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復讐するため今日も生きていく  作者: ゆづにゃん
第八章反撃開始
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第77話アビィスナイツ

愛の国には制裁、と呼ばれる儀式がある。

その儀式が始まったのは14年前、愚王制裁事件、その事件は愚王の固有スキルにより甚大な被害をもたらした、その事件以来国に反逆しよう者は一片の慈悲もなく制裁されるのだ。

そもそも制裁という行為は簡単に言えば国の人間全員に武器を持たせ、反逆者を殺す、徹底的に、精神的にも肉体的にも追い詰め無残に殺す。

普通の国の人間ならそんなことに協力しないだろう、だがこの国の人間は全て人形、リクの一声で全て動き出す。

そして今日.....制裁が始まった。


制裁にも統制が取れてなくてはいけない、そのリーダー役がアビィスナイツと呼ばれている4席だ。

その4席はどれもAランク冒険者以上の実力を持っている....とされている。

その為、この国の周りに増えすぎだ魔物を駆逐する役目を負っていて滅多にその4人が集まることはないのはずなのだが.........


「んむ?.....」


「えっ?.....」


「あれぇ?.....」


「なっ?.....」


そんなこの国で最強の4人が後ろに国の人間を集め、まるで運命に惹かれ合うように四方向のクロス道路でばったりと再会してしまった。


「「「「なんでお前らがここにいる(んです)(の)!?」」」」


そんな4人の最悪的な出会いは幸運を呼び込んだのか、はたまた最悪を呼び込んだのかは分からない、ただ後に化け物のの琴線に触れた事だけは確かだろう。


                        ♯


そこには広がっていたリクの追い求めるものが、絶対的な支配、絶対的な数の武力、絶対的な勝利、それは揺るがない。

窓から眺めてみれば、反逆者の家までの道を堂々と歩く4人のアビィスナイツの姿、そしてその後ろを歩く国民全て、誰も彼もが武器を手にしている。


「我の勝利は確実である!」


この状況を見た瞬間リクは確実に敗北はないことを知った。

そしてそれをあえて教えるように、後ろに振り向くと勝利の歓喜に顔を歪めて見せた。


「本当にそう上手くいきますかねぇ、くくく」


後ろにいるシンは笑う、不気味に。

その様子はただ嬉しそうな狂人、何がそんなに嬉しいのか分からないが気分がいいことは確かだろう。


「何が言いたい?」


「おっと、別にリク様の勝利を否定しているわけではないですよ、ただ、貴方の予想の上をいく化け物がいるかもしれないでしょう?」


「何を世迷言を、そのような者いる訳がないだろう......黒の魔王ごときあの4人に滅ぼされるだろうよ」


そう言って全ては自分の思い通りになると世の中を舐めたようなその態度。

リクの失態はまず一つが魔王を甘く見過ぎだ事。

そして二つ目が敵の戦力を甘く見た事だ。


                     ♯


愛の国大通りを国民が綺麗に並び歩いている、その先頭をアビィスナイツ第4席が歩いている。

ある者は怠そうに、ある者は真面目に、ある者は不真面目に、ある者は笑いながら、歩いていた。


「なんでこんな事俺たちが4人が?」


髪もボサボサ、言葉も不真面目、態度が悪いことで有名第4席【傍観】ノーム。


「仕方あるまい、リク様の言うことは絶対なのだ」


ボサボサ頭のノームとは正反対きっちり整えられた髪、この堅物真面目、態度も口調もある意味恐れられている、第2席【堅物】ガリアムール。


「その通りですよぉ、どんなに弱いものいじめでも頑張るのですよ、うぷぷぷぷ」


紫色の髪のショートボブ、性別は女、ほんわかとした喋り方とは裏腹に何もかもを馬鹿にしたような態度、第3席【嘲笑】ヒースミル。

そして最後第1席....


「皆油断はいけないよ、全身全霊をもってしっかりと相手の息の根を止めなきゃ」


この国のアイドル、黄金のような髪、光り輝く歯、キュートなイケメンスマイルで女を虜にする、第1席【栄光】マトナ。


「何言ってるんですぅ?バキュームが」


かっこよく決めていたはずなのにヒースミルが文句を唱える。


「バキューム?何それ」


「女をブラックホールみたいに吸い込むからだろ」


「あはっ、それ言えてる」


「なっ!?お前に言われたくないよ男漁り!」


ヒースミルは可愛い外見で男を惑わし男を捕まえてしまう。

だが手を出したりはしていない、ヒースミルは、だが.....


「それでは私が何かしているみたいじゃないですかぁ、私はただぁ、可愛い男の子やかっこいい男の子を囲い込んで男の子同士で愛し合うのを見るのが好きなだけですよぉ?ふふふ腐腐腐、それに私のほうがぁ、貴方のようにすぐに捨てたりはせず、ずっと面倒を見てますよ?」


「何だとぉ!」


マトナがヒースミルに食って掛かる、ヒースミルはおどけるように笑っていた。

こんな風に全員仲が悪い、それは事実だが仲が悪いと言うよりもお互いを物としか思っていない。

どう利用するか、どう出し抜くか、そして今回はどうやってこいつらよりも先に手を出すか、そして運良くいい男がいれば自分の物にして愛でようとヒースミルはそう考えていた。


「こっこかぁ、普通の家だな、つまんね」


一応城住まいの奴らにはよく分からないだろうが、豪邸と言ってもいい大きさだ、それを普通の家。


「さて.....」


ガリアムールが息を深く吸って吐くと、腹の底まで響く大声で。


「警告!!我等はアビィスナイツ!!今すぐ我々の元に投降せよ!!さもなくばこの国の全てを持ってお前達を無残に殺すであろう!!」


国全てに聞こえるのではないかと言う大声、隣のノームだけが耳を塞いでいる。

響き渡った声、それが静かに消えると場は静寂に支配された。


「出て、来ないね...」


マトナが家を見ながらぽつりと呟く。

大体の奴は逃げたり、もしくは投降してくるというのに、全く逃げる気配も、ましてや投降する気配もない、乗り込んでこいと言った感じだ。

何かがおかしい、そう感じた瞬間。

家のドアが鈍い音と共に開いた。


「入って来いってことだよね?」


「どうすんの?焼き討ちにでもする?」


ノームの提案これを採用していれば良かったと後に後悔することになる。


「そんなマネ国の手本ともされる我等ができるか!ここはアビィスナイツ全員で攻め入って.....」


「いやぁ、私が行ってきますよぉ〜」


ガリアムールの言葉を遮って異論を唱える。

だがそんなのガリアムールの怒りを高めるだけの行為、すぐにダメだ、という声が飛んでくる。


「ダメに決まって......いない」


その為ヒースミルはガリアムールの言葉を待たず1人その家に入って行ったのだ。


「ヒースミルなら1人でも大丈夫だよ、なにせアビィスナイツの中でも魔法なら1番強いし、それに固有スキル精神支配があるだろ?」


「負けるような事が絶対にない事は分かっている、だがせっかくアビィスナイツが全員揃ったのだ、1人で終わらせるより、皆でやる方がよっぽど合理的であり利用性のある.......」


などと、ブツブツ言っているガリアムール、その時ノームは他家の壁に背を預けじっと傍観し、マトナは周りの女の子達にきゃあきゃあと言われていた。


                             ♯


「少し遅すぎじゃないですか?」


あれから20分 一切誰も家から出てくる様子もなく、だからと言って破壊音が響くわけでもない、争っている音もない。


「まさか、殺されたか?」


ガリアムールが硬い顔にさらにしわを寄せる。

それにマトナはありえない、とばかりに首を振った。


「それはないですよ、ヒースミルの精神支配は絶対です......ほら戻ってきましたよ」


そんな話をしているとタイミングよく扉が開き、全く外傷を負っていないヒースミルの姿。


「何やっていたんだ、殺したのならさっさと戻って来い」


「全くだぞ、心配かけやがって....おい、なんとか言えよったく」


ヒースミルは俯いていた顔を上げるとそこに写っていたのは満面の笑みだった。

今まで見た中でも最高の、マトナが一瞬見ほれてしまうような、とろけるような笑顔だった。

そして次の瞬間、


「ッ!?」


ヒースミルの頬ギリギリからファイアーランス.......いやそれはもう既にファイアーランスなどという生易しい下級魔法ではない、槍の形などしていない、炎が巻きつき螺旋状に渦巻いている、例えるならばジャベリン(竜殺し)そして熱さもレベルがまるで違う、ジャベリンはマナトの横を通り過ぎノームの首の真横を貫いていた。

その熱さ、速さ、に驚愕し横を振り向くと....


「嘘だろ!?」


焦げた穴が開いている、穴を覗き込んでみるも終点が見えないずっと続く穴、そして次に強烈な破壊音が国の防壁により響き渡った。

これがいかに恐怖すべき事か、唯一理解したのは汗をダラダラと垂れ流しているノーム1人。


(やばいって!?.....)


このままだと確実に死ぬ、そう理解した瞬間ジャベリンを放ったと思われる男が現れた、髪は何色にも染まる白、黒い服と特徴的な紫水晶のような瞳がとても綺麗で見ていたいくなる、が、どことなく恐怖を感じる。

【傍観】のノームの固有スキルは観察眼、その名の通り見れば見るほど事の本質を見抜いてしまう。

だからこそ分かる、今自分とは格段にレベルが違う相手であると。


「マスターもう来たんですか?」


そしてヒースミルのその言葉に全員の目が開かれる。

今第3席ヒースミルはなんと言った?マスター?ガリアムールは頭が真っ白に染まる。

それは確実なる敵対宣言であった。


「早くこの国を潰したかったんだ、悪いな」


「いえ、ふふふふふ」


まるで主人の機嫌をとるように、甘えるペットのようにユウキの頬に自分の頬をつけ擦り付ける。

ユウキは少し遠陵しながらも見せつけるようにヒースミルの頭に手を置いて撫でた。

そして次の瞬間、怒号が響き渡る。


「貴様ぁぁぁあ!!!!ヒースミルに一体何をしたぁぁ!!!!」


ガリアムールの一喝、仲間が全く知らない男に取られる、これほどまでの屈辱はないだろう。

だが、この男はただ口元に嘲笑を浮かべ。


「何をした?何もしてねえよ、ただこいつの精神支配を受けただけさ」


ユウキのその言葉にガリアムールは逆に戸惑う、精神支配と言った時点でヒースミルが情報を明け渡していることは確か、そして精神支配を受けたと言った、ならば何故、どうして貴様は正気でいられる。


精神支配、それは相手に自分の精神を埋め込み支配する、そしてその技に関しては全く躱しようが無い。


という事は嘘、虚言である。

勝手にガリアムールは結論を出した。


「そんなわけがあるか!!!もし受けたのならば貴様はヒースミルの奴隷に成り下がっているはずだ!!!」


「嘘じゃない、精神支配を受けたさ、けどな俺に精神支配とか.........取り込めるわけないだろ」


今まであらゆる拷問に耐え、それでもなお死なずのうのうと生きてきて、最終的には死んだこの愚者の精神、そんなもの見た瞬間発狂ものだ。

だが、ヒースミルは違った、それでもなお精神で取り込もうとしたのだ、その結果が......


「.....これだな」


俺に今べったりとくっついている奴隷の完成だ。

ヒースミルは逆に俺に精神を蝕まれ取り込まれた。

それにしたって....ふふふ。


「........仲間の裏切りか、いいシチュエーションじゃないか!」


昔の俺を思い出させる。

狂気に満ちたいい笑顔、だが目だけが異様に座っていた、何をしてくるのか分からない異様な怖さ。


「にしても助かったよ、本来ゴブリンがいてくれるはずだったけど.......」


家から出てきたオークが俺の隣に並ぶ。


「これで3対3だ」


だが、オークが申し訳なさそうに手を挙げる。、


「違いますよ王〜3対2ですよ.....この後まだ仕事ありますし」


そうだった、オークにはこの後今まで入念に仕込んだ仕込みをやる必要があるのだ、けどまあ....


「問題ないな、お前ら程度俺1人でも十分だ」


挑発的な笑みを浮かべ右手を上に向けると、紅い魔法陣が浮かび上がり、赤い閃光が空を登った。まさに昇り竜のように、そして次の瞬間国全体に響く大爆発が愛の国上空で起きた。


それをあいずに各々がやっとかとばかりに上空を見上げ動き出す。


ユウキは驚愕に打ち震えている、目の前のアビィスナイツに.......


「さあ、復讐を始めよう」


狂気の瞳はギラギラと刃物のように、好戦的に、光り輝いていた。


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