第28話悲しみ
2日連続投稿して見ました。
獣人の第3区画に建てられている、服屋。
意外と有名店で、獣人の毛皮を使った高級な服は人間達に好評である。
服屋に入ると店員がこちらに駆け寄って来て.....
「いらっしゃいませ、お探しの物は...........勘弁してください!」
俺の頭に獣耳が無いことに気づいた瞬間、店員の人が頭を床に叩きつけた、鈍い音が店に響き渡る。
「何の事だ?」
「さぁ?」
意味がわからず首を傾げていると、
「これ以上品物を持っていかれると、本当にシャレにならないんです!なので、どうか!どうか!おかえり願えますでしょうか!お願いいたします!」
そう言って店員が店の床に頭を擦り付ける。
そんな事を言う店員を無視して、店の奥に入って行く。
酷いと思うかもしれないが、知らない事だ、気にする必要もないだろう。
「カノン、どれが欲しい?自由に選んでいいぞ、俺はここに座って待ってるから」
「分かりました!見に言って来ます!」
カノンは、楽しそうに服を買いに行った。
それを見ているとやっぱり女の子だな、と思えてくる。
「さて、少し寝るか」
ユウキは近くの椅子に腰を下ろすと後ろの壁に体重を預け、眠りに入った。
自分のスキルが勝手に発動している事に気付かずに
♯
「起きて、起きなきゃダメだよ王様」
とても懐かしい声が頭に響き、体を揺さぶられる。
「早く起きないと朝ごはんあげないよ?」
それでも起きないユウキに、プクーと頬を膨らませ、
「今すぐ起きないと、ドルトンさんに言って王様が遊びに来てる、って言っちゃう」
「それだけは、勘弁してくれ!」
ようやく起きたユウキに、にこりと笑顔で、
「ようやく、起きたね王様」
と女の子は、言った。
「おはようユイナ」
この子はよくユウキの世話をしていた女の子のユイナだ。普通の人間の女の子で捨て子だ。
余計なお世話だとも思ったが、かわいそうだったのでユウキが孤児院に連れて来たのだ。
「おはよう王様、もうご飯できてるから、早く食べに来てね、もうみんな席についてるから」
「別に待ってなくてもいいんだよ?」
頭に手を置き優しく撫でる、だが嫌そうにもせず、だからと言って下に戻るつもりもないようだ。
出来る事なら戻って欲しい、そして俺を寝かせてくれ。
「ダメですよ、あの食べ物の材料だって王様が持って来てくれたものなんですから、ほら、早く服を着替えてください、手伝いますから」
年下の女の子に甲斐甲斐しく世話をされているのは、大人としていいのだろうか?.......多分ダメだろう。
自分でもそう思うが休みの日ぐらい、いいかと思ってしまうのである。
「服、ちゃんと着れましたね。じゃあ、下に行きますよ?」
そう言って女の子は俺を後ろから押してくれるのだ。
こんな日々が俺を頑張らないと、と思わせてくれるのだ。
下に向かうと、全員集合していた。
「王様遅いよ〜」
「早く食べようよ〜」
「王様、おはよう!」
拾って来た子供達はユウキに挨拶したり、文句を言ったりしている。
「おはよう、あとごめんな来るの遅くて」
「別にいいよ〜、それよりご飯食べようよー」
子供にそう言われてユウキも席に着く。
「みんな席についたな、いただきます」
「「「「「いただきます!」」」」」
ユウキがいただきますと言うとみんなも一緒にいただきますと言う。
そうしてからご飯をたべるのだ。
「今日もユイナの料理は美味しかったよ、俺の専属料理人になって欲しいくらいだ」
「えへへ、そうですか?ありがとうございます」
そう言って笑顔で笑いながら子供達の食器を片付けるユイナ、立派な子だ、それでもやはりみんなと遊びたいのだろうちらちらと後ろを見ている。
俺はそんなユイナを見かねて席を立った。
「ユイナ、みんなと遊んでおいで、食器は、俺が洗っておくから」
「でも.............そうですか、ありがとうございます、私もみんなと一緒に遊んできますね」
そう言ってユイナは、遊びに行った。
♯
「さて、食器洗いも終わったし何しようかな............
あっ!忘れてた、今日は、アセロラに呼ばれてたんだっけ急いで行かないと」
ユウキは、焦りながら孤児院の扉を開けて、アセロラの居る城に向かって走り出した。
♯
「来るのが遅いわよ」
俺がアセロラの居る部屋に入ると、早速文句を言われた。
「ごめん、ごめん、それで今日は何の用だ?」
「いや、ただお喋りがしたくて呼んだだけよ」
「そう、なのか?」
珍しい、アセロラがお喋り目的だなんて、今までお金の話や同盟、植民地の相談しかして来なかったアセロラがお喋り。
「そうよ、それよりこのハーブティーを飲んでもらえるかしら?とても美味しくできたの」
そう言って怪しく笑うアセロラを全く疑いもせず、そのハーブティーを、ユウキは、口にしたのだ。
「うん、すごくおいし............」
言葉をいいかけてユウキは、その場に倒れこんだ。
「本当に馬鹿ね」
アセロラのそんな言葉を最後に、声は聞こえなくなった。
眼が覚めるとそこは、アセロラの城の地下にある牢屋だった。
「おい、アセロラこれは、何の遊びなんだ?」
(いないのか?)
まあいいや、それよりどうにかして抜け出さないと。
腕に繋がれている鎖に思いっきり力を入れてみるが、外れる気配は、無かった。アセロラが来るまでしばらく待っていようと思うとちょうどアセロラが来た。
「もう、起きたのね」
「アセロラ、これ取ってくれよ」
俺がそう言うと
「嫌よ、それに取る必要は無いわ、あなたは、ここで死ぬんだから」
「何言ってんだアセロラ?」
「これは、決まったことなのよ、今あなたは全国で指名手配されているわ」
嘘に決まっている、と思ったが、
本当の事であるかのように指名手配の紙を見せつけてくる。
「私ね、ずっとお前が邪魔だったんだよ。私が獣人をいたぶっているといつも邪魔して来やがって本当にうざかった。殺したいといつも思っていた。
そしたら運良くお前が指名手配されたんだよ、これで殺せるってようやく思った。でもな、もう私はお前を殺すだけじゃあ満足できないんだよ。
お前の大事な物を全て壊したくなったんだ...........おい、連れて来い」
アセロラがそう言うと兵士が孤児院の子供達を連れて来た。
「何でここに、子供達が..........」
「今からあなたに三つ選択肢をあげるわ、
一つ目はこの子達を助けてお前と子供達の誰か1人が死ぬ。
二つ目はお前が生きる代わりに子供達がみんな死ぬ。
三つ目は子供達のうち1人を殺して、お前と子供達が生きる。さあ、選べ」
(選べるわけがない、どの選択肢も絶対に子供達が死ぬじゃないか)
「冗談なんだよな?....」
そんな懇願のような願いのような思いはアセロラに鼻で笑われた。
「これでも本当に見える?」
「あ、ああ!?あああああ!!?」
アセロラは子供の指を三本ほど解体用のハサミで切り刻んだ。
「アセロラ!!お前なんてことを!.....」
「うるさいわよ、さっさと決めなさいな」
「俺には選ぶことなんで出来ない!!頼む、俺を殺してくれて構わない、だから子供達を助けてくれ、頼む」
アセロラにそう頼み込んでみるが、
「そんな選択肢は、存在しないわよ?答えないなら選択肢2って事でいいのね?」
どうすればいいんだ?
どうすれば子供達が1人も死なないで済むんだ?
考えるがどうやってもこの絶望的な状況でそんな事が出来るわけがない。
どうすれば、と必死に考えていると
「私が死にます」
と、誰かが名乗りをあげた、その人物はやはりあの優しいユイナだった。
「やっ、やめてくれ!お願いだ、死ぬなんて言わないでくれ!!」
必死な懇願をしている俺を見て、クスリと笑うと。
「私はもう一杯、王様から色んな感情を貰いました。
楽しさ、嬉しさ、そして愛情を.........私が捨て子のままだったら絶対に味わえない楽しい思い出も一杯作れました。
王様からは、素晴らしいものを沢山頂いているのです。
だから、どうか恩返しさせてください......」
最後までユイナが言いきったところで無慈悲にもユイナの心臓部分から剣が飛び出して来た。
その瞬間ユウキの顔が絶望に染まる。
「あんたが死ぬんでしょ?余計な事言ってないでさっさと死になさいよ」
アセロラがユイナを後ろから剣で突き刺したのだろう。
ユイナは、心臓から溢れ出る血を右手で抑えながら少しづつ倒れている体をユウキのいる牢屋に近づけて行く、そしてユウキのいる牢屋の鉄格子に捕まり。
「今....まで.......ありが......とう...ござい....まし..た」
そう言って泣き笑いの様な表情を見せて、ユウキの目の前の地面に倒れつくした。
「あははははははは!ざまぁないわね
子供達と、こんな奴のために死ぬなんて、それも意味がないってのに!
こいつらには、死ぬよりも辛い地獄の様な目にあってもらうんだから!......あっ!死ねるだけラッキーなのかもしれないわね!」
アセロラは、死んでいるユイナを笑い罵倒しながら牢屋を後にした。
♯
ユイナの血が少しづつ牢屋の中に入りこんでくる。ユウキはその血に膝をつく。
そして、牢屋の鉄格子から無理矢理右手を突き出した。手枷が腕に食い込み血が溢れ出るが、きにせずユイナに手を伸ばした。すると、鎖の方が耐えられなくなり[ブチッ]と音がして鎖が切れる。
鎖が切れたためユイナに触れる事が出来た、鎖の取れた右手でユイナの頭を撫でる。そして、下を向き
「ごめん、ごめんな...!.守ってあげられなくて、ごめんな」
ユウキは、涙を流しながらユイナに謝り続けた。
この時ユウキの中の何かが音を立てて壊れたのだ。
♯
「ご主人様起きないな〜さっきから泣いてばっかりだ」
カノンは、ユウキを膝枕していた。
買うための服は決まったのだがユウキが全く起きないのだ。
そのため、膝枕をして頭を撫でていると、目から涙を零し始めた。
(どんな夢を見ているんでしょう?そんなに悲しい夢なんでしょうか)
流石にこれ以上ご主人様の涙を見たくないので起こすことにした。
「ご主人様、ご主人様、起きて下さい」
「んっ」
と言ってユウキは、起き上がる。
「大丈夫ですか?」
「何が?」
「涙を流していたので......」
カノンに言われてユウキは、自分の瞼に手を当てると、濡れていた。
「あっ...悪い....」
目を服の裾で拭う。
「少し昔の夢を見ていたんだ」
「昔って生前のことですか?」
「まあな」
といってユウキは苦笑した。
(それにしてもリアル過ぎないか、あの夢?)
無属性魔法を使ったと思いステータスを見てみるとやはり魔力が減っていた。
(やっぱりか、ったく嫌な夢を見せられた)
もう、思い出したくないので考える事をやめて話題をずらした。
「服は決まったのか?」
「はい、二つに絞ったんですけどまだ決めきれなくて.........,だからご主人様に決めてもらおうと、どっちがいいですか?」
そう言って服を2着広げて見せて来る。
「両方とも似合うと思うから、両方買おうか」
そう言って服をカウンターに持って行くと、いまだに店員は土下座していた。
「おじさん、お会計頼む」
その言葉を聞き、えっ?と声を出す。
「わ、分かりました。合計で銀貨7枚になります」
ユウキはアイテムポーチから銀貨を7枚を取りだし。
そして、カウンターに置いた。
「お、お買い上げ、ありがとうございます!」
頭をすごい角度で下げて来るおじさんに聞いてみた。
「なあ、おじさん?服をかってに持ってった奴どこにいるか知らないか?」
「えーと、多分ですが、飲み屋に行くと言っていましたので、そこに入るかと.........」
「そうか分かった、ありがとう」
そう言って店を出る。
そいつらは運が悪いな、今俺は無性に腹が立って機嫌が悪い、鬱憤をはらさせてもらおう。
♯
「飲み屋ってどこだ?」
「多分あそこじゃ無いですか?」
カノンが指さした方向には、扉が外れた店があった。
(どうせ、酔っ払って店に迷惑かけてるんだろう)
「行くぞ、人間を締めに」
そう言って店に入るとそこは、酷いことになっていた。
人間が獣人の店主を殴り飛ばしたり、店に並べてある酒をほとんど飲み尽くしていて、他のお客を「奴隷にするぞ」と脅していたり。もう最悪だった。
「おい、カノン、こいつらには後で地獄を見せてやるからとりあえずこいつらを落とせ」
「分かりました」
俺は、店主を殴っている人間を.......
「なんだお前、そこにひれ伏せ俺はアセロラ様のバックがあるんだその俺の言う事を聞かないと後で酷い目に、グヘェ!?」
本気で殴り飛ばした。
人間は、間抜けな声をあげて壁に穴を開けて吹き飛んで言く。
「ったく、壁も修復しなきゃじゃ無いか」
そう言って、壁に木属性魔法を使い修復すると、
「ご主人様すいません、もう1人の相手が逃げ出そうとしたので、間違えて凍らせてしまいました」
カノンの隣の氷塊の中心には人間がいた。
「これだと死んじゃうな、仕方ない」
ユウキは右手にファイアーボールを発生させて氷を溶かす。
「これで大丈夫だろ、後は.......」
人間に殴られていた店主の側に行く。
俺の頭を見てビクビクとしていたが、気にせず回復魔法LV3の【ハイ・ヒール】をかけてやる。
すると、みるみるうちに怪我が治っていった。
(後、服屋のおじさんから盗んだ荷物はどこだ?)
辺りを見渡すとすぐそこに大量の紙袋があり、中には服が入っていた。
(こんなに盗んだのかよ、そりゃあ土下座するよな.......返しに行ってやるか)
とりあえず、気絶している男達を抱えて
「迷惑をかけた」
と言って男達の腰についていた財布を剥ぎ取り店に投げ置くと、そのまま店を後にした。
3日以内に投稿します。




