第59話ミクロス卿(後半)
二日連続投稿出来ました!!
密閉され空気が重い、桃色の光がライトアップされへんな空気を作り出している。
「何この匂い、変な匂い」
檻の中にいるエミリーはどうにか脱出出来ないかと檻の中を散策したのだが変な穴が空いているだけだった。
(それにしてもこれは、何でしょう)
不思議に穴を見た瞬間そこから煙が噴き出した。
いきなりの事で息を止めるのも忘れ吸い込んでしまう。
すると急激な眠気に襲われ、床に突っ伏してしまった。
目がさめると背中にはフカフカとした感触。
目の前にはにやけた顔のミクロス卿がエミリーに馬乗りになっている。
「えっ!?」
いきなりの事にビックリして声を出す。
どうにか逃げ出そうと腕と足を動かすが両方とも枷がつけられて身動きが取れないようになっていた。
「暴れなくていいよ、僕に全て任せておけばいい」
そう言ってミクロス卿は慣れた手つきでエミリーのブラウスを脱がせる。
「辞めて!触らないで!」
「反抗的なのもいいねぇ」
そう言うとミクロス卿はエミリーに身体をくっつける。
「僕はねエルフが好きなんだよ!君も僕の気持ちを理解してくれるよね!」
はぁ、はぁ、と荒い息を吐きながらエミリーの顔を見据える。
「嫌です!触らないで!近寄らないで!!」
「ふふふ、嫌よ嫌よも好きの内さ、僕達は両想いだね!!」
そう言ってエミリーの首筋をベロリと舐める。
「ひっ!!」
あまりの気持ち悪さに悲鳴がかすかに漏れ出た。
「さあ、力を抜いて!僕に全てを許すんだ」
そう言いながらスカートに手を伸ばす、ミクロス卿。
「い、いや、誰か.......キリアさん、みんな.....助けて.......」
エミリーの涙が溢れ、現実逃避をしようと目を閉じた瞬間、ドアが爆砕した。
耳障りな轟音とともに爆煙が部屋の中に入ってきた。
「な、何だ!!何が起きている!!兵士!おい兵士よ、返事をしろ!!」
部屋の前に見張りとして最も強い兵士を置いて置いたのだ。
ミクロス卿の返事に答えたのは兵士達の倒れる音と斬撃音だった。
爆散した扉からは血塗れの兵士がばたりと倒れる、その2人を踏みつけ現れたのは......
「キリアさん!!」
キリアこと、ユウキだった。
「悪い、少し遅れた」
ベッドに横たわっている、エミリーに軽く謝りミクロス卿を真っ直ぐと見据える。
「お前はっ!!...誰か来てくれ!!ここに侵入者が入り込んだ!!殺してくれ!!」
太った身体を揺らしながら大声で叫び散らす、何とも醜い。
「そんな事しても意味ないぞ?全員殺したし」
「殺した?嘘つくな!!お前みたいなガキに僕の優秀な兵士達が負けるわけないんだ」
「そっか、じゃあこれは何だ?」
そう言いながら足元にいる兵士を踏みつける。
流石に証拠があったためミクロス卿は認めたようで、すぐさま偉そうに懇願して来た。
「ふふふ、そうだ、君は強いから僕の部下にしてやろう!!さらに僕は偉いから馬鹿王に頼んで君を貴族にしてあげるよ、だから代わりにこのエルフを僕に差し出せ!!分かったな!!当然この高貴な僕の誘いに......」
「乗らねえよ」
否定の言葉を口にしながら黒剣を太った腹に突き刺す。
「えっ.....」
いきなりの事にビックリしたのか声を漏らす、でがすぐに痛みが全身に周り悲鳴を上げた。
「あっあがぁぁぁっ!?いっだぁい!?これを抜け!!抜け!!ーー」
言われた通りに抜いてやった後、
「うるさい口だな」
俺は呆れたような声を出し口に突き刺した。
「ふっ!?ふぐぅぅぅう!?!!」
何が声を出そうとしているが完全に無視してベッドに近づき手の枷を黒剣で切り飛ばした。
「大丈夫か?立てるか?」
「大丈夫でっ!」
そこまで言うと倒れこんでしまう、怖い思いをして力が抜けているのだろうか。
「仕方ない、前と後ろどっちがいい?」
「大丈夫、自分で歩けます」
「強がるな、もう前でいいな」
目の前まで行くとエミリーをお姫様抱っこをした。
「ちょっ!!やめてください!!」
こんな状況でも恥ずかしがる余裕があるらしい、だが。
「断る」
完全に切り捨てた、するとエミリーはマジで泣き出しそうな表情をしたのでブラウスを着させて、背中に背負った。
「エミリー、少しお前太っ.......」
「それ以上言ったらここから精霊魔法で吹き飛ばしますよ?」
「冗談だよ、冗談.....さて」
ミクロス卿に向き直り右手に火炎魔法LV2『火炎槍』を右手に発生させ握る。
そしてミクロス卿を殺そうとした瞬間
「待ってください!」
エミリーが声をあげた。
「なんだ?どうかしたのか?」
「キリアさん人殺しはいけない事です」
「......お前さっきまでどんな目にあわされていたと思っているんだ?それにやりかえしに来るかもしれないだろ」
「ぞ、ぞんなことはじない!」
口から黒剣を抜いたミクロス卿が血を吐きながらこちらに懇願して来る。
「だがらだすけてぐれ」
口がぐちゃぐちゃになっているため上手く呂律が回らなくなっているようだ。
「........分かったいいだろう、じゃあ行くぞエミリー」
エミリーの言う通りに殺さずに俺達は部屋を出た。
1人部屋に残ったミクロス卿は魔道具を手にしていた。
「はぁ、はぁ、ふふふ馬鹿な奴らめ、僕があんなやづらごどぎにやられるわげないだろ」
観念したふりをしていただけだ、あんなに素直に信じるとは馬鹿な奴だ。
「絶対にあのエルフを取り返してやる」
国王に、侵入者が来て襲われたと、直談判して国王親衛隊にあの白髪のガキを殺させてやる。
そう考え通信用魔道具を手にした瞬間、部屋が紫色の煙で充満した。
ミクロス卿がそれに気づいた時にはもう遅かった。
部屋が白い閃光と共に爆発四散した。
この時に気づいた、あの白髪の男は許す気など最初からないのだと。
俺はエミリーを背負いながら長い廊下を歩いていた。
しばらくの間無言だったが、エミリーは何かを決意するように言葉を紡いだ。
「あの、キリアさん」
いつもと違った声音に少し不安を覚えるが本人は真剣そうなのでちゃんと聞いてやることにする
「どうした?」
「私はキリアさんに話さないといけない事があるんです、前にキリアさん私に聞いて来ましたよね、どうして獣人とエルフが一緒に暮らしていたのか......実は私はミキの本当の姉じゃないんです」
「どう言う事だ?」
「.....私達の住んでいた村はエルフと獣人が一緒に住んでいる珍しい村だったんです、私はそのエルフ族村長の第三女でした。
そこの村では獣人の実験がされていました」
「獣人の実験?」
「はい、獣人は人と同じ作りをしていますが獣との混合種、獣の本能を引き出し凶暴化させ戦争の道具にする、そんな実験がされていました」
「凶暴化?そんな事が出来るのか?」
「はい、実際狼種は満月を見ると興奮したりと獣の本能が残っています、それを本来のものに直す計画でした」
「それになんの関係があるんだ?」
「私の友達、ミキの姉はその実験の犠牲者でした......」
「.........」
「今でも思い出せるんです、あの時の実験室の光景を......」
実験室の真ん中では1人の少女が悶え、血をはき散らしながら尋常じゃない力で暴れまわっていた。
『私の友達に何してるのお父さん!!今すぐやめて!!』
『うるさいぞエミリー!今とてもいい結果が出ているんだ!!少し黙っていろ!!』
父親に振り払われ床に尻餅をつく。
『っ!!』
話が通じない、だったら!!
エミリーは駆け出し、実験場の中に入った。
『何をしているエミリー!!今すぐ出てこんか!!』
エミリーはその言葉を無視して目の前の友達に話しかけた。
『大丈夫だから、私は味方だから、ちょっとだけ我慢して』
『うがあぁぁぁぁぁあ!!!!』
獣さながらの咆哮をあげエミリーに攻撃をかます。
『ぐっ!!だ、大丈夫だよ、少し大人しくしてて』
友達に優しく言いながら、友達についた装置を外した。
『よしっ!これでっ!!』
すべて終わる、そう思った、だけど体は一向に治る様子はない。
『なんでっ!?どうしてっ!?』
『エミリー!今すぐその装置を戻せ、友達が可哀想なら!!』
父親の言っている意味がよくわからない。
『エ、エミリー?どうしたの?』
目の前から聞こえた声は友達の声だ、意識が戻ったのだ。
『なに、これ、どうして私こんな姿に.......』
『だから言っただろうエミリー!!その装置はお前の友達の意識をなくす機械だ!その装置を外せば、苦しむのはお前の友達だぞ!!』
『なに言ってるの!意識が戻れば、制御できるでしょう!!』
『馬鹿娘が!!意識の力よりも本能の力の方が強いのだ!!そこの友達は意識があるままお前を殺すことになるんだぞ!!』
その言葉に驚きの声を出す。
『えっ!?』
『逃げて!エミリー!!』
友達の声がしたと思った瞬間、自分の体が吹き飛んだ。
『ガッ!?』
『早く逃げてよ!!お願いだから!』
そう言いながらエミリーを殺そうと着々と近づいてくる。
『やだよ、絶対に助ける!友達だもん!』
『っ!!.....わかったよ、だったらお願いがあるんだ』
友達は大きく深呼吸をすると
『私を、殺してくれない?』
涙声でそう言った。
『な、なに言ってるの!やだよそんなの、それに私には殺すなんて!......』
『出来るよ、エミリーなら....私信じてるからね!!』
『っ!!』
それが最後の友達の言葉だった。
この時私は精霊に願った、友達を救う力をください!!
『『炎精霊の激熱』』
この時私は願ったおかげで精霊に愛されし者の称号を得た。
「私が強い力を得たことを知った家族達は私を他の村との戦争の道具にし始めました、ある事を条件に」
「条件?」
「はい、催眠魔法で私をミキの姉に見えるようにして欲しいと......」
「だからミキの姉に.....」
「それから私はミキの姉として、戦争の道具として生きてきたんです、まあ道具と言っても一発魔法を撃つだけで終わるんですけどね」
それもそうか、あれほどの高火力だ、相手など一瞬で消し炭だろう。
「エミリーはエルフ族をどうしたいと思ったんだ?友達を殺されて、エミリーの事を散々苦しめてきたエルフ族を.......」
「.......殺したい...最初はそう思いました、ですが人殺しはいけない事です、それに本当はいい人達なんですよ」
「本当にそうなのか?」
逆に聞き返されると思っていなかったのかエミリーは声を上げる。
「えっ?」
「本当にいい人達なのか?ただお前の事を都合のいい道具くらいにしか思ってなくて、いつでも切り捨てられるような扱いだったんじゃないのか?」
「っ!?それはっ!!」
「どうなんだ?図星なんじゃないのか、俺の言った通りだけど認めたくないんだろう?優しい家族の背中をずっと夢見ているだけだろ?」
俺のその言葉にエミリーは耐えきれず声をあげた。
「あなたにっ!!あなたに何がわかるって言うんですか!?!?」
涙をポロポロとユウキの背中にこぼしながら、精一杯声を上げる。
「私が今までどんな思いで、過ごして来たのか!どれだけ辛くて悲しくて寂しかったのかあなたに分かりますか!?」
今まで必死に我慢し続けてきた思いが爆発した。
「私はっ!!私はっ!何のため生きているんですか!?友達も守れずにどうして!なんで私はっ!......」
「エミリー、お前の気持ちは俺には分からない.......結局自分の気持ちを一番理解しているのは、自分だけだからな」
少し突き放すような言葉を浴びせる。
「でも、もしお前より酷い目にあっている人がいて復讐したいと望んでいたらどうする?お前は蔑むか?それとも馬鹿にするか?それとも......手伝うか?」
「そんなのに私は協力なんてしません!!」
「でも、お前の復讐も手伝う、と言われたら?」
その言葉にエミリーの心臓が跳ねた。
(わ、私は、人殺しの手伝い...をする、のかな?....私の復讐の手伝いをして...)
少しの間沈黙し、口から出た答えはなんとも未完成なものだった。
「私は、手伝いたくは...ありません...でももし誘われたら...私は乗ってしまうかもしれません、ですからその時はキリアさんが止めてください」
涙声で俺にそう懇願をして来た、だが俺は。
「それは無理な相談だな」
普通に断った。
「えっ!?どうしてっ!?」
ひどく驚いているエミリーに、俺は顔を振り向かせ
「だって俺復讐を誘う側だからな」
悲惨な黒い目をしながら、エミリーの頭に手を置くと無属性魔法を発動させた。
エミリーはビクッと一瞬震えた、記憶が入ったのだろう。
しばらくの沈黙の後真っ直ぐとユウキの背中を見据え。
「あ、あなたは、何の為に生きているんですか?どうして生きていられるんですか?.....こんなに酷い目にあってまで......」
「エミリーも見ただろ復讐のためさ」
俺は最も醜い復讐者の目でそう言った。




