第55話エミリーVSミキ
エミリーに魔法を教え始めてから2週間ほどがたった。
エミリーも着々と強くなっている、リンの話によるとだがミキもとんでもないほど筋がいいそうだ。
兄弟揃って筋がいいとは産んだ親も優秀な遺伝子を持っていたことだろう。
とまあ、話は変わるが腕試しでエミリーとミキが決闘を行う事になった。
勝った方は今日の晩飯のハンバーグをもう一枚もらえるそうだ。
なんとも小さい決闘だ、そしてなんやかんやで審判は俺がする事になった。
勝敗の決定はその攻撃が致死判定か否かによって決められる。
「準備はいいか!」
「はい!」
「おう!」
2人の元気な声を聞きながら
「始めっ!!」
と声を響かせた。
「姉ちゃん先いいよ?」
「本当?じゃあお先に」
先制はエミリーだった、エミリーは精霊魔法『熱雪』を繰り出した。
エミリーの右手から出た魔法は一直線に空高く伸びると途中で破裂し辺りに雪を降らせた。
この雪はただの雪ではなく触れるとそこが火傷する。
だが一番の特徴は.......
「『精霊炎魂』」
炎系統の魔法を使った時威力が1.5倍から2倍に膨れ上がるという事だ。
正直この場面を直視していたにもかかわらず俺はその事が眼中にない、それよりもミキがレディファーストを覚えた事に愕然としていた。
エミリーの右手の炎弾は今までの比とは比べ物にならないほど大かった。
エミリーは躊躇なくその炎弾を放った。
(これはさすがに......)
ミキから意識が戻りエミリーの方を見ると巨大な炎弾がミキに向かって土を削りながら直進していた。
ミキの実力を否定するわけじゃないがさすがにきつい気がする。
いつでも止められるように右手に力を込めるが、その手をリンに優しく止められた。
「大丈夫じゃ、安心しておけ」
その言葉は妙に安心みがあったので俺は素直に聞き右手の力を抜いた。
「すごいよ姉ちゃん!!」
ミキは素直に賞賛をして、後ろの剣を取り出した。
(薄っすらとした剣に波紋がついている..........刀か)
ホープの国の遠く南東に和の国というものがある。
和のテイストを大切にしている国だ、そこに住んでいる武士という者達は剣柔のプロフェッショナルとも言われている、だが魔法が一切使えないのがネックだ、武士達は刀という変わった武器を使う。
実は一度見に行ったことがあり一本お土産に刀をもらってきたのだ。
だが、結局誰も使い方が分からず、料理長の包丁に就任したのはいい思い出だ。
そんな思い出に浸っているとミキが動き出した。
炎弾に真っ直ぐと対峙して刀を上段に構えた、そして
「おりゃぁぁぁぁぁあ!!」
気迫と共に一閃、魔法を真っ二つにした。
「ふふっ、見たか主様よあれがミキの固有スキル思力の剣じゃ!」
リンの言葉など聞く前に復讐スキルを発動させてミキの思力の剣の効果を探った。
思力の剣:事柄を上向きに考えれば考えるほど剣の鋭さ強度があがる。
要するに気分屋って事か。
となれば不利だ、ミキは今日という日を楽しみにしていた、なら絶好調だろう。
(エミリー、さあどうでる?)
俺は愛弟子がどうでるか期待する事にした。
エミリーは右手を前に突き出し精霊魔法『精霊の悲劇』を発動させた。
右手から荒れ狂う水流が放出され一気にミキに襲いかかった。
ミキは刀を横に構えると水流に向かって横薙ぎにした、エミリーの思惑どうりに。
ミキは切った水流を切ったのだ、当然水だ、切れるに決まっている。
ただ、水を切って刀が通り過ぎただけだ。
水を切っただからどうした?という事だ、いかに強くても切れるものと切れないものの区別がつかないようじゃダメだろう。
振り切った刀をすぐさま戻そうとするが間に合わず無防備な体に荒れ狂う水流が叩きつけられた。
このまま吹き飛べば致死判定だが......
水流はミキを巻き込んだ後も威力が劣る事なく突き進み木に直撃させた。
木は大きく揺れ木の葉を散らす、そこにミキの姿はない。
(どこにっ!?)
エミリーは辺りを見渡すがどこにも姿が見当たらない。
(上かっ!......)
気付いた時にはもう遅かった。
「うりゃぁぁぁあ!」
「くっ!」
とっさに右手でかばい逆向きの刀が腕に当たる、腕から鈍い音が響いた。
(折れたか?これでエミリーが不利......ってわけでもなさそうだな)
ミキの方を見ると左肩を微妙に竦めている、脱出した時に打ったのだろう。
ミキはチャンスを見出したため、一気にかたをつけようと刀を振りまわす。
我流にしてはしっかりとしている、リンが教えたのだろうか?
だがエミリーにはなかなか当たらない、俺に散々遊ばれていたからだろう。
「くっ!これでどうだ!!」
刀技スキル『五月雨』刀が弧を描き三連撃エミリーに叩き込んだ。
(これはやばい!!)
とっさに右手から炎を出現させ自分に当たる斬撃を肩代わりさせた。
スキルを使った後のほんの少しの間を間髪入れず腹に掌底をたたきつけた。
「ぐっ!?」
少し体が浮き地面に倒れこむ、そこにエミリーは馬乗りになると腰のナイフを取り出し首に当てる。
(何か、何かないか!?この状況を打開する何か!?)
それを理解していたのかエミリーは絶対に打開させないように周りに炎弾を複数個出した。
絶対に仕留められるように。
「決まりだな.......勝者エミリー!!」
「くっそー!!」
ミキが声を上げる。
「やりました!!キリアさん!!」
褒めて褒めてとばかりにこちらに近づいて来た。
その後ろではミキの肩にリンは手を置いた。
「大丈夫じゃ、仇はわしがとってやろう......エミリー勝負じゃ!!」
「ええっ!?」
流石に大人気ないだろ、仮にも魔王だろお前。
(ん?待てよ、これ使えるな)
「待てリン、流石に不公平で戦力差がありすぎる、だから.......俺が相手になろう」
「ええっ!?」
今度はカノンの驚きごえ。
「いいじゃろう、一度お主と戦ってみたかったんじゃ」
「決まりだな、カノン審判よろしく頼む」
こうして決闘二回戦目が始まった。




