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復讐するため今日も生きていく  作者: ゆづにゃん
第四章 獣人の国崩壊
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第35話潜入5

早めに投稿できました。


エルツ城4階東側の長廊下。

バルザは一人そこの窓枠に寄り添い下を向いていた。


「バルザを発見しました、今すぐ兵士を呼んできなさい」


これを見た時すぐにチャンスだと感じたクリムはすぐさま一緒にいた兵士に命令をした。


「分かりました!」


クリムの命令通り兵士はすぐに走り出し他の階層にいる兵士達を集めにかかる。

そんな中クリムは一人、こっそりと顔を覗かせ見つからないようにじっとバルザを観察する。


(様子が変ですね....)


隠れもせず逃げもせずただ二階の窓枠に背を預けている。

あの、諦めの悪い男が諦めた?いやそんなはずはない。


(何かあるのでしょうか?....)


そんな心配をしてみるも、そんな事を考えるだけの脳があの男にあるとはおもえない。


「兵士、集まりました、反対側の廊下も封鎖しました」


(考えるだけ無駄ですかね)


兵士達の集まった声を聞き、自身の考えを勝手に結論づけ終了させる。


「ありがとうございます、では行きましょう....大罪人を捕まえに」


後ろに大量の兵士を引き連れバルザに近づいて行く、だがそれでも逃げないし、焦った様子も見せない。


「もう逃げ場はありませんよ」


クリムにそう呼びかけられたその時......バルザは敵の前で背を見せると、おもむろに拳を振り上げた。


(まさかっ!?....)


「今すぐバルザを止めなさい!!」


だがそんなクリムの声ももう遅い、たった数秒の油断、バルザが窓を破るには十分な時間だった。


窓ガラスから子気味良い音が鳴り、ガラス破片が飛び散る。

そして自分で割った窓の枠に飛び乗り、ニヤリと口元を歪めると。


「お前らこれだけの人数で俺を追いかけといて捕まえられないとか、馬鹿じゃねえの!?何が獣兵だよ!たった一人の男に惑わされてるなんて.....ブハッ!わはははは!!考えるだけでおかしくて笑えてくるな!........じゃあな間抜けな兵士ども!」


そう言って窓から外に飛び出した。

その瞬間、兵士達の怒りが爆発した。


「「「何だと!?」」


「ふざけんじゃねぇぞ!?」


「ぶっ殺してやらぁ!?」


兵士達がいきり立ちバルザをすぐさま追いかけようとする。そんな中一人冷静に


「相手の挑発に乗ってはダメです」


淡々とクリムが停止の言葉を口にして、手を横に突き出し兵士の動きを止める。

流石クリムさん....どんな時でも冷静でかっこいい!

そんな風に思っていた兵士達は次の出来事を見て青ざめた。

なんと、かっこよく決めていたクリムの頭に拳大の大きさの石が飛んできた。

窓ガラスを破り、良い音を立てて見事にクリムの頭に命中。

クリムが痛そうに頭をさすりながら窓の外をみると、バルザがこちらを見て転げ回りながら一人爆笑していた。

そのバルザの様子がただの悪ガキにしか見えない。

流石にクリムでも頭に血管を浮き出させていた。


「あ、あのクリム隊長?」


「なんですか?それよりみなさん今すぐにバルザを捕まえに行きなさい......それともなんですか?私の命令が聞けませんか?」


顔には怒りを出さないようにしているが確実に怒っていると判断できた兵士達は。


「は、はいぃぃぃぃぃ!?」


もうこれ以上怒らせないよう、自身達の煽られた怒りも忘れて一斉に窓から飛び降りバルザの後を追って行った。



「これがあなたの狙いですか」


巨岩の上、一人あぐらをかき偉そうに座っているバルザにクリムは嘆息マジなら言葉を口にした。


「迷路クリアおめでとう、クリム」


そんなクリムにバルザは憎たらしく笑ってここまで来れたクリムを祝福した。


城の裏側に存在している森、通称魅惑の森バルザはそこに逃げ込んだ。

そこの森には数々のトラップが仕掛けられてある。

このトラップは昔、ユウキと動物の狩をするときに使った罠だ。

結局この時どっちの方がいい罠を作れるかで争い、罠だらけの森になってしまったのだ。

そんな森だ、当然罠のない道順を知らない兵士達は当然罠にかかる。そしてこのいやらしい所は所々にある茨城が道を塞ぐのだ。

そしてゴール地点にはバルザがよく座る、そしてよく酒を飲む巨岩の上にたどり着く。


「にしてもよくトラップにハマらなかったな?正直誰も抜けて来ないと思ってたんだがな?」


「一応団長ですから、この程度でやられていては示しがつきませんよ」


「すげぇな、よくもまあこの程度....なんて言えたもんだ...」


罠の中には、エグいものが多々ある。

吐き虫、これは衝撃を与えると人間のゲロに似た臭い物質を構成する虫だ。

それを大量に配置した落とし穴とか、何個もあった気がする、あれがこの程度で済ませられるものではないと思う。


「屁肉にしか聞こえないですけどね。それよりあなたの狙いは分かっています。兵士を全滅させる事でしょう?」


「それ以外どんな狙いがあるんだよ.........そうだ聞きたい事があったんだった、森に居るので兵士は全員なのか?」


一瞬伝えても良いものかと考えたが、隠した所で無駄だろう。


「そうですよ、まんまとあなたの罠に引っかかりましたよ」


「そうか、それは良かった....おっ!!ジャストタイミングじゃねえか!!」


兵士が全員罠にかかったことに嬉しそうに頬を緩める。

その瞬間に映り込んだ光景に岩から立ち上がり、驚きながら城を見る。

キリアのやる予定だった()()()が始まった、そう確信して、面白そうに城を眺めた。


「ほら、お前も見てみろよ」


怖い顔をしたクリムにもそう促すが、バルザから目を離すことなくキッと睨みつけていた。


「そんなに警戒するなよ........ほら後ろ向いてるからさ」


そう言って、バルザは後ろを向いて手を組む。

だがそれでも警戒を緩めずにクリムはそっと城の方を向いた、そしてその光景に目を奪われた。


「なぁ!?なんですかあれ!?」


驚愕の表情をしながら城から目が離せなくなる。

それもそうだろう、なにせ、おかしな事が起きていたのだから。

城が丸々と紫色の煙で覆われ、姿が見えなくなっていた。

正直なところバルザも何が起こるのか分かっていない。


(まあ、そこまでのことじゃないだろ)


そんな風に思っていたら。

いきなり、簡単に、なんの前触れもなく、激しい閃光のあと爆発した。


「なっ!?なぁぁぁぁぁあ!?」


驚きの声を出しているバルザと、口を開けたまま固まったクリム。

そして次の瞬間。


「ーーー」


爆発した後に遅れて耳をつんざく爆音、そして吹き荒れる爆風。

とんでもない爆風で少し油断するだけで吹っ飛びそんなレベルだった。


爆風が収まると、体の強張った力をそっと抜き、ふぅと息を吐くと、完全に消滅した城を一瞥して。


(あいつ何やってんだー!?)


と言う気持ちと


(よくやったぁー!!)


と言う気持ちで言葉にならなかった。

そんな様子のバルザの隣ではクリムが呆然と立ち尽くしていた。

あまりの出来事に脳が処理しきれていないのだろう。



1時間程前の事。

ユウキはスモッグ石を城に均一に配分していった。


「これで最後だな、流石に200個置くのは辛かった」


ため息まじりにそんなことを言い、肩を伸ばし体を伸ばす。

だがこれも復讐の為、そう思うだけでやる気が出ていた。


(後はアセロラを連れてくだけだな.....)


そう思うと顔がにやけてしまう。

ああ、どんな事をしてやろうか。

その事で頭が一杯になっていく。

早く、早く、殺したいな。

残酷な想像をしながらアセロラの場所を目指して浮き出つ足が歩き出した。


エルツ城3階、真ん中辺り。

自分の偉さを誇るかのように描かれた肖像画、その2つの肖像画の真ん中にある豪華な扉をゆっくりと開けていく。

そこにはアセロラが獣人の子供を嬲っていた。

それを見てユウキは怒りではなく、安堵した。


(ああ、良かった。俺が思った通りのクズでいてくれて.........)


とりあえず、俺に気づいていない(指輪の効果で)アセロラを軽く嬲る事にした。


「ほらっもっと鳴きなさい」


「い、痛い.....誰か...助け...」


そう言って子供の顔を容赦なく殴っている、既に子供の顔は腫れていてうまく喋れていない。

だがそれでも殴り続けるアセロラの髪の毛を掴んだ。


「痛っ!?....誰!?」


後ろを振り向くが当然見えるわけもない。

頭を掴みながら顔面にガチの本気の膝蹴りを叩き込んだ。


「ビギャッ!?」


何か潰れた音がして、手を放してやるとそのまま地面に倒れこんだ。


「あれ?やり過ぎた?」


できる事ならもう少し嬲りたかったのだが、まあいいか。

指輪を外して地面に倒れこみ顔から血を流している、アセロラを背中に担ぐ。

そして子供に近づいて行き子供の顔に手を触れさせた。

一瞬びくっとしたがあきらめているのか逃げるそぶりは見せない。

ユウキはその顔に惜しげも無く回復魔法『ハイヒール』をかけた。

子供の顔があったかい光に包まれていく。

完全にけがが治ったのを確認して。


「今すぐここから逃げろ、わかったな?」


子供に有無を言わせずこくりとうなずかせる。

それを確認して、スモッグ石を置いてから部屋を出た。




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