第19話教会
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獣人の国前方まで来ると大きな門、そんなに大きなものが通るとは思えないほど無駄な門がありそこには門番らしき獣人が槍を構えて立っていた。
さあ、どう侵入しようか、そう考えるもすぐにそんなこと考える必要がないと気づく。
だって嘘をつく材料がそろっている、後ろを振り向いてみれば怖がっている獣人の子供たち、それと怖い人間。
ほらこれだけあれば十分だ。
俺は門に一人堂々と近づいていく、できるだけ横暴に。
すると門番は槍を構え、俺の喉元に向けると
「何用だ人間、ここは獣人の国、人間は即刻立ち去れ!」
妙に甲高い声で警告を促す。
俺はそいつに、いつもとは全然違う口調+に焼け顔で、
「何言ってんすかぁ?私はアセロラ王女の命令で奴隷を引き取りに来たんすよ?」
ユウキはできるだけ自分の立場が上でありアセロラと仲良くさせてもらっている風を装う。
「おお、それはすまん事をした。待っていろ、今門を開けよう」
申し訳なさそうに、門を開けに行く門番。
まだ俺が本当にそうとは確信してはいないがこれ以上疑ってしまう方がまずいと感じ取ったのだろう。
(ちょっとちょろすぎないか?......ここの門番大丈夫か?...)
余りの簡単さに少し拍子抜けしていると、目の前の門が開いた。
「どうぞお入りください」
媚びへつらうような門番のその笑顔は自分の出世などではなく自分の粗相をしたと報告、それがされ殺されないかという恐怖から来たものだった。
♯
門を抜けた先は、獣人達の商店街だった。商店街には、獣人達が溢れかえっている。
だが、笑顔の獣人はほぼいなかった。
その真ん中を俺は堂々と獣人の子供を連れて歩く、すると周りの獣人達が俺の頭を見て怯えるように道を開けた。
「かわいそうに、あんな小さい子が.......」
俺の後ろにいる獣人の子供達を見てそんな事を呟くが、決して助けようとはしないし思いもしない。
(完全にあきらめてるってことか.....まあ仕方ないよな)
今この国の獣人たちは人間に支配され奴隷のような扱いを受けている、それもこれも全てアセロラという獣人のせいなのだが、そんなことより人間の恐怖のほうがはるかに上のようだ。
それでも獣人達は睨むことはできるようで呪い殺そうとしているかのように睨みつけてくる。
それを見たカノンは敵対視されていると感じたのか精霊剣に手を伸ばした。
それを見て、俺は慌てて止めに入る。
「おいカノン、斬りかかったりするなよ?」
「....分かりました...」
俺に言われてしぶしぶカノンは精霊剣から手を放した。
今すぐここから離れよう、カノンがまた斬りかかろうとしたら困るし、それに何より空気が悪い。
場の悪さに感づき俺は、子供達を連れて早足で商店街から抜け出した。
♯
商店街を抜けた先は、 家が建てられているが獣人が全くいない場所に出た。
まるで捨てられた、街のように見える。
(何なんだ、ここ?)
少し不気味に思いながら、足を進めると。
「ここが私達の家なの!」
いきなり狐耳の女の子が大きい声を出して家に駆け寄って行った。
まるで俺に家の場所を教えてあげるためにわざと叫んだように見えた...が、それは俺の考えすぎだろう。
「ここが本当にお前達の家か?」
「はいなの!!」
元気よく答える少女。
にしてもこれが家なのか?教会にしか見えないのだが......もしかして捨て子なのだろうか?
(まあ、いいか、それよりこの子達の親はいるんだろうな)
確認しようと教会の扉を開けた。
中は教会では全くなく生活感ある大きな家だった、ここの主は子供たちのために教会を家に改造したのだろう。
そんな心優しい主の姿が見当たらない。
(探してみるか?....)
少し面倒臭い気分になる。
そんなことせずにさっさとアセロラの殺し方を考えたいというのに.....だが
「やったー!戻ってこれた!」
「久しぶりのお家だぁー!」
獣人の国に来てからずっと暗かった子供達が笑顔を見せている。
(まあ、結果オーライか、)
とりあえずそう思う事にした。
さて、これからどうしたものか、ともかく子供達は、ここにいてもらう事になるが、
俺とカノンは、どうしよう?
そもそも大人がいないこの状況で子供達だけで生活出来るのだろうか?
最悪、空き部屋があればそこにしばらく住ませてもらうのだが....
「なあ、ここに空き部屋ってあるか?」
先程少し変な気がした少女に声尾をかけると笑顔で返してくる、その笑顔は子供らしい、やはり俺の考えすぎだったようだ。
「余ってるの!」
「そうか、じゃあしばらくそこを使わせて貰ってもいいか?」
「もちろんいいの!」
「ありがとう、じゃあ部屋まで案内してくれるか?」
俺が聞くとこくりと頷き
「こっちなの!」
小走りで部屋まで案内してくれる狐耳の女の子。
その女の子の後ろ姿を見ながら今さらながら思った、
(そういえば、名前知らないな.....)
とても今さらだが、名前を知らない、とりあえず今度聞く事にしよう。
「ここなの!」
俺がそんな事を考えているうちに部屋に着いたようだ。
部屋の扉を開けてみると、中は、いたってシンプルで寝る用のベッドと、机とイスが置いてあるだけだった。
狐耳の女の子は、
「ごゆっくり〜」
と、宿屋の娘のような事を言って部屋に一人俺を残して戻って行った。
(さて、ここからだな、部屋は手に入ったけど、食料の調達をしないと、後でカノンに頼んで買って来てもらおう、その間俺は....少し鍛えておくか...)
ユウキは、この国での復讐を確実なものにするため自身の実力を上げるためダンジョンに向かった。
♯
ダンジョンそれは、冒険者の夢と絶望が詰まった場所。
ダンジョンに潜り金を大量に手に入れることができるかもしれない、ダンジョンに潜りビックリするほどの化け物に出会うかもしれない、そんな夢と絶望が詰まっている。
その実のところダンジョンというもの今の最新技術によってもは全く解明されていない、どうして宝箱が出現するんだ?どうして魔物がわき続けるんだ?どうして罠が存在するんだ?どうして全て形が異なるんだ?などなど.....
今のところ有力な説は二つ、一つはダンジョン自体が魔物であり、魔物が住みやすい環境を作り上げ、宝を用意し、人間が宝目当てで来たところを、住んでいる魔物に襲わせ、人間の死体を喰らう、そのような魔物ではないかという説。
二つめは魔王が人間を殺すために作り上げたのではないか、という説だ。
まあ、どちらも信ぴょう性などなくただの妄想に過ぎないが......
今、俺は一人教会から少し離れた所にある白のダンジョンの入り口にいた。
少しいま入るか入らないかで迷っていた、実はポーション類を教会に忘れてきてしまった。
それでは少し危険だろうか?やめておいたほうがいいか?
どうしようか迷っていると。
後ろに何かの気配がした、それに気がついたユウキはとっさに振り向くとそこには、
当然の様な顔をして、立っているカノンがいた。
「あれ、カノン買い物は?」
「教会の食材がそろってて買い物の必要がなくて暇だったので、すこしご主人様をつけてました」
当然の様にストーカ発言をしたカノンが少しだけ怖かった。
「まあいいかカノンもいるし、ダンジョン潜ってみるか....」
ゆっくりとユウキとカノンは、白のダンジョンに足を踏み入れた。
白のダンジョンの中は、洞窟になっていて、ずんずん下の坂状に下がって行く。
「それにしても妙に明るいな」
何故か洞窟の中には所々光、道を照らす水晶が置いてあった、まるで入ってくるのを歓迎しているように見える。
「ですね、この水晶持ち帰って火種にしてみますか?」
「そうだな、確かに使えるかもな」
一切炎を使わない松明、これ高く売れそうだな.....
「にしても魔物いないな....」
出てきてもらわないと、LVアップにならないのだが....
そう思っていると、ユウキの願いが通じたのかいきなり地面の水晶が割れゴーレム象ったクリスタル......というよりもクリスタルでできたゴーレムが二匹が出て来た。
(なんだ?こいつ....)
初めてみたゴーレムに俺は戸惑っているとゴーレムはそんな俺にも容赦なく腕、というかクリスタルを振りかぶって殴りかかってきた。
ユウキは、それを咄嗟に転がりながら回避する、ゴーレムの腕は地面の水晶に深くひびを入れていた。
(なんつう力だ...)
その時に右手に獄炎を発生させて掌底を繰り出すようにゴーレムの腹に直撃させた。
これで終わったそう思ったのだが....
次に瞬間ゴーレムが容赦なく腕を振るった。
死んだと思っていたものが急に動き反応が遅れた、一応手でかばったものの勢いで壁に叩きつけられた。
「がっ!」
「ご主人様!大丈夫ですか!」
心配そうにこちらを見ているがカノンももう一体のゴーレムで手いっぱいのようでこちらに駆け寄ってくることができないでいた。
ユウキはわき腹を押さえ、よろめきながら立ち上がる。
(くそ...こいつ魔法が効かないのか...)
ユウキが驚いている暇も、休んでいる暇もなく、ゴーレムは無尽蔵に無慈悲に確実にこちらを殺そうと剛腕を振るう。
それを紙一重でよけながら、思考する。
(こいつどうやって殺そう....魔法が効かないなら剣で殺りあうしかないけど....俺まだ剣技全然使えないんだよな....昔の俺の剣技使うか?....)
転がりながら回避して、起き上がり背中から、黒剣を取り出すそして、我流『砕・蓮華』を発動させた。
黒剣はゴーレムを四度流れるように切りつけた、だが『砕・蓮華』はそれだけで終わらない、この技の一番の強みは、斬られた場所を抉るのだ。
『砕・蓮華』をうけたゴーレムの体は四か所の部位が足りず、ひどい音を洞窟に響かせてクリスタルの床の上に倒れた。
実はこの技はまだスキルとして覚えていないが昔の俺が流派で教わりスキルとして覚えた剣技を見よう見まねで発動させた、ただそれだけなのだ。
(こいつ、剣技に弱いのか.....ってカノンは大丈夫か?)
あたりを見渡すと、少し奥に進んだところに巨大な氷の結晶、その横にカノンがいた。
近づいてみると、分かるが氷の結晶の中身はあのゴーレムだ。
ゴーレム自体を倒すことができなかったため、氷漬けにしてしまったのだろう、カノンのいい判断に感心する。
「大丈夫ですか?」
先程のゴーレムに壁に叩きつけられたことを言っているのだろう。
正直体が痛い、だがそんなことも言ってられない、俺はアイテムポーチにゴーレムの砕け散った破片を詰め込むと。
「ああ何とか、それより早く進もうか」
適当に返事を返し歩みを進める、その横にカノンはぴったりとくっついてきていた。
「はい!」
ユウキと、カノンは、白のダンジョンをさらに深く潜っていった。
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無理なら明後日です。




