第31話潜入1
彩香利の過去の話については30.5話といった形で書く予定です。
少し話が飛んだように感じるかもしれません、本当に申し訳ないです
ユウキとカノンは今、人間2人を連れてボロボロの孤児院に来ていた。
「なんでこんな所に来たんですか?」
「ここでアセロラを殺すからだよ」
するとカノンは辺りを見渡し特に痛めつけるものが無いことを理解する、あるとすれば景色が良く、城が鮮明に見えていることだけ。
「なんでここなんですか?」
カノンは不満げに声を漏らす、だってあれだけ最低なゴミにも劣るカスをこんな所で殺してもただ苦しいだけ精神的にも追い込まなくては、もっと苦しい環境にした方がいいと考えているのだ。
だから珍しくユウキに反抗的だ。
「ここは昔、俺が孤児院をやってた場所なんだよ、その時俺はすごい幸せな毎日を送ってたんだけどその幸せをアセロラに奪われたからさ、だから俺もここで幸せを奪ってやろうと思ってさ」
その顔は凶悪そのもの、その顔を見てカノンはホッとした。
これは私の予想など超える苦しみを与えるのだろうな......と。
「そういう事ですか」
「そういう事だ、じゃあさっさと復讐する準備を始めようか」
アイテムポーチから石材などを取り出し、木魔法で木材を作り出していった。
「これでいいだろ」
簡単ではあるが確実にアセロラを殺さず、なおかつ地獄の様な目にあわせられる。
「さて、後はこいつら2人を使って実験しようか」
そう言っていまだに気絶してある人間2人を引きずり出す。
「とりあえず、こいつらを木にくくりつけて」
十字架状にしてある、木に手を広げた状態でくくりつける。
意外と体重が重かった、肥え太っている、つまり裕福な家系である証拠だ。
(まあ、だからなんだって話だけど.......)
そう言ってユウキが、片方の人間に触れる。
そして、瘴気魔法を使い消化魔法の状態異常にかける。
すると、一瞬で人間の体が崩れドロドロと溶け落ちてしまった。
「ご主人様?これじゃあ悲鳴が聞こえませんよ?」
カノンがもっともな事を言う、確かにその通りだ。
「それも、そうだな.......まあ、これはお試しだしいいか」
そう言いいつつ、もう1人の人間も瘴気魔法を使い毒魔法の状態以上にかける。
すると、一瞬で人間の体が紫色に変色する。
そして、いきなり痙攣し始め、口から大量の血を吐き、死んだ。
「やっぱダメだな瘴気魔法のLVが高すぎるから一瞬で死んじまう........仕方ないカノン」
「はい、なんでしょう」
人間がとんでもなくグロい死に方をしたと言うのに目も晒さず平然としている、もう既に常識が麻痺して来た証拠だ。
「瘴気魔法LV6まで預かってくれ」
「LV6ですか?別にいいですけど、ご主人様に瘴気魔法LV1しか残りませんよ?」
「いいんだよ、それで」
理由が分からないようでカノンは首をかしげる。
カノンが首をかしげている間、ユウキは、腐った人間を縄からほどいて地面に降ろしていた。
降ろした人間を地面に横たわらせて、黒剣を背中から抜き取る。
抜き取った黒剣でユウキは、人間をはらの部分で真っ二つに切った。
そして、頭の付いている上半身の方をアイテムポーチに突っ込む。
「それ、持ち帰るんですか?」
「ああ、俺の実験材料として使うからな」
そう言って凶悪な笑みを浮かべる。
カノンは少し気持ち悪そうにアイテムポーチを見ていたがすぐに視線を戻した。
「とりあえず、やる事は全部終わったし.......あとはしっかりと寝るだけだな」
「そうですね、明日が楽しみです」
身体を上に伸ばした俺は来た道、坂を下っていった。
その隣ではカノンが屈託のない笑みを浮かべていた。
♯
太陽が見え始め、ほのかに辺りを照らし始める朝5時頃。
「ご主人様、ご主人様、起きてください、もうバルザさんも来ていますよ」
しっかりと寝るだけと言ったくせに夜更かしをして魔道具を作り続けたユウキは当然のように寝坊していた。
横たわるユウキをカノンが揺らす。
「ふぁー、もうそんな時間か」
流石にこれ以上寝続ける事は出来ず、あくびを浮かべながらベッドから身体を起こした。
「少し待っててくれ、服を着るから」
カノンにそう言ってベットから手が届くハンガーに手を伸ばしコートをとると羽織った。
「おっと、忘れてた」
ベットから立ち上がり机に置いてある、指輪を三つ手に取る。
そしてカノンに振り返った。
「指輪持って来たか?」
「持って来てますよ」
「そうかなら安心だ、さて、と」
軽く腕を上げ伸びをして窓の外を見る。
「これ以上バルザを待たせるわけにはいかないな」
階段を降りて教会の入り口に向かった。
その時のユウキの顔はとても楽しそうに口角を釣り上げていた。
「キリア、何寝坊してんだ」
いきなりキリアと呼ばれたことに少し変なふうに思ったが、こいつに自己紹介の時にキリアって偽名使ったんだ、とつい最近の出来事を思い出した。
こんな風にすぐ忘れていてはいずれつい口にしてしまいそうだ、気を引き締めよう。
「すまん、バルザ」
「まあ、別にいいけどよ、それよりさっさと行こうぜ」
「待て........ほらよ」
早く行こう、と急かすバルザに青色の小さな宝石のついた指輪を投げ渡した。
「っとぉ、なんだこれ?」
「自分の姿を見えなくする指輪だ」
「それ本当か?」
嘘じゃないかとバルザがキリアを疑いの目で見る。
「本当だよ.........ほら、見えないだろ?」
試しに指輪をつけて見せてやる。
俺が本当に見えないことに驚愕の表情をして、鼻を鳴らす。
すぐに匂いは消えていないことに気づいたのだろう。
「すげぇな、こんな凄い物を持ってるなんて.......お前何者だよ」
そう言ってバルザが苦笑を色濃く浮かべる。
「それにしてもこの指輪最高じゃねえか、これさえあれば女湯覗きほうだ.......」
「使い終わったら返してもらうからな」
その言葉を聞いてバルザが急激に肩を落とした。
本当はそのままあげるつもりだったが、とんでもない事に使いそうなので回収する事にする。
「そんな残念そうな顔するな、ほら行くぞ、ついに妹が助けられるんだからもっと元気だせ」
残念そうなバルザの背中を叩きアセロラの居る城に向かった。
♯
城の目の前、入り口に見える兵士は雑談をしつつも一応見張りをこなしている。
ユウキ達は城近くの路地裏に身を潜めていた。
「ここからは、二手に分かれるぞ、俺は、バルザの妹の救出、カノンは資料を盗む、バルザは獣人の奴隷の解放
あと、できれば傭兵達を気絶させて何処か城から離れた所に運んで置いてくれないか」
「別にいいけどよ、何の為にそんな事をするんだ?」
「それは.........後のお楽しみだな......とりあえず自分のやるべき事をやれ、それじゃあここで別れるぞ」
別れを告げるとキリアは門とは、別方向の道に消えていった。
「さて、どうやって乗り越えよう」
指輪をはめた状態で、別荘に1番近い壁を見上げる。
この壁には、魔法が掛けられており触れると警報がなるのだ。
(流石に壊したらばれるだろうし.......試しにやって見るか?)
密かに練習していた魔法の応用技を使う。
両手に風魔法トルネードを発生させ、地面に向けて放った。
その反動で体が宙に浮く、そしてそのまま継続的にトルネードを放ち続けた。
(やっぱりコントロールが難しいな、少しでも油断すれば落ちる)
必死に風魔法を使い柵を越える。
そして、反対側の地面に着地した。
(こんな事するなら、壊せばよかったかな?)
そう思うが今更だろう。
(さて、後は俺のやりたいようにやらせて貰おう)
別居の妹がいる家の魔石の混じりの壁を見る。
(あっ、そうだ指輪を外しとかないと)
瘴気を使うため、間違えて指輪を消さないように指輪を外す。
それから壁に手を置いた。
別居の壁、魔石混じりの石材の壁に、瘴気魔法で石材のみを腐敗させた。
するとボロボロと崩れ小さな宝石のような粒がバラバラと地面に落ちた。
(上手くいった、これで魔石だけ持ち帰れる)
そもそもユウキの狙いは魔石だった。
魔石とはまだ未知にあふれており解明がされていない、主な使用方法は武器や防具の材料、魔道具にも使われる。
そのため意外と希少でなかなか売っていないのだ。
瘴気魔法LV1の為、少ししか消せないが、順調に壁を消していく。
そして、人が1人入れるぐらいのスペースを壁に開けた。
「これで入れるな、残りの魔石は全部終わったら取りに来よう」
出来るだけアイテムポーチに詰め込むと、また取りに来るという、強欲かもしれないが貰えるものは貰っておけとよく言うだろう?
少し邪魔な壁を蹴り壊し、安全に別荘の中に入っていった。
♯
別荘の中は血で溢れかえっていた。
血で染められた床には獣人の兵士が横たわっている、その全てが一撃、首の根元を切り裂かれている。
血みどろの別荘の中、リビングの中心、死体の山に腰を下ろすのは白髪の少年。
その少年は気だるそうにため息をついた。
「はぁー疲れた..........何でこんなに傭兵がいるんだよ、バルザ対策か?くそが」
なぜこんな事になってしまったのか、それは別居に入った瞬間に大量の傭兵に襲われたから。
これはほぼユウキの失態なのだが、獣人達にはユウキの姿が見えていた。
何故ユウキの姿が見えたか、それは、ユウキが瘴気魔法を使う時に指輪を外していた事を忘れていたからだ。
その為、獣人の傭兵に襲われたまあ、全員ユウキに殺されたが。
(できるだけ傭兵は、殺したくなかったんだけど........それにしても物忘れが多いな........老いか?)
齢13歳の子供が何言ってやがる、そう思われるかもしれないが精神年齢的には20歳以上だ。
バカな事を考えながら妹のいる部屋鳥籠に行く。
妹の部屋の前まで来て扉を開けようとドアノブを倒すが当然開かない、鍵がしてある。
(まあ、そりゃあそうだよな)
大事な人質を簡単に渡せるような所に入れるわけもない。
俺には関係ないけど........扉に手を触れ瘴気魔法で扉を消した。
「さて、妹は........あれか?」
ベットの上でうずくまる少女が1人。
ユウキと同じ白色の少女は、狐のような耳をピクピクとせわしなく動かし、瞼を閉じていた。
ユウキはその女の子に近づきふと思った。
(あれ、この子、何処かで見た事があるような?......んー?気のせいか?)
少し気になるがユウキも次にやる事があるためさっさと妹を盗む事にする。
「おい、起きてくれ」
妹をゆすり、揺らし起こす。
だがそれでも起きない少女に。
ユウキは寝ている下の布団を引っ張り上げ少女をベットの上に転がした。
「な!なんですか!?もう朝ですか!?」
流石に驚いたようで飛び起きると、ベットの上に立ち上がる。
「そうだ、朝だよ」
そう教えてやると、目をこすり、こすり.......
俺の姿を確認した瞬間、急に部屋の隅に逃げ出した。
「わっ、私を奴隷にする気ですか!?」
おびえた様子で妹が部屋の隅に縮こまってしまう。
目の前に人間、恐怖と畏怖の対象が目の前に現れた、たしかに怖がっても仕方ない対面だ。
(そんなに怖がんなくても........なんだろう、小さい子にここまで嫌われると、昔の俺は多分とても悲しい気がする)
そんな馬鹿な事を思いながら、妹に近づいて行く。
そして、妹の前まで来て、おびえる妹の前に座り込み
「安心しろ、俺は味方だから、お前のお兄さんに頼まれてお前を助けに来たんだよ」
妹が安心できるように微笑みながら教えてやると、むっと口を結び。
「う、胡散臭いです..........」
容赦なくユウキの心を抉った。
ん.......別に気にしてないが......笑顔の練習しようかな......
「本当にバルザさんに頼まれて、来てくれたんですか?」
その言葉に言葉を返そうとしたが既にユウキから言葉は出ない、代わりにコクリと首を縦に降った。
すると、妹は、下を向きながら
「あ、あの、あり....がとうございます」
と、お礼の言葉を口にした。
それを見ただけでユウキは自然と笑みがこぼれた。
♯
妹に手を伸ばし、立ち上がらせてあげようとするが、その手に自分の手を乗せるか少女は一瞬迷った末に手を預けた。
もしこれで無視されたら、心がやばかった。
そんな馬鹿な思いを拭い去り、ポケットから小さな黄水晶の指輪を取り出し掌に置いた。
「なんですか、この指輪?も、もしかして、プロポーズですか!?」
そんな事を言う頭がお花畑な妹に、ちゃんとした、使い方を教えてやる。
「違うよ、その指輪をつけると姿が見えなくなるんだ、それを使ってここから脱出するんだ」
「そうでしたか」
何故か少ししょぼんとしている、多分プロポーズされる憧れみたいなものだろう。
ユウキは気にせずに部屋を出る。
それを見て妹もしっかりと後ろをついてきた。
「さて、ここからが大変だな」
ユウキが飛んで侵入してきた壁を見る。
ユウキ1人なら脱出できるだろう、だがどうやって妹を外に連れ出そう。
「えーと、名前何?」
「アリアです」
「じゃあ、アリアちゃん、少し恥ずかしいかもだけど我慢できる?」
「はい、我慢できますよ?」
「そうか、じゃあ少し我慢してくれ」
そう言ってユウキはアリアをお姫様抱っこをする。
すると、アリアは、恥ずかしそうな顔をして、頬を真っ赤に染め上げる。
(あれ?そういえば、なんで顔見えてんだ?.........まあ、いいや、それよりさっさとやるか)
お姫様抱っこしているアリアを上空にぶん投げる。
投げられたアリアは、下を見て。
「ひぃぃぃぃぃぃぃ!?」
悲鳴をあげた。
アリアが地面に落ちる前にすぐさま
ユウキは風魔法LV4の暴風を地面に叩きつける。
その勢いを使い、上空にユウキは、凄い速さでぶっ飛び、
その時にアリアを上空で抱っこする形で受け止める。
そして、右手でアリアを支え左手で暴風を放ち教会まで飛んで行った。
教会の前まで来たので風魔法を使い調整しながらゆっくりと地面におりたつ。
(少し無茶をしすぎたな、まあ、上手くいったし結果オーライだよな)
アリアをゆっくりと地面に降ろしてやる。
すると涙目のアリアは下を向いているので、声をかけた。
「大丈夫か?」
ユウキがそう聞くと、
「怖かったですー!!」
とユウキに抱きつきながら泣く。
「ごめんな、少し無茶をしすぎた」
そう言ってアリアの頭を優しく撫でてやる。
しばらく、泣いたあと、アリアと教会に入る。
リビングにいた彩香利がこちらを見て、首を傾げた。
「どこ言ってたんですか?」
「少し用事があってな、あと、少しの間この子を見ててくれないか?」
そう言ってユウキに抱きついているアリアをさす。
「この子ですか?別にいいですけど.......ユウキさんは、どこへ?」
「少し、やる事があるんだ」
そう言ってユウキは、自分の部屋に一度もどりアイテムポーチを手に取る。
そして、この前作ったスモッグ石を大量に入れて、もう一度城にもどって行った。




