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復讐するため今日も生きていく  作者: ゆづにゃん
第五章 獣人の国復興
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第45話魔水薬

準決勝が終わり慌てて控室に戻ってみると、そこには、兄がいた。

俺はすぐさま兄に駆け寄り、けんか腰に言葉を発する。


「おい、ヒマリはどこだ、いえ!」


「そんなに熱くなるなよ、ちゃんとお前の部屋に返しといたぜ」


せせら笑うこの兄を今すぐぶん殴ってしまいたい。


「本当だろうな!」


「嘘じゃない、ほら、今すぐ確認しに行けよ、明日は決勝戦だ」


ニヤニヤと笑いながら言う兄は心底腹の立つ顔をしていた。

今すぐ殴り飛ばしたい。

だが、怒りに身をまかせる前に俺はヒマリのもとに向かっていた。


「ヒマリ!居るか!」


その言葉と同時に扉がバンッと叩き開かれる。

そこで目に映った光景は、


「なっ!?」


ヒマリが床に倒れ込んでいた。


「ヒマリ!!大丈夫か!!」


俺は慌ててヒマリを抱きおこす。

その時目があったヒマリのその瞳は........


「ヒマリ?.......」


虚ろな瞳をしていた。

どこも見ていない、ただ人間の体の機能としてどこか虚空を眺めているだけ、そこには大事な感情が抜け落ちていた。


「ヒマリ!返事をしてくれ、頼む!」


俺はヒマリの肩を掴み何度も揺すった。

それでもヒマリはピクリとも反応しない。


「お願いだ.......ヒマリ....返事をしてくれよ..........」


俺はこの絶望感に体が倒れてしまいそうになる、それでも俺はヒマリの肩を掴んでいた、でなければヒマリが倒れてしまいそうだったから、それ程までに体がなんの反応も示さなかったから。

まるで、人間としての大切な機能を無くしたような。

これじゃあまるで、


(人形だ......)


涙がこぼれそうになった、俺がヒマリをあの時止めなかったから、こんなことに......

自分を責めた、何も守れなかった自分を、ふがいない自分を。

だが、所詮人間なんてものはつらい現実を目の当たりにすると、いくら自分を責めていようと、言い訳をして他人に当たってしまうものだ。

そしてユウキには、絶好の当たる相手がいた。

「よお、俺のプレゼント気にったか?」


声が聞こえた方向にはにやけ顔の兄がいた。


「なんだよその顔、せっかく返してやったのに....まあ人形にしてからだけどな」


そう言ってくすくすと笑った。


「ふざ...けるな....」


ヒマリを床にゆっくりおろすと、ゆらりと立ち上がる。


「なんだ?声が小さくて聞こえねぇぞ?」


馬鹿にしている様子の兄に真正面からたいじして


「ふざけるな!!」


そう叫んだ、それと同時に愛剣を手にしてすぐさま第1の剣『爆聖剣』をまとわせ、ハヤトに向けてふるった。

猛烈な爆炎がハヤトを包み込む、だがハヤトは読んでいたとばかりに盾を前にかまえていた。

盾のスキル『奇盾』により、爆炎は全て盾に吸い込まれていく、すべて吸い込まれたのを見てから兄はにやりと笑い


反射(カウンター)


と口にした。

ユウキの放った爆炎は斬撃に姿を変えユウキの腹を切り裂く。


「がはっ!?」


斬撃はユウキを貫通せずそのまま後ろの壁にたたきつけた。


「おい、生きてるよな、流石にあんな手加減した反射で死なないだろ、それにしてもみじめだなユウキ」


そう言ってユウキをごみを見るかの目で語りかけてくる。


「なんで俺がわざわざここに来たのかわかるか?」


「......」


「何をしたか教えに来たんだよ」


ハヤトはそういうと悪辣に笑った。

ハヤトは知っている、人間はどうすれば苦しめることができるか。

その一つの手段として大事な人を傷つけるというのがある。

今ユウキにやっているのがそうなのだが、目の前で見せることができなかった。

だから、わざわざどんな目にあったのか事細かく説明しに来たのだ。


「なあ、ユウキ、ヒマリはな魔水薬で壊したんだよ」


「魔水薬.....だと!?....」


「ああ、そうだ」


魔水薬とはこの世界でいう違法物、所持していたのがばれた場合即刻打ち首だ。

それほどまでに国が弾圧しているものだ。

飲めば、気分がよくなり、天にも昇る快感を得られるそうだ。

だが当然、何かが起こる。

何かがとボヤ化しているわけではなく、ランダムで症状が起きるのだ。

目が見えなくなったり、しゃべれなくなったり、()()()()()()()と、様々な事例を聞く。


「そんなものをヒマリに....」


「そう言えば、魔水薬を入れられてる時も「どうかユウキ様には手出ししないでください」とかわめいてたっけ、本当に笑える」


笑っている兄、だがそのことに怒りを覚えずただ悶々と殺意がわいた。

それと同じように深い悲しみが心を支配していった。

遂にこらえきれなかったんだろう目からしずくが零れ落ちた。


「それにしても喜んでもらえなかったんなら仕方ない、ヒマリ(ガラクタ)は俺が預かってやるよ」


兄は心底楽しそうにヒマリに手を伸ばす。


「や...めろ」


「あ?なんだよ、お前に今の俺を止める力があるのか?おい、離せよ」


俺は兄の足をつかんでいた。

決してヒマリをどこかに連れて行かれないように。


「離せよ」


「......」


「離せっての」


「......」


「いい加減にしろ!!」


兄の怒り声とともに兄のけりがユウキの顔に叩き込まれた。


「ぐっ!?」


さすがの衝撃にユウキの手も剝がれ、吐血をこぼす。


「ったく、お前のせいで服に血が付いたじゃないか、まあいいか新しいのを用意させれば」


ヒマリを背負いながら立ち去ろうとする兄に声をかけた。

どこにも連れて行かせないように、必死に手を伸ばす。


「ま..て....」


「なんでこんな人形にこだわる?」


「ヒマリは....人形じゃない、人間だ...」


「ふーん、あっそ、別にどっちでもいいけどね人形だろうが、人間だろうが、俺のおもちゃなことに変わりはない、それにしてもそんなにこのヒマリ(ガラクタ)が欲しいのなら、決勝で俺に勝って見ろよ、そうしたら返してやるぜ、でも俺だけあげるのは不平等(アンフェア)だ......そうだ、俺が勝ったら、あのクルスってガキをもらうぜ」


勝手にルールを決めて、勝手にヒマリやルクスを賭け事に使い。

俺の言葉など全く聞かず、部屋を出て行ってしまった。


部屋は、異様な静けさだった。

その壁際に一人ユウキは倒れこんでいる。

そのユウキの顔は歪んでいた。

ヒマリを助けることができない、自分がみじめで、悔しくて、辛くて、そんな気持ちが織り交ざり歪んだ。

そして自問自答を始めた。

いくら頑張っても何も出来ない、俺は何なんだ?

何も救えない、大切な人さえ守れない俺は.......


【お前は何も頑張っていない】


どこからともなく頭に声が響いた、これは幻聴なのかはたまたユウキが壊れてしまったのかは分からない、ただユウキはその声に耳を傾けた。


【これが頑張った結果なのか?本当にお前は頑張ったのか?】


(できる限りのことはした、俺は頑張ったはずだ....)


【その結果がこれか?大切な人も守れずみじめだな】


(......)


【なぜ何も答えない】


(......)


【そうか、沈黙するということは、これがお前の望んだ事であるということだな】


「そんなわけあるか!!」


つい言葉に出して怒鳴りつけてしまった。

相手は幻聴だというのに。

ユウキが怒鳴りつけても声は止まることなく話続けた。


【なら問おう、なぜお前は動かないでそこでくすぶっている、なぜこの現実を変えようとしないのだ】


(......)


【また沈黙、結局お前はこの現実を受け入れているのだ、そして現実を変える努力さえしない】


(....うるさい)


【そんなお前だから大切な人を失う】


(うるさい!)


【優しい王子?そんなわけない、ただの何も出来ない、何もしない王子の間違いだろう?】


「黙れ!」


ユウキはまた怒鳴り耳をふさいだ。

その様は現実を受け入れず、縮こまる子供のように見えた。


【それが受け入れられないのならば動け、この現実と戦え!】


「無理だ...俺には」


【ならまた大切な人を失うか?】


その言葉にバッと顔を上げる。


「いやだ、もう誰も失いたくない」


そうだ、負けたらクルスまで.......

そう思うと心の中にある思いが浮かび上がった、負けられない、と。


【まだその思いが残っていたのなら、私は安心だ】


そう言って心底安心したような声を出した。


「なあ、お前は誰なんだ?」


すると、愛剣が純白に輝き始め、ユウキの目の前に浮いた。


【私は七聖剣、第7の剣、活人剣、我が主よどうか勝つことを願っている、そして最後に一つ、感情に素直になって下さい、私からはこれだけです、どうかご武運を】


そう言うと愛剣は輝きをやめて地面にゴトッと音を立てて落ちた。

俺はその剣を腰に携えたちあがる。


「スキルにまで助けられてたら世話ねえな」


自嘲気味にそうつぶやき外に出た。

その時の感情に素直になったユウキの顔は.....

醜く歪み、殺意というなの感情があふれ出ていた。


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