第23話屋敷
「ん........」
口から小さくそんな声をこぼしてカノンは濡れた体を持ち上げ、眠そうに目をこすった。
「おはよう」
そんなカノンに挨拶をすると、とろんとした目をこちらに向ける。
「おはよう....ございます.....」
カノンは、眠そうにしながらも隣で足を延ばしているユウキに挨拶を返した。
そして、辺りを見渡し首を傾げた。
見覚えのない、全く知らない場所で混乱しているのだろう。
「ここは?.....」
「うーん?ここがどこなのかは、俺も分からないんだけど、今あったことを簡単に説明すると....」
そう言ってユウキは、カノンに今あった事を話し始めた。
爆発に巻き込まれてカノンが気絶したこと、地下水脈に落ちたこと、流れていくとここにたどり着いたこと。そこまで話したがユウキはゴーレムの大群の話は決してしなかった。
カノンは真面目な性格、話せば迷惑をかけたと落ち込むだろう。
ならそんなことなかったことにすればいい。
ユウキは今までの話をすると、急に話を変え本題に入った。
「さて、カノン、ここから脱出しなくちゃいけないんだけど、出口らしき物は、一ヶ所しかない、あそこにある扉の事だけど.......」
そう言って、粉々になったブラックゴーレムの後ろにある扉を指でさす。
「俺は、このダンジョンの性格状罠だと思ってる、カノンはどう思う?」
「私も、罠だと思っています。ですが出口があそこしか無いのなら入って見るべきだと思います」
「確かにそうだな.......じゃあ、試しに入って見るか」
ゴーレムの欠片を蹴りながら扉の前まで歩いて行く。
扉の目の前まできたら、罠が無いか少し見ながらゆっくりと、扉に手を置いた。
「カノン、開けるぞ」
扉はゆっくりと音を立てながら開いた。
扉を抜けた先は、トラップでもなく洞窟でもなかった、そこにあったのは一面を埋め尽くさんばかりの花畑だった。
一面に広がるマリーゴールドやダリアなど明るい色を尊重させている花畑、近くには綺麗な湖、その奥には屋敷が立てられていた。
「どうなってるんだ?.....」
思わず声が出てしまう、それ程にさっきいた場所との、違いが激しかった。
まるで異世界にでも飛ばされたような感じだ。
だが、後ろの扉から見る限りやはりここは洞窟内なのだと実感させられる。
「カノン、とりあえず進んでみよう」
カノンにそう声をかけて、花畑の唯一開け花がない通り道を進んでいく。
「ご主人様、屋敷によるんですか?」
「ああ、そうだよ?」
「大丈夫なんですか、よっても、こんなとこに住んでるなんて完全に魔物とかですよ」
「多分大丈夫だろ、それに絶対に屋敷によるしかないんだよ」
「なんでですか?」
「周りを見てみろ、出口らしき物が全くない」
俺に言われてカノンが周りを見渡す。
花畑の周りは、さっきのドーム型の洞窟と同じ作りだった。
「分かったろ、ここの出口を知っているのは、あそこの屋敷に住んでる奴だけだ、だから屋敷によらなくちゃいけないんだ」
そんな事を説明しているうちに気づけば屋敷の前まで来ていた。
屋敷には、装飾の施された扉が設置されていた。その扉を[コンコン]とノックしてみる。
しばらく待って反応が無ければ入るつもりだったが、[ガチャリ]と、音がして、中からピンク色の髪の毛をした頭に人間とは、思えない角を生やし、背中にコウモリの羽をつけた女の人が出て来た。
「あなた達を待っている方がいますのでこちらへどうぞ」
そう言って、女の人は、屋敷に入って行く。
俺は少し女の人の言葉に疑問に思う事があるが、女の人に言われるがままについて行く。
屋敷の一階にある一番奥の部屋の前まで来ると
「この中にいますので、では...」
そう言って女の人は、どこかに行ってしまった。
「カノン、すぐに戦えるようにしておいてくれ」
俺は、カノンにそう言って扉に手をかけた。
扉を開けた先は食堂になっていた、ステンドグラスから差し込む光が食堂を鮮やかに飾っている。
そして食堂に置いてある席の一つの上に金髪の幼女が立っていた。
金色のロングヘアー、服はどこかで見たような気がする黒いドレス。
その幼女はにやりと笑うと。
「よく来た勇者よ!私は黒の魔王クリスティーナ=メルリン!私を倒しに来た勇者よ!まずは食事でもしようぞ!」
金髪幼女は、意味の分からない事をいきなり言った。
いろいろと言いたい事があったがまず一番否定したい事があった。
「俺は勇者じゃない、クソ勇者と一緒にするな」
少し怒気を含んだ声、だがこの頭のおかしい幼女は気にすることもなく席に着いた。
「嘘をつかなくてもよいよい、それよりも席に着くがよい、もうすぐサキュバスが食事を持って来るから待っておれ」
ふてぶてしく何かを試すようにこちらをじっと見つめている、自己紹介の仕方からして完全に馬鹿だと思っていたが......少し警戒しておいたほうがいいな。
「ご主人様、どうします?この幼女殺します?」
カノンが小さい声でこちらに耳打ちをする、少しむずがゆい。
「いや待て、やめておこう」
「どうしてですか?」
「いろいろ聞きたい事があるからだ、それにこいつを殺したら、ダンジョンからの脱出が不可能になる可能性がある、とりあえずあいつの言う通りにするんだ」
カノンにそう言って俺は幼女の目の前の席に座る。
俺が座ったのを見てカノンも席に着く。
「質問してもいいか、お前は本当に魔王なのか?」
「いかにも、22体の魔王の1人じゃ」
「魔王は、そんなにいるのか?今、人間を滅ぼそうとしている闇の魔王1人だけじゃないのか?」
闇の魔王、こいつを倒すために勇者が召喚された。
そもそも闇の魔王は人間を殺しているが、殺されたのはどいつもこいつも俺からすれば最低最悪な人間ばかり今思えば憎む相手でもないのかもしれない。
「あやつは、魔王の裏切り者じゃからのう」
「どう言う事だ?」
「闇の魔王は、神になろうとしておるそれしか言えんのー」
神、この世界ではある4神の事を神と呼んでいる、エンリル、ティアマト、ネメシス、イシュタル。
どの神も死人を生き返らせ、天変地異を起こすことができる実力者とされている。
「もっと詳しく教えてくれ」
「無理じゃの、魔王の掟で闇の魔王についての情報をもらしてはいけないのじゃ.....さて、今度は、私から質問させてもらおうかのう、お主は、何故ここに来た?」
「LV上げをしようとこのダンジョンに来た」
「本当に勇者じゃないのか?」
「ああ違う、逆だ勇者を殺そうとしている」
「何のために?」
まあ、当然の疑問だな、勇者を殺すなど闇の魔王の手助けと同義だ。
だからと言って質問に素直に答える必要もない。
「世界平和のた......」
「ああ、言っとくが私に嘘はきかんぞ?ってその嘘はだれにでもわかるぞ」
「.........復讐するため」
少し間をおいて、ポツリといった。
「何故復讐をする?」
そこまで言う必要もない、教える気もない。
「答える必要は無い、これで勇者じゃ無いとわかったな?」
「よく分かったのう.........あれ?お主何しに来たの?」
本当に素っ頓狂な声を上げる。
「このダンジョンから出る、脱出口を探してたらここに来ただけだ」
幼女は俺の顔をじっと見つめると深く息を吐いた。
「本当みたいだのう、すまん私の勘違いみたいだったようじゃ、あとで送ってやるから、その前にお主の無属性魔法を私に使ってくれないか?」
その言葉を聞いてぎょっとする。
(こいつ、俺のステータスを覗きやがった)
「ああ、いいだろう、代わりにお前のステータスを見せろ」
別にいいさ記憶くらい、だが少し記憶魔法の実験台になってもらうぞ。
「いいだろう」
そう言って幼女は、首に下げているネックレスを外した。
(あれが、覗くのを阻害するのか....)
完全に外したのを確認してから、俺はステータスを覗いた。
=========================
クリスティーナ=メルリン LV124
?歳
HP:?
MP:?
筋力:?
スタミナ:?
防御力:?
器用さ:?
魔法:?
スキル:?
固有魔法:?
固有スキル:?
称号:魔王 幼女 ?
=========================
「おい、ほとんど見れないじゃないか」
これでは約束が違うと文句を幼女に行ったが、はて、とばかりに首を傾げられた。
「だが、お主の望みは、ステータスを見る事じゃろう?知る事は、できなかったかもしれんが見る事は、できたじゃろう?」
そう言ってにやりと笑う。
(くそっ、こいつ俺をはめやがった)
「さて、約束通り見せてもらおうかのう、お主の記憶」
「仕方ない、いいだろう、頭を貸せ」
俺は仕方なく幼女の頭に手を置いて無属性魔法を使った。
その時俺は嘲笑していた。
「面白い事もあるもんじゃのーまさか、お主が記憶を持ったまま生まれ変わるなんて、不思議じゃのう」
そんな事を言う幼女が憎たらしい、カノンでさえも気絶するだろうと思い見せなかった生々しい音や苦痛などをそのまま見せつけたというのに......この幼女はケロッとしていた。
忌々しそうに俺が幼女をにらみつけていると、目の前に食事が運ばれて来た。
運んできたのは、最初にあった女の人だった。
「おお、そうだサキュバス帰ったら黒のダンジョンの皆んなに伝えて欲しい事があるのじゃが」
「はい、なんですか?」
この女の人はサキュバスというらしい、確かにそれっぽいが.....
サキュバスの体を見るとカノンがジト目でこちらをにらんでいた。
「私、しばらくユウキとやらについて行くから、と伝えといてくれ」
「はぁー!?何言ってるんですか?」
大変驚いた声を上げている、それは全く持って俺も上げたい反応だ。
「いいじゃん、こいつについて行ったら面白そうなんじゃよ」
「おい待て、俺はついてきていいなんて言ってないぞ」
「いいじゃろ、私も、復讐したい奴がいるんじゃ」
(こいつは、確実に面白半分で言っている。そんな奴を連れて行けない、だから試させてもらおう)
「いいだろう、代わりに一つ条件がある。復讐者のスキルを受け取れたら、連れて行ってやる」
そう言うと、幼女は、にやりと笑い
「もう持っているので必要無いな」
「本当に持っているのか確認するから、ステータスの復讐者のところだけ見せろ」
「いいぞ」
そう言って幼女は、何かを唱えた。
幼女が何か唱え終わったのを確認してから、ステータスを見てみるとそこには、復讐者の文字。
(まじか、こいつはそれだけ恨む奴がいるって事で、面白半分で言ってるわけじゃ無いって事か..........)
「分かった.....」
「よしっ!じゃあ行ってくるからのう」
幼女が立ち上がり出ていきそうな雰囲気を出すとサキュバスが必死になって止める。
「待って下さい!メルリン様、魔王の仕事は、どうするんですか!?」
サキュバスが懇願のようにそう言うと、幼女はいい笑顔で振り返ると。
「私がいなくても頑張ってくれ」
余りの言い草にサキュバスは放心状態。
それをいいことに幼女は俺とカノンの腕をつかみ走り出す。
「こっちにテレポーターがある、つい来てくれ」
俺達の手をつかんで屋敷を飛び出した。




