第2話 ステータス
ドルトンの子供に生まれ変わってから1年がたった。
ようやく喋れるようになり、歩くことも出来るようになった。
喋れるようになるまでの1年は地獄のような日々だった。
ドルトンがミルクを持って来て自分に飲ませてくるのだ。ミルク自体はとても美味しいが、ドルトンが飲ませてくれていると思うと吐きけがする。まだましなドルトンの妻に飲ませて欲しいと思うが、いまだ会ったことが無い、多分俺を産んで死んでしまったのだろう。
今日は、木のさくから出してもらえた、家の中ではほぼ自由に行動が出来るようになった、しかもドルトンは仕事が増えたらしく朝と夜しか家にいないと来た。
これはチャンスだ、今日ドルトンが家を出て行ったらステータスを見てみよう。
「じゃあいってくるねー」
とドルトンがこちらに手を振ってくる。
なのでこちらも気持ち悪さと吐き気をこらえて、手を振り返す。
本当は、「いってらっしゃい」と言っても良いのだが、この歳で言葉を出すとおかしいと思われるかもしれないし、そんな言葉をかけるにも値しない。
さて、領主も居ないしステータスを見てみよう
「ステータスオープン」
子供とは思えないほど活舌のいい言葉と共に目の前に文字が浮かび上がった
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ユウキ LV1 2歳
HP:3
MP:0
筋力:5
スタミナ:5
防御力:3
器用さ:5
魔法:なし
スキル:なし
固有魔法:なし
固有スキル:復讐者LV1
称号:元王様 復讐する者
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「ステータス弱すぎだろ......」
ひどすぎて言葉に出てしまうほどだった。(普通は、平均10以上は、当たり前なのに)と、とても落ち込んだ、っていうかHP:3ってなんだ!?転んだだけで死ぬぞ!?
ステータスに多少の文句はあるがそんなことも言ってられない、気をとりなおして固有スキルを見てみることにする。
空中に浮かび上がる文字の『復讐者』と書かれた欄を触ると新たな文字が浮かび上がった。
復讐者:自分が恨んでいる者にダメージを与えるたびに相手の魔法、スキルステータスをランダムで奪う。
自分と同じように復讐心のある者に『復讐者』の固有スキル芽生えさせられる。だが同じ内容の能力かは、分からない。
恨んでいるもののステータスを全て見ることが出来る
強すぎる、すぐに確信した。
相手のHPを1でも削れば能力が貰える、まさに最強と言っても過言ではない。だが今の俺にはこれが出来ない、なにせHP1も減らせないから。
(魔法....覚えてみるか?...)
だから俺は過去のトラウマである魔法を覚えることにした、魔法ならば赤子の筋力など関係なく威力を出すことができる。それに魔法無効のスキルを持っているのは勇者達くらいだから、他の奴らにはだいたい効くだろう。
その考えのもとドルトンの書斎にかってに入って魔導書を読みあさり始めた。
「これなんか序盤に覚えるものとしていいんじゃないか?」
それは『初級魔法、火、水、風、土、光、闇、これさえ読めばあなたも今日から魔法使い!』という題名だ。
なんか胡散臭いような気がするがまあいいだろう。
「原初の火よ、
始まりの火よ、
その力もって燃やし尽くせ、ファイアーボール」
火の初級魔法『ファイアーボール』前世魔法が苦手だった俺でも使えた魔法だ。
だが、今使ってみれば...
「これは失敗なのか?」
ファイアーボールと言うにはあまりにも小さい、ミニミニスモールファイアーボールと言ったところだろうか。
だが、大丈夫だ、練習あるのみ。
コツコツ行こう、そう胸に誓うと。
「げほっ、げほっ...やばいなこれ...」
体に異常な程の負荷が急にユウキの体を襲った。
床に手をつき、咳をする。
多分魔力切れのせいだろう。
それにしたってこんなに早くなくなるものだっただろうか。
「少し....休もう...」
そう口にすると書斎のソファに仰向けに寝転がる。
本を目隠しの用に顔に置き瞼を閉じた。
こんなふうに魔法の練習をこっそりとし続ける。そんな毎日を、何日も何日も繰り返していた。
♯
3年間、毎日を復讐するためだけに費やしていたある日、
また、こっそりと魔法の練習をしていた。
「原初の炎よ-----ファイアーランス」
長々しい詠唱を口にして火魔法LV2の『ファイアーランス』をドルトン似の岩にたたきつける。
『ファイアーランス』は、岩の真ん中に拳大の大きさの穴を開けた。
「ふースッキリした」
最近ドルトンを殺したくて殺したくてたまらなくなってきたため岩をドルトンに見立てて破壊するのが日課になっている。
スッキリしたからまた書斎に行こうとした。
(今度は何の魔法を....?)
だがその時芝生を踏む音が聞こえ右を振り向いた。
そしてやってしまったと後悔した。
「これは....お前がやったのか?」
そこには驚愕の表情をしたドルトンがいた。
魔法を撃ったところを多分見られているため嘘を付くだけ無駄だろう。
(ここは正直に答えるか?)
「はい、そうです」
嘘いつわりなくそう答えると。
ドルトンは急に顔をゆがめ、俺の肩を掴み上げた、その力は子供に向ける力ではない。
(怒らせたか?...)
そんな風にドルトンを見ていたが、体を微かに震わせながらいった。
「お前は、魔法の才能がある。その才能を伸ばすため、私の知っている最高の魔法使い2人に教えにきて貰おう」
といったのだ。
その震えはまさかの歓喜によるものだったのだ。
「何故、教えてもらわなくてわいけないのですか?」
率直な疑問だった。そこまでして魔法を覚える必要はないと思うのだが........
ドルトンの家柄は貴族である、そしてこの家はドルトンの持つ家の中のひとつに過ぎない。
確かに戦うことを主にしている貴族はいるが、ドルトンの家系はまったく違ったはずだ。
どうしてか?その問いにドルトンは、
「お前が魔法の才能を高め、冒険者になって家柄のために稼いでもらうためだ」
クズだ本当にクズだ子供に普通こんな事言わないだろう。
(殺したくなる、ファイアーランスを顔面に叩き込んでいいかな?)
「まあ、お前にはまだ分からないだろうけど、私の言うとおりにしてればいいんだよ」
と言いわはははははとドルトンは愉快そうに笑う。
(こいつの思わくにのるのは借だが....知りたい魔法もあったしのってやろう)
「その2人の魔法使いは、明日から家に来てもらうからしっかり学ぶんだぞ」
「分かりました。しっかりそのお2人から学ばせていただきます」
そう言いながらユウキは、優雅に一礼をして見せた。
その時下を向いていたその顔はどれだけ凶悪な顔をしていたことだろうか。
ドルトンは全く、息子の止め処ない殺意の片鱗を一度たりとも理解したことはおろか、見たことも、感じたことも無いのだろう。