第0話復讐を誓う
今回から小説を投稿させていただく東雲椛です。
初めての投稿作品ですので誤字脱字などもあるかもしれませんが温かい目で見守っていただけたら幸いです。出来るだけ投稿していくので、応援よろしくお願いいたします。
少女は言った、優しく微笑みながら、勇者に向けて。
「ーあなたがこの世界の主人公でないのなら.....」
自分の力が欲しいと願ったこの少年に、女神は言った。
「その主人公を殺して仕舞えばいいのです」
淡々と無機質に、女神とは思えない言葉を口にする。
「異世界からやってきた貴方......魔王を倒し世界を平和にするのです.....そんな貴方が主人公ではない?それはおかしい.....世界は間違っている....」
世界は間違っている、貴方は正しい、なんて勝手な肯定。
だがそんな事思えるほど今の勇者に強さはない。
女神の言葉が麻薬のように勇者に溶け込んでいく。
「貴方は全てを支配して......自分が楽しく暮らせる世界を作るのです!.......さあお行きなさい勇者様、いえこの世界の主人公よ!」
勇者はすっと立ち上がり迷いは消えた顔で、歩みを進める。
「さあ、主人公ユウキを殺すのです!」
女神が言う事が全くおかしく、平和に最も遠い事を言っているはずなのに、勇者は気づかない、それ程までに憔悴しきっていたのか........
はたまた本当に目障りで、世界を支配したかったのか、それは分からない。
♯
全てがどうでもいい、そう思った。
仰向けの姿勢で赤い空を見つめる、いや赤い空などではない、この青い空を見つめる視界が自分の血で塗りつぶされているのだろう。そしてその視界から見える裏切った人間の顔は何ともにやけ顔で、吐き気を覚えた。
俺は何のために生きてきたんだ?貧しい人には金を分け与え、国がモンスターに襲われた時も国民を守った、同盟国がピンチの時は必死で助けた、それの何がいけなかったんだ?
どうしてこうなる?
そんなふうにただ頭の中でぼやいてもこいつらを殺せるわけじゃない。
それにこうなってしまったのは自分がただ気づかなかったというだけのことだ、いつも自分の周りで笑顔を振りまいていた人間たちはただのくそだったというだけのことで...だからと言って今の状況を認めるわけじゃない、いや認めない。
だってそんなことをすれば俺をかばって死んだ者たちになんて顔して合えばいいんだ?
「惨めだなぁ」
「ようやくくたばったか散々逃げやがって」
「でもこれで私たちの物ですよ金は...」
「俺さ、新しい武器ほしかったんだよね~」
ただこうしてくそどもに殺されるためか?
「さ、最後に、教えて..くれ、誰の....命令なん...だ?」
ならせめて、ならせめて俺たちを殺した人間を恨みながら死んでやろう。
「...全ての国、金だよあんたを殺せば国ひとつ買えるほどの金が貰える」
全ての国か...だったらこの世界全てを恨んで死んでやろう、せめてこいつらに不幸多からんことを。
「流石勇者様、ありがとうございます!私のために生かしておいてくださって!」
その声を聞いて嫌な予感がした、その声は俺を裏切らないはずの人間の声だった。
「ド、ドルトン?どうして...ここに?...子供たちは?...」
ドルトンは俺の部下、俺をピンチの時に助け出してくれた仲間、のはずだ....
勇者に追いつかれ死に物狂いで逃げていた時、子供たちと一緒に遠くに逃げさせたはずなのだ。
どうして.....どうしてお前がここにいる!?
どうしてそんなに親し気に、仲間のように話しかけているんだ!?
「子供たち?ああ、これのことですね」
適当に、まるで物でも投げるように俺の隣に、何か、をほおった。
怖い、怖かった。隣を見ることができない、もしこれで子供たちがいたら俺は本当に絶望してしまう。
それでも、勇気を出して隣を見れば...
「あ、あああああああああ!」
体にあざがついているもの、首を縄で絞殺されているもの、他にも腕がおかしな方向に曲がっていたりと、見るに堪えない子供たちの死体。
「なんで...だよ!?どうして...こんなことを!?」
心から叫んだ、ドルトンを責めるように、するとドルトンではなく先程の男があきれたように喋る。
「だからいったろ金だって」
「さて、さっさと殺しましょうか」
ドルトンがおもむろに剣を振り上げた、その振り上げた剣には子供たちの血がついていて、ぽとぽとと垂れていた。
「おいおい、なんでそんなに焦ってんだ?この後じっくりと痛めつけられるぜ?」
勇者の仲間の格闘家がこぶしを鳴らしながら前に出るが、それをドルトンが遮り一礼した。
「すいませんね、勇者様、実はこの後私の子供が生まれるんですよ」
その言葉が耳を通り過ぎる、すでに血を失いすぎていること、それと子供たちの死によるショックといったところだろうか、そのせいか頭がポーっとする。
「お前ら.........絶対、殺してやるよ........」
ただ、恨み言のように口から漏れ出た。自分の思考がまとまっていない、だからこそ今出た言葉は本音だった。
俺は、恨むだけじゃない本当は自らの手でより残酷に苦しめて、自ら死にたいといっても殺してやらない、ただひたすらに苦しめ続けてやりたいのだ。
俺の恨み言を聞いた勇者たちはそれを鼻で笑い。
「ではさようならユウキ様」
と言い剣をユウキの首目掛けて振り下ろした。
こうして、ユウキの一度目の人生が終わった
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ただひたすらに白い世界、ここが天界という奴だろうか。
少し歩いてみると、上に続く階段と、下に続く階段が見えてきた。
そしてその階段には一人の人間?いや悪魔ってところか...そんな奴が座っていた。
【これでいいのか?】
「なんだ?この声は...お前か?」
【本当にこれでいいのか?すべて奪われたままで】
「奪われたまま...ああそうだな」
胸の中に浮かび上がるのは、俺からすべてを奪って言ったやつらと、奪われた人たち。
もう俺には何も残っていない、胸の中がからっぽで、何もなくなってしまっている......はずだった...
【で、どうなんだ教えろよ殺したいか?】
深く聞いてくる悪魔に、俺は口が裂けたかのような凶悪な笑みを浮かべた。
そうだった....まだ胸の中に残っているこれは.....復讐心...
「当然だろ、すべてを壊して絶望の底に叩き落してやりたいよ」
【お前の本音が聞けてうれしいよ】
そんな醜く歪んだ感情をみて逆にこの悪魔は同じような笑みを浮かべた。
「お前は女の悪魔なのか?」
【女?いや違う、今偶然この姿なだけだ、普段は男だったり子供だったりはたまた老人だったりだ】
「そうなのか、で、どっちに行けばいい?」
悪魔の佇んでいるところには、上に続く階段と、下に続く階段が存在している。
聞かれた悪魔はまた笑うと右手を挙げた、その後ろには上に続く階段が。
【この階段を上に登れば子供たちに会える】
「じゃあ下か」
【会いたくないのか?】
「会いたいさ、けど今の俺に合わせる顔がない...」
顔に影がともる、その顔にはただ怒りだけが見て取れた。
【そうか、じゃあこっちの階段にいけ】
なにがうれしかったのか、その顔を見て悪魔は少し微笑をすると。
女の悪魔は左手を何もない空間に向けた、すると、前からあったのかそれともたった今作り出されたのかは分からない、ただ新たな階段があったということだけ。
「なんだこれは?」
【お前が望む場所につながっている、早くいけ】
「.....本当なのか?」
鋭い視線が悪魔を貫く、すると悪魔は嬉しそうにほほ笑んだ。
【昔と違って人を疑うことを覚えたんだな】
「.....分かった俺はお前を信じる、なにせ人じゃないからな」
そう口にするとユウキは、なんとも不愛想に階段を歩いて行った。
【忘れるなよユウキ生きているものは信じてはいけない】
目をすっと細め、既にいないユウキの背中を見つめると。
【まあ、こんなことを言ってもお前は覚えていないだろうけど...】
悪魔の声が悲し気に、寂しげに、この何もない部屋に響きわたった。
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