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復讐するため今日も生きていく  作者: ゆづにゃん
第八章反撃開始
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第78話各々の戦い

空中に咲く爆発の花。

城の最上階付近、神の間の大窓から眺めていた景色が、全く見えなくなってしまった。


「何が起きている!?」


爆炎から発生した黒い煙が空中に漂い大窓から見える景色を黒く染め上げた。


「こんなもの!窓を壊して仕舞えば!!...」


部屋に飾ってあった装飾過多の斧を抜き取ると、千鳥足で窓に近づき、振り上げた。

その時手がさっと前に差し出される。


「やめておいたほうがいい、これは毒だろうね」


「どっ、毒!?」


毒と聞いて驚きのあまり後ろに尻餅をつく。


「ここまで魔法を飛ばしてきたってことは危ない、今すぐに王の間にリク様(今すぐ玉座の間で踏ん反り返ってろ使えない豚野郎が)」


「ああ、分かった」


シンの本音も知らず、せこせこと扉を開けて逃げて行った。

それにしても、本音を隠すように言葉が丁寧になってしまう。

少し癖のようになっしまっている。

僕のことを知っている奴は言葉が丁寧になると感づいてくるし、気をつけたほうがいいな。


「さて、と....【雹乱】」


長文詠唱ではなく名前詠唱。

氷の粒が何千と後ろに発生する、シンが手を振り降ろすと一斉に多窓に発射された。

たった数秒で窓は元々なかったように綺麗に消え去っていた。

これが人間に襲うと思うと寒気がする。

窓が割れると毒煙が中に入り込んでくるが。


「この程度なら効かないな、【爆風】」


伸ばした右手から円形の入れ物に入った竜巻のようなものがまっすぐと毒煙の中に入ると、一気に入れ物が壊れ爆風を引き起こした。

毒煙は一瞬で霧散する。


「さて、と...【遠覗】.....くくくくく、そういうことか、何故こんなに目立つ真似をしたのかようやく分かった、アキ、メイ出番だ」


アキは怠そうに朝食をやめ後ろの席を立った。


「へーい」


メイは丁寧に食べたお皿をそのままに席を立つと。


「分かりました」


丁寧に言葉を返す。


「アキは北と南どっちがいい?」


「どっちもめんどくせえなぁ.....けど少し先約があるもんでね、翡翠の髪の嬢ちゃんはどっちにいる?」


遠視で確認してみれば、北は赤髪の女に、銀髪の女、両方共獣人だと思われる。南はアキが言っていた翡翠色の髪の女に、子供が1人。


「南にいる」


「じゃあ南で」


「メイは.....ちょっと待ってろ...」


遠視のスキルを使って見て見たが問題の黒の魔王の姿が見えない。

と言うことは.....東にいる、はずだ。

おもむろに後ろの壁を破壊して、遠視。

やはりな。

そこには1人堂々と道の真ん中を歩く黒の魔王の姿。


「メイはやはり東だ.....ちゃんと闇の魔王から黒の魔王を殺すための武器を貰ってきたか?」


「はいちゃんと」


ポケットを軽くたたく、正直勝てるかどうかで言えばもう結果が分かっているがあえて口に出さない。


「で?北は誰が担当するんだ?リーダーか?」


「悪いけど、僕はここであいつを待つよ」


シンの眼に映るのは、城の目の前に続く大通りで国の人間全てに囲まれている少年。

確実に城の目の前に来る、そんな予感がしていた。


「だからさっさと片付けて戻ってきて」


「無茶いうねぇ、けどまあできるだけな」


アキはあくびをしながら窓から飛び降りた。

メイもそれに続き。


「私にはあまり期待しないで下さいね?」


そんな保険のような事を言って、飛び降りた。

シンは割れた窓のところに腰をかけ座り込むと。


「さぁ、君は僕に何を見せてくれるんだ?くくく」


狂人の声が綺麗な青空に吸い込まれて、霧散した。


                    ♯



愛の国南地区第7区画。

交流門大通り、その名の通り他国から来る馬車や商人達が出歩く交流の道、いまやそこには他国の人間はいない、静まり返っていた。

そこに走る影が二つ。


「姉ちゃん、敵いないね」


「それはそうですよ、ユウキさんが一手に引き受けてくれていますから」


いくらユウキが抑えられると言っても流石に限度がある、特にあの国民の量、いつこっちに流れ出してくるか。


「ですが油断はダメですよ、いつ何が起きるか分からない......」


そこまでいった瞬間エミリーの目の前に砂塵が吹き荒れた。

驚きながら足を止め、砂塵を見る。


「そう、ここは戦場だ、何が起きるか分かったもんじゃねえ、けどお前らついてるぜ、俺に殺されるってこたぁ、楽に死ねる」


砂塵から聞こえてくる声、姿形、こいつはあの男だ。

本当に私のところに来た。


「今度は逃げない、私があなたを殺す」


目に灯る意思の光は、とても強く光り輝いている、昨日の姿とはまるで違う。

その事に何故か嬉しさのあまり笑ってしまった。


「っ!はははははは!こりゃあ本当に負けちまうかもしれねえなぁ」


まあ、ありえないな。

手をポキポキと鳴らしながら拳闘の構えを取り。


「さあ、本当の、血で血を洗う殺し合いを始めよう」


                     ♯


愛の国北地区第1区画。

終止門通り、昔は交通門として使われていたが、最近では使わなくなり閉じてしまった門。

その大通りではなんとも物騒な事が起きていた。


城の付近では銃兵達が構え、その目の前にはカノンと妖狐がいた。


「やはりぃ、わたぁしぃのぉ予想どぉーりぃ、別働隊を組んでぇいまぁしたかぁ、ちょと君ぃ」


銃兵隊の1番左側にいる兵士の肩を叩き、その場に敬礼をさせる。


「は、はい、なんでしょう!」


「今すぐぅ西にいる、アビィスナイツに知らせぇなさぁい、東南北に国のぉ人間を回すようにぃ、と」


「分かりました!!行ってまいります!!」


銃兵はオーデンに一礼をすると走り去った。


「さぁ、愛の国にぃ!!立て付く愚かなぁ、者共をぉ、粛清の時ぃ!!」


上半身を後ろにのけぞらせ狂ったようにオーデンは叫ぶ。


「行きますよ、妖狐ちゃん」


「分かったのです、カノンさん」


お互い顔を見合わせると、すぐに敵に向き直り、同時に地面を蹴り上げた。


                    ♯


愛の国に東地区第10区画

別れ門大通り、この先をまっすぐ行けば愛の森、別れの山脈が続いている。

そしてそこの大通りにのど真ん中、金髪の少女が1人堂々と歩く、その姿自体は可愛くとも、なんとも相手を威圧する王者の風格を漂わせている。


「何をコソコソしておる、さっさとでてこんか」


リンの冷ややかな声が大通りに響く。

そしてその相貌は真っ直ぐと路地裏を見つめていた。


「出てこんのか?なら....」


こっちから行く、とでも言うつもりだろうか。

ならば、罠を設置しておけば........そんなメイの思考も、リンの殺気と言葉の前に止められた。


「ぶっ飛ばす」


次の瞬間リンから膨大な魔力が膨れ上がったと思ったその瞬間メイは動いていた。

本能的に、思考を停止してまで、自殺行為とも思えるリンの目の前に飛び出したのだ。

一瞬、私は何をして!?

そう思ったが先程自分がとった行動に心底安堵した。

後ろから爆音が響き、目の前には火の粉が舞っていた。

後ろを見て見ればそこには.....


「嘘....でしょう?」


先程メイが隠れていた場所を始めに、広範囲が焦土と化していた、建物一つ残っていない、瓦礫すらも......

リンの腕には焔が轟々と纏わり付いている、その足元には巨大な奇々怪界な魔法陣が浮かべられていた。

嘘でしょ....この威力...この範囲....まさか.....


「魔術!?」


魔法とは、神秘的な個人の持ち合わせた摩訶不思議な不可解で理解不能な能力。

だが魔術とは独自に開発した陣形を描き、その通りに一定範囲の法則を変更してしまうことを示す。

昔ある天才魔法使いが作り上げた最高傑作魔術【万有の合力】一度かければ重力の本流に流され、体は自由がきかない。

上から重力が襲って来たと思えばいきなり目の前から、後ろから、下から。

見えない衝撃波に翻弄され、体は傷つき、精神も恐怖により破壊される。

この魔術により国が一つ潰れたとも言われている。

この魔術は使用者の展開した、膜の中のみの重力を3倍にし、一定間隔に変更し続ける。

法則の変更方法は、重力は一定に力がかかり続けるものでは無い、として、重力とは力を増すことができる、という自分勝手な法則に変更させた。

だが、こんな暴挙に出れば当然対価を払わなくてはいけない。


その対価は......自身の血液、それと内臓六つの消失。

簡単に言って命を取られた。


若くしてこの天才魔法使い......いや天才魔術師はこの世をたった。


詰まる所魔術とは現実の法則を変え、自分の思い通りの法則に上書きする、神に反逆するような愚かな技術。

魔法とは違い魔術は、論理的に考え込んだ魔法陣を発動させ、その発動に足らないところを代償を支払い、法則を、世界の規律を、捻じ曲げる。


そして目の前のこの魔術、国の4分の1を焦土と化し、しかもタイムラグ無し、速攻発動魔術。

どんなレベルの対価を払うのか......


「知っておったか」


魔法ではなく魔術と言ったこの女をリンは少し警戒する、魔術は公には発表されていないつまりそれほどまでに権力が高いものしかも実力者でなくては知らないのだ。


「無駄な事しましたね、これでは対価を払ってあなたはおしまいです」


勝利を確信した目つき、その時メイの予想通り、黒い靄がリンの周りに現れた。

まるで対価を払え、とばかりに黒い靄がリンに巻きつく。

メイは、これで終わり、と思っていた、初めて見る対価の代償を見てから戻ろうと、黒い靄がリンに触れた、その時。


「"消え失せろ"」


たったその一言で、黒い靄は霧散した。

無に帰った。


「なぁっ!?嘘でしょう!?対価を、代償を消した!?」


対価を消す、という暴挙に暴挙を重ねた、ド暴挙。


「やはり使い勝手が悪いな、わしの一定範囲には爆発的に燃える空気があると、法則を作ったが......大した威力ではないな」


そんな発想が思いつくだけでも恐ろしい、そしてその馬鹿げた威力の魔術を大した威力じゃない?だと。


「や、やはり、あなたは化け物です、黒の魔王」


メイの体はほのかに震えていた、武者震いだとごまかしたいが本能が恐怖している。


「化け物だと分かっておるならさっさとこの場からされ、弱者よ」


「ですが.....やはりあなたは、全盛期の方が強いのでしょう」


「全盛期?年端かもないお主が何を知っておる」


「闇の魔王様に聞きました、昔のあなたは慈悲など与えずただ気に入らないものを壊していた....正真正銘の破壊者」


闇の魔王その名前が出るとこの場に濃密な殺気が漂い始める。


「小娘、お主あやつの手下か」


「そ、そうですよ」


胸を張りそう答えると、リンの笑顔は、消えた。


「そうか........死ね」


国の4分の1を焦土と化した魔術をリンはメイの目の前で発動させる。

焔によって起きた煙が大通り全体を包み込んでいた。



「なんなんだこいつ!」


マトナが悔しげに呟く。

特にやばいのはヒースミルが敵になった事だ。

ヒースミルは魔法の腕は一流、詠唱も半分は省略できる。

俺程ではないが結構な化け物だ、とマトナは考えていた。


(俺が相手するしかないか?....こっちの男はアビィスナイツ1人でも十分だろうが....)


あれだけの魔法を見せられてもなおユウキを舐めてかかるその根性にもはや、呆れを通り過ぎて感心してくる。

マナトは、ならば、と

作戦を伝えようとした時、頭に血が上ったガリアムールが怒号を発した。


「全兵突撃!!!確実にこいつの息の根を止めろ!!」


女、子供など戦いに参加できぬものを抜いた、武術を多少使える武人5万人。

確かに吹けば飛ぶようなたった3人に何ができるというのだろう。

男達や女冒険者がユウキ1人に一斉に襲いかかる。

ユウキも剣ではなく拳を構えるが.....

あたりに響いた音は打撃音でも金属音でもない、響いたのは人間が次々と倒れる音だった。


「何をしているっ!?」


いきなり何人もが地面に倒れたことで前の人間に声をかけるが、分からずただおろおろとしていた。


「わ、分かりません!!ただ、いきなり仲間が地面に倒れて」


「こ、これはっ!?」


ガリアムールが倒れた人間に近づくと近くには粉々にされた指輪が.....まさか、こいつら...


「貴様らぁ!!」


苦々しそうにガリアムールはこちらを睨む。


「ようやく.....発動できたよ、王」


憔悴しきった、オークが家の扉を開けて出てきた。


「2人合わせて2万人は減らしましたよ.....はぁ」


オークとリヒトはある特有のスキルを持っていた。

スキル【罠】一度触れたところに魔法を設置する。

だが発動する場所の数により大量の魔力を消費する。

流石、毎日そこらじゅうの人間の手に触らせまくった効果があった。

流石に3日間寝かせなかったのはやり過ぎたと思ったが......まあ、結果良ければなんとやらだ。


「オーク休んでていいぞ、ここまでやってくれれば十分だ、リヒトにも伝えといてくれ」


魔力欠乏症がひどく顔に出ているオークは軽く頷くと。


「リヒト先輩はもう寝てます、俺も少し....寝させてもらいます.....」


とぼとぼと千鳥足で家に戻っていくオークに声をかけ見送った。


「ああ、ありがとう、しっかり休んでくれ」


その余裕そうな態度が癪に触ったのか、ガリアムールが地団駄を踏んだ。

その時、


「ガリアムール様!!お伝えしたい事が!!」


1人東側から走ってきた兵士がガリアムールに声をかける。


「なんだ!!」


「実は、西だけではなく他の南北東に別働隊がいまして......私達だけでは無理なので国の人間を回すようにと.....オーデン様が」


「なっ!?そんな所に回す余裕など!!.....」


「いいよ、全員連れてきなよ、まだ3万人もいるんだ1万人ずつ連れてけば足りるはずだよ」


マトナが静かに告げる。


「マトナ!....何という判断を!?」


「少し冷静になりなよ」


マトナは底冷えする声で静かに告げた。


「相手はたったの2人アビィスナイツだけで事足りる........ガリアムール、君は少し頭に血が上って冷静な判断が出来ていないよ」


その時ガリアムールは思い出した、自分達の強さを、実力を。

何を怒っていたのだろう、アビィスナイツにかかればこんな男すぐに殺せるだろうに。


「......その通りだ、悪い適切な判断ができていなかった......全軍に告ぐ!!今すぐ南北東に援護に迎え!!」


その言葉で動き出す、国の人間達が一斉に、それを見たマトナは.....


「ノーム、ガリアムール俺に考えがあるんだ、確実に勝つための.....」


剣を抜刀しこちらを警戒しながら口を動かす。


「言ってみろ」


「まず、あの男は誰か1人が相手をする、それはいいんだが問題はヒースミルだ、正直1人では危ういその為2人がかりで取り押さえたいんだけど.....」


その作戦を聞いた瞬間ノームは顔を苦々しく歪め。


「俺が1人でヒースミルと戦う、いや戦わせてくれ!!」


まだ生きる確率の高い方を選んだ。

ノームはマトナがヒースミルに2人、あの男は1人で十分と言った瞬間から既に勝ち目はないと諦めていた。


「作戦があるのか?」


「ああ....一応確かめたい事もあるしな」


一応確かめたいということは本当だ、まあ生存率を上げたいのが半分だが。


「.....分かった信じるよ.....じゃあ俺とガリアムールはあの男だ」


マトナとガリアムールがユウキに体を向けた瞬間、ノームは動いた、ヒースミルの顔に向けて仕込み武器、暗武と呼ばれる特殊ばりを放った、が、


「はは、やっぱりか」


ユウキの手に深々と刺さっていた。

一応全く見えない針なのだが.....ノームは半目で呻く。

ユウキには竜眼があるため人間とは動体視力が違う。

ノームはユウキが体制を崩している間にもう片方の手から暗武の鋼鉄の縄を発射、流石にすぐには防げず、ヒースミルの体に巻きついた。

それを確認した瞬間ノームは鋼鉄の縄に巻きついたヒースミルごと出来るだけユウキの遠くに投げ飛ばした。


(いい判断だな.....)


それは素直に賞賛する。

確かに俺の近くにいるよりも、離れた所でやり合った方が生きる確率が高いだろうからな。

ノームは遠くに飛んだヒースミルを追いかけて1人走っていく。

残されたマトナとガリアムールは俺を警戒しながら。


「俺は絶対にこの国を守ってやる!!」


マトナがそんな正義の味方のような、セリフを吐いて、高く跳躍すると。


「やあぁぁぁぁぁあ!!」


気合いとともに俺に剣を振り下ろした。

この時の立ち位置は確実に物語でいう、マトナ(正義)ユウキ()なのだろう。

だが、正義がどんなに限界を超えようが、正義は最後に絶対に勝つ、そんなお約束だって絶対に無理だ。

だってこの俺の復讐の物語の登場人物に正義の役は1人も存在しないのだから。

眼に映る正義は全てまやかしなのだから.....


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