第63話発情期
復讐するため今日も生きていく第0話の話を大幅に変更したので読み直していただけるとありがたいです。
「はぁ、はぁ」
二つの荒い息づかいが聞こえてくる。
そこにはお互い血まみれのカノンとゴブリン、いまだに決着が着かず殺しあっていた。
「ツギデキメル!」
剣に力を溜め始めたゴブリン、カノンはそれを受けとめる体制をとる。
ゴブリンの剣に力が溜まりそれを放とうと力強く一歩踏み出した瞬間...
「待てっ!」
少女の声が響きわたると、ゴブリンが動きを止めた。
そして少女を見据える。
「出直すぞゴブリンの王よ!ついに私達が求める王が見つかった」
「ホントウカ?ヒメ」
「本当だ、だが王は人の姿をしている」
「トイウコトハ、ツイ二アレヲ?」
「ああ、覚悟を決めないとだ、あとオークの灰を拾っていこう」
そういうと二人灰を袋に入れ深い森の中に走っていった。
「あなたは!」
そう口にすると少女は振り返り。
「白髪の男に言っておいてくれ、すぐに会いに行きますと」
狐耳をした銀髪の少女はそう言って走っていった。
一つのテントの中ユウキは布団に入っていた。
ぐっすりと寝ていたはずだが妙に寝にくく大きなあくびをしてから目を覚ました。
上半身を持ち上げ、違和感を感じた布団の両隣を見てみると、右側にエミリー、左側にリンが寝ていた。
「両手に花ってやつか...」
だがそのことにたいした反応もせず淡々という。
「で?昨日何があったんだリン、起きてるんだろ?」
ユウキがそう言うと布団の中のリンが一瞬ビクッと震えたが、すぐに寝息を立て始めた。
「へえ、おきてないんなら別に何してもいいよな」
ユウキはそう口にするとリンの脇に手を入れ抱き上げる、そして顔を近づけ始めた。
顔と顔がふれるまで近づくと....
「な、なにする気じゃ!?ー」
リンが叫びをあげた。
「お、女子のはじめてを寝ているうちにしようとは!...見損なったぞ!」
「女子の初めて?俺はただリンに頭突きして今のうちにスキルを奪おうとしただけなんだが?」
憎たらしい笑みを浮かべそう言い放つ。
「っ!?!!?」
するとリンは一気に顔を紅潮させた。
そう勘違いさせるようにあえてやったがまさかここまで魔王様に効くとは...
「昨日エミリーと俺をオーガから助けてくれたのはリンか?」
だがそんなことお構いなしでユウキは聞きたいことを聞きだす。
「覚えていないのか?」
「ああ全く、っていうかお前大丈夫か、顔が赤いぞ?」
「お主のせいじゃ!」
理由を理解しながらもからかうと激昂しながら俺に噛みつくリン。
それをどうどう、と抑える。
「全く、主様は少しSっけが強いぞ」
「そんなにSか俺?」
特にリンに痛めつけるようなことをした覚えもないんだが。
「最初にわしをぶん投げて気絶させたのは誰じゃ?」
あ...そんなこともあったけ...
「でもあれはお前も悪いだろ、あんな罠を仕掛けてあったんだから」
「いや、あれは友人のダンジョンだぞ?そいつが仕掛けた罠じゃ、わしが悪いわけじゃない」
だとしたら悪い気がしないわけでもない。
...いやまてよ、だったらなんであの時に入っていた宝箱にはリンと同じ服が?
「おい、ならなんで宝箱の中にリンと同じ服が入ってたんだ」
「いや~それは、見間違いじゃないか?」
「現物ここにあるぞ」
どうしたらいいかわからず、いまだにアイテムポーチに入れえておいたドレスを取り出す。
「.....」
するとエミリーが起きあがった。
「おっ!エミリー起きたか!少し傷を見てみよう、な!」
「は、はいお願いします...」
話の変え方が強引すぎるだろ、まあいいか確かにエミリーの傷については気にはなっていた。
「背中を見せてくれ」
「...いやでも...」
恥ずかしそうに口にして俺を見た。
「ユウキが見てるのが恥ずかしいのか?」
「は、はい」
「だったら仕方ないの、ほら、出ていくのじゃ」
それは仕方ないんだろうけど、俺のせいでついた傷を確認したいってのもあるしなあ。
「なあエミリー、頼む!傷だけ見せてくれ」
そう頭を下げると照れたように頬をかきながら
「...そこまで言うなら...いいです...」
了承してくれた。
「変なことするなよ主様」
「変なことするわけないだろ」
言い返すと、じとーと信用のない目で見られる。
俺そんなに信用なかったけ?
「まあいいか、さて!」
「えっ?」
リンは一気にエミリーの服をめくりあげ上半身裸にした。
するとエミリーは先ほどよりも顔を紅潮させ何かを耐えるようにプルプルと震えている。
「なあ、服をめくるだけでよかっただろ」
冷ややかにそう言うと、リンはガバッと立ち上がり。
「それだけじゃダメなんじゃ!わしにはエミリーの成長具合を確かめる権利がある!」
などとふざけたことを言い出した。
「成長具合ってどこの?」
「そんなの決まっておろう、胸じゃ!」
少しはためらってほしかった、というかリンってレズだったのか?
見た目は可愛いのに、こんなに残念な性癖を持っていたのか...いや、人の性癖にとやかく言うのはやめよう、それは個人の自由意志だ。
「おい主様、変な勘違いをしてそうだから言っておくが、わしはレズではない」
「なあ、なんで人の考えてることわかるの?スキルか何かですか?」
そんなスキルあったらプライバシーもくそもない、だから念のために聞いておく。
「そんなスキル持ってはおらん、持っているのは悟りの魔物くらいじゃないのか?」
「だよな、持ってないよな...って持ってる奴いるの!?」
「そりゃあいるじゃろ」
当然とばかりに言うリンに驚愕の表情をする。
その魔物に出会ったらせいぜい気を付けることにしよう。
「あ、あの早く済ませてほしいんですが...」
完全に忘れられていたエミリーが口を開く。
それを聞いたリンは手をワキワキと動かしリンに近づいていく。
「いま楽にしてやるからの」
その言葉に犯罪匂がしたユウキは咄嗟に縄を取り出し、『拘束』スキルを使いリンを縛り上げる。
「な、なにするん!むぐっ!」
「ちょっと五月蠅い」
アイテムポーチに入っていたさるぐつわを無理やり口に突っ込み布団に投げ捨てた。
ってなんでこんなものが?買った覚えなんてないんだけど.....まあいいか
「髪の毛肩にかけてくれ」
エミリーの背中を触るのに邪魔な髪の毛を肩にかけさせる。
「少し触るぞ」
エミリーの肌をなでるように触るとピックと動くがそのままなで続ける。
「本当にごめんな、俺をかばったせいでけがさせちゃって」
「いえ、ユウキさんが謝ることじゃありません、それに余計な事をしたのは私ですから」
「え?」
「あの時私が余計なことしなくてもユウキさんならなんとかできたんじゃないですか?」
確かにそうかもしれない、だが今を見据えて言わせてもらえればエミリーがかばってくれたおかげで助けられた、その事実しかない。
「かいかぶりすぎだぞ」
そういうとふふっと笑い
「優しいんですね、昔のように」
「.....」
俺はその言葉を聞き流し、エミリーの背中の傷を軽くさする。
すべすべの肌にこんな傷をつけてしまって心ぐるしいな、せめて何か俺に出来ることは.....
考えるか早いか今使える最上級回復魔法『祝福』を発動した。
エミリーの背中を温かい光が包みこみ一気に傷を治しあげた。
「馬鹿かユウキ!そんなに回復したら!?」
自力でさるぐつわを外したリンが叫ぶとエミリーがすっと立ち上がり、ばっとこちらに振り向いた。
「馬鹿かお前!服着ろ!」
じゃないと見えちゃいけないものが見えるぞ!いろいろと!
「取り敢えず逃げろ!」
「え?なんでっ!?」
そこまで言い終わった瞬間エミリーが思いきりユウキを突き飛ばした。
「いきなり何を...」
いきなり押された事により仰向けに寝そべった体制をしているユウキにそのままエミリーは馬乗りになった。
「ユウキさん...」
俺の名前を呼んではぁ、はぁと荒い息を吐き体を近づけてくる。
「ちょっお前この体制でそれはやばい!リ、リン助けてくれ!っていうかなんでこんなことに!」
「お主がエルフに回復魔法を、それも飛びぬけて強い魔法を使ったからじゃ!後、悪いがわしは助けられぬ、何せどっかの誰かさんに縛られたからの」
そう言ってやり返したぜ、とばかりのドヤ顔をかましてきた。
正直いらっとしたが今はそんなこと気にしている暇はない。
「なんで回復魔法でそんなことに、ってだからくっつくな!」
さっきから引っ付いてくるエミリーの肩を掴み引きはがす。
「エルフ族はもともと妖精と人間の子供として生まれた稀有な存在じゃ、そいつらが生まれて最も重大とされることはエルフを増やすこと」
「つまり子孫を作ることってことか?」
「そうじゃ、特に子供を作る相手は魔力が多いものが好まれたんじゃ、今の時代ではエルフは十分に存在しているためその機能は死んだはずじゃが、強すぎる回復魔法を浴びると機能が回復して子孫を残そうとするんじゃ、つまるところ発情期ってところかの」
「話が長い、結局どうすればいいんだ!?」
俺の言葉を聞いた後俺の顔を見ていやらしい表情を浮かべると
「おとなしくやられろ」
「お、お前ふざけんなよ!そんなことできるか!」
「主様焦りすぎて口調が変わっておるぞ」
エミリーの知らないうちにそんなことをするのは絶対にいけない。
「な、なあエミリー少し話をしよう」
「話ですかぁ?それは私の事が嫌いということですかぁ?」
と言いながら涙ぐむ。
「いや違う、違うから泣かないでくれ!」
「そうですかぁ、ならよかったぁ...」
俺に向けてにこりと笑いかけぎゅっと抱き着いてきた。
やばい、これはやばい、エミリーが可愛すぎる、いい加減カノンとかリンで慣れたつもりだったがこれはやばい、このまま流される。
「お願いだリン、頼むどうか助けてくれ!?」
俺の焦った状態を楽しむようににやにやとしている、その笑顔
「仕方のない奴じゃの~その状態を治したいのならエミリーを満足させればいいんじゃよ」
「満足って何をすれば?」
「キス」
「無理無理無理無理」
そんなことできるか!
「無理ならおとなしくやられることじゃな」
「くっ!」
どうする、考えろ、どうすればエミリーを満足させられる?
目を閉じながら必死に考える。
まてよ?キスする相手は別に俺じゃなくてもいいんじゃないか?今運よくリンがいる。
よしこれで行こう。
そう考え目を開けた瞬間、
「え?」
目の前にエミリーの顔、そしてそのまま唇と唇がふれあい、完全にキスをされた。
キスをしおえ唇が離れると何かがこと切れるかのようにユウキの体に倒れこんだ。
なんかこんなことつい最近にあったような気がする。
ってどうしよう、エミリーとキスをしてしまった、というかされた。
「主様、本当に運が悪いのう」
リンが指を指した方向つまるところテントの入り口、そちらを見ると、足音が聞こえてきた後。
「ユウキさん起きました...か?」
テントの入り口が開けられカノンが入ってきた。
この、光景を見て完全に固まっている。
何か言わないと、後が怖い。
「あのなカノン俺は決していやらしいことをしていたわけじゃ...」
そこまで言って俺は固まった。
だってそんなこと信用できるわけがない、何せ布団の上にはひもで縛られたリンがいて俺の上には半裸のエミリーがいるのだから。
「少し話をしましょうか」
顔は笑顔だが確実に怒っている、嫌な予感がしながらも俺はカノンの言うことに従った。
あの後、カノンと話し合い誤解を解いた、カノンはすんなりと許してくれたがある条件を突き付けられた。
それは、これから寝るときは必ずカノンと寝ること、すぐに断ろうとしたが、有無を言わせずな感じだったため素直に了承した。
ちなみにキスをしたことは言ってはいない。
「で、話ってなんだ?」
「私が話があるわけじゃありません、イクモさんが言いたい事があるそうです」
「なにかあったけ...もういろいろとありすぎて疲れたんだけどな」
エミリーを貴族から助けて、集落を襲った魔物を殺して、謎の頭痛、エミリー発情期、少し休ませてほしい。
まあいいか少し言いたいこともあるし。
「それでイクモはどこにいるのじゃ?」
「あそこだな」
人だかりができているところを指す、その真ん中には冒険者。
あ、なんとなくわかった。
昔もよくあった事だから一目見ただけで理解した。
「カノン、リン聞きたいことがあるんだけど昨日オーガ殺したのお前達か?」
「そうですよ?」
「なら、今から何を言われても反論するな」
「よくわからんが、分かったのじゃ」
カノンとリンを頷かせ、人だかりに向かう。
「おお、ようやく来ましたか、さあお礼を言ってください」
イクモが当然のようにふざけたことを言い出す。
「お礼?なんのだ?」
「俺達がお前たちを魔物から守ってやったんだろうが!」
冒険者達がこちらに振り向き声を上げる。
まあ予想通りだけど、本当に馬鹿というか、哀れというか。
「その、お礼として馬車を明け渡してもいいんじゃねえか?」
「だから、馬車が欲しいのなら私達を倒せばいいんですよ」
「けがする前に馬車を渡せっていう俺たちの優しさがわかんねえかな、そもそもお前に勝ち目はねえんだよ、俺達は何十というオーガをころしたんだぞ」
いや、それやったのカノンとリンだからな。
「そんなに自身があるなら別にいいだろ、じゃあ俺は戻らせてもらう」
「お前!!あんま調子乗ってんじゃねえぞ!」
男が俺の胸ぐらをつかみ拳を振り上げる。
俺は後ろでにやにやしている奴らに聞こえない声で。
「拳振り上げたんだやり返されても文句言うなよ」
胸ぐらをつかんでいる男の腹に一発。
吹っ飛ばないようにただ力の差を見せつけるため地面にたたきつけた。
「おっと転んでしまったようです、では私は行きますね、カノン、リン行くぞ」
「「分かりましたご主人様」」
カノンとリンは合わせてくれたようだ。
「な、なああの子たちって昨日の!?」
「や、やべえよ」
「あの子たちのご主人様!?俺達なんて化け物に...」
あの場にいた者たちはすぐに理解するが、他の者たちにはただの少女にしか見えていないのだろう。
少し甘かったか?
実のところ唯一争わない方法を残してある、それは自ら嘘だと認めること、そうすれば俺達と争うことはなくなるだろう。
まあ、できないだろうけど。
自分でついた嘘を認めるということはとても難しいことなのだ、それができる人間はそもそも嘘をつかない。
まあ、どうでもいいことか
特に気にせずテントに戻った。
「はあ、疲れた」
木の床に寝転がる。
「それにしてもなんでこっちに移動させられたんですかね」
ミキが言うにはテントよりも大きい部屋に移動してもらいたいと言われ、避難所に来ていた。
「ミキ何か聞いておるか?」
「特に聞いてないよ、ここに移動しろって言われただけだから、それより姉ちゃん、なんでまた姉ちゃん寝込んでるの!?」
「いや、それはだな...」
まさかエミリーが俺のせいで発情期になって、キスして倒れたなんて言えない
「少し疲れて寝てるだけですよ、心配しなくても明日には起きます」
「そうかなぁ、だったらいいんだけど」
心配そうなミキの声、何とも姉思いの弟だ。
「主様、来たぞ」
窓を見ていたリンは武装している男たちを見るとすぐにユウキに伝える。
「そうか、じゃあ全員気絶させてイクモの家の前におきにいくぞ」
扉を開けると目の前には先ほど俺が殴った男。
「死ねや!!」
大剣を振りかぶってきた、その瞬間
「がっ!?」
飛び蹴りが男の顔面にさく裂した。
「大丈夫です?王様」
男の顔面を蹴り飛ばした狐耳の少女は俺にそう言った。




