第61話頭痛
ユウキが目を覚ましたのは、見知らぬ場所だった。
なぜこのような所にいるのか、確認の為寝ている体を持ち上げあたりを見渡す。
ユウキはすぐに壁の形状からテントの中である事を理解する、だが何故、何処のテントの中にいるのだろうか?
「っ!........」
疑問を浮かべていると、頭に激しい頭痛が走った。
痛みのあまり頭を軽く手で押さえる。
最近はよく起こるこの謎の頭痛、これは夢が原因だろう。
この世界で生まれ変わってからと言うもの、毎日昔の夢を見る。
理由は分からないが、ユウキからすれば嫌な事この上ない。
だがこの夢も最近は何か理由があって見ているのではないかと思うようになった。
なにせまるでユウキに、復讐しろ、忘れさせないぞ、逃さないぞ、とばかりに昔の嫌な記憶を見せてくるのだ。
理由もなければ本人が望まぬ夢を見るわけもない。
(多分復讐のスキルのせいだろうなぁ.....)
ユウキがそう思うのには理由があった。
昔からそうだがどんなに強い力を持っていようと確実に何らかの代償を払はなければ強い力を行使することはできない。
この例として有名なのが、寿命を削ることによって強い魔法を使う事が出来たり、死者を思いのまま操る事が出来る代わりに自分の体を死者に貸し与えなくてはいけなかったり、強い魔力を得るために体の色が緑色に変色したりと、様々な事例が存在している。
そして復讐者のスキルの代償は、絶対に復讐と離れる事ができない、ユウキはそれが代償だと考えている。
復讐者のスキルを持っている者に昔の憎い記憶を見せ、絶対に復讐をするように、復讐を辞められないように仕向けているのだと考えている、まあこれは俺が勝手に考えたもので正しいとは限らないが。
だが、ここで少し気になる事ができる、もし、復讐対象を全て殺してしまったら復讐者のスキルの代償はどこに行くのだろう?
「おっ主様起きたのか」
頭痛の解明と復讐者のスキルについての謎を考えているとテントの入り口から金髪輝く幼女魔王様が入ってきた。
「頭が痛いのか?」
ユウキが頭を押さえているためそう思われたのだろう、リンの指摘に俺は頭から手を離すと
「なんでもないよ」
平然を装った。
「それよりここどこだ?馬車はどうなったんだ?カノンは?エミリーは?ミキは?どこにいるんだ?」
「まあ待て主様よそんな一遍に聞かれても答えられぬ、一先ずリーダーのところで話をしようか、というかなんとかしてくれ」
「リーダー?」
そんな疑問の声を出しながらリンに無理矢理引っ張ていかれた。
「お前が俺を無理やり連れてきた理由がよくわかった」
「じゃろ?」
リンに無理やり連れて来られた場所は一言でいうならばカオスだった。
人間、獣人、ドワーフ、が死屍累々と倒れこんでいる、その右手には酒瓶が握られていた。
「なんとなく状況は理解したけど一応聞く、なにがあった?」
「実は昨日道を間違えてこの村に来てしまったんじゃが、リーダーと呼ばれるものが話をしたいといったので聞いてやると、何やらひどい目にあって死にかけてるらしくてな、そこでミキがすこーしばかり元気づけようとして『大丈夫助けが来るよ!』を『大丈夫助けが来たよ!』と間違えて言ってしまってな」
それは本当に間違いなのか?故意的にやったとしか思えなのだが。
「その結果、助けが来たと思い込んだ奴らが止める暇なく物凄いスピードで宴会の準備を進め.....」
「その結果がこれか」
俺のあきれた声にリンもつられてため息をついた。
「で?その問題起こしたミキと、カノン達は?」
俺の質問にリンは指をさして教えてくれる。
「カノンとエミリーは見ての通り宴会の後片付けを、ミキはその......」
リンの指をさした方向には酔いつぶれ達の山。
「まさかあの中で一緒に酔いつぶれてるのか?」
首を縦に振り答えを教えてくれた。
できることならあまり子供のうちにお酒は飲ませたくないのだが。
この世界では何才だろうがお酒を飲むことが許されている、だが常識的に考えて子供のうちに飲ませることはしない事が多い。
それだけ危険なのだこの世界のお酒は。
いや、危険というより中毒性が多いと言った方が正しいだろう、酒の毒素は回復魔法で簡単に抜ける代わりに酒のとりこになることが多い、それほどまでにおいしいのだ。
「リン、お前が合わせたいリーダーはどこにいる?」
「あの中じゃ」
リンがさしたのはやはりあの山、俺は、はぁー、とため息を吐くと右手に回復魔法を準備した。
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「いやはや、助かりましたよ、まさか回復魔法を使えるとは、それなりに腕もたつのですか?」
あの後宴会で酔いつぶれた奴らを一人ずつ回復魔法で復帰させていったのだ。
「そんなことはありませんよ、ただ旅をしてるうちにけがをした場合すぐに治せるようにと、覚えただけです」
「そうですか、それは良かった」
今の言葉に少し違和感を感じたが気にせず話を進めることにする。
「申し遅れました、私はイクモともうします」
「こちらはキリアと申します、それで、なぜこのようなところに住んでいるのですか?」
「実は私たちは、愛の教団からの逃亡者なんです」
「愛の教団から....」
イクモから出た言葉に正直驚いた、愛の教団から逃げ出すなんてそうそうできることではない。
「愛の教団から逃げ出した私たちは命からがらこの場所にたどり着きました、ですが馬車を失いここから逃げることがかなわず....」
「それで?俺たちに何を頼みたいんだ?」
「馬車を譲ってもらえないかと....」
「もし、いやだと言ったら?」
「その時は、悲しい限りですが...」
イクモはそう言って手招きすると、後ろの男からユウキの首にナイフを突き立てる。
「力ずくでも」
「うん、いいリーダだ、仲間のためなら他のことを顧みない、だがそんなことをして本当にいいのか?敵を増やすことになるぞ?」
「大丈夫ですよ、あなた達程度であれば私たちでも倒せそうですから」
その言葉に俺はふっと笑うと
「では、私たちを倒せたら馬車を上げましょうか」
そう口にした。
イクモは俺の後ろの男にやれと指示を出そうとしたとき。
「大変です!魔物が攻めてきました!!」
部屋の中に脱走者の仲間の一人が慌てて飛び込んできた。
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「に、逃げろ!ーー」
「避難所へ急げ!」
脱走者の悲鳴が響き渡る。
その後ろでは人間の数倍の大きさのオーガが棍棒を振り回し、家を破壊している。
「くっそ!囲め、囲め、囲んでたたくんだ!」
脱走者の中にいるDランク冒険者数人がオーガを囲み戦っている。
「おい、俺がオーガの攻撃を弾く!そこをみんなは攻撃してくれ」
「わかったぜ!」
「しっかりと頼むわよ!」
みんなの応援を聞きながら男は一人オーガの前に立ちはだかると、盾を前に構え盾技スキル『挑発』を使用する。
男は盾を叩き魔物が気になる音を出す。
するとオーガは剣士を相手にするのをやめてこちらに向かってきた。
「こっちだ、こっちだ」
そう言いながら盾をたたき興味を引く。
「グガアアアアアア!!」
逃げている男に追いつけないことにしびれを切らしたオーガは棍棒を振りかぶり、すべてを薙ぎ払わんばかりの勢いで棍棒をふるった。
「馬鹿が!『パニッシュ』!」
オーガの棍棒にタイミングよく盾を構えると棍棒を勢いよく弾きとばす。
「いまだ行け!」
「よっしゃいくぞ!」
男のその言葉に待ってましたとばかりに、茂みから片手剣と大剣を持った男が二人飛び出していく。
「いまよっ!」
その後ろの木の上ァから弓を持った女がオーガの目に向けて弓を放つ。
「グギャァァァァ!?」
化け物さながらの悲鳴を上げて、右手に持った棍棒を地面に落とすと手を目に当てた。
それを見ていた大剣使いは片手剣使いの前に走り出ると、
「せいやぁ!!」
気合とともに一閃、オーガの両足を切り倒した。
「グガッ!?」
驚きの声とともに地面に仰向けの態勢で倒れこむ。
片手剣使いは倒れたオーガに飛び乗ると。
「一刀両断!」
剣技スキルを叫びながら、オーガのからだを切り裂いた。
「やった、のか?」
「お、俺たちが、オーガを倒した?」
信じられないことも無理はない、オーガを倒せるのは最低Ⅽランク以上でなければ無理と言われているからだ。
「すげえ、すげえよ俺達!」
「喜ぶのはいいけど、それよりまず報告にいこうぜ!」
「そうだな!」
喜びながら肩を組みあう男たち、だが一人だけが絶望に染まったような顔をしていた。
「ね、ねえ、みんな....」
「なんだよ、お前ももっと喜べよ!」
男がそう言うも、弓使いは無視してある方向を見続ける。
「あ、あそこ....」
震えながら指を指した方向には......
「う、嘘だろ」
大量のオーガの軍勢、死力を尽くして勝つことができたオーガが何十匹と大量にいるのだ。
「お、終わりだ」
この光景を目の当たりにして一人の男はあきらめる、が....
「俺達は冒険者だ、戦うことが役目だろ!?俺は戦うぞ」
もう一人はあきらめていなかった、その熱意につられ他の冒険者達も賛同し始める。
「俺もやるぜ!」
「私もよ!」
何故か勝てるわけがないのに、まるで勝てるような雰囲気になっていく。
「よし、皆行くぞ!」
男の呼びかけに一斉にオーガの軍勢に向かう冒険者、だが、その前に立ちふさがり冷ややかに止める者がいた。
「やめておけ、おぬしらじゃ死ぬぞ?」
それは金髪の幼女様、と赤髪の獣人の少女だった、そんな見た目の少女たちにやめろと言われれば逆に反発するだろう、なにせ見た目的に戦いも何も知らなそうだからだ。
「なにをいってるんだ、今すぐ君たちも避難するんだ」
「あなたたちがしてくださいよ、はっきり言って邪魔になるんです」
「なんだと!対して戦えないくせに何て言い草だ!」
そう叫んでいる男たちの後ろにはオーガが数体、いまだに気づいていないようだ。
「後ろ見なくてよいのか?」
「後ろに何があるってん、ってう、うわぁぁぁぁあ!オーガだ!」
悲鳴を上げた時にはもう遅い、オーガが後ろで棍棒を振り下ろしていた、男は恐怖心で目を閉じる。
リンはすぐさま駆け出すと男の後ろにいるオーガにジャンプして手刀で首を切り裂いた。
「あ、あんたは..何者なんだ..」
男は驚きのあまり後ろにしりもちをついた。
「じゃから言ったろう?邪魔じゃと、死にたくなければさっさと避難するがよい、まあ、これ以上戦うというのなら好きにすればよいがな、さてわしらは行くかカノン」
「はい、行きましょうかリンちゃん」
「いい加減その呼び方をやめてほしいのだが....」
そんな雑だんのようなものをしながら、オーガの大群に向かっていった。
その時ユウキはというと........
「っ!!」
ユウキは頭を押さえ、苦痛に顔をゆがめた。
ユウキは攻めてきた魔物がすぐにCランクの魔物だと理解した、そのうえ愛の教団を滅ぼす予定だったので少しでもステータスを上げようとオーガを殺しに向かおうとしたのだが、激しい頭痛に襲われ戦闘が無理そうなため最初のテントで休むことにしたのだ。
ユウキは布団に寝転がりながら頭を押さえ、消えろと念じ続けた、頭の中の記憶に。




