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復讐するため今日も生きていく  作者: ゆづにゃん
第九章壊れた信頼 本当の思い
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第91話戦争の発端

風竜、禍々しい口からは暴風を放ち、その体から放たれるのは威圧ではなく、暴風を常に体に纏い風圧を放っている。

その数ある物語にも取り上げられている有名なAランクの魔物風竜、Aランク冒険者といえど早々勝てる相手ではなく、人々からすれば恐怖の対象とされている。

その魔物の死骸が今、建設中の国の真ん中を荷台に乗せられ運ばれていた、その周りには20を超える純白の鎧を纏った騎士達の姿が。

その騎士たちの中一人だけ赤き鎧をした髭面の男の姿が。

その男はイラつき混じりに言った。


「まだ着かぬのか、この国の王の居所まで」


「す、すいません、もう少しでタワーが見えますので、その一階にて晩餐の用意と王がいらっしゃりますゆえ」


「全く無駄に我らを消耗させおって......」


偉そうにそう嘆息し、けだるい体を引き締めた。


タワーの目の前大きな扉に塞がれている黒きタワー。

その扉を赤き鎧の男は手で押し、力ずくで開けた。

中はクリスタル型の光源で照らされ、真ん中には大量の食事と席が設けられている。

扉の入り口の前には少し背丈があっていないタキシードのようなものを着る白髪の少年の姿が。


「どうぞ、よくお越し下さりました!騎士様方!食事の準備はしておりますので、どうぞお座りください」


上の者を称えるような一礼に、当たり前だとばかりに赤き騎士は鼻を鳴らし、建前上しっかりとした作法で貴族の出であることを証明するように言葉を選ぶ。


「これはどうもこの国の王よ、我らが来るという察しの良さ大変助かる、我等はニス=グリモアの騎士団である、この度近くに出来た国を視察しに参った次第だ」


「そうですか、問題の話は後にしてまずは食事をお楽しみください」


そう言いながら、口元をニヤリと歪めて、哀れに笑うのだ。


騎士団達のために宴会を開いてから1時間は過ぎた。

騎士団達は、酒を飲み漁り、用意した机や椅子を破壊、食事を持ってきた女に言い寄っている始末、さらに一番偉いであろう赤き騎士も国の話に来る気配もない、もう既にユウキはなめきられているのだ。

その状況を二階から見下ろしたカノンは近くの席に座っているユウキを見る。

暇そうに、何かを待っているようにいつの間にか復活していたゴブリンの紅茶をすすり、美味しそうにほほを緩めていた。


「なんであいつらに調子乗らせているんですか?」


珍しく少し怒り声で尋ねてきたカノンに視線を向けると、耳がキュウッと縮こまっていた、これは怒っている、すぐに判断をしたユウキは騎士団を下手に殺されないように理由を説明した。


「これでいいんだよ、今のこの国はまだ小さい、そして戦力的にもまだまだ、もし隣国と争った場合は勝てるかもしれないが、他の国も敵に回るのは良くない、だからあいつらが調子に乗って問題起こすのを待つんだよ。そうすれば大義名分ができるだろ?」


「主様は結構ゲスいのぉ」


いつのまにかいた、リンがひどいことを言ってくる、全くもって心外で当然の方法だと思うが。


「これくらいやんないと国の王様は務まらないよ.......ほら、噂をすればなんとやら問題起こしそうだぞ」


下の階から強烈な怒号と、悲鳴が聞こえて来た。

早速大義名分ができそうだ。


笑いそうな口を無理矢理抑えて、下に向かえば、確かにそこは酷いことになっていた。


「この女!!我等に何をするのだ!!」


それは、酒を注いでいた女が包丁で相手の手を斬りつけたようだ、ほんの少しだけ血が垂れている。


「ふざけないでください!!何が騎士団ですか!!私の友達に暴力を振るって!!」


その隣には顔を腫らした女性が横たわっていた、見るも絶えない、後で治して、お金を渡さなくては。


「我々はグリモア騎士団!!正義の為に日夜尽くしているのだ!!女で鬱憤を晴らして何が悪い!!おい、この国の主も何か言え!!」


もう確実に自分たちの方が上だと、勘違いをしているようだ、最初の頃の敬語は既にない。

酒を飲んで素が出たのか?

普通ならここで引くのが良い、争いを産まなくて済むが、今俺が望んでるのは争いを起こす事。


「何を言っているのでしょう?お前らが悪いに決まっているだろ」


少し妙な威圧と殺意が入ってしまったようだ。


「なっ......」


グリモア騎士団、団員達は少し後ろにたたらを踏んだが騎士団長はふんっ、と鼻を鳴らした。


「まあ良い、興ざめだ。今回は帰らせてもらうとしよう、だが!」


騎士団長がそう言うと他の兵士達がカノンとリンの腕を掴んだ。


「こいつらは貰って行くぞ、疲弊した兵士達の良い薬になるだろうからな」


騎士団長のその言葉に他の兵士達は下卑た笑みを浮かべる。

こいつらは俺が了承すると思ったのだろう、何せまだ発展途中の国、他の国の人間に恩を売ってなんぼだ。

さらにこのユウキの卑屈な態度がへたれだと思わせてしまったのだろう。

そんな全ての予想を裏切って。


「殺すぞ?」


ただ一言そう告げた、殺意をみなぎらせ確実に殺すと.......だがそれでも侮り、余裕を見せるように笑った。


「何を言っている、お前ごときが我々を殺すだと?ふっ笑わせる!我々はAランク、Bランク、冒険者で構成された団だぞ、お前とは格が違うのだ!この国を1日で落とすことも可能だ!」


自慢するように、大声で、皆に聞こえるように叫ぶ、それに団員達も自慢げだ。


「カノン、リン、やれ」


その言葉を聞くとカノンとリンは一斉に動いた。


「何を!ぐはっ!?」


リンはそのまま相手の頭を掴み、床に叩きつける。

床が割れ頭がめり込む、少しは手加減というものを知ってほしい、後で直さなくてはいけなくなってしまった。


「あっ、すいません、生かしておいた方が良かったですか?」


カノンはリンの行動を見てやってしまった、と言う顔をしている。

カノンの目の前には精霊剣によって貫かれた団員数名。

先ほどの怒りが残っていたのだろう、すいませんと謝りつつもすっきりとした顔をしていた。


「貴様!!!!よくもっ!!!!」


死んだ団員を見て怒り狂った団長がカノンに向けて背中の大剣に手を伸ばした、俺はその間にすっと割り込み団長の顔を鷲掴みにした。


「ガッ!!?」


変な声を出し顔をつかむ俺の手を両手で握り、引きはがそうと力をかけるがまったくの無意味、ピクリとも動くことはない。

そんな哀れな団長様に語り掛けた。


「これ以上グリモアの騎士様の失態を見せつける前に尻尾を巻いて逃げろよ、今なら見逃してやる、どうする?」


「グアッ!!...分かった、撤退する、だからこの手を離せ!!」


団長の言う通りに手を放してやると、床に膝から崩れ落ちた。


「ゲホッ、ゲホッ!.....はぁ、騎士達よ撤退だ、荷物をまとめろ」


騎士団員にそう命じて荷物をまとめさせ出口に集まらせる。


「覚えておけよ、必ず我等の国がお前達の国を滅ぼす......いや戦争だ!!必ず貴様達のこの行いを報告しここを我等の奴国(どこく)に変えてやろう!」


そんな捨て台詞を吐いて、国に帰ろうとした時......


「その言葉が聞きたかった!.....」


それだけ言うと、地面に手を置き、転移魔法を起動する。

地面から黒い靄が浮かび上がり団員たちの体を飲み込んでいく、そのことに団員たちは冷静を欠き始める。


「直接送ってやるよ、代わりにちゃんと報告しろよお前らの王様に.....明日のお昼頃に俺が直々に行ってやるから、その事も伝えとけ」


転移されるその時国の上に武装された赤竜の群れが飛んでいたように見えたが、赤き鎧の騎士は勘違いだと、いつの間にかついた自分の国で首を振った。



ニス=グリモア、天高くそびえ立つ城は最も大きく建造された城だといわれており、それ程までに自分たちは偉いと主張をしているのだとされていた。


「貴様達は何をやっているのだ!!」


王、トライ=クノースは騎士団のリーダー赤鎧ことスー=クライアルを思い切り怒鳴りつけた。

城の最上階に存在する王の自室から怒りごえが響く。


「貴様らの仕事は風竜の討伐!誰が国に喧嘩を売りに行けと言った!?今がどれだけ深刻な状況か理解しておるのか!!今我等はバレイヤ王国と戦争中なのだぞ!?いくら休戦中とはいえ直ぐそばのミスト平原まで攻め込まれているのだ!!そんな状況かまた他国と戦争だと!?巫山戯るな!!」


怒涛の怒り声とど正論、だがスー=クライスも貴族の端くれあそこまで侮辱されて引きさがれるわけもない。


「だからこそでございます!!あの国はまだ出来たばかり民家もまだ作り途中、国というにはまだまだ.......ですが人員だけは多かったのです!!」


「つまり、何を言いたい?」


「王の首だけを取り、奴国にしてしまいましょう!!残った奴らは奴隷として死地に送りましょう!!」


奴国、つまり国民全てが戦争で勝った国の奴隷に成り下がり敗国は人権を奪われると言う事。

確かにクライアルの言う事も頷ける、だがこれは賭けではないのか?もしその国に攻めの最中、休戦を破りバレイヤが攻め立ててきたら、この国は終わりだ。


(むぅ、だが確かに一理あるか?.....人間を道具のように扱えるのは確かにいい戦力と言える......)


例えば、体に爆薬を巻きつけ敵軍に突っ込む、死ぬ確率90パーセント以上の危険な潜入任務に行かせる事も可能だ。


「うむ.....貴殿の意見よく分かった検討しておこう」


「ありがとうございます!明日その国の王がこの国に来ますので、どうかその場でご決断を!」


「ああ......分かった」


一礼をして立ち去るクライアルを見送ると、クノースは頭を悩ませた。



「貴様は何をしてくれておるんじゃ!?」


タワー3階赤竜達がいる前でリンはユウキの服を掴み振り回していた。


「分かっておるのか!?この状態で戦争をするという事がどれだけ危険な....」


「勝てばいいんだろ?」


「そういうことではないわぁ!?」


分かっていないユウキをさらに振り回し挙げ句の果てに投げ飛ばした。


「はあっ!?....いったいなぁ、普通そこまでするか!?」


小柄な少女に投げ飛ばされ腰をつきながら異論を唱えると、ピシリと指先をユウキの眼球すれすれに向けた。


「今、愛の国から解放されてようやく落ち着いて来たというのに、理解しておるのか!?いきなり戦争などといって付いてくるようなバカはいない!!最悪国内で反乱が起きるぞ!!」


ユウキの首を今にも締め出しそうなリンに、オークと妖狐が冷や汗を流しながら止めに入る。


「ま、まあまあリンちゃんその辺で...」


「一旦落ち着くのですよ....」


オークと妖狐が全く今の状況に危機感を覚えていないことに、さらにリンは怒りをあらわにする。


「これが落ち着いていられるか!!分かっておるのか!もし!もし反乱が起きた場合、収める事が今のユウキにはできない!」


「へ?え、でもユウキさんが負けるなんてことは......」


本当に不思議そうにわかっていない奴らばかり、リンは怒りを超えて逆に冷静になってきた。


「そういう事ではない、この国が終わるという事じゃ」


「この国が終わる?」


「例えばじゃ、戦争をするとして反乱が起きた、だがそれをユウキは抑えられぬ、いくら愛の国を解放した恩人だとしても記憶にないものが半数じゃからな、だから反乱が収められなくてそいつらを殺したとしよう......そんな王に誰がついていく?.....わかるかつまり今この状況は崖っぷちなんじゃよ」


確かにその通りだ、つまりこの国は戦争関係なしに終わりを迎えるという事。

その事実にオークや妖狐、カノンまでもが絶句したが。

ユウキはどこ吹く風でぼんやりとしていた。


「分かっておるのか!?この国が終わるんじゃぞ!?そもそもー」


「うるさいなぁ、つまり国民全てを納得させればいいんだろ?そんなの簡単だろこう言えばいいー」


次、ユウキが発した言葉に全員が絶句を通り越して呆れてしまった。

つまりそれは完全勝利をする、負ける要素がないといっている事と同じなのだから。



タワー1階、階段を上がった半ばにあるフロントから見えるのは大量に集いざわざわと何があったのかと、心配そうな人の声。


「なんかあったのか?いきなり集まれなんて?.....」


マルドレイが分からなそうに頬をかいていると、前の名料理店、店長が声に反応して後ろに振り返った。


「んあ?....国の王としての話だとよ......にしてもなぁ、まさかあんちゃんが救世主だったとわなぁ......全く気づかなかったぜ.........」


「あ?あんたキリアにあったことあんのか?」


「おう、俺の恩人だぜ」


「へぇ、そうか....やっぱりな、あいつはすげぇ奴だからな」


自慢げに鼻を鳴らすと、フロントに黒い大柄の男が現れた。


「静粛に!!今から、この国の王!!キリア=オーガスト様がお見えになるぞ!!!!」


黒い大柄の男ことゴブリンが滑舌良く、民衆に響き渡る声を発すると、その隣を悠然たる態度で抜けて来た一人の少年の姿が。

白き髪をなびかせる、紫水晶の瞳を瞬かせると、まず頭を深く下げた。


「此度は皆さん集まってくれたこと大変ありがたく思います」


その言い方礼儀正しさに感嘆の思いが皆によぎる。

だが次の行動にそれは誤解だと思い知った。


「お忙しい中集まってくれた事大変嬉しく......あー!めんどくさい!!辞めだ辞め!!」


リンから渡された紙を破り捨て、ばら撒いた。

その光景にリンは青筋を立ててをワナワナと手を動かしている。


「俺はこの国の王キリア=オーガスト、今日なんで集まってもらったかというと、近国と戦争する事になった!それを伝えるために集まってもらった!!」


その言葉に皆が絶句し、あたりは静まり返るがすぐに反論が出た。

ギャアギャアと喚き立て、色々な食器、石それと暴言が投げかけられる。

その石を真っ向から動じる事なく当たっている姿に、暴言にいくら罵られようとも何もしないで黙って受ける姿に、カノンは怒り、裏方から飛び出して庇おうと動いたが。

それを手で制したのは胸女。


「少し黙って見てなさい.....」


「ですが.....」


「少しは信じてあげたらどう?貴方の愛した男を.....」


「.........」


カノンがニースの言葉に息を呑み、黙って見守る覚悟を決めると、今度は妖狐が口を開いた。


「え?....なんでゴブリンが?」


批判中傷が飛び回る中、ユウキの斜め前に立ち


「黙れ!!王の御前であるぞ!!」


一喝。

それだけで皆黙り込んだ。


「え.....ゴブリンってそんなに信頼が?」


「私達が来る前からずっといたわよ?その時から周囲の信頼も厚かったし......彼何者?」


「何者って.....名前の通りとしか言いようないですね....」


小さい声で妖狐は冷や汗を流していた。

あの色黒色男の正体が魔物ですなんて言えるわけない。


「?」


ニーズが頭にはてなを浮かべているが、そっと目線を逸らしてまたステージを見た。


「その通りだ!皆の言う通り理不尽だと思うよな!国の上の偉い人たちが勝手に戦争始めて、そのくせ大変なのは国民だ!国民は死んでも国は責任も何もとらない!おかしいだと?全くその通りだよ!皆の意見は全く間違ってない!その通りだ!この国で一番偉い国王が保証してやる!間違ってない、正しいと!........」


その言葉に唖然とした、国民達は眉一つ動かさず本当に固まった。

今のその発言は戦争国家を馬鹿にして、さらにこの戦争は理不尽で、おかしいとまで、戦争を始めた本人が言っているのだ。

それはつまり敗北が決定していると言う意味.........一方的に断れない状況で戦争を申し込まれたと言う意味を表しているのだと、思った。

だが、次に発した王の言葉に息が止まった。


「だから、もし国民一人でも死んだ場合俺を殺してくれて構わない.....言ってる意味がわかるか?」


王の言葉の意味を理解したものは本当にこの王に恐怖を、いや狂気を感じた。


「つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だって言ってんだ」


凶悪な顔をした王に皆が絶句している中、王は最後に一言告げると裏方に戻って行った。

王の決意に、狂気にもう何も言えなかった。



最悪最低で国の全ての戦争を馬鹿にし、理不尽だと斬り捨てた演説の様なものをしたその日の夜。

久しぶりに皆で食事をした。


「プッハァ!美味しい、最高です!」


六瓶目の酒に手を伸ばし始めた妖狐、口の中に一気に酒を流し込んで行く。

それを見たユウキは少し怪訝そうな顔をして注意を促した。


「お、おいおい飲み過ぎだろ」


「別にいいんです〜!魔物に年齢は関係ないのですよ〜!」


普段はしないような完全に緩みきった顔でユウキの頬をつねり出す。


(妖狐ちゃんこんな酔い方するんだ......)


「にしてもさっすが王ですね〜、まさかあのニス=グリモアに完封勝利宣言するなんて......まあ、王の力があればそれくらい!ー」


「そんなの無理に決まってんだろ?」


「ちょちょいのちょい......へ?今...なんて?...」


「無理だって言ったんだ、そもそも勝てるわけないだろ.....今のままだと勝率0%あっちに完封勝利されて終わりだ」


さも当然のように言って、軽めのお酒が入ったグラスを手に持つと。


「「はぁ!?」」


すぐ両隣にいた猫と狐が怒り出した。

だが、逆にそれ以外は全く動じる事なく当たり前だと、逆に知らなかったの?と言う目線にさらされる。


「そもそも今我等が挑んでいる国はニス=グリモア.......魔法国家だぞ?歴史は2000年以上と長く、今までどの国にも負けたことの無い無敗国、1982年に起きたグリゴア戦争、グリモア王国とゴア王国の魔法資源の取り合いによる戦争も100人以内の死者数で圧倒的に全て勝っている......」


「え!?そんなの勝ち目ないじゃ無いですか!?」


「そもそも次元が違う相手に挑んでいるのだ、1802年に起きたギリンソウ橋の戦いでも終始一方的な蹂躙をー」


永遠にゴブリンから語られるグリモアの英談、それを聞くだけで本当に格が違う相手だと思い知らされる。


「だからこそ分からんのじゃ、何故その国に戦争をふっかけたのか.....確かにこの国には戦争で勝り領土の拡大、奴国、植民地を手に入れることも大事なことじゃが、だからといっていきなり大物を狙いに行きすぎなんじゃよ、これでは博打と変わらん」


リンの言葉も確かに頷ける、もしかして本当にユウキは博打だけの勝算であんな事を言ったのだろうか?


「へぇ、ゴブリンよく勉強してるんだな.....よく分かってる.....」


「まあ、その為だけにこの国に早めに来たからな......それで?勝算はあるのか?」


「ん?ああ当然.......ゴブリン、ニス=グリモアの1500年から2238年までの戦争の勝ち方知ってるか?」


「え?....ええと、確か超巨大な魔法兵器による魔鉱石による鉱物防壁の発生、絶対なる物理的な防御と魔法的な絶対の防御で国を丸々囲みます、その隙間から出た超電磁魔砲による1000kmにも及ぶ射撃で国を脅し、降参をさせる、他にも軍隊による死霊魔法による擬似的な魔物を作り上げ襲わせる?でしたよね......」


よくもまあ長々と暗記できたものだ、教えてくれたゴブリンに感嘆を覚える。


「え?.....そんなの勝てるわけがない......」


カノンが絶望的な呟きをした直後、バッと扉が開いた。


「持って来ましたよ!王様!.....」


扉から顔を出したの6貴族達、皆手に袋を持っている。

袋の中身は分からないが、一つの袋だけ酒瓶が飛び出している。


「お、ありがとな」


袋を受け取りつつ、中身を見てみればそこには要求した通りのものが大量に入っていた。


「にしてもこんな物何に使うんで?......特にこれなんか....薬物にしか見えないんですけど.....」


怪しげに手渡された紙袋


「ああ、これは明快樹の粉末だな、これが小麦粉の代わりになるんだよ」


怪しく笑いながらアイテムポーチに紙袋を突っ込む、それを見て皆引き攣った顔をしているが、エミリーだけが首を傾げていた。


(明快樹の粉末?.....ホットケーキの材料よね.....何に使うのかしら.....)


「そ、それで何するの?.....まさか...毒殺?....」


若干引き気味にオークにべったりとくっついていたニースが怪訝そうな顔をする。

だがそれを心外だとばかりに手を振り、口角をにやりと吊り上げると、言った。


「グリモアの魔女を口説くんだよ」


その場の女性陣は固まり、オークはまるで仲間を見るような目でユウキを見つめていた。



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