第25話偽り
「ここはどこだ?」
テレポーターを出た先は、湿気て、空気が重たい牢屋の様な場所だった。
だが、鉄格子も錆、天井のがれきも微妙に崩れている、もう使われていないのだろう。
牢屋から出て、出口が無いか見てみると。
すぐ右に行ったところに、石でできた階段が作られていた、それは天井まで続いている。
だが、階段から続いている天井には木の板がはめられていた。
(あれ、開くかな?)
とりあえず、階段を登り木の板を押してみると..........開かなかった。
鍵がかかっている、もしくは上に何か乗っているのか?
(仕方ない、消すか)
木の板だけを消すイメージを頭の中に想像する。
そして、瘴気を発動させて木の板に手を置き、あの幼女がやったように、
「消えろ」
と、唱えた。
すると、木の板が黒く変色して崩れておちた。
「カノン、扉が開いたから行くぞ...........カノン?」
返事がないのに違和感を覚え、後ろを振り向いてみる。
今さらながらカノンがいない事に気がついた。
(まさか、別のところにワープしたのか!?)
焦りながらテレポーターのところに向かおうとした時に、
「どうしたんですか?」
後ろから声がかかった。
声のした方を見てみると、そこにはカノンがいた。
「あれ?カノンいたのか?」
「はい、ずっといましたよ?」
「カノンがいない気がしたんだが.......勘違いだったか.....まあ、いいかそれよりここから出ようか」
そう言ってユウキは、階段を登り始める。ユウキが完全に登りきったのを確認してからカノンは小さい声で
「上手くいってよかった......」
と、呟いた。
♯
階段を登った先は、見覚えのあるキッチンだった。そしてそこには、狐耳の女の子がエプロン姿でキッチンに立っていて、皿洗いをしていた。
俺達が出てきた事に驚き、そして首をかしげた。
「どうしてここから出てきたの?」
女の子がもっともな質問をしてくる。
「俺も、分からないんだ」
「そうなんだ、でも帰ってきてくれて良かったの」
そう言って満面の笑みを浮かべる。
「あ、そうだ、ご飯たべてないですよね?今から作りますから、席に座ってて下さいなの」
そういえば、確かにお腹はすいた。
女の子に言われた通りにカノンと一緒にキッチンにある席に座る。
そして、俺は前から感じている女の子の違和感をようやく理解した。
「なのって口癖わざとつけてるのか?」
「あれ、バレちゃいましたか?」
隠すこともなくあっさりと肯定、にしてもやっぱりか。
「なんでそんなことするんだ?」
俺の疑問に対して、女の子は鍋をかき回しながら答えてくる。
「私って見た目は子供じゃないですか、でも喋り方が子供っぽく無いんですよ。なのって付けると幼い子のように見えません?」
「まあ、確かにそうかもだけど、喋り方を子供っぽくする必要なく無いか?」
いくら喋り方が子供っぽくなくても、中身は正真正銘子供なのだから。
それともまさか中身も大人びているというのだろうか。
「確かにそうかもしれません、でも小さい子がいっぱい居る中で1人だけ大人のように喋るのはおかしいんですよ..........出来ました!」
そう言って俺とカノンの目の前にシチューが置かれる。
「どうぞ、食べて下さい」
俺はお皿の隣に置いてあるスプーンを手に取りシチューをすくい、口に含んだ。
シチューは、今まで食べた事の無い味だった、まるで別の物のような......
だがとてもユウキ好みの味だ。
全てぺろりと平らげてユウキとカノンは、お礼を言う。
「とても、美味しかったよありがとう」
「彩香利とても美味しかったですよ」
(へー、彩香利と言うのか、少し変わった名前だな)
女の子の名前をしっかりと覚えておく。
変わっている少女彩香利と。
「お口にあって良かったです。さて、私はお皿を洗いますので今日は、ゆっくり休んで下さい」
そう言って彩香利は一人キッチンに向かう。
それを見て思う、確かにこの子は変わっている、子供がこんなことしない、それにあの慣れた手つきが、まるで昔から料理を作っていたように見えてくる。
「私も手伝ってきますので、ご主人様は、休んでいて下さい」
「ああ、ありがとう、じゃあお言葉に甘えて」
変わった少女を見ながらユウキは、自分の部屋に戻って行った。
♯
部屋にもどり、時計を見て時間を確認する。
時計の短い針が11と12の間をさしていた。
帰って来たのは、日付が変わるぎりぎりの時間だったようだ
「はぁー....疲れた」
たった1日ダンジョンにいただけなのに何日もいたような気分で、深いため息が出る。
(今日は、もう寝るか........そう言えばなんでテレポーターが教会の地下につながっていたのだろう?)
そんな事を深く考えているとあくびが出る。
(明日考えればいいか)
そう思いユウキは、自分の部屋のベッドに横になった。
[ドンドン、ドンドン]
ユウキは、謎の打撃音によって目が覚めた。
(なんだこの音、外からか?....)
外から聞こえる音が気になり自分の部屋の窓から覗いてみると、そこには気絶したはずの幼女が教会の扉をドンドン叩いている音だった。
(まあ、場所がばれるのは当然か......こいつどうしようか)
幼女を上から見下ろしていると、何やら口を開けて何かを叫んでいるようだ。
上手く聞き取れないので耳を澄ましていると、
「クルメラ!!ここに白髪鬼と赤髪の女がきたじゃろう!そいつを私の前に連れてくるのじゃ!!」
そんな言葉を教会に向かって叫んでいるようだ。
(白髪鬼は、多分俺のことで、赤髪の女はカノンの事だろう.....それにしてもクルメラって誰だ?あと、鬼って...)
返事も帰ってこない教会に向けて叫び続ける幼女。
「居るのは、わかっておるのじゃ!諦めて出てくるのだ!そうすれば命だけは助けてやらん事もないぞ!
わははははははははは!」
高笑いする幼女、それを見てため息をつく。
(馬鹿かこいつスキル取られたことに気づいてないのか?)
馬鹿にしながら、この後どんな行動に出るのか窓から眺めていると、教会の門から女の子が出てきた、その女の子は彩香利だった。
「あの、何か御用でしょうか?何もないのなら、叫ぶのをやめてほしいのですが........」
幼女は、教会から出てきた彩香利をじっと見つめる。
「お主、クルメラに拾われた子供の1人か?」
「はい、そうですけど、クルメラさんに用があるのならまた今度きて下さい今は居ませんので」
「別に居ようといまいとどちらでもいい!そんな事より、教会の中に白髪鬼と赤髪の女が居るじゃろう!
そいつらを連れてくるのじゃ!!」
その幼女の言葉を聞いて彩香利は、困った様に首をかしげる。
(白髪鬼って誰のことだろう?もしかしてユウキさん?でもユウキさんは、鬼じゃないしなー)
「えーとすいません、多分いないと思います」
曖昧な言葉を返してくる彩香利を疑いの目で見て。
「こうすれば確実に分かるのう」
そう言って幼女は、彩香利の首に手を回す。そして、鋭く尖った爪を彩香利の首に突き刺そうとして、ギリギリで止めた。
「こやつを殺されたくなければ出てくるのじゃユウキよ!」
そう教会に向かって、宣言した。
今の一連の流れ二階の部屋から見ていたユウキは、ため息をつく。
(めんどくさい事するなあの幼女、このまま出てってもいいけどめんどくさいな.........ん?まてよ、簡単に終わらせる方法が一つだけあるな)
とりあえず、彩香利を酷い目に合わなせないために、自分の部屋からでて、教会の入り口に向かい、玄関を開けた。
俺が扉から出て行くと、幼女はこちらを見てニヤリと笑う。
「やっと出てきおったか、では」
彩香利を開放して、一拍おくと。
「お主に決闘を申し込む!!」
そう、高らかに宣言した。
(この展開は、こちらからすれば大歓迎だ)
「私が勝ったらお主には洞窟での事を土下座して詫びてもらおう、もしお主が万が一にも私に勝つ事が出来たらなんでも一つ言う事を聞いてやろうこれでどうじゃ?」
「ああ、受けてやるよ、だが一つルールがある。正直、普通に戦うのは、めんどくさい、だから、お互いの最強の技を1発づす使って強かった方の勝ちにする。このルールでいいなら受けてやる」
いや、というかこれ以外じゃあ勝ち目が全く持って無い。普通に決闘なんてしてみろ、幼女が本気でデコピンしただけで俺の体が吹っ飛ぶことだろう。
「ああ、そのルールでいいじゃろう」
余裕そうな顔をする幼女、それを見て内心ほくそ笑む。
すると幼女はドレスから紙をとりだす、ドレスのどこに入れたのかは聞かないで置く。
「では、この紙に血を垂らすのじゃ、そうすれば絶対に約束を守らなくては、いけなくなるのそういう魔術がかけられておる」
俺は幼女に言われた通りに黒剣を取り出すと手のひらを軽く切った。
幼女も、俺が血を垂らしたのを確認してから手首を爪で切り血を垂らす。
すると紙が一瞬で赤色に染まりまるで炎でも付いたように散り散りになって消え去った。
「これで契約完了じゃ、あと言っておくが、もし約束を守らなければ死ぬぞ?」
「別に約束を破る気はない、では始めようか」
ユウキのその言葉はとても軽く、今から魔王と戦う人間の言葉ではなかった。
次の投稿は、できれば3日以内にとうこうします。




