第14話カノンの壊れ方3
目が覚めると、なぜかいろんな獣人の子供と一緒に馬車の中に居た。
(どうして私は馬車に乗っているの?)
全く状況が理解出来ないでいると。
1人の白髭の男が、私を見て
「やっと目が覚めたか、今どうなっているか分からないだろう、まあ、簡単に言うとお前が牢屋で寝ている内に奴隷商人の俺に売られたんだよ」
その言葉を聞いて絶句する。
(くそが、奴隷商人に売られる時にあいつらの首を噛みちぎってやろうと思っていたのに)
自分の考えていた事が出来ず腹がたつ。
「大都に着くまで大人しくしてろよまあ、暴れられないだろうけど」
その通りだった、腕は、紐できつく縛り上げられている。
これでは動けない、
(くそが、どうにか脱出してやる)
どうにかして逃げ出そうといろいろ試すことにした。
結局無理だった。
いくらもがいても腕は、拘束されて使えない、足を紐で結ばれていて、立つことも出来ない。
(もう、無理なの?.....いや、まだ諦めてたまるか、あいつらを苦しめて殺すまで死ぬわけには、いかない)
密かに復讐心を燃やしていると、体が浮き強い衝撃が体を襲った。
直ぐに理解した馬車が横転したことを。
これは逃げるチャンスだ、そう思っただが。
「盗賊だ!盗賊が来たぞ!荷物を捨てて逃げるんだ!」
さっきの白髭の男が叫ぶ、
(やばい、このままだと盗賊に捕まる。くそ、解けろ)
腕に精一杯の力を込めるが縄は、全然切れない必死に縄を切ろうとしていると
「お頭、ここに奴隷達がいますぜ」
「おおそうか、おい、アジトまで奴隷を運んでおけ」
「分かりやしたお頭.....こいつは上玉ですぜ...味見はしても?」
「今回はダメだ、これだけの上玉なら金貨80枚はいくだろうからな」
「ちぇー」
盗賊は文句ありそうに私を抱き抱えると、アジトまで連れて行った。
アジトに着くと牢屋に入れられ、鎖につながれた、
(どうにかして、逃げないと)
そう考えていると、さっきお頭と言われていた奴が棍棒を持って牢屋に入って来た。
牢屋に入ってくるなり
「おらっ」
「うがっ!」
棍棒で殴りつけられる。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も殴りつけられる、頭がおかしくなるほど。
「おかしら、そんなことしたら売値が下がりますぜ?」
「最近はな痛めつけられた奴隷のほうがよく売れるんだよ」
「それの何がいいのかあっしにはよくわかりませんねぇ.....やっぱり貴族連中は趣味が悪いことで...」
「そんなこと言うんじゃねえよ、あいつらは立派な俺らのカモなんだからよ」
そんな会話中にもこん棒で殴られ、悲鳴が出る。
そんな日が1週間続いた。
もう悲鳴も出なくなっていた。
今日も殴りつけてくるお頭に
(こいつらも、絶対いつか殺してやる)
そんな事を考えながら睨みつける。
殴り終わり、帰ろうとしたお頭に隙を見つけ、お頭の腕に力いっぱい噛み付いた。
「いっでぇーー!?」
と、声を上げ、
「この野郎離せ!」
離さない私の喉に棍棒を全力で叩きつけた。
「うがっ!?」
喉を潰され声が出る。
そしてお頭は、腕を治すために帰っていった。
しばらくすると1人の変わった男が入ってきた、この世界では珍しい白髪、牢屋を開けると、私に近づいて、私の鎖を絶ち切った。
(今度は、どこに連れて行くつもりだ)
鎖を切った男を睨みつけた。だが睨みつけた私が少し揺らいだ。
なんなんだこの男は、どうして私を見て笑っている?......どうして私よりも目がいかれている?この男は確実にやばい、獣人としての本能が叫んでいた。
いや、違うこの目はいかれているんじゃない、私と同じ.....なのか?...それともいかれた殺人鬼?分からない。
男はすべてを見透かすかのように、まるで私のことを理解しているかのように言葉を放った。
「お前は、誰を殺したい?誰に復讐したい?もしお前が復讐を望むなら俺が力を貸してやる。どうする?俺の手を取るか?」
こいつは、こいつは殺人鬼じゃなかった、私と一緒、人として最も最底辺の復讐者だ。
そしてこの男の提案はとても魅力的だ、だが裏切らない保証がない。
流石に何度も裏切られた私は同じことがないように疑うことを覚えた。
けど、けど今そんなこと言っている場合じゃない、私の復讐を手伝ってくれると言っているのだ。
それが嘘だろうと、この男がどんな悪魔であろうと、あいつらを殺せるのならと.....
私はそう思い、男の手を取った
「とりあえず、回復してもいいか?」
男がそんな事を聞いてくる。
回復してもらえるのは、こっちからすれば好都合だ、だから私は、コクリと頷いた。
男が喉も傷も全て回復してくれた。
久々に痛みがない日だった。
治してもらったから、とりあえずお礼を言っておく。
「ありがとうございます」
と頭を下げる。
「いやそれはいい、それより頭を触っていいか?」
(この人猫耳が好きなのだろうか?まあ、お礼の代わりだと思えばいいか)
「はい、いいですよ」
そう言って男の方に頭を向けた。
男は、とても優しい手つきで触る。
すると、いきなり頭の中に映像が浮かびあがった。
その映像を全て見終わった。
この、男の人が、ユウキさんが、同じ復讐者だとよく分かった。
絶対に裏切らないことも、この世界を、自分を裏切った者たちをどれほど深く憎み殺したいのかも。
涙があふれそうになることを必死に抑え確認をする。
「今のは、あなたの記憶ですか?」
「ああそうだ、俺の記憶を送らせてもらった。俺の目的も分かっただろう、だから一緒に復讐しないか?」
誘ってくれているのだろう、その答えは、決まりきっていた。
「はい、それはもちろん一緒に復讐させて頂きます。ですが、あなたの目的が分かっても私の目的がわからないんじゃ意味ないのでは」
「じゃあ、記憶をみてもいいのか?」
違う、本当は、見て欲しいのだ。
同じ復讐者として、私の復讐心を知って欲しいのだ。
どのようなことがあり、何を憎み、何を殺したいのか、この優しすぎた復讐者に見てもらいたいのだ。
「はい、どうぞ」
そう言って私は、正座をする。
ユウキさんは私の頭の上に優しく手を置いた。
少し話が短くなってしまいました。
できれば明日投稿します。




