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復讐するため今日も生きていく  作者: ゆづにゃん
第八章反撃開始
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第85話牢獄

「ここはどこじゃ!!?ー」


小山の上、リンは怒り交じりに叫び、強く地団駄を踏んだ。


深く深い森の中、ブルベアの森とは比べようにならないほど空気が重く、腐敗臭が漂っている。

そして陽の光も照らしていないジメジメとした草が地面にびっしりと茂っていた。


「なんでわしはこんな所に!?......」


頭の記憶がしっかりしない中、地面の小山.....というか赤竜30体ほどの瀕死状態の積み重なり、その上でリンは地団駄を踏む。

下の赤竜が苦しそうに呻いているが、リンは御構い無し、気づいてすらいないのかもしれない。


「くっそぅ......場所さえわかれば......」


そこで気がついた、リンは目を輝かせて下の赤竜の一匹を掴み上げる。


『お前は運がいいぞ!』


『!?』


瀕死だった赤竜はいきなり、半殺しにしてきた相手に竜語で話しかけられ、竜の顔が一目で分かるほど驚きに染まった。


『ま、まさか.....あなたは竜!?なのですか!?』


『ほう?.....竜のわりには言葉遣いが分かってるじゃないか』


竜というのは他の魔物とは違い全ての種が戦闘に特化している。

そのため竜という自分にけだかきプライドを持っており、見下したような言葉を放つのだが.....この竜のへりくだった態度、生きようとして相手を刺激しない言葉の選び方。

強くはないがなかなか見所はある。


『いやいやいや、あんなにボコボコにされて生意気な口たたけるわけないでしょ!?』


『そうか?殺される寸前でも生意気な口叩いてぶっ殺された竜を知ってるんじゃが?......』


『それはただの馬鹿ですよ!?一緒にしないで下さい!』


否定を示すように自分の爪を横にふる。

竜語で喋っているとはいえ、なんたる饒舌で感情豊かなことか。

この竜からは人間を連想されられる。


『あの......大変おこがましい事自分でも理解しておりますが質問をさせていただいても?....』


『その前にわしにも質問させてくれ.......ここはどこじゃ?』


『ここ?ですか......ここは無限空間第3層『次元の森』ですけど?』


『なんじゃとっ!?』


無限空間、それは世界最大の迷宮(ダンジョン)永遠に続くとまで言われており、終わりなき冒険と進めば進むほどいずれは絶対なる死を与えてくれる、そんな場所だ。


(私はまだ132階層までクリアしていない迷宮か......)


最高峰の迷宮、魔王や勇者などの強者じゃなくては1階層もクリアできない迷宮。


(どうやって?どうして赤竜如きがこの迷宮に?.......)


この迷宮は赤竜などAランクモンスターがいていい場所ではない、最低でもSランクは必要だ。


『貴様達......どうやってこの迷宮に?』


『え?えーと、俺......僕を筆頭に迷宮に攻め入りました、です.....』


自慢するでもなく、なんとも自信なさげにそう口にする。


『けどもう懲り懲りですよ〜しばらく迷宮には来ません......貴方みたいな怪物がいてはたまったものではないですから』


人には分かりにくい、竜の顔でニコッと優しく微笑んだ。

その竜をリンは訝しみ、危険に感じながらこの竜から感じる違和感をたどる。


(うますぎる言葉、感情表現、そして無限空間に潜るほどの力.......まさか?.....いや確かにあり得ん話ではない.....だが魔物に?...)


分からん、本当に謎すぎるこの魔物。

とにかく、こいつを解剖........研究してみんことには......

その考えに至った時。


「リン様〜どこにいますか〜!」


その聞き覚えのある声に上を見上げてみると、木の枝のあたりをフヨフヨと飛んでいるサキュバスの姿。


「ふむ、今日は黒か....」


その小さな聞き取りづらい声を聞き取ったサキュバスは下を向くと、嬉しそうに顔をほころばせ、無駄に飛行スキルを全開で使い突っ込んで来た。


「リン様ー!!」


抱きつこうと手を広げて体当たりをかまそうとするも、目の前の小さな手で止められた。


「うるさいぞ、サキュバス」


「そんなに嫌がらないでくださいよ〜、最近会えなくて色々と溜まってるんですよ〜」


「そうか、じゃあ久々にこき使ってやるかのぉ」


普通ならいやがるであろう発言になぜかサキュバスは期待の眼差しをリンに向ける。


「今からこの竜たちを全て、いつもの所に送っといてくれ」


「わっかりましたぁ!」


嬉しそうにビシッと敬礼をすると、左手を掲げる。


「テレポート!」


瀕死の竜の束は、下にできた巨大な魔法陣にゆっくりと落ちていく。


『ちょっ!?なんですか!?これ!』


『ああ、貴様は今からユウキのものじゃ.....因みに拒否権はないぞ』


『そんな理不尽な!?そもそもユウキってだ....』


そこまで喚き散らすと、赤竜の姿は完全に魔法陣に消えた。


「で!?次はなんですか!?」


「次はそうじゃなぁ......わしを愛の教団にある家の前まで送ってくれ」


「わっかりましたぁ!キラン!」


なぜか無駄にテンション高く、決めポーズまできめるとリンに向けてテレポートをかける。

足元には魔法陣が浮かび上がり、魔法陣がゆっくりと浮かび上がると、リンの下半身部分を飲み込んでいく。


「悪いんじゃがついでに先程の赤竜達の巣も送っといてくれ、頼んだぞ」


「わっかりましたぁ!ピッキーン!」


上半身も転送されていくなか。

リンは普段真面目で仕事熱心なサキュバスの性格の変わりようと、テンションの上がりようを見て.......


(また発情期が来たのか.....)


「はぁ....」


深いため息を吐いた。



「はあっ!!」


初手いきなり、会話もなしにエミリーの氷塊がリヒトを襲う。

だがそれをリヒトは、片手で槍を1突き、まるで豆腐に刺すように槍が突き刺さるとその先端から風刃が荒れ狂った。


氷塊を砕いたその時リヒトは疾走。


「どこにいった!?」


オークが姿が消えたリヒトに驚いていると、後ろからエミリーの小さな声が聞こえた。

後ろを振り向いてみれば。


「手加減するなんて、笑わせないでほしいよ、君達は誰を相手にしてるのかちゃんと理解した方がいい」


エミリーの小さなその声はリヒトに気絶されられた音だった。


リヒトは躊躇なしにエミリーを落とし、そして殺意を含んだ眼でオーク、ヒースミルを睨む。

その眼にオーク達は戦慄する、まるであの人の.....キリアのような.....復讐対象を見つめるキリアのような瞳をしていたから。


「ヒースミルちゃん!悪いんだけど作戦変更本気で、殺す気で行くよ!!」


「そんなのあの眼を見たらぁわかりますよぉ〜《狙撃・第一・第三・第五射》」


ノームの時にも使った魔法、最後の一発だけが後ろから飛び出てくる、凶悪で殺意が高いあの魔法。


リヒトはその前から迫る第4射の魔法に向けて槍を投げつけた。

真っ直ぐと槍は魔法を砕きながら直進、ヒースミルの足元に突き刺さる。

その隙を逃すか!とばかりにオークが斧を振り上げ、地面を蹴った。


「『肥大化』とりゃぁ!」


巨大化した斧を、横薙ぎに一閃、槍がないため防ぎようがない、と確信していた。

だが、リヒトはなにかを引っ張るようにして、槍を引き寄せる。


「なっ!?」


オークはまるで手の中に吸い込まれるようにして、飛んできた槍に驚きを隠せない。


「そんな簡単に揺動されてたら世話ないよ?」


斧を槍が振り払うと、無防備なオークの腹を手で触り、掌底のようになにかを押し込む、あまりの衝撃に吐き気を覚えたが。


「魔力変換:膨大なる風」


リヒトが何かを口ずさんだその瞬間、まるで何かに腹を殴られたようにして、民家に激突。

土埃が舞うなかオークは口から血を出し、全身に痛みが走り、吐き気を催す。

それでも立ち上がろうとして......出来なかった。

あまりにもリヒトにボコボコにされたから、力を入れることもできない?........違う...まるで何かに押さえつけられているように、身動きが取れない。


「不思議かい?俺の魔力変換はね?設置型で発動した後相手の動きを風で動かせないようにするんだ......本当に暗殺向きだよねぇ?......さて、残りはヒースミルちゃん?だったよね」


「案外甘いのですねぇ〜」


その言葉にリヒトは体を回転させ闇の棘を掴みとると、


「甘いって何が?」


そう口にしながらヒースミルの前で闇の棘を砕いた。

その棘を見て顔には出さないが、多少驚きがあったのだろう。

注意深くリヒトを見つめると。


「......あなたに私では勝てない」


「うん、そうだよ?」


それにあっさりとリヒトは肯定を返す。


「けど時間稼ぎくらいはさせてもらいますよぉ〜?」


「そう?じゃあ俺も少しくらい後輩に稽古をつけてあげようかな?.......《狙撃・第五・第十・第十五射》」


リヒトが使ったのはヒースミルが使った連激魔法、魔法帝国軍隊でしか教えてもらえない魔法。

それだけでも驚きだというのに、その数、魔法が出てくる場所、技術の差、本当に勝ち目はないと教えられた。


「最後の一発だけ後ろから出すのはいい案だと思うけど.....それなら前後左右上下全てから魔法を出せばいいでしょ?」


ヒースミルの周りには上にも下にも右左、囲むように魔法が展開されている。

それを見て冷や汗を流しながら聞いた。


「どうやってこんな所に魔法を展開したのですぅ?」


「魔力変換の応用、魔力を分割して空中に設置、あとは魔法を唱えるだけ.....簡単だろ?」


簡単な訳がない、本当に規格外だ、こんなもの勝ち目があるとすればご主人様くらいなもの.......

魔法を受ける覚悟をした、その時


「我、憎みし者、我、許しがたい者、全てを許可する『牢獄』」


ご主人様の家の屋根の上、そこには金髪なびく少女が手を振りかざし聞いたこともない魔法の詠唱をし終えていた。

その瞬間あたりの色が真っ黒に染まる。

違う.....これは視力を奪われた?いや、視力だけじゃない、手の感覚も、動く事も、思うことも、なにもかもの感覚が黒く塗りつぶされている?

考えも完結しない中、ヒースミルは何も感じない黒へ黒へと染まっていった。


(ふふ.....これが死....案外苦しくない....)


死まで覚悟したその時、世界に光が差し込んだ。


「すまん、貴様は味方だったようじゃ......不許可」


真っ黒い、闇の中光る手が差し込まれる。

その光はすごく眩しく、その手を取りたくて仕方なかった。

闇の中、もがき、もがいて、気力のみでその手に自分のあるかどうかもわからない手を伸ばす。


触れられたのかも分からない、ただゆっくりと体の感覚が戻ってきていることだけは理解できた。


いち早く感覚が戻った目を開ける。

そこには金髪の少女、あまりの美貌に......

そして死の淵に手を差し伸べてくれた。

こんな人は見たことが無い、まるで...


「女神?」


「め、女神?魔法の後遺症で頭をやらかしてしまったのかのぉ?」


「いやいや、流石にそれは失礼ですよ.....」


リンのいいように少し言い返すが、リンは特に気にした風もなく、牢獄に閉じ込め、身動き取れず死んだように倒れ込んでいるリヒトの胸板を触る。


「ふーむ、特に体に異変はない?.....いやこれは.....」


ぶつぶつと何か言いながら、リヒトの体を弄る幼女。

ヒースミルは何が起こったのかオークに説明を求めた。


「彼女はだれですかぁ?それにさっきのはぁ?」


「彼女は、リンちゃんだよ......僕の口から伝えていいか分からないから詳細は本人から聞いて....それとさっきのって?何のこと?」


「ほら、目の前が真っ暗になって、わぁ!ってなる奴ですぅ」


「ん?んん?よくわからないな?」


ヒースミルの見たことを言われてもよく分からないオークは頭を悩ませる。

その会話を聞いていたのか、リヒトの頭を触りながらリンは口を挟んだ。


「さっきのは固有魔法『牢獄』最近作っておいた強敵対策だったのじゃが......まさかリヒトに使うことになるとは......キリアと同じくらいの実力で助かった、そうでなければ牢獄には捕まらんからな....ビンゴっ!」


その時いきなり感極まったように叫んだ。


「やっぱり何か、魔法がかけられていましたか?」


「ああ、これは洗脳、それに魅了、付与がかけられていた、まあこれくらいなら......そいっと...」


左手に回復魔法を展開すると、頭に触れる、そして右手で軽く頭を叩いた。

すると、リヒトの険しい顔がゆっくりと優しくホッとしたような顔に変わっていく。


「まあ、こんなもんじゃろ......不許可....」


リンが呟いた言葉、それと同時にリヒトの周りを包み込んでいた呼吸が重苦しくなる空気が消えた、牢獄を解いたのだろう。


「あとは静かに寝かせておけば、そのうち元に戻るじゃろ......さて、わしは」


ちらっと屋根の上から視線を感じ一瞥してみるも既にそこに姿はない、


「昼寝でもするか....」


そう口にしているものの、リンの頭の中は、今の出来事、どう簡潔にまとめてユウキに伝えるか、そしてどう解決するか、そのことを考えるのに必死だった。



「魅了が解かれましたか.....」


屋根の上から見ていた、ミリアナは手に持っている鏡に声をかける。

ミリアナの魅了それは相手の感情を操り、変化させ続ける、そして命令に逆らう事を出来ぬように感情を操る。

例えば今回の排除対象を憎むようにしたり.....など。


「ふっ、仕方あるまい、今は我らのリヒトが強くなった事を喜ぶとしよう......それより、黒の魔王に見つかったことの方が危険だ」


今ミリアナがいるのは路地裏の奥、リンに見つかり慌てて避難したのだ。


「とりあえず、ミリアナ、貴様は今すぐ帰ってこい」


「了解しました、リヒト様は回収されますか?」


「いや、やめておけ、下手をすれば捕まる」


「そうですか、では黙って帰宅いたします」


愛の教団を飛び出して、テレポートを目指し走り始めたミリアナ、その脇に抱えられた、鏡から男は外の光景を覗き、呟く。


「貴様はいずれ魅了などなしでも我らの元に帰ってくるだろうよ......」


意味深なその言葉は、まるで決まった出来事のように、未来あり得ることのように、聞こえた。



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