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復讐するため今日も生きていく  作者: ゆづにゃん
第十一章平和を求めて
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第126話幸せに酔いしれる

自分にとって、復讐とは何だったのだろうか...

最近ふと、平和すぎる日常を過ごしたせいで、そんなことを考える日々だ。

今でも思い出せる、燃えるような怒り、そして殺意。

ひとたびも忘れたことはなかった、いつだって考えていたことはあのクズどもをいかに苦しめて、どのようにこの世から抹殺するか...

それなのに俺は...この平和で満足しようとしてしまっている。

自分だけ幸せになろうとしている...

子供たちは不幸な死を遂げているのに...俺は最低な人間だ。

結局誓った復讐を中途半端にやめようとして、このままこの国の王として生きようとしている俺は...

自己嫌悪に押しつぶされてしまいそうだ。

結局結論を先延ばしにしてしまう...このままじゃいけないはずなのに...カノンたちに自分の考えを伝えなくてはいけないのに...

この繋がりの全てが復讐によるものだけな気がして...どこかに行ってしまう気がして...怖くて言い出せない。

本当に嫌気がさす、怖がりで、ずるくて、最低で、自己中で...


そんな思いを胸に、今日もまた生きていく...いろいろな考えを、思いを胸に秘めて。


「ユウキさん今日は学校ですよ!早く起きてください!」


寝ぼけた目を開けるとそこにはカノンが笑っていて、こんな日々のまま生きていたい、そう思うと昔のユウキの性格が戻ってきてしまいそうで...

今日も俺はキリアという復讐者であり、愚王ユウキであるどっちつかずの笑みを浮かべるのだ。


「おはよう、カノン」


                        ♯


今日は国エストロニアに帰ってから、一週間が過ぎたころである。

すっかり仕事も片付いて、そのおかげか、空いていた南地区が様々な建物の建築に入っている。

侵入者を防ぐ防壁の建設や、他にも裏側の森のキノコ栽培、少し行ったところにある海での漁業、兵士の訓練所の開設、週一回の見回りや国民との交流...

やっと終わった、ようやく休める、と思った次の日。

カノンに学校だと起こされた。

それはおかしい、だって俺が完全に学校を破壊したはずなのだ。

1週間で復帰できるはずがない...と訴えると。

なにやら手紙が回っているらしい、その手紙は王の印の刻まれた手紙、つまりロカが関係している。

中身はシンプルに、王の力で学校を復興させたので、通学してください。

つまりは俺の休みが減った、という訳だ。

俺は本当に疲れ切ったように溜息を吐くと、カノンが不思議そうな顔をしていた。


「こうやってユウキさんと歩くのも久しぶりですね」


「そうだな...もう学校も近いからその名前で呼ぶなよ?」


「分かってますよユウリさん...そういえば学校はどうなってるんですかね?」


それは正直気になっていた。

あれだけ破壊してどれほど、たった一週間で治すことが出来たのか。

たぶん教室だけで外見は崩壊寸前だろうなんて思って抜けた校門。

そこには前の物とは比べ物にならない程大きく奇麗になった学校が。


「あいつ...どれだけの予算を...」


「これはまたすごいですね」


思はず二人がそうつぶやいてしまう程に比べ物にならない程に増築されている。

だがカノンにとってはそこまでたいしたことではなかったようで、すぐに思考を変えた。

いまカノンを悩ませる結婚問題、まずどうすればユウキが自分の事を意識してくれるかである。

思いつくのは、色恋関係の本に書かれていた内容で...買い物に誘う...だった気がする。

前回は失敗したが、もう一度だけあの本を信じて...意を決して口に出した。


「あの!ユウリさ.....」


「あれ?カノンちゃんじゃね?」


「え?マジかよ!朝早くからカノンちゃんに会えるとかラッキーすぎだろ!」


カノンの声を遮ったのはチャラそうな二人の男、どちらも凄くイケメンだ。

ユウキがモブに見えるほどに。


「カノンちゃん一緒に教室行こうぜ!」


「おい!抜け駆けはずるいだろ!」


「え?あの、ちょっと...」


その二人を一瞥したユウキは少し首をかしげ静かにうなずく。

一方チャラ男二人はカノンの近くのユウキを見ると怪訝そうな顔をした。

たぶんカノンに釣り合うような容姿をしていなかったからだろう。


「なに?あんた?あんまカノンちゃんに話しかけないでくんない?」


「そうそう、お前みたいな陰キャ相手にする暇なんてないってよ」


「え!?わたしはそんな!」


その時ユウキの脳内に浮かんだのは、この三角関係邪魔しちゃいけないな、カノンのためにも...

ということで。


「ああ、それはすまなかった...それじゃ」


カノンに小さく親指を立てて応援をすると、ユウキは一人自分の教室に向かっていった。



「なぁツバキ」


「なんですか?」


自分の席について、自分よりはるかに早く学校に来ていたツバキにユウリは嬉しい出来事を語っていた。


「なんとカノンに春が来た」


「春っすか?...春?」


「つまりモテ期だな」


「はぁ?...ユウリさん、あのカノンちゃんっすよ?もとからモテルに決まってるじゃないっすか」


「まあ、それはそうだがなぁ...なんでか今まで男の気配が一切なかったんだよなぁ...」


「それは―...」


お前を狙ってるからっすよ...呆れ気味に出かかった言葉をツバキは必死に飲み込んだ。

もしそんなことを言ってユウリがカノンに確認でもしてみろ、明日自分が生きてられるか自信がない。


「どうかしたのか?」


「...いえ、なんでもないっす」


そうツバキが口を噤んだその時だった。


「おはようございます皆さん」


チャイムの音と共に教師スノウホワイトが入ってきた。

その顔色はどこか優れないような気がするのは...勘違いだろうか?


「えーと、まず説明しなくちゃいけないことがありますね、皆さんもう噂程度で知ってると思いますが...この学院が壊れたのはXが本気で怒ったことが原因です...」


ちなみに俺が暴れたことを知らないツバキが目を見開いてじっとこちらを睨んでくる。

俺は気づいていないふりをした。


「あの...正確に被害はどれほどまでになったのでしょうか?」


「...二年生と三年生のほとんどが気絶、負傷しており、学院の被害は二階と三階南側校舎半壊...ですね...」


スノウホワイトはじっとユウリを睨む。

隣のツバキもジッとユウリを睨む。

ユウリはそっと視線が来ない右側を向いた。


「あの...それだけの事をしたXは退学になったんですか?それとも何かしらの処置を...」


「罰は一切ありませんよ」


「な、何故ですか!?」


「まず一つ、教師陣がXにバツを与えられるほど強くはない、それ程までにXは化け物なのです...もし学院の生徒、教師すべてが束になっても難なくXは私たちを皆殺しにできるでしょう」


「ッ!?...なぜ、そんな化け物が...学院に通うんだよ...必要ないだろ」


暇つぶしだけど何か?...なんて言ったらまたスノウホワイトは怒るだろうから何も言わない。


「そしてもう一つ、悪いのはXではなく三年と二年生だからです、三年生と二年生のうち僅かな生徒がある生徒を虐め、というより虐待を行っていました、腕は反対側に曲がり神経はずたずた見ていられなかったほど...その人と友達であったXは怒りに任せて邪魔する者たちを排除し続け、屈辱を返したんです...それであってますか?X?」


そういったスノウホワイトの言葉に周囲に動揺が走る、まさかこの最底辺のクラスにいるだなんて思っていなかったのだろう「え?」「このクラスにいるの!?」「だ、誰だよ!?」

ちなみに俺はスノウホワイトに向けて静かにうなずいた。


「あっているようですね...まあ、これが学院側がXを罰しない理由です...これで私の話は終わりです」


辛気臭い話を紛らわせるようにスノウホワイトは手をパンパンと叩くと、それと呼応するように生徒も静かになった。


「では次の話です、実は新しく入った転入生がいます」


「え?転入生、ですか?」


「先生~女子ですか~?」


「可愛い子だといいな~!」


「イケメンですか!?」


まるでさっきまでの話がなかったかのように、騒ぎ出す生徒諸君。

切り替えが早い、若いからだろうか...そして盛り上がれない俺はもう年かもしれない...


「へ~転入生っすかぁ...中々に変な時期っすね、女の子だといいっすねぇ...」


「...そうだな...」


「はい、皆さん静かにしてください!...では、どうぞ入ってきてください」


ホワイトの言葉に生徒一同は黙り、ただ一心に扉の外を見つめる。

入ってきたのは、オレンジの髪をしたとても可愛らしい美少女で...


「は?」


ユウリの呆れ半分、驚き半分の言葉にツバキも同じように驚きをあらわにする。


「あれは...フィリアナちゃん?」


紅い瞳の美少女は楽しそうに笑って。

言ったのだ。


「私はフィリアナ、夢はお兄ちゃんと結婚することです!」


なんて、やばい爆弾を投下したのだ。


ちなみにその後周りから酷く視線を受けながらフィリアナは俺の隣に当然のように座る。


「おい...何のため転入したんだ...お前ならこの学校の教員以上の知識もあるだろ?」


フィリアナにだけ聞こえる声でそうつぶやくと、わざとフィリアナは周りに聞こえる声で言った。


「そんなのお兄ちゃんと過ごすために決まってるでしょ!」


周りのざわざわ声がユウリを包み込み、いろんな言葉が投げかけられた。

その言葉には、色んな言葉と意味が混ざっていたがユウリは気にしないことにした。


                     ♯


今日の授業は実に楽だった。

正直に言はせてもらうと睡眠がはかどった。

いつもユウリは授業を聞いてている何故か眠くなって、きづけば寝ている。

そのあと起こされるのが凄く嫌なのだが...いつも起こしてくる生徒諸君の手をフィリアナは無情にも叩き落とす。

さらには提出用のノートを俺の分も書いておいてくれていて...

「ありがとな」と伝えると、「私もごちそうさまです」なんてお礼を言われて...いろいろ何がっ?てなった。

その後一緒に昼食に、と思ったらお弁当を持ってきてくれていて、手が滑って服を汚すと甲斐甲斐しく拭き取ってくれて.....そこで冷静に考えてみると、やばいという思いが浮かぶ。


(このままだとダメ人間になる)


確定的だ。

こんなに甲斐甲斐しい妹、正直もう他に何もいらない気がする。

...ってそれは危険な思考だと、考えないようにするが正直絶対に引き離せる気がしない。

どうにかしないと、そう思って臨んだ次の日...


「おはようございます」


「ああ、おはよ...え?」


次の日そこに制服姿でいたのはアンジュだった。


「な、なんでアンジュ様が...」


そう呆然と呟いたのはツバキだ。

だが次にアンジュの青い瞳に睨まれると...一瞬固まった跡口に出した。


「お...おはようっす...フィリアナちゃ...さん」


「おはようございます、ツバキ?」


そうやってツバキを威圧し俺の隣に座り込むとナチュラルに手を絡めてきた。

その様子に生徒達の反応が凄くうるさい。


「すまないんだが...説明を頼めるか?」


小さく周りに聞こえない声で尋ねると、アンジュも小さく耳元に語り掛けてくる。

少し背中がぞわっとした。


「説明...別に大したことはありませんよ、ただ私たち二人が全力で貴方を落としにかかってるだけです」


「はぁ?...なんで?」


「好きだから以外に何があるんですか?あと、もしどちらか一人がユウキ様を落としても、もう片方も付いてきますので」


「なんだその共同戦線...」


「私たちは同盟を組んだんです...これからの学院生活精々覚悟しておいてくださいね」


その言葉の重さ、本気だとうかがえる目つきにこれから大変だなと覚悟をしたユウキ...

だがこの時のユウキはまだ知らない、いや知るわけがない、もう少しでこの日常の全てが終わりを迎えることを...


                        ♯


ニス=グリモア王国、第3区画浦通り、別名裏通り。

悪徳な業者に闇市が深くまで展開されていて、この国の王ロカも下手に手を出せない場所、の最も深き場所。

犯罪者が住み着いているといわれる地下施設、その内部には無数の人の死体、その上に座るのはエーグル=C=ノーバン。

その周りには顔も体も、完全にフードに隠れた数十人の人間が、背中には大樹の紋章が描かれている。

それは廻来教の本物の実力者として名高い精鋭たちだ。


「ノーバン様、我々にご命令を」


死体の上に座り、レポートを読みふけるノーバンに一人の精鋭が膝をつき命令を問うた。


「協力者の情報からして、何やら妹が学院に通い始めたらしい、まずそいつを拉致る」


「...それは彼の王にバレるのでは?それに...勝てるのでしょうか?」


「大丈夫だ、協力者にあるものを渡していおいた」


「ある者とは?...」


「過去最悪と呼ばれた呪物、略奪者の心臓、を使わせる...最悪死ぬが...あの王なら死なない、無力となって戻って来るさ...そして絶望に顔を歪ませるんだぁ...ふひッ...ふひひひひひッ...」


その笑い方、目に宿る狂気に精鋭たちは一瞬黙り込む。


「結構は明日の夕暮れ...ああ...今から楽しみで...涎がこぼれるぜ...ふひゃひゃひゃひゃ」


口元を手で拭うと、狂った笑いを叫ぶノーバン。

感情を失い欠けている精鋭達がイカレテいると本気で思うほどに、ノーバンが死体をさらに引き裂き血を浴びる姿は...恐怖という感情を精鋭達に呼び起こした。


そろそろ平和な世界がこわれますね♪

やっと本来の物語になりそうです...

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