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復讐するため今日も生きていく  作者: ゆづにゃん
第八章反撃開始
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第72話闇の魔王と黒の魔王

「確かにいい国ですねぇ」


屋根の上から見下ろして見ると、悲しんでいるものなどいない、皆んなが笑顔、誰一人として苦しんでいるものはいない、シンが思い描いた正義が少しだけ存在していた。

何のための笑顔か、それは大してきにする必要はない、ただ、人が笑顔ならいい、いくら笑顔の人間の中身がただの人形だとしても.......そうすればこの国はいい国だと呼ばれるのだから、そんなリクの思想を体現したこの国はシンの思い描いた正義と少しだけ重なっていた。


「ただ、少しゴミも集まっているようだ、くくくっ」


普段は気味悪がられている口調だが、つい口に出してしまった。

シンは路地裏を見つめながらニヤリと笑うと、路地裏に降り立った。


「い、いやぁ!!やめて!」


女の人の声が路地裏に響く、そして男二人の下卑た声も聞こえる。


「うるせぇ!!黙るんだ!!」


右手に指輪がついていない男達が指輪を見せながら叫ぶと、口を閉じながら涙を流しながら、んー、と訴えかけている。


「何でこんなことするんすか?普通に命令すりゃあいいじゃないっすか」


「馬鹿かお前、嫌がる奴やるから楽しいんだろ?」


「へへ、納得です」


「じゃあさっ...そく?....なんだ?これ」


自分の胸に違和感を感じて見下ろしてみると、そこには巨大な槍?.....そしてその先端には....血を吐き出す歪な物が。

男はそれを見て顔を真っ青にさせると。


「.......お、俺の心臓?.....返っ....」


後ろの槍が引き抜かれ男の胸から血が吹き出し、男はその場にうつ伏せに倒れた。


「兄貴!?いきなりどうしたんだ!?.......お前が、兄貴をっ!!?.....」


もう一人の男は兄貴と呼ばれる男に駆け寄ると、槍の擦れる音が聞こえた、そして右を振り向けば闇に紛れた男が槍を持っていた。

その目は緑色に揺らめいていた。


「てめぇ!!シャガルル王国の貴族であるルーリット卿のご子息の兄貴を殺したんだ!お前二度とおもて....歩けな.......い?」


気づけばいつのまにか自分の下半身が吹き飛んでいた。

何か悲鳴をあげる前に男は絶命した。


「んー!?ん!んー!?」


自分を襲おうとしていた、男達を殺した男、その男に身の危険を感じに逃げ出そうとするが足がすくんで動けない、ただ涙を流している。

すると男は指輪をしていない手を見せつけると。


「走れ」


そう命令した。


「はい、分かりました」


女はそういうと涙を流しながら驚いた表情を浮かべて路地裏から走り出した。


「やはり、貴族(ゴミ)が邪魔ですねぇ、貴族さえ殺せばこの国も.......もう少し見て回りますか....」


路地裏の地面を蹴り跳躍すると屋根に飛び乗り、次々と家の屋根を渡っていった。



「違う、違うぞ、もっと全身に満遍なくじゃな....」


「こう?ですか」


「違う、それでは少し荒い、もっと綺麗に」


「うーん難しい」


カノンは分からなそうに首をかしげた。


「何かコツなどは?」


「カンじゃな」


「カンですか....」


天才じゃないと分からないような事を言われても、私は天才ではない、ただの一般人なのだ、しっかりと口にしてもらいたい。


「そういえば私の魔力は固有魔力【紅彩】、リンちゃんの固有魔力は【漆黒】、ご主人様はなんなんでしょう?」


「なんじゃろうな?だが固有魔力である事は確かじゃろう」


「え?どうしてです?他にも攻の魔力、守の魔力、変の魔力があるじゃないですか、私達が偶然固有魔力なだけでは?」


「違うぞ、その三つの魔力は絶滅したと言われている」


「それなのに基本魔力の四種類って呼ばれてるんですか?」


「魔力変換について載っている古代の魔道書には基本的な種類として書いてあったからだそうじゃ、今の奴らが固有魔力だけになってしまったのは、昔よりも強く進化してしまったからではないかとか......魔道書を書いた人達が偶然にも希少な魔力であるその三つを使える存在だったなど......まだ分かっておらぬな」


「へぇ、そうなんですか......でも私の魔力って攻の魔力に似てません?」


カノンの魔力は全てを紅く染め上げ能力を比較的にあげる強化型だ。

確かに攻めの魔力に似ているといえば似ているのかも知れないが、カノンの魔力は本当にそれだけなのか?と、リンは疑っていた。

少し単純すぎる能力だ、確実に他にも用途があるはず。

リンはそう考えていた。


「まあ良いか.......あれ?カノンお主今日稽古じゃなくて、やる事があったんじゃ?」


「あー、それはですねぇ、エミリーちゃんとゴブリンさんに任せてきました」


「それはいいのか?」


「別にいいでしょう、それにそれならあの二人に行ってくださいよ」


カノンが指したところでは魔力変換を頑張っているリヒトとオークがいた。

カノンの声が聞こえたらしく、リヒトが近寄ってくると。


「やあやあ、お二人さん、僕達の仕事は夜からだからいいのさ」


「そうなんですか?」


「まあねー、でもすっごくめんどくさい仕事、一緒に来ない?美女二人と一緒なら捗る気がするし」


「いやそれはいいです」


断られると分かっていたのか、大して気にせず、オークの方に向かうと。


「そっかぁ、それは残念だなぁ、じゃあ俺は魔力変換の練習でもするかなぁ」


そう言って興味なさげに魔力変換をやり始めた。


「........あやつ、元々魔力変換が使えたな....それに、あの目はわしの正体に気づいておる、あやつ何者じゃ?」


リンは分からなそうに首を傾げた。


                    ♯


3番区画、商店街がある大通り、そこに今シンはいた。


「たすけ.....ぐはっ!」


「これで最後か、くくくっ」


目の前で槍に串刺しになっている奴をゴミのように路地裏の奥に投げ捨てた。

この国にいる目に付いた貴族連中を一掃し終え、また屋根に登ったシンはやる事もなく城に戻ろうとした時、ふと目に入った。

そこには魔力変換の練習をしている連中。

そしてその真ん中に.......


(あれは.....2代目黒の魔王?何故こんなところに?...)


黒の魔王の話を頭の中で思い出してみる。

昔の魔王大戦が起こった時、とんでもない化物として一躍有名になった黒の魔王.......いや違ったな、あの時は黒の魔王じゃなかったか?確か※の魔王だったな。


(まさか....最近ドルトンやアセロラを殺したのは.....黒の魔王?それなら少し納得できる、そして今リクを殺しに来たのか?.......どちらにしろ、少し考えておく必要があるな.....)


「ん?誰じゃ、そこにいるのは」


シンは一瞬だけ存在を出してしまい、リンにバレそうになった、瞬間屋根を蹴飛ばし、城に向かっていった。



生活感のある部屋、使いふるされた料理道具、だがとても手入れされており綺麗だ。


「暇ですし、何か作りますかね」


特殊な合金で作られたフライパンを手に取ると、食料を手に取った、その時部屋の扉がこんこん、となった。


「はーい、扉は開いてるので入ってくださって結構ですよ」


メイの言葉を聞くと音を立てないように扉を開けた。

これはシンの癖だ。


「そうですか?じゃあ入りますね」


「シンさんですか珍しい......って服血まみれじゃないですか!!」


言われてから自分の服を見下ろすと、殺したやつらの血で血まみれだった。


「お風呂に入って来てください、お湯はいってますから」


メイは自分の部屋のお風呂を指す。


「分かったよ、たけどその前に報告しときたい事があって、この国に黒の魔王がいたよ」


「く、黒の魔王!?嘘でしょ!?昔、闇の魔王様と殺しあった、あの!?」


メイがひどく驚いている、無理もないだろう、何せ自分たちの主である闇の魔王とほぼ互角の力量を持つ相手がこの国にいるのだから。

そう、昔闇の魔王と黒の魔王は激しくぶつかり合った、結果ギリギリで黒の魔王が負けたのだ。いや、あえて負けたと言うべきなのだろう。


「そうだよ、だから報告した方がいいかなーと思って、では僕はお湯に浸かって来ます」


「今すぐに報告しないと!!」


メイは自分の部屋にある連絡用の魔道具を手に取りすぐに連絡を始めた。



「ふんふんふ〜ん」


ギルドへの道を歩きながらミキは楽しそうに鼻歌を歌っている。


「何がそんなに楽しいんだ?」


「久しぶりの散歩だからだよ!」


久しぶりだったかな?一応ミキとは毎日あっているが。


「だって最近、全然兄ちゃんかまってくれないんだもん、それに他のみんなも忙しそうにしてるし......」


確かに最近は皆いろいろとあってミキの相手をすることができなかった。


「まあ、それは悪かったな......」


「だったら今度、これが終わったら一緒にクエスト行こうよ!」


遊びに行くとかではなくていいのだろうか、そこらへんが俺はミキが少し変わっているところだと思う。

いづれ将来は戦闘狂(バトルジャンキー)になっていそうで心配だ。


「ああ、時間があいたらな」


ほぼ断るときの言葉を並べるとミキはすごい笑顔になった、気づいていないらしい。


「うん!!」


ミキとそんな話をしているが、隣の妖狐は何か深刻そうな顔をしていた。

何を思っているのか何となくわかった。


「.....チナツが心配か?」


「........はい」


「そうか、この前からあってないんだったな」


「ユウキさんは、王はどうなったのか知っているんですか?」


「そうだなぁ、それは自分で見た方が良いんじゃないか?.........ほら、見えて来たぞ」


目の前にはギルドが見えて来ていた。

入り口から、妖狐が勇気を出して入ると。


「はいはい、クエスト受諾ね、頑張っていきなさい」


「チナツさん次は俺のクエスト頼むよ!」


「はいはい、分かったから......あれって.....すいません、少し休憩もらいます」


受付嬢の姿をしたチナツは受付カウンターを乗り越え飛び出すと妖狐の前に慌てて出てきた。


「冒険者は辞めたんですね」


妖狐の言葉に小さく頷く。


「うん、もう剣も持てないしね」


右手の深い傷を見せる、なんとか治してあるが後が深く残っており、かすかに痙攣して、動かしにくそうだ。


「っ!.......ごめんなさい、私のせいで.......」


「いや、謝るのは私の方だ、結局君達をAランクに上げる事は出来なかった.....本当にすまない」


チナツは頭を下げた、少しこいつは優しすぎるな、本来なら俺たちのせいだと怒鳴ってもいいはずなんだが。


「チナツが謝る必要は無いよ、それより俺は少しお前のお爺さんと話があるから.......と、その前に一応確認させてくれチナツはいつここに引っ越してきた?」


「えーと、私が子供の時だから7〜8年前だな」


7〜8年前と言えば愛の国が有名になり始めた頃だ。

実際にはもっと昔から存在しているが。


「そっか、やっぱりそうか.....じゃあ妖狐はチナツと喋ってなよ、俺は少し話をしてくるから」


「分かりました」


少し嬉しそうな妖狐の声を聞いて俺は二階に登っていった。



「よお、爺い」


部屋の椅子に深く座り、眉間にしわを寄せている。

そして机には酒瓶が置いてある。


「なんじゃお前か......今わしは機嫌が悪い、立ち去れ」


「そりゃあそうだろうな、何せ自分のせいで最愛の娘が大怪我したんだから」


「..........」


「あれは俺の試験なんかじゃ無いだろ、最初から全部チナツのSランク昇格試験なんだろ?だがチナツはSランク試験最後の一歩手前で怪我を負ってしまった、馬鹿な爺いだな」


図星だったようで、あわてたように立ち上がり逆切れを起こし始める。


「ぐうっ!!五月蝿いわ!!Eランク冒険者ごときが図に乗りおって!!」


爺いことマルドレイは、たちあがると、頭上に立て掛けられている立派な大剣に手をかけた。

直ぐに俺は解説スキルを使い剣を見る

【臥竜の大剣 1級】

竜のネームドモンスターの素材から作られた大剣か。


「それで?どうする気だ?中々の業物らしいけど、俺を殺すか?」


「その通りじゃ!!少し態度を下げておれば、なめおって!!SSランクのわしを舐めるでないわ!!」


臥龍の大剣を振り回す、どれも素早い攻撃だ、ミキを部屋の外に置いてきて正解だった。

俺は紙一重で大剣を避けながらすぐに魔法を発動させた。

土流魔法LV4【泥沼】がマルドレイの足を沈ませていく。


「なにっ!?中級魔法だと!?しかも無詠唱!?くっ!」


泥沼から強引に足を引きずり出そうとする、だが俺は右手を前に突き出すと、ブレスLV5【麻竜の息吹】を発動させた。

ユウキの右手から魔法陣が浮かび上がる、普通ならこんな事起こらないが流石に竜しか使えない魔法を人間が使えば何かと変わってくるようだ。


「なん、だとっ!?こ、これはブレス!?お、お前何者じゃ!?」


マルドレイはそう言いながらもしびれた体を無理に動かし、大剣と技の姿勢に構え始めた。

これをさせないために俺は早めに決着をつけさせたかったのだ、マルドレイの大剣技はLV10、普通に死ねる、だから俺は右手から一つ、そして後ろから細かい糸状の魔力を4本伸ばしマルドレイを取り囲む、その先から赤い魔法陣を浮かべた。


「今すぐスキル発動を辞めて大剣を下ろせ、じゃないと焼き尽くすぞ」


浮かべた魔法陣は全て【火竜の息吹】焼き尽くすというのはあながち間違いではない。

実際できる、それを理解したマルドレイはゆっくりと大剣をその場に落とした。

大剣が床に深々と突き刺さる、大剣の重さと鋭さがよくわかる。


「お前は.....人間か?なにが目的だ?」


俺の様子を伺いながらそんな質問をぶつけてくる、ブレスを使えるのは竜だけだ、だから聞いているのだろう。


「俺は多分人間だ、それより目的、か、俺は今愚かなお前に商談を持ってきたんだよ」


「多分?商談だと?」


眉間に谷のようにしわを寄せこちらを睨みつけてくる。

そんなに凄んでもいつでも燃やせる、それにさっき麻竜の息吹のおかげで体が動きにくいはずだ。


「ああ、お前にとって確実に有益な商談だ、お前はスパイだろう?」


「なっ!?なぜそのことを知って!......」


これで確信が持てた、初めてチナツに会った時指輪がついていなかった、最初は貴族か何かだと思っていたが、自分に命令権があることも知らなかった、それなのに指輪をつけていない、という事は一緒にここに引っ越してきた者が意図的に教えていない事になる。

そこまででチナツの関係者である可能性が高くなったのだ。

そして、先程聞いた引っ越してきた年数、他国が愛の国の有用性を認め始めた時期と一致するのだ。


「その情報とお前の愛娘のどっちが大事だ?」


「な、何を言って......」


「俺がチナツの腕を治してやる、代わりにこの国の情報をよこせ、どうだ?悪い話じゃないだろ?」


「.......何故この国の情報を欲しがる?目的を言え」


いつまでも上から目線の爺に流石にちょっとイラっとした。


「いつまで上から目線なんだ?お前は今チャンスを貰ってるんだぞ?娘の腕を治すチャンスを.......まあ、別にいいけどな、俺は最悪情報を貰えなくてもいいから」


「ぐっ!?......分かった、情報を教える......だが、先に娘の腕を治してくれ......わしはまだお前を信用しとらん.....それさえしてくれればわしは....情報をお前に提供しよう」


渋々といった感じで、下を向きながらもごもごと口を動かした。


「分かった、今すぐチナツを呼んでこいよ、だが俺にも条件がある、一つ、俺の実力を言わない事、二つ、目隠しをさせてくる事、三つ、治ったからといってにチナツに冒険者を無理強いさせない事、これが守れるか?」


マルドレイには正直一番最後の意味がわからなかった、だってチナツは腕さえ治ればまた冒険者稼業に戻りたがる事は明白だ、そしてそれは自分も望んでいる。


「分かった、呼んでくる」


その条件が特に害はないと思ったマルドレイは部屋を飛び出していった。

俺はマルドレイがいなくなった事を確認してからステータスを開き、スキルが増えている事を見て、今までの仕返しができたことに笑みを浮かべていた。



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