第20話ゴーレム
白のダンジョン地下に潜っていくと、下りが終わりダンジョンの第二層部分と思わしき所に到達していた。
第一層部分は松明型クリスタルだったが、第二層からは紅榴石のような赤光りする松明に変わった。
「彩色が派手だな.....これも持ってくか、小金稼ぎくらいにはなるだろ...」
「そうですね、ついでに私が寝る時用の光代わりにしましょう」
ちょっとしたお金稼ぎくらいに考えていたが後に凄い量の金貨に変わることをユウキ達はまだ知らない。
しばらく特に何もなく、一歩通行が続き、カノンと駄弁っていると。
「ッ!?」
いきなり目の前から、鋭い岩が飛来してきた、咄嗟に身を後ろに引き岩を回避すると黒剣を抜く。
「魔物ですね....結構先にいるみたいです」
カノンも精霊剣を抜き、臨戦態勢に入る。
また飛来する岩を難なく剣で弾くと。
「カノンはゆっくり来てくれ、俺が殺してくる」
「分かりました」
俺はカノンをおいて、剣を片手に走り出す。
本当はカノンに頼みたかったのだが、あれだけの距離から狙撃して魔物だ、狙撃系のスキルを持っていても不思議じゃない、実際狙撃スキルは魔法の命中率も上がるためほしいのだ。
「....しつこい...」
魔物目指して走り出したのはいいのだが、近づくたびに飛んでくる岩の弾数が増えてくる。
今では昔の剣技を使いまくって岩をひたすら破壊し続けている、実際近づけていない。
(岩をどうにかしないと......全部溶かすか..)
俺は思い出したように消化魔法『消化球』を何十個を一斉展開させ、そのまま魔物を目指して走りだす。
何かの発射音とともに、俺を狙いに岩が飛来してくるが、その岩に向けて消化球を投げつけ霧散させた。
「これで進めるな」
岩が無数に飛んでくる中、俺は消化球を身代わりに突き進んだ。
岩を溶かしながら進んで行くと、微動だにしない巨大な鋭い岩のついた甲羅を背負った亀がいた、至近距離でも岩を飛ばしてくる、まるで固定砲台だ。
(確かこいつは、Bランクの魔物ロックタートル、王様だった時に城にある、大図書館に置いてある魔物図鑑で読んだことがある....さて、てこずらせてくれたじゃないか...)
どうしてやろうかと考えるといいことを思いついた、それは先日考えていた魔法の実験体にすることだ。
さて、早速、と、右手に毒魔法『スモッグ』を発生させ、亀に当てる、すると球の形をしていたスモッグが煙状に霧散した。
次に左手に火魔法LV1の『ファイアーボール』を作り出し、霧散したスモッグに当てる、たったこれだけのお手軽簡単魔法のはずが........
「ッ!?」
大音量の爆発音が洞窟に響き渡り、ダンジョンを揺らした。
(少し、やりすぎたな)
威力が予想の真上を行き過ぎて自分の方まで爆風が吹き荒れる。
想定外の爆風を手でガードしながら、飛ばされない様に耐え続けた。
しばらく耐えていると、爆風がおさまり、焦げ臭いにおいがあたりを包み込む。
(この技は緊急の時以外は、使わない様にしよう)
そう決めた、もし草原なんかで使ったら、大惨事になるからだ。
ロックタートルを、倒し、カノンと合流するため、来た道を戻ろうとすると、
「大丈夫ですか!?」
心配そうにカノンが走りながらこちらに向かって来た。
「ああ、大丈夫だ」
ユウキの何ともない姿を見てほっと胸をなでおろす。
「なら、良かったです。すごい爆発音が聞こえたので何かあったのかと思いました」
「心配をかけて悪い、じゃあこのまま行こうか」
「分かりました」
そしてそのまま俺はカノンと次の層へと進んで行った。
第3層に到達すると、またもやランプの色が変わり今度は鮮やかな翠玉のランプ、それに呼応するかのように翠玉色の体をしたゴーレム一匹と第一層で会ったクリスタルゴーレムが熱烈にお出迎えしてくれた。
「カノン、ゴーレムを二匹頼む俺はあの緑の奴を殺る」
カノンにそう言ってから、背中から、黒剣を取り出し『砕・蓮華』を使ったが...
ゴーレムに黒剣が当たると弾かれ抉れてもいなかった。
(今度は剣が効かないのか?...なら魔法か...)
右手に火魔法LV5の『獄炎』を発生させて、至近距離で投げつける、だがゴーレムに当たった瞬間に消えてしまう。
(こいつ弱点がないのか?とりあえず色々試してみるしかないか)
ゴーレムが腕を振り回しながらこちらに突っ込んでくる、それをギリギリでかわしながら水魔法LV2の『ウォーターボール』をぶつけてみる。だがやはり消えてしまう。次に土魔法LV2の『ストーンブレッド』を発生させて、叩きつける。だが、やはり消えてしまう。
するとゴーレムがこちらに向かって腕を振るった。
(くそっ!)
このままでは直撃することに焦った俺は右手から、風魔法LV1の『トルネード』を使って回避する。
すると、回避に使ったトルネードがゴーレムに当たった瞬間ゴーレムが土のように崩れ堕ちた。
(こいつは、風魔法に弱いのか......もしかして、色によって弱点が違うのか?緑色は風魔法、なら赤色は火魔法....こんな感じだろうか)
そんな考察をしてみるが実際に試してみなくては、分からない。
あっけなく真っ二つになっているクリスタルの残骸、その横に立っているカノンに声をかける。
「カノン、次に行こうか」
「分かりました」
また、しばらくの間本当に何もなくカノンと駄弁り始めていると、見慣れた何もない洞窟に一つ、看板が立てられていた。
その看板には......
[最高の宝物を求める者は→
次の層に進みたい者は↑]
トラップに見え見えの看板、
「ご主人様、どうします?」
「うーん試しに行ってみるか?多分罠だから気をつけろよ」
「分かりました」
少し悩んだが、宝が気になるので試しに言って見ることにする。
しばらく進んでいると、赤色の箱が置いてあり、その上に[最高の宝↓]と、書かれた看板が立てられていた。
(うさん臭いな、けど開けてみるか)
宝箱を開けようと近づくと、またいつも通り地面が割れ赤色のゴーレムと、水色のゴーレムが現れた。
(ちょうどいい、試してみよう)
俺の予測通りなら赤は火系統の魔法、水色は水系統の魔法、のはずだ。
「カノン、こいつらは、俺に殺らせてくれ」
本当にそうなのか確認のため右手に火魔法LV2の『ファイアーランス』を発生させて赤色のゴーレムにぶつけてみる、すると赤色のゴーレムはの中心部は黒い煙を上げながら、穴が開いていた。
(やっはりそうか、となると水色は水魔法だよな)
左手に水魔法LV2の『ウォーターボール』を発生させてゴーレムに当てる。
するとゴーレムは、水が触れた場所から泡を立てて溶けてしまった。
これで、ようやく確信が持てた、やはりゴーレムがは同じ色の魔法に弱いということが。
さて、と邪魔なゴーレムも消したことだし早速宝箱を開ける事にする。
(トラップ仕掛けられてないのよな?)
トラップを用心しながらそっと宝箱を開けてみると、
(なんだ、これ?)
中には、黒色のドレスが入っていた。
布の触りごこちからしてみて一級品なのは間違いないが、これの使い道を教えてほしい。
本当に何に使うんだこれ、売って金にしろってことか?
使い道が思い浮かばず、カノンに広げて見せ。
「カノン、これ欲しい?」
とりあえず聞いてみた、これでカノンが欲しがってくれれば使い道があるのだが。
「いえ、いらないです」
即答でした。
「ご主人様が来て欲しいと言うのなら着ますけど?」
これ以上着ないか。というと変な誤解を受けるのでそこでやめておいた。
「いや、そう言う訳じゃないから」
とりあえず使い道のない黒色のドレスをアイテムポーチに入れておく、そして看板のあった所まで戻っていった。
[最高の宝物を求める者は→
次の層に進みたい者は↑]
と、書いてある看板まで戻って来て、まずやった事は、火魔法LV1の『ファイアーボール』を使い看板を燃やした。
(さてと、次の層に向かうか)
何事もなかったように、次の層までの道のりを進み始めた。




