第48話王族
実は結構話を抜いてます。
そのうち投稿すると思うので気長に待ってくれると幸いです
明日はついに城の完成だ、そして同時にユウキたちの旅立ちの日でもある。
そのため最後に獣人の国でのんびりと過ごしたいものだが、ユウキはほぼ完成形である城の会議室に呼び出されていた。
「なあ、なんで俺は呼び出されたんだ?」
鬱陶しい外出用のホワイトウルフの耳をつけているユウキは、指定された自分の席に座り、目の前のバルザに声をかけた。
「今日はこの国に最も大事なものを決める日だ、だからこの国復興に協力してくれた各リーダーを招集させてもらった」
右から、採掘班代表リン、回復班代表ミナ、情報班代表クリム、子供達の世話.カウンセリング.孤児院代表クルメラ、食料調達係代表ミト、戦闘部隊の強化代表カノン.フィリス、そして最後に可愛い代表.....
「そうかバルザ、招集した理由はよくわかったが、何故アリアがここにいるんだ?」
「それはだな、かわいい子の意見も聞きたいじゃないか」
「お前がシスコンなのはよくわかった」
「誰がシスコンだ、ただ妹が好きすぎるだけだ」
それをシスコンというのだが、全くわかっていないのだろう。
恥ずかしみもなく、どや顔を決めていた。
「それにクリムが呼んでくれって頼んできたんだ」
(クリムが?)
疑問に思ったが普通に流した、クリムの事だ、何の理由もなく呼ぶとは考えにくい、何か理由があっての事だろう。
「それよりなんだよこのメンバー全員知り合いだぞ」
「別にいいじゃない、その方がやりやすいでしょ?」
そういって俺の肩に馴れ馴れしく、頭を預けてくるこの人はクルメラ、ユウキたちの泊まっていた孤児院の管理人だ。
今までは子供たちと一緒に檻に閉じ込められていたそうだ。
なにやらリンと昔の馴染みだそうだが.....聞こうとしたら青い顔をされたので聞かないでおいた。
「クルメラの言う通りじゃ」
クルメラの言葉にリンも賛同する。
すると無言でにらみあい、何故か取っ組み合いを始めた。
今の要素のどこに喧嘩になる理由があるのだろうか。
「それもそうだが.......それよりどうして呼び出されたのか、いまだに説明してもらってないんだが」
「ああ、そうだったな」
そう言って、あからさまに大きくせきをして、ドンっ、と偉そうに机をたたく。
「ここにみんなを呼んだのは他でもない、今からこの国の名前を決めるぞ!」
「なんでそんなことを?」
「今までは獣人の国って呼ばれてたけどこれ、名前じゃないだろ?だからせっかくだし俺たちで名前つけようと思ってな」
「それいいですね!」
カノンを初めに、ほかのやつらも賛同し始める。
「じゃあ、こうしましょうか、今から紙を分けるのでそれに書いて皆さんの意見が決まったら、一斉に発表するということで」
クリムのこの意見に分かったように全員が了承を返した。
クリムはざっと皆の手元を見渡し、手からペンが離れていることを確認してから、言葉を発した。
「皆さんきまりましたね、では最初はリンさんから」
クリムが最初に指名したのはリンだった。
まあ、一番早くペンを置いていたしトップバッターとしては的確だろう。
「うむ、私が考えたのは、黒の国じゃ」
「おいお前、それただのお前の本名くっつけただけじゃないか」
「黒の国はないわね、だってこの国に黒要素ないもの」
「じゃあ次行ってみようか」
駄目だしに、リンはむくれながらクルメラに襲い掛かっていた。
クリムの次の声に反応して、ミナが立ち上がる。
どうやら時計回りに回っているらしい。
「次は私ね、恋の国なんてどうかしら?」
「それはあなたが恋バナが好きなだけでしょう?」
「いやですね、クリムさん」
「取り敢えずこれも却下で」
ミナは却下されたことに少し顔をむくれさせクリムに八つ当たりをしていた。
そんなことも気にせずフィリスが立ち上がる。
「次は私にゃ、ケモミミ王国ってのはどうかにゃ」
「それ可愛いわね!」
「でもさすがにそれは、恥ずかしいんじゃ......」
カノンがそう言いながらバルザとクリムを見ると二人とも首を横にぶんぶんと振っていた。
「じゃあ次はクルメラさん」
「ああ私ね、名無しなんてどうかしら」
「それってあえて、そういう名前にしたんすよね?考えるのめんどくさかったわけじゃないっすよね」
「あなたは私を何だと思っているのかしら?」
「淫乱のくそビッチ?」
「ふふふ、後で覚えてなさい」
「冗談っすよ」
冷汗を流しながらミトが必死に弁解すると、次はミトの番、逃げるように席を立った。
「これはとりあえず保留で、次は......」
バルザの次の指名、それにクリムが口をはさんだ。
「悪いのですが、国の名前を決める前に大事な話をしておこうと思います、この場を借りてお伝えしてもよろしいでしょうか?」
「俺らは構わないが」
ユウキがそう言いつつ席に座っている人を見るが特に異論はなさそうだ。
「すいませんが、アリアさんあなたの上の名前は何と言いますか」
その言葉にバルザとアリアがぴくっと反応をする。
まるで何かを隠しているかのように。
「おいおい、そんなのバルザの妹なんすからグレモニア=アリアに決まってるっすよ?」
「いえ、私の予想が正しければアリアさんの本名はミスティック=クロウド=アリア」
「え、それってまさか.....」
ミトがひどく驚いた顔をする、だってその名前は、アセロラと同じ名前なのだから。
「そう、この国の王族の名前です」
「え?ってことは何、アリアちゃんって王族なの?」
「いや、まだ本人が認めたわけじゃ.....」
みんなの視線がアリアに集まるが、アリアは下を向いている。
そのアリアの前にクリムは膝をつき、下を向いている顔を覗き込むかのようにして視線を合わせた。
「もしアリアさんが、よければこの国の王女になってもらえませんか?」
クリムのその発言は驚くべきものだった。
まさか王女を、この少女にお願いするなど誰も考えていないことだったから。
「え?........」
「今この国は血の繋がりのある者がいません、そして唯一つながりのあるあなたにお願いしたいのです」
「そ、それは.......」
「悪いが、少し考える時間をやってくれ」
話をうまく切ったのはバルザだった。
多分バルザは気づいていないだろうが、今の発言でアリアが王族であることを認めたことになる。
「分かりました、いい返事を期待しています」
クリムは小さくそう言って、自分の席に戻っていった。
そんな中バルザは、アリアを連れて会議室を後にした。
その時の時刻は5時を過ぎていた。
夜空の星が輝き、月明かりが照らす真夜中。
魅惑の森中心地の巨岩には人影が存在していた。
「よう、ここにいたか」
声を掛けてきたのは白髪の少年。
星が光り輝く夜更けに、バルザは城の裏の巨石の上に座りながら酒を飲んでいる。
それは昔からのバルザの癖で、何か事あるごとに、ここにきては酒を飲む、その癖によく付き合わされていたユウキはよく知っていた。
「何の用だキリア」
「いや、ただ世間話をしに来ただけさ」
そう言ってバルザの隣に腰を掛け、アイテムポーチから酒瓶を取り出した。
「高い酒持ってきたんだ、飲むか?」
「おう、くれや」
そう言ってこちらに伸びてきた手に、持っているグラスに酒を注いでやる。
すると一気にぐびっと飲み干した。
「お代」
「金とんのかよ」
「いや、金じゃない、お代は俺の話に付き合ってくれればいい」
その言葉に口を一文字に結び、ムスッとした顔で呟いた。
「安いお代だ」
「本当にそうかな?」
少し気になることを言って俺は話し出した。
昔々のあるお話を.....
『ある国にとても気さくな王様がいました、その王様は国民からの信頼も厚い立派な王様でした、ですが王様は、ある持病にかかっておりもうすぐ死ぬと予見されていました』
『そこで問題が生じました、王様には跡取りがいませんでした。妻と子供を作ろうとしてもなぜか子供はできませんでした、そのため孤児の子供を引き取り跡取りにすることにしました』
『孤児の子供を引き取る事まではうまくいきましたが、ここで二つの問題が発症しました。
一つは妻との間に子供ができたことでした、では跡取りの孤児はどうなるのだろうか、普通は殺されるなり捨てられるなりしただろう。だが優しい王様はそのまま家族に引き入れました、これが後にうれしい誤算となります。二つ目の問題は愛人が発覚したことです、そして愛人のお中には子供がいました、このことに妻は激怒して愛人を追放しろと命令されました、王様は多額のお金を渡し愛人を追放しました』
『今日は妻をお披露目する日でした、会場には国の人間ほとんどがいました。その中に妻を呼ぶと出てきたのはなんと愛人でした、国の人間は歓声を愛人と王様に送りました』
『もう今更、国民に言えるわけもない。ならば、立場を逆にするしかない。そう思い立った国王の部下たちは妻を追放し、愛人を妻としました』
『孤児の子供は妻についていきました、捨てられたことに共感してついていったのかは定かではありません、その孤児の子供の名はバルザと言い、そして、後に妻から生まれる子供をアリア、愛人から生まれる子供をアセロラとなずけました』
「.......」
「安いお代だったか?」
俺がにやけ顔でそういうと、不機嫌そうに口を結び、酒を飲み干すと、バルザはだらりと寝転がった。
「いいや全然、重くて俺がつぶれそうなくらいに高いお代だ」
「そうかそれはよかった」
悔し気な言葉に俺は笑顔で言葉を返す。
そんな俺が不気味だったのか知らないがバルザはさりげなく聞いてきた。
「.....誰から聞いたんだ?」
そんなの決まっているじゃないか、ホープの王様と獣人の王様は仲がいいんだ。
「遠い昔に白髭の悲しい目をした王様から聞いたのさ」
そう言って俺は憎たらしげに笑みを浮かべた。
その日の夜は妙に星が光り輝いていた事を覚えている。




