第32話潜入2
投稿が遅くなって申し訳ないです。
カノンは無駄に綺麗な装飾が施された首輪を手に持ってバルザと話をしていた。
「これ、つけなきゃダメですよね」
首輪を遊び道具のように指で回し、手に持つ。
「すまんなカノンちゃん、俺もできればこんな可愛い子に首輪なんてつけたくないんだが.........まあ、これはこれで興奮するけど.......ヒィッ!?冗談だ!冗談!!い、痛いから蹴らないでくれ!!」
容赦ないカノンの蹴りがバルザの太ももに直撃する。
「私の納得できる説明をしないと......次は切り落としますよ?」
「切り落とすってなんだ!?分かった、分かったから剣を置こうか!」
笑顔で剣を抜くのでマジで切り落とされる気がしてバルザは冷や汗を浮かべる。
「ったく冗談きついぜ......説明するとだな、獣人の奴隷を連れ帰る事が俺の使命なんだ、だから、アセロラの所に連れて行くまで奴隷のふりをしてくれ、って事だ」
バルザがそう言うとカノンは少し不服そうな顔をする。
やはり奴隷の振りなど喜ぶ奴はいないか。
そんなカノンにバルザがやる気を出させる為に適当な事を言った。
「カノンちゃんがしっかりと奴隷のふりをしてくれればキリアの奴、とても助かるんじゃないかな........」
少し自信なさげにそんな事を言うとカノンの目の色が確実に変わった。
「そうですね、ご主人様の役に立てるのなら仕方ありませんね」
そう言ってカノンは、自ら自分の持っている首輪を自分につけた。
ん?もしかして........
「............」
「さあ、行きましょう」
1人歩いていくカノンの後ろ姿にバルザは半目で。
「.........なあ、カノンちゃん、キリアの奴が好きなの?」
「そっそんな事は、あ、ありませんよ!?」
挙動不審な動きをして顔を真っ赤にする。
その行動を見てバルザは、確信する。
カノンがキリアの事が好きだと言う事を。
キリアの奴、こんな可愛い子に好かれやがって!
「........キリアの奴の何処がいいんだよ、それなら断然俺の方が......」
キリアに対する怨み言を呟くと、しっかりその言葉をカノンにキャッチされ。
「それは無いです」
バルザが「俺の方が良いだろ」と言い終わる前にカノンに言葉を切って捨てられる。
そしてバルザは、カノンに真顔で「それは無いです」と言われたショックで地面に手をついて項垂れていた。
「ほら、いじけてないで行きますよ」
「うー、少しは慰めてくれても......」
「おじさんが何言ってるんですか....」
そんな呆れた声にバルザは、異論を唱える。
「俺は、まだ30代だ!おじさんじゃない」
ドヤ顔のバルザにその言葉を聞いたカノンが手をぽんと叩いた。
「分かりました、じゃあ貴方はおじさんに似てる人でいいですね、では行きましょうか、おじさんに似てる人?」
そうカノンが毒を吐いて城の門に向かって1人歩き始める。
「待ってくれ!その解釈は可笑しい!!」
門に向かって歩き始めたカノンの後ろからおじさんに似てる人は、異論を叫んだ。
♯
城の門を抜けると城の門番をしていた男が、敬礼をすると、バルザに声をかけた。
「お疲れ様ですバルザ隊長、そちらが教会に居た奴隷ですね、アセロラ様からそちらの奴隷を連れてすぐにお部屋に来るようにとの事です」
「ああ、分かった、教えてくれてサンキューな」
「いえ、それ程の事でもないですから隊長が礼など言わなくても...」
「俺はもう隊長じゃねえよ、俺は元隊長だ、今は確か、クリム?だっけか、そいつが隊長だろ?」
バルザは獣人の国、第一次戦闘部隊、獣闘軍、隊長鬼神バルザ、これが本当の役職だ。
今のようなフリーでお尋ね者扱いされているのは全てアセロラがこのバルザを危険視したから。
だから妹を隔離し、バルザから役職を剥奪、しかも牢屋に閉じ込めた。
つまりアセロラ殺せば全て解決.........だがそんな事バルザは一切考えていないだろう。
「確かにそうですが、私は、いえ、隊長がバルザ隊長だった時に居た兵士は皆、バルザ隊長に戻ってきて欲しいんです!」
そんな期待の込めた眼差しで兵士はバルザを見つめる。
そんな兵士に困ったように頭をかき。
「俺に戻ってきて欲しいのは、わかるが、クリムの野郎の方がしっかりしてるんじゃないのか?」
「そんな事は!.........」
そう言う兵士に軽く手を振りながら城の入り口に向かって歩き始める。
「まあ、いいさ、気が向いたらまた隊長になってやるよ」
苦笑を浮かべたバルザは城の中に入っていった。
アセロラの部屋に行くまでの間歩きながら雑談をする。
「以外とおじさんって、人望があるんですね」
カノンにそう言われてバルザが胸をはる。
「そうだろ?これで少しはカノンちゃんも俺の事を見直す..........」
「訳ないでしょう?」
カノンに上げてから落とされてまた項垂れる。
そんなバルザを無視して階段を1人、登って行く。
その少し後ろをバルザが項垂れながら一歩づつ階段を登って行っていた。
「なあ、何でそんなに俺に冷たいんだ?」
「何でだと思います?」
逆に聞かれて考え込んでしまう。
バルザに最近の行動や言動に問題のあった言葉は、なかったはずだ。
「特に冷たくされる覚えはないな」
「そうですか、じゃあおじさん?指輪で何をしようとしていたか、教えてくれません?」
カノンにそう言われて頭の中で思い出す。
何をしようとしてたっけ?うーむ、あっ...............思い当たる節がある。
「もしかして、女風呂を覗くって言ったやつか?」
「はい、そうです」
「だから俺に冷たいのか?」
「はい、女の敵です♪」
これは確実に俺が悪い、そしてこの笑顔がすごく怖いな。
「理由は、よく分かったけどさ、もしキリアがおんなじ事を言ったらどうする?」
バルザがそう言うとカノンが何か考えるそぶりをする。
そして顔を一気に赤く染め上げた。
「その反応どう言う事だ!?俺はダメでキリアならいいってことか!?おい!無視するなよ!おい!」
バルザの言葉を無視して1人アセロラの部屋に進む足取りを早足気味に進めた。
「ここですか」
ひときわ豪華な装飾が施されている扉、自分を称えているかのようなその豪華さに少しだけひく。
「ああ、ここだな、じゃあ入るか」
そう言ってカノンの首輪の鎖を手に持ち扉をコンコンと数回ノックする。
「グレモニア=バルザ、ただいま戻りました」
「入りなさい」
入れ、と声が聞こえたので扉を開け部屋に入る。
そこには血塗れの獣人の少女が四つん這いにされてアセロラに鞭で叩かれていた。
少女の至る所が血で滲み、体が青く変色している。
それを見た瞬間にカノンの右手に力がこもり、目から殺気がほとばしる。
「この子が教会にいた獣人かしら?」
「その通りだ」
そう言った、バルザを鞭でぶん殴った。
叩かれた頬から血が滲んでいる。
「私、言ったわよね?敬語を使いなさいと」
そんなアセロラをバルザは、横目でギロリと睨む。
「何かしら、その犯行的な目は?妹がどうなってもいいの?」
その言葉を聞き、黙ってひざまづくと。
「申し訳ありません、アセロラ様.....」
「それでいいのよ」
偉そうにアセロラは、突拍子もなく自慢話を始めた。
「バルザ?あなたは私がどれだけ偉大な存在か分かっていないようね、今から教えてあげるわ。
まずこの城よ、この城は私の権力の大きさを示しているの、分かるかしら?」
その言葉にバルザは、内心苛立っていた。
(奴隷をこき使って作り上げた城だろうが、そんな事自慢するんじゃねえよ、俺達、作らされた側からすれば負の遺産なんだよ!)
そんな苛立ちも知らずアセロラは、話を続ける。
「そして、この美貌、この美しさで私は全てのものを手に入れてきたのよ」
違う、アセロラはただ自分の権力を振り回していただけだ。
権力で全てを手に入れたに過ぎない、
アセロラの美しさなど関係ない。
「これだけ言えば分かるわよね?ただの鬼と麗しき姫、さあ、どちらの方が上なのか言ってみなさい」
そう言われたがバルザは、何も答えなかった。
いや、答えたくなかった。
こんなクズ以下だとみとめたくなかったのだ。
何も答えないバルザに不満そうに妹を引き合いに出す。
「妹がどうなってもいいの?」
その言葉に歯をくいしばり音を鳴らし。
「...........麗しき姫....です.......」
その言葉を聞きアセロラは、顔を笑顔に歪めた。
「あはははははははは!そうよね!理解ができている事は素晴らしい事だわ!!あの愚王とは大違いね!」
「愚王?」
「あら?バルザも知っているはずよ、愚王のユウキ、私の罠にまんまとはまり全てを奪われた王様。
あ、そうだ、いいこと教えてあげるわ、あの愚王がここの地下牢で泣いてたのよ?」
アセロラがユウキを罠にはめたという初めて知った事実に怒りがこみ上げてくる。
こいつを潰したくなる。
昔、バルザはユウキに剣の稽古をつけてやっていた。
なんでも守れる強さが欲しいらしく
当時、鬼神と呼ばれていた俺に剣の稽古をして欲しいと言ってきたのだ。
その時の年はバルザは20歳でユウキは13歳だった。
バルザは、ユウキの事を弟のように思っていた。正直バルザに対してだけはクソ生意気だったが、他の人達に対してはとても優しい自慢の弟だった。
剣の稽古をし始めてから3年がたったある日、いきなりユウキは死んだという報告、頭が真っ白になった。
どうして、死んだんだ?
いろんな事を調べたが全く有力な情報は出てこなかった。
それが今、少しだけでも分かるかもしれないのだ、質問せずにいられなかった。
「どうして泣いていたんだ?」
「あら、聞きたいかしら、そんなに聞きたいのなら教えてあげましょう、愚王の目の前で家族を殺してあげたのよ、そしてら目から涙をこぼしてボロボロ泣いてたわよ!!
あれは傑作だったわ!!」
その話をした瞬間バルザは怒りで我を忘れそうになる。
だが、とんでもない殺気が部屋に充満していくのを感じ一瞬で我に戻った。
戦闘経験の無いアセロラでさえ冷や汗をかくほどの殺気。
その殺気の正体はカノンだった。
いや、バルザには殺気しか見えていない、強すぎる殺意にカノンが埋もれて姿が見えない。
「嫌な空気ね、もういいわよ、牢屋に戻って」
どうやらアセロラは、殺気だと気づいていないようだった。
このままここにいればカノンが何かするかもしれない。
だからバルザは急いでカノンを連れて部屋を出た。
「カノンちゃん?アセロラを殺そうなんて考えちゃダメだぜ?」
「それは...........」
そこまで言ってカノンは言葉が出なくなった。
確かにアセロラを殺すのはご主人様の仕事だ。
それを取るのはいけないことだろう。
「まあ、いいや、それよりもこれからは二手に分かれるからな?カノンちゃんは、何をするか分かってるか?」
「それくらい分かってますよ」
「そうか、じゃあ俺は奴隷の解放に向かうから、また後で」
「はい、ではまた教会で」
豪華な装飾の扉の前でカノンとバルザは二手に分かれた。
その時のカノンの瞳は未だに殺気が溢れ、溢れて姿が認知できなかった。




