないと思いますよ」
「じゃあどんな覚悟だって言うんだ」
「エゴを捨てる覚悟.....どんな魔物、人であろうと平等に自分の敵を殺す」
「敵を殺す?」
「ってのが私の考えです、違うかもしれませんけどね」
「.........」
レイが考えるように息を潜め、しばらく静寂が辺りを包み込む、が、しばらくすると人に聞こえるような呼吸をして声を発した。
「すごいなキリアは、たった少しの話でそこまで理解するなんて」
「い、いやぁ、それほどでも」
そりゃあ、出した本人が答え言ってるんだ。
理解し尽くした答え出せるに決まってるだろ。
「ともかくですが、その隣国の王を殺す覚悟をまずつけた方がいいのでは?」
「う......やっぱ無理だ!」
頭の中で何を考えたのか、俺の死に姿でも思い浮かべたのか顔を真っ青にしている。
「そうですね、キミヲさんは何か無いですか?」
「俺か?そうだな.....辻斬りでもして来い」
はは、なんでひどい発想だ。
そんな事すればさっき俺が言った、敵なら誰でも殺す、と言うことに反しているじゃないか。
「はぁ!?ふざけんなよ!!無理に決まってんだろ!?」
「じゃあ、俺と殺し合いでもするか?」
「余計無理だっつーの!?」
「じゃあ.....少しだけ私が相手しましょう...」
「何言ってるんだ、流石にキリアじゃレベル差がありすぎて無理だって」
「じゃあ、やってみましょうか?」
「いや、でも傷つけたら....」
「やれ、レイ」
身を引こうと、友達思いなレイは万が一キリアを傷つける事を考え、やめようとするが、キミヲがレイの耳にそっと口を近づけた。
「受けろ、実力を図るチャンスだ」
「うっ、確かにそうなんだが....」
「グズグズするな....さっさと立て!」
「へ?ここでやるのか!?」
「場所などどこでもいい、行け!」
「うぐっ!.....分かったよ!!やぁ!!」
俺が既に戦う体制であることを理解すると、一気に剣を抜き一閃、横薙ぎに切り裂く一撃が振り抜かれる、その時。
キリアの姿が霞み、異常な速度でレイに接近、そのままレイの手元を払い、剣を落とすと。
「あっ.....いっつ!?」
その無防備な額にデコピンを打ち付けた。
「とまあ、こんな感じですね」
「お前、そんな強さがあったのに、隠してたのか!?」
「いや、これは強さじゃありません、技術です、私は生まれつきステータスが低くて、それでも冒険者になりたくて」
悔しそうに顔を隠し、自分の手を見つめる。
まるで辛いことがあったように......何も無いんだけどね。
その事を察したレイとキミヲは息を飲んだ。
「ただひたすらに相手の攻撃を躱して、躱して、躱して、隙を狙う技術だけを習得したんです、そのおかげで、相手の攻撃を躱す事は出来ますが、ステータスの低さのせいで人も魔物も殺せないのです」
とまあ、全て嘘だが。
それでも信じたんだろう、マジで凄く険しい顔をしている。
「人も魔物も殺せない?.....じゃあもしキリアが、人を殺せる力があったら?」
「殺しますよ」
冷淡にただ当然のように答えた。
レイもキミヲも少しぞっとした目で見ていたが、全く心外だ、当然の事なのに。
「レイさんはどんな思いで魔物を殺してるんですか?」
「へ?....どんな思いって....」
「魔物にだって家族はいます、自我があるものだっています、実際私の旅の仲間には魔物がいますしね」
「仲間に...魔物!?」
「それは....大丈夫なのか?」
「安心して下さい、とても頼れる仲間ですよ.....で?どんな思いで魔物を殺してるんですか?」
「い、や俺は.....あっ...違う、そんな訳....」
考えてみて、レイは頭を抑え始めた。
そんな事ない、と言い訳するように頭を振る。
だから俺が優しく告げてあげた。
「無心だったでしょ?」
どれ程自分の奪った命に対して無関心であるか、自分はどれ程のことをしてしまったのか。
無心であると言う事は何も考えず命を奪ったということになる。
「ほら出来てるじゃないですか、これで隣国の王も殺せますね」
「聞くな.....」
運ばれて来た料理を横目に、そっとキミヲはレイの耳を塞ぎキリアの顔を見た、だがその顔に迷惑だという感じはない、逆にありがたいといった感情がこもっていた。
「すまないが、今日は一度帰らせてもらう......明後日の午後9時頃もう一度話をしないか」
「ええ喜んで.....さようなら」
にこやかに笑って送り出した俺を見て、今度は気味悪そうに眉をひそめた。
どうして俺はあんな態度をとり、自分の正体がバレかけるような事をしてしまったんだろうか?
ただひたすらにそんな思考が頭の中を渦巻いて行く。
レストランを出て1人、月に照らされ、夜道を歩きながら物思いに耽っていた。
どうしてあの時、レイの心を砕いた時、あんなにスッキリしたんだろうか?
前から、確かにレイの事は気に入らない....いや、ほっとけなかった。
レイという人間を一言で表すなら善人。
どんな人にも優しく、人殺しを一番嫌う。
だから見てられなかった、絶対にいつかレイは俺と同じ運命をたどる。
確実にそそのかされ、人生を壊され、奪われる。
まあ、これも勝手な決めつけ、もしかしたら、レイならその火の粉を振り払う事も出来たのかもしれない。
それでも万が一があるなら、教えておいて損はないだろう。
今の内に、出来るだけ早く俺が気付けなかった事を叩き込まないと......
(あーあ、それにしても敵の戦力に塩を送るなんて......完全に俺馬鹿だよな......)
「ふぅ.....」
吐いた息は白く冷たい、軽く手を擦り合わせながら、空を見上げる。
不気味な程綺麗な円を描いている月。
「そういえば、師匠どうしたかな......」
数分後家路に着いた俺は、一等地を抜けムー邸のドアを開けた。
「ただいま」
「お帰りなさい、ユウキさん」
引きつった笑顔で出迎えてくれたのは、カノン。
そして....その隣から出て来たのは見覚えのある顔。
「お帰りユウキ!!!会いたかったぞおぉぉぉお!!!!」
「グエッ!.....」
カノンの横から三段跳びをしてユウキの腹にダイブ、奇天烈な行動と叫び声を発しながら、飛びつき玄関に押し倒した。
「し、師匠....なんでここに....」
ユウキの胸板に目一杯頬擦りをしながら強く強く抱きしめる。
背中がミシと言ったが、絶対聞き間違いじゃない。
「ちょっ、離せ!!」
「会いたかった!!会いたかったぞおぉぉお!!!」
無理矢理手を突き出し、師匠の頬を押すも全く離れる気配がない、なんて馬鹿力。
「もういいや、このままで」
抜け出せた手で思い切り地面を叩き、反動で体を立ち上がらせると、体に師匠を抱きつかせたままリビングへ。
ギョッとした視線がユウキを包み込むが、至って冷静なユウキは席に腰を下ろすと。
「さあ、なんでも質問してくれ!!」
キリッとした顔で、そう告げると、フィリアナも師匠の反対側に抱きついた後、女子陣から罵倒と蔑んだ声がユウキを包み込んだ。
一頻り罵倒され終わったので、ようやく話が出来そうだ。
「まずこっちはフィリアナ、俺のー」
「妻です♪」
「「「え?」」」
「お前は余計な事を言うな!!」
「ちなみに私がユウキの愛人だ!」
「お前はもっと黙ってろ!!」
「しかも妻公認のな!!」
「黙ってろって言っただろうが!!」
この2人の変わらなさに、頭痛がしてくる。
軽く眉間を手で押さえながら、もう一度、今度こそ自己紹介をーだが、その前にまた宥めなければいけなさそうだ。
「........」
カノンがニッコリと頬を笑ませながら、体が震え上がるほどの殺意をこちらに向けていた。
(はぁ.....夜ベットの中で話せばいいか......なんか卑猥に聞こえる.....)
「フィリアナは妻じゃない、実の妹だ、そしてこっちは魔女さん、昔の俺の師匠だ」
「魔女?と言うのか?名前は?」
「すまないねぇ、魔女にとって真名はとても大事なものなんだ、教えるわけにゃいかないねぇ....知りたいなら詮索するのも自由だが......殺さなくてはいけなくなってしまう」
魔女は手を頭に当て、キザなポーズをとりゴブリンを一瞥。
それだけの動作なのに、ゴブリンはビクッと肩を揺らした。
「はいはい、師匠凄んでないで、さっさと説明してくんない?なんでここが分かったの?」
「んあ?探知魔法使っただけさ」
「あー、あれか....それで」
探知魔法、妙に納得してしまった。
魔女の使う探知魔法には会ったことのある人の下までの足掛かりを知らせてくれる。
となると、俺に近づくために最も大きい足掛かりは、寝床、それ以外なかったわけだ。
「ま、そこでその赤髪のお嬢ちゃんに会ってね、いきなり、敵、とか言って斬りかかってくるもんだから、軽く無力化させてもらったよ」
敵、あー勘違いしてしまったのか。
一応この国で俺は敵対国の王、その寝床を知ったニス=グリモアが、ユウキに送った刺客、とかそんな勘違いをしたんだろう。
「すまない、カノンがー」
「いや、謝るのは私の方なんだ」
「ん?なんかしでかしたのか?」
「いや、あのな.....なかなか綺麗な顔してるからさ、無力化ついでに体を弄ったんだ、いやぁ、そしたら泣いちゃって.....」
「な、ななな何を言ってるんですか!?今すぐその口を閉じて下さい!!」
「あはは、なかなかいい体だったよ、胸も私ほど、とまでは言わないが、中くらいまでー」
「黙って下さいぃぃぃい!!」
憤慨したカノンが即座に二対の剣、精霊剣焔、精霊剣氷、を抜き取り振り回す。
「ははははは!!傷物にして悪かったな!!!」
「黙ってぇぇえ!!ーひゃっ!?どこ触って!?」
それを余裕の表情で逃げながら、躱し、隙あらばセクハラする、なんて奴だ。
「ったく、話が進まない.....」
「はっはっはぁー!!なかなかいい太ももだ!!」
「ひゃぁぁぁあ!!」
今度はカノンの足にしがみつき、手をスカートの中に突っ込むと、そのまま太ももに向けて口を開けていた。
馬鹿なのかな?はぁ......
「没収するか?」
その言葉が、聞こえた瞬間、既にそこに魔女の姿は無く、隣の席についていた。
「さぁ!話を進めよう!!ーいたっ!?」
真顔でそう言った、魔女の頭を軽く引っ叩いた。
「なんだよ!!絶対に渡さないぞ!!!私のコレクションを奪う権利は誰にも無いんだからな!?!」
「俺にはあるんだよ!!馬鹿師匠!!」
「なんだとこの野郎!!」
「師匠のコレクションって、俺から奪った下着、ガッ!?あ.....」
意識が飛んだ、確実に。
頭に鈍い衝撃が響き、体が既に動かない。
朦朧とした意識の中に見た最後の景色は、腐れ師匠の勝ち誇った笑みー
「ふぅ.....はっはっは!!師匠の大事なものを奪おうとするからだ!!恥を知るがいい!!」
そんな高笑いをして勝ち誇る魔女、その一連の流れを見ていたフィリアナは軽く苦笑すると、すぐに向き直った。
「すいませんね、うちの馬鹿師匠が、騒がしくて」
「ええ、全く」
こういう時少しは否定するものだが、帰ってきたのは肯定、本当に恥ずかしいから師匠なんて連れて来なければよかった。
「あの、ユウキさんの妹さん?」
「フィリアナと呼んで下さい」
「そうですか.....フィリアナさん、貴方達は何しにここに来たんですか?」
チラリと横目でユウキの意識のない顔を見た後、一呼吸置いて、口を開いた。
「貴方達が本当にお兄ちゃんの仲間としていいのか確かめに来ました」
声音も、目も、本当にガチのガチ。
確かめに来たというより、ユウキを守りに来たようにさえ見える。
「私は、お兄ちゃんを悲しませたくない、二度と失いたくない、この気持ち分かるかな?」
「はい.....私は分かります」
おずおずと手を挙げたのはエミリー。
エミリーは人体実験により親友を失っている。
少しでも共感することができたのだろう。
「お兄ちゃんはさ、昔から皆を守って、自分ばっかり傷ついて.....どんな辛い事も一人で背負いこんで、騙されて、裏切られて、地位も名誉も、全て奪われて.....それなのに私達を守って......私はもう休んだっていいと思ってる」
先程ユウキに抱きつき笑顔を振りまいていた子にはどうにも見えない。
その顔から感じ取れるのは、ただ後悔、愁い、そんな下向きな感情。
「お兄ちゃんは、死んで、生き返って、ようやく不幸のしがらみが消えたのに、今度こそ幸せになれるはずだったのに、なのに、なの...に」
ついには堪えきれなかったのか、涙が溢れていた。
「どうして....どうして、お兄ちゃんはまた苦しい道を行くんですか?.....どうして復讐なんて....幸せに生きて欲しいのに......だから私はー」
涙をぐっと堪え、溢れた涙を拭うと、今度はキリッとした視線で、エミリー達を睨みつけた。
「貴方達との関係を切ってみせる、昔の、優しくて楽しかった、あの日々のお兄ちゃんを取り戻す、絶対に....」
「そそ、だから今日来た理由は、挨拶でも、自己紹介でも無いんだわ」
いつのまにか魔女もフィリアナの後ろについていた。
つまりこの人も、妹の意見に賛成派なんだろう。
「貴方達に敵対宣言をしに来ました」
「ま、まって下さい!そんな取り合うみたいじゃなくお互い平和に!.....分かり合えるはずです!!」
「平和?何を言ってるの?そんなもの無い、もう次は騙されない、絶対に」
エミリーの言葉も、あり得るわけがない、と切り捨てる。
絶対なる孤独、信じるのはあの悲劇を味わった本人と知っている者のみ。
「分かり合えるわけが無いんですよ」
エミリーの耳元でそっと囁くと、そのまま通り過ぎて行く。
玄関の扉を開けた時、振り返ると。
「しばらくは、お兄ちゃんをよろしくお願いします」
華麗に一礼をした。
♯
ユウキの妹の敵対宣言を受けた夜。
カノンはその発言を全く気にも止めていなかった。
今自分にとって大事なのは、この気絶したユウキをどうするか、という事のみ。
それ以外考える余地などないのだ。
「う〜ん.....」
自分の部屋の机の前で軽く伸びをすると、後ろをちらりと流し見た。
(まだ....寝てますね.....これなら.....)
上の服を脱ぎ捨て、今履いているスカートのチャックを下ろす。
今カノンは完全に下着姿。
完全に完治して、傷一つない綺麗な柔肌が露わになる。
(本当にこれで?.......)
机の上の本、それはミナが出版した『男の心理丸裸』と、まあなんとも言えない題名の本だ。
題名はともかくとして、内容は知らない事ばかり。
他にも男を落とすテクニック、恋愛必勝法、などなど。
その中にある『外道だが、絶対に男を手に入れる方法』というものがある、今その作戦を起こす状況にピッタリなのだ。
(えーと......既成事実?.....つまり子供を作れば良いんですよね?........)
本を読み返しながら、内容を思い出す。
(.......ん〜こんな事....ユウキさんがしてくれるかな?......)
だが、ここは期待するしか無い!
下着を全て脱ぎ去り、意を決したカノンは、気絶しているユウキのベットの中に入り込み、ユウキの腕に抱きついた。
(これで....いいんだよね?....朝起きたら、ふふ♪....ユウキさんと......)
そんな期待を胸に、瞼を閉じた。
朝、太陽が昇り燦々と降り注ぐ光がカノンの部屋を照らしていた。
朝起きたカノンはまず隣を確認、誰もいない、そして自分の体を見るが触れられた形跡もなし、寝たままの体制だった。
そして机の上にはユウキが書いたと思われる紙が。
ぐちゃり、と力一杯握りしめ、そのまま力を抜いた。
髪が床に落ちたのを尻目に、呆然としたまま服を着て、下の階に降りると、キッチンの椅子の上に腰を下ろす。
エミリーと軽く挨拶を交わし、天井を見上げると。
「ねえ、エミリーちゃん」
「なんですか?」
「私って魅力ないのかなぁ?......グスッ.....」
「え?そんな事は.....ちょっ!?なんで泣いてるんですか!!?何があったんですか!!?」
結局何も起きなかった、ただカノンはこれを機にエミリーと言う仲間が出来た。




