第66話ユウキの珍料理
少し書き方を変えることにしました。
今まで書いてきた話もこの話と同様に変更していきます。
「ふむ、なかなかいい家じゃの」
「小部屋も人数分以上あります」
「リビングも広いですね」
「...あの、ご主人様は何を?」
家の中の壁から何まで隅々まで確認しているのが変に見えたのだろう。
「少し監視用の魔道具が取り付けられてないか確認していたんだ」
「監視ですか?...一体だれが?」
「この国の神様」
神様といってもただの哀れな人間だ。
そもそも神など存在しない、だってもし本当にいるのなら、昔の俺を助けてくれたっていいはずだろう?
「神様いるんですか!?」
「そもそもここは巨大な宗教団体だからな、そこら辺の話もしないとなんだが.....それよりもカノンは夢ってあるか?」
「夢?ですか.....」
頭に浮かんできたのは夫婦仲良く暮らしている光景。
夫はユウキで妻は私、私は子供を抱いて、その私を優しく抱きしめてくれているユウキ。
二人で仲良く暮らして、たまにエミリーちゃんやリンちゃんが遊びに来て.....そんな毎日を暮らしていく。
「えへへぇ♪」
「楽しい妄想中悪いんだが結局夢は?」
「は、はいっ、夢は....結婚する、ことです」
「結婚か、さすがにそれは今は無理かな.....まあいいや、それより少しみんなを集めてくれるか」
「分かりました、リビングに集めますね」
「その間に俺はちょっと本を取ってくる」
「みんな集まってくれたな、じゃあこれを見てくれ」
「これは?.....」
「就職先についていろいろと書いてある、好きなやつを選んでくれ」
「就職?仕事するのか?」
「ああ、この国では絶対に仕事をしなくちゃいけないんだ、だから仕事をしながらこの国の情報を集めてきてほしい」
「わかりました〜」
説明書の周りに集まりワイワイと喋りながら職業を選んでいる。
「エミリーは見に行かなくていいのか?」
「ユ、ユウキさん........」
顔を赤くこちらに目を向けない。
そういえば最近エミリーの声を聞いていなかった。
「どうかしたか?」
「あ、あの、この前はすいません......」
「この前?....あっ.....」
なんで声を聞いていないか分かった。
エミリーはずっと気にしていたのだ、キスをした事を。
「あの時は悪かった、本当にごめん」
「いえ別に元はと言えば私が......」
「それでもさ、エミリー可愛いんだから」
「え.....」
「エミリーと俺じゃあキスの価値が違うんだよ」
「そんな事は......」
「だから気にするなよ」
「でも、カノンさんに申し訳ないと言うか.....」
小さい声でそう呟くと
「申し訳ない?誰に?」
「そ、それはですね.....」
変な所だけ聞かれたせいで言い訳を考えなくてはいけなくなった。
「そうです、ユウキさんに申し訳ないんです」
「.....俺はなエミリーとキスできて役得だと思ってるかもだぞ?男なんて所詮そんなもんなんだぞ、だからエミリーが気負う必要はないんだ」
自分なりに気負わない方向に言って励ましたが効果はあるだろうか。
「王は何の仕事します?」
「まだ決めてないんだ、俺にも見せてくれ」
エミリーの元を離れリビングの真ん中に向かい、説明書を見る。
「やっぱり優しいですね、ユウキさんは」
そう、ポツリと呟いた。
「これでいいんだな」
紙に書いてある内容を見て少しため息が出た。
___________________
【冒険者】 【万屋 】 【カフェ】
ユウキ リヒト カノン
ミキ オーク リン
エミリー
ゴブリン
___________________
「ゴブゴブがカフェってのは意外だな〜メイドの格好でもするの?」
そんな事を言わないで欲しい、頭の中でゴブリンがメイドの格好している姿が浮かんでしまう。
一瞬噴きそうになった。
「ゴブゴブって言うな!それに俺は用心棒としてカフェをやるんだ」
「俺的にはオークが万屋なのも以外だったんだが」
「そうかなぁ?王は何が向いてると思う?」
「ナンパ師?」
道端で声をかけているオークが頭の中に浮かぶ。
頭の中のオークはそれ以外ないくらいにベストマッチしていた。
「それもいいけどねぇ、やっぱり何人かでまとまった方がいいと思うんだよねぇ」
やぶさかでは無いらしい、やっぱり人間になろうと女好きなのは変わらないらしい。
「確かにな、じゃあ俺はこれで役所に登録してくるから、カノン達はカフェのデザインを考えておいてくれ、夜ご飯の買い出しは俺がついでに行ってくる、他のやつらは自由に過ごしてくれ」
「「「「「はーい」」」」」
みんなの返事を聞きながら俺は1人外に出た。
「案外遠かったなぁ」
役所に登録をした帰り道、食材を買いにブラブラと適当に歩き回っていた。
「ん?何かいい匂いが.....」
鼻を刺激するとても良い香りがユウキの食欲を駆り立てる。
「少しくらい寄り道してもいいか」
いい香りがする方へと道をそれていった。
路地裏に入るが特にお店らしい、お店もない、匂いがする場所は目の前の壊れかけの廃墟のような場所だった。
「ここから匂いがするよな?」
一応のれんが立てかけられている、店として活動はしているようだ。
(入るだけ、入ってみるか)
扉を数回ノックして、扉を開けると、中はおんぼろとしか言いようがない、一歩踏み出すたびに壊れかけの音がする。
「いらっしゃい!何にする!久しぶりの客だ、サービスするよ!」
店主が詰め寄ってくると、俺の肩を揺す振り何を頼むのかとせがんできた。
「えっと、じゃあオススメのを一つ」
「あいよ!.....お待ちどう様!!」
早くないか?作っているそぶりも見せなかったぞ?まあいいか味さえ良ければ.......
俺は机の上に置かれた食べ物を見てフリーズした。
「なんだ?これ.....」
「何ってカレーだよ」
「これが、カレー?」
いやいやいや、絶対におかしいだろ。
俺の知ってるカレーって茶色いルーにパンか米だったよ?なにこれ、カレーのルーって紫色だっけ?米とパンってこんなに赤かったけ?
「あー、はいはい分かりました、見た目が悪いと言いたいんでしょう?」
「その通りだよ、それ以外言うことないだろ」
「確かにそうかもしれませんが騙されたと思って一口だけ、食べてみてくださいよ、お願いしますよ」
「.......分かったよ」
渋々と了承し、スプーンを手にカレーのルーをすくった。
「一気にいってください」
「いや、これ結構度胸いるぞ?」
スプーンに乗っている毒としか思えない液体を勇気を持って口に運んだ。
「!!?..........」
「どうでした?口にあいませんでしたか?」
「.......いや、美味い、普通に美味い」
口の中には濃厚なスパイシーなルーが残っている、すぐに米とルーをすくい
「それは良かった.....」
「なあ、こんなに美味いのになんでこんなに人気が少ないんだ?」
「あなたも理解しているでしょう?見た目ですよ、見た目」
「変な食材を使ってるのか?」
「違いますよ、普通に買った食材です」
「って事は生まれつきか.....ならスキルかな?」
俺はまっすぐと店主を見据える、すると文字が浮かび上がる。
「やっぱりな」
店主のスキル項目には
固有スキル:珍料理というものがあった、内容もまたおかしい。
珍料理:真っ当な食材を使って料理を作れば、見た目がおかしくなる、味は変わらない。
おかしな食材を使えば見た目は良くなり、味も良くなる。
「なあ、店主、料理の見た目を良くしたいか?」
「できることなら」
「そうかじゃあ少しだけ痛みに耐えられるか?」
「痛みって何を?.....」
「今からお前にデコピンをする」
「別にそれくらい構いませんよ」
余裕そうにおでこを前に差し出す店主に向けて少し強めのデコピンを放った。
「いった!?ーー」
「悪い少し強すぎたみたいだ、けど.....」
店主のスキル項目を見てみればもう珍料理の項目は消えていた。ちゃんと俺のスキル項目に移動したようだ。
「もう一度作って見てくれないか?簡単なやつでいいから」
「見た目が悪くなっていいのなら、簡単なやつでいいなら卵焼きでも作りますよ」
そう言って台所に向かった。
しばらく席で座って、待っていると。
「た、大変ですお客さん!!」
慌てながらフライパンごと持ってきた店主。
「見た目が、見た目が良くなってます!!」
「それは良かった、じゃあ一口もらうぞ」
フライパンから一切れとると口に運ぶ。
芳醇な甘みが口いっぱいに広がった。
よかった味は元々店主が料理上手だったからのようだ、それならこのスキルはいらないだろう。
「じゃあ俺はこれで、お代はここに置いていくぞ」
「ありがとう、ございました!!」
店主は喜びながらお代を回収すると。慌てて店を飛び出し。
「お客さん!お代間違えて.....もういないか.....」
お代として置いてあったのは、金貨2枚だった。
「ふぅ、いいスキル貰ったな」
珍料理、色々と試しがいがありそうだ。
早速家に帰って試してみるか........
それにしても、さっきの店主も指輪をしていた。
あれほどまでに人間なのか、確かにこれじゃあ指輪以外で判断できないな。
「さて、帰りに冒険者ギルドによって材料を集めてくるか.....」
路地裏から出ると、嫌という程の光が俺を照らした。
「「おかえりなさい(なのです)」」
玄関の扉をくぐれば2人の可愛い娘?いや、狐と猫か?....が迎えてくれた。
俺は2人の頭に手を置き撫でる。
「ただいま、他のみんなは?」
「皆さんはリビングで遊んでます」
「そっか、じゃあカノン食器の準備を頼む、今日は俺が料理を作るから」
「ご主人様が?料理作れるんですか?」
「確かにそれは思うところがあるのです」
「俺が変な食材を使うとでも?」
「例えば魔物のお肉とか使いそうなのです」
「......まさかそんな事するわけないだろ?」
「それもそうですね」
そう言って2人してリビングにかけていった、その時の俺は妖狐の言葉にとてもドギマギしていた。
「できたぞー、誰か運ぶの手伝って....何してんだお前ら?」
庭に出られる窓にミキとリンが座りながら外の様子を見ている。
「今オークとゴブリンが庭で戦っておるぞ」
「また喧嘩か?」
「オークは対して怒ってないぞ、ゴブリンが一方的に仕掛けておるんじゃ、まあ怒らせたのはオークじゃがの.....それにしてもゴブリンの方が強いと思っていたが案外オークもやるの〜」
ゴブリンの攻撃を紙一重で躱し隙あらば斧で攻撃している。
今更だがよく見ると斧というよりハルバードと言った方があっている。
「あんなに強かったですかね?前はもっと動きが鈍かったような?.....」
カノンと妖狐は料理を手に台所から出てくると机に置く。
「それはですね、人間になった時に強さが増したからなのですよ」
人間になって強さが増した、という事は妖狐が魔物を人間にさせている魔法は強化系なのか?
妖狐の魔法を色々と詮索していると。
「肉!!!ー」
ミキの元気のいい声が耳に響き渡る。
「これは美味そうじゃ」
机の上に置かれたのはとても肉厚なステーキ。
今もなお肉汁が吹き出ている。
「おいゴブリンにオーク飯ができたぞ、すぐ戻ってこい」
俺のその言葉に動きを止め、ゴブリンは剣を鞘に収める。
「今回はこれで終わりだね」
「絶対にいつか痛い目に合わせてやるからな」
「へいへい」
オークはハルバードを家の壁に立て掛け、靴を脱ぎ家の中に入る。
その靴を見ると少し古い。
「そういえば妖狐達は服どうやって手に入れたんだ?」
「服ですか、昔森に迷い込んだ冒険者3人から剥ぎ取りました」
笑顔で人殺して追い剥ぎした宣言、魔物だと分かっているから気にはしないが人が言ったら確実にやばい奴だ.......俺も人の事言えないか.....
それにしてもそんな服は絶対に不謹慎だ。
「今度みんなで服を買いに行こうか」
「分かったのです」
「早く主様も席に着くのじゃ、ミキが待ちきれんようじゃぞ」
リンの隣にはよだれを垂れ流しているミキ。
そんなに食いたかったのか。
「悪い悪い」
軽く謝りながら席に着く。
「じゃあ、いただきます」
「「「「いただきます」」」」
「い?いただき?ます?、なんなのです?それは」
流石に人間の食事のマナーなど分かるわけもないか。
「食事をする際は手を合わせていただきますっていうんだよ?」
ミキに教わるが首を傾げている。
「まあ、別にいいだろ、それより食べよう」
カノンとリンがナイフとフォークを手にステーキを切る、ミキはフォークでひとさしするとそのまま食らいついていた。
だが妖狐とゴブリンはうまくナイフなどが使えないようだ。
それを見かねたカノンが妖狐に教えている。
ゴブリンはオークに教えてもらっていた。
「オークはうまく使えるんだな」
「はい、昔知り合いのオークに教えてもらったんですよ、食事のマナーがなっていないとモテないぞ、って」
流石オーク、女好きらしい考え方だ。
「それにしても、ゴブゴブは下手だね〜、いっそのことナイフを剣だと思って切ってみれば?」
「分かった、フンッ!」
小柄なナイフで剣のように何度も斬りつけるとステーキはサイコロステーキのようになった、だがお皿も同じように切れ目細やかなサイコロステーキ専用のお皿に早変わりした。
「すいません、お皿きれちゃったみたいです、ほらゴブゴブも謝って」
「王、悪いのはこいつです、煮るなり焼くなり好きにしてください」
「酷いっ!!」
「本当に仲が悪いな.....いやむしろ良いのか?」
「良いですよ〜」
「良くない!!」
言い合いながら戯れている2人、それを見かねたカノンが台所に入りお皿を持ってくる。
「はいはい、落ち着いてください、お皿は持ってきましたから、それよりもゴブリンさん達もステーキを食べてみて下さい、すごい美味しいですから」
カノンに笑顔で言われてステーキをみつめると、フォークを慣れない手つきでつきたて、口に運んだ。
「っ!美味い」
珍しくゴブリンが驚いた顔をして、美味そうに次々と切り分けられたステーキを口に運ぶ。
「焼けた肉がこんなに美味いなんて.....これからは焼いて食おう」
さらっと怖い事を言っている、だが魔物は人間の肉を生で食べたりしているのだ。これからは人肉も焼いて食べるようになるだろう.....もっとひどい絵面になるか.....
「本当に美味いぞこの肉!なんの肉じゃ?」
「それ僕も聞きたいなぁ!女の子に作ってあげたいし!」
「いや、でもなぁ?.....」
オークお前が言うとシャレにならないんだけど。
「どうしても知りたいか?」
「私も聞きたいです!」
「俺も!!」
そんなに聞きたいなら答えないわけにはいかないよな.....でも念には念を押して。
「知らない方が良かったって思うこともあるんだぞ?」
「もったいぶるんじゃない、さっさと答えるのじゃ」
はぁ、もうどうなっても知らないからな?
「オークの肉」
「「「「「えっ?......」」」」」
「ああ、だから食べたことのある味が少しだけしたんですね?」
「そう言うことなのですか!でもこんなに美味しいオークの肉は食べたことないのです!」
妖狐とゴブリンはなんとも普通の返答だ、他の奴らは言葉が信じられないとばかりに肉を見ている、そして1人オークが青白い顔をして。
「と、共食い?.....あ、あはははははは.....」
いきなり笑い始めると、「キュウ」と口にして机に倒れこんだ。
「ご主人様!変なものを食材にするのはやめてください!!」
「でも美味しかっただろ?」
「それでもですねっ!」
何が言いたいんだろう?
不思議に思っているとゴブリンがオークを覗き込むように見て。
「今までの天罰が下ったんだな」
誇らし気に言っている、今までの鬱憤が貼らせてさぞ嬉しいことだろう、だがこの肉は.....
「なあ、ゴブリンこの肉はあいびき肉でゴブリンとオークの肉を混ぜ合わせた奴だぞ?
「えっ?あ......」
ゴブリンも同じように机に倒れこんだ、流石に共食いというのはショックが大きいらしい。人間が人間を食うようなものだからな。
「もう余計な事言わないでくださいっていうかなんてもの食材にしてるんですか!!」
「美味しかっただろ?」
「だからっ!!」
文句があるようで俺に珍しく噛み付いてくるカノン、そしてオークとゴブリンを心配して供養をしているとエミリーと妖狐、ゴブリンとオークの肉を食って蒼白な顔をしているリン。
そんな中ミキ1人だけがムシャムシャと肉を食べ続けていた。




