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復讐するため今日も生きていく  作者: ゆづにゃん
第四章 獣人の国崩壊
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第34話潜入4


(うーむ.....)


バルザは首を左に曲げ、管理室を覗く。

まるで泥棒のように見える.......いや、その通り今泥棒を働こうとしていた。


エルツ城3階、食堂を右に曲がり、武器庫を更に右に曲がった先にある管理室。

そこにバルザは来ていた。

なぜここに来ているのかというと、管理室には、全ての鍵が揃っている。

その中にある奴隷解放のため必須な牢屋の鍵を取りに来たのだ。


(1.2.3.4、見張りは4人か.........まあ、こんなに警戒する必要もないか、どうせ俺の姿見えないし)


カノン同様すっかり指輪の性能を信じきっていたバルザは己の中指に指輪をはめ、管理室の中に入って行く。

まるで泥棒のように一歩、一歩、慎重に音を立てないようにこそこそと。

鍵まであともう少し、手を伸ばせば届くという所で、一人の兵士が声を上げた。


「んん?......なんか変な匂いがしないか?」


藍色の髪を携えた獣兵は慣れない匂いに、バルザの目の前で鼻をすんすんと鳴らし、疑問の声を上げる。

そう言われて他の兵士達も鼻をすんすんと鳴らしながら匂いを嗅ぎ始めた。


「本当だ!なんかおっさんの匂いがするぞ!?」


侵入者の可能性があり、真面目に対処するべきはずなのに、お調子者で有名な兵士が場を乱した。


「違うこの匂いは馬鹿な匂いだ!!」


そんなふざけた事を言い出した一人の獣兵に、他の獣兵たちも半分呆れ顔で付き合い始める。

やはり姿が見えないというアドバンテージは、他の獣兵達に勘違いだと思い込ませるのには十分だったようだ。


「馬鹿な匂い?おいおい、なんだよそれ.....」


「ああ、俺達の副団長と似たような匂いだと思わないか?」


お調子者である獣兵にいわれ少し間に受けた、獣兵は鼻をすんすんと改めて鳴らし。


「言われてみれば少し似たような匂いだ!だけどこっちの匂いの方が数段臭いぞ!?」


「って事は副団長以上の馬鹿がいるって事だろ!!」


「それやばいだろ!」


そう言って兵士達はゲラゲラと笑った。


(.........こいつら!.......)


そんな一人の兵士の肩がトントンと後ろから叩かれた。


「?誰だよ..........」


獣兵の一人が文句ありげな言葉を口にしつつ振り返ると、言葉を失った。

そこに居たのはこめかみをピクピクさせている、鬼、もといバルザだった。

一人の獣兵の様子がおかしい事に気づき他の獣兵も同じ方向を向く。

そして全員が固まった。


「馬鹿で悪かったな!.....」

その言葉にどきりと、心臓が跳ね、鼓動が速くなる。


「あ、あの、バルザ元隊長........今の話、どれくらい聞いてました?」


確認せずにはいられなかったのだろう、それによってどれ程の間に合うか大体理解できるから。


「最初から最後まで」


その言葉に兵士達は冷や汗が止まらなくなる。


「安心していいぞお前ら一人1発だ」


そう宣言したと同時に管理室に4っつの絶叫が響き渡った。



「ったく、手間かけさせやがって」


悪態をつきながら牢屋を目指して歩いて行くバルザ。

その手にはさっきの獣兵4人が頭に巨大なたんこぶを作りひきづられていた。


(ん?)


その時突如として変な違和感を覚え後ろを振り向く。

だがそこにはだれもいない。

変に思ったが、特に気にすることもなく、牢屋に向かって歩いていった。



バルザが自分が捕まっていた場所に来てみると、いきなり空気が重くなったのを感じた。

場がどんよりとした、息苦しい雰囲気に支配される。

まあ、それも当然と言えば当然なのだろう。

なにせ、こに捕まっているのの大半は売られるか、アセロラの遊び道具にされるか、もしくは死のみだから。


(そりゃあ諦めてるよな......)


他の獣人達が下を向いている中、その牢屋を通り過ぎた奥の奥から、騒がしい声が響いてきた。

ふと、気になり奥に言ってみればそこには対照的な一人の男がいた。


「だせ!!ここからみんなをだせ!!!」


この男は獣人達のアセロラに対する不満の心を一つにまとめ反乱を起こしたリーダーだった男で、1番の犯罪者という事になっていて、死刑が決まっている。

別に反乱軍のリーダーだからと言うわけではなく、アセロラがただ単にこいつが気に入らないらしい。

たったそれだけで1番の犯罪者、本当にこの国は終わっていると感じざるおえない。


(こいつでいいか、心も折れてないようだし.....)


ほぼ適当に男の牢屋の目の前まで来てみる。

すると男はバルザの顔を覗き込むかのように見てきた。


「あ、あんたバルザか!やったぞ!ついに助けが来たぞみんな!!」


「あんまり大きい声を出すな、とりあえず鍵をそっちに投げ入れる、手錠を外して外に出てこい」


そう言って鍵を投げ入れた。

男はその鍵を受け取り、巧みに自分の手錠を外した。

そして牢屋の扉を開けて外に出てきた。

すると、男はその場で思い切り息を吸いこみ、そして吐き出した。


「久々の外の空気うめ〜!!」


「おい、そんなに大きい声を出すと.........」


「こわーい兵士さんに見つかってしまいますよ」


その声を聞きとっさに振り向く、そこには...........


(おいおい、嘘だろ.....)


50人近くの兵士達がいた。

そしてその先頭に嫌味な男クリムがいる。

クリムはバルザを見て、何故か少し微笑み、すぐにキッと眉をひそめた。


(ちくしょう.....俺の事つけてやがったな.....)


偶然鉢合わせてこの人数というのは流石におかしい、あらかじめつけていた、もしくは待ち構えていなくては、無理だ。


「ちッ!おいお前、名前なんだ!?」


「ミトだけど?.......」


「じゃあミト、今すぐその鍵を持って逃げろ!」


「えっ!?バルザは、どうするんだよ!?」


「こいつらを倒したらすぐに行く」


「でっでも.......」


「ぐちぐち言ってないでさっさと行け!!」


その言葉に、ギリッと歯噛みしてから走り去っていった。


「.........」


その様子をクリムは黙って見ていた。

ミトが走り去ったのを確認してから口を開く。


「正直に言えばいいじゃないですか、お前がいると足手まといだ、と」


「悪いが俺はお前みたいに性格が終わってないんでね」


「そうですかね?私はその化けの皮の下にいる鬼に言っているのですけどね」


「...........」


「...........」


お互い皮肉のような事を言い合い無言になる。

そして、


「者共かかれ!!」


「うおぉぉぉお!!」


その言葉と同時に地面を蹴り、バルザは兵士の中に一人突っ込んでいった。



「はぁ、はぁ、はぁ」


肩で息をしながら下を向く。

そして呼吸を落ち着かせてからグワッと顔を上げた。


「みんな、助けに来たぞ!」


「............」


その言葉に誰も声を返さなかった。

ただ下を向きながら死んだような顔をしている。

だがミトは無視された事など気にせず、話しかけ続ける。


「今からこの鍵を投げ入れる、この鍵を使ってなんとか手錠を外してくれ、その後は.........」


「自分の意見ばっかり押し付けるなよ!!」


ミトの声を遮るようにそんな怒り混じり声が飛んでくる。


「俺達はあんたのせいでこれから地獄のような日々を送らされるはめになるんだ!!なのにどうして憎んでいる奴の顔なんか見なくちゃ行けないんだ!!」


「そうよ!あなたが私達を騙すから、こんなことに.........」


「そうだ、俺達の子供が売られたのもお前のせいだ!」


はっきり言って自分勝手にもほどがある。自分達で勝手にミトの話に乗ってうまく行かなければ全てミトのせいにして自分のせいじゃないと言い訳をする。誰しもが自分勝手だ、そう思うだろう、だが

反乱軍の獣人達はミトが悪くないと理解しているのだ、それでもミトに八つ当たりをしなくては心の平穏を保てない。

それを理解しているのか分からないがミトはただ牢屋の前で足を曲げ、頭を地面にこすりつけた、つまるところ土下座だ。


「本当にごめん、確かに俺のせいだ、全部俺が原因なんだ。俺の浅はかな行動でみんなをつらい思いにさせてしまった。こんな馬鹿なリーダーの言うこともう信じられないかもしれない、だけどお願いだ、しんじてくれ!」


「..........」


そう言って地面にさらに頭を深く擦り付ける。

何度も、何度も懇願のように、泣き叫びたくなる声を抑え、必死に訴えかける。


「頼む、なんなら俺の事を裏切り者として処刑してくれたっていい、だからお願いだ諦めないでくれ!!」


ミトの行動に、言葉に心が動かされたのか、奴隷達の顔が辛そうな表情になる。

このミトは自分はどうなってもいいから、生きてくれと言っているのだ、そこまで言われて心が動かない方がおかしいというもの。


「.........あんたの気持ちはよく分かった、だが俺達にもう構わないでくれ」


「頼むから俺達に構うなよ、これから俺達は奴隷として売られる、もし今逃げ出してこれ以上酷くなったらどうするんだ、死刑になったらどう責任をとってくれるんだよ!!」


「そうよ、責任とりなさいよ、それが嫌ならさっさとここから消えなさいよ!......」


「そうじゃ、わしらが今逃げては先に売られた者達に面目(めんぼく)が立たんのじゃ.....」


その言葉は牢屋に居るもの達、全員の心の声を代弁したものだろう。

だが、ここまで言われてもミトは諦めず、逆に反抗的に言い返した。


「確かにみんなの言ってる事も、もっともな事だ。でもさ奴隷として暮らす方が死ぬよりマシって本当にそうだと思う?ただ死んだような顔をして生きていく、そんなの辛いよ.........」


「.........」


「それに面目が立たないって言うけど、じゃあ逆に聞くけど先に売られた人達が皆んなに死んだように生きていってほしい、そんな風に望むと思う?少なくとも僕は違う、僕が死んでしまう時最後まで皆んなに幸せになってほしい、そう願うと思うんだ」


願うように、反抗的にそう言われ怒れ、そう願いながらミトは泣きそうになりながらも、言葉を紡ぎ続ける。

皆が望まない言葉を。


「だからさお願いだ責任は僕が死をもって償う、だからどうかもう一度だけ立ち直ってくれ!!」


その言葉に牢屋の人達は苦虫を噛み潰したかのような顔になる。

これだけ言われても動かない、そんな中一人の男の子が動いた。


「ミトお兄ちゃん、鍵貸して?僕も一緒にここを出るよ」


その言葉に他の子供達も一斉に動き出した。


「私も出るよ!」


「僕も!」


「俺も!」


「私も!」


子供とは何と純粋だろうか、何の考えもなしに、ただ少年のミトの必死さを見て自ら動いたのだ。

大人達がやめされるような、一緒に死ぬぞ、と言う言葉を投げかけたが、最後にお姉さんが立ち上がり、その醜い大人達の言葉を封じた。


「そうだね、子供達と一緒に私も出ようかな」


「ありがとう!今鍵を渡す」


ミトはとても嬉しそうに鍵を投げ入れた。

それを受け取るが子供達はうまく出来ないようでお姉さんが子供達の鍵を一つづつ開けていった。

そして最後に自分の鍵を子供達に開けてもらい牢屋の扉を開けて外に出た。


「じゃあ行こうか」


そう言って歩き始めようとしているお姉さん、事孤児院のお姉さんクルメラをミトは止める。


「待ってください、クルメラさん、他の人たちがまだ.......」


「ほっとけばいいのよ、あれだけ言われてもまだ動くきにもなれない大馬鹿供なんて............本当に同じ大人として情けないわね」


そう言ってやれやれと肩をすくめ、諦めにも取れるため息を吐いた。


「待ちなさいよ!流石にそれはないんじゃないの!!」


その言葉に牢屋の女の人が切れる。

お姉さんは言い過ぎたかもしれないが、一歩も引く様子を見せなかった。


「はぁ?何言ってんの?じゃあ15歳の子供にここまで言われてもまだでてこれない奴等を大馬鹿以外になんて例えればいいのか教えてくれない?」


「くっ......」


流石に何も言えないのだろう、そしてその言葉に男の人が質問をした。


「ど、どうしてあなたはこの状況で逃げようと思ったんですか?」


その言葉にニヤリと笑い。


「あんたらとは違うのよ、私はまだ諦めてないし、まだ生きてたい」


「なら、なおさらここにいた方が.........」


「だからそこから違うのよ、奴隷として死んだような毎日を送るのを生きている、とは言わない.......」


そこまで言って急に何も言わなくなった。


「馬鹿らしいわ、なんで諦めてる奴にこんな事を教えてあげなくちゃいけないのかしら、さあ行きましょ?」


そう言って歩き出した、直後


「待ってください、私も一緒に逃げます!鍵を貸してください」


その言葉に他の人達を、一瞬動きを止めるも、何かを決意し一斉に動き始めた。


「私も、まだ諦めるのは早いわよね?」


「ミトの言う通りじゃ、儂ももう少し頑張ってみるかの」


「俺も......やってやるよ」


その言葉に今にも泣きそうに顔を歪め。


「今......鍵を投げ渡します」


ミトがそう言って鍵を投げ入れた。

悪戦苦闘しながらも、なんとか全員手錠をはずして牢屋から出てくる。


「じゃあ今度こそ逃げましょう」


クルメラを先頭にして奴隷達は地下牢から脱出した。



「くそ、諦め悪すぎるだろ!?」


文句を言いながら城の廊下を左肩を庇いながら走り回る。


バルザは、左肩は出血していた。

弓兵に左肩を射られたのだ。


(にしてもあの野郎せこすぎだろ!?)


地下牢でバルザは獣兵と戦っていたのだがいくら倒してもきりがない、いや蘇ってくるのだ。

獣兵がバルザに突っ込んで、倒されるだが魔法獣兵が獣兵はを回復魔法LV3『ハイヒール』を使い回復してしまうのだ。

そして永遠に戦い続けることになる。

いつか魔力が切れるだろうと踏んでしばらく戦っていたが魔法獣兵の後ろに大量の魔力回復薬を目にした瞬間逃亡を決意した。その時に左肩を射られたのだ。


(はぁ、これからどうするかな?)


今、指輪を付けているため見つかる事はない。自分だけならば逃げる事が可能だ。


(どうにかして城から兵士を連れ出さないとなのに.............まてよ?この状況うまく使えないか?)


そう思い頭を馬鹿なりにフル回転させる。

そして思いついた、いや気付かされた、こういう時のためのものがあったじゃないか。


(よしっこれで行こう......)


そう決めて、指輪を外した。


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